【試合レビュー】愛媛FCレディースが名古屋のビルドアップを攻略 9ゴールの壮絶な乱打戦を制す|2026プレナスなでしこリーグ1部 第3節

試合レビュー

開幕から2節、ともに勝利がないチーム同士の対戦となった。筆者の予想は、昨シーズン王者である朝日インテック・ラブリッジ名古屋のポゼッションサッカーに愛媛FCレディースが苦しむ、という構図だった。ところが試合は、開始直後に愛媛が積極的なプレスで相手のミスを誘発し、先制点を奪う展開となった。

結果は朝日インテック・ラブリッジ名古屋 4-5 愛媛FCレディース。愛媛FCレディースが今季初勝利を挙げ、名古屋は2分1敗と苦しい立ち上がりとなった。

リソース

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公式記録

日程・結果

注目ポイント

  • 今節、ここまでまだ勝利がない両チームの対戦。
  • 縦に速い攻撃陣が好調な愛媛に対し、ビルドアップを軸に戦う名古屋が、どのように自分たちの形を出すのか。対照的なスタイルのぶつかり合い。

試合情報

朝日インテック・ラブリッジ名古屋愛媛FCレディース
45
54分 渕上 野乃佳
67分 永田 晶子
86分 中村 友香
90分 水野 亜美
1分 黒岩 沙羽
7分 近藤 彩優子
32分 深澤 里沙
49分 桜井 由衣香
85分 丸山 ちさと
会場CSアセット港サッカー場(愛知県)
観客数361人

スターティングラインナップ・登録メンバー

朝日インテック・ラブリッジ名古屋
Pos No. 氏名 交代
GK1横山 野ノ香
DF24角田 菜々子
DF10橘 麗衣 (Cap.)
DF17堀内 意
DF2夏目 歩実
MF14上田 真子63▼
MF5安部 由希子81▼
MF4逸見 桃子
MF8渕上 野乃佳81▼
FW13仁木 愛実63▼
FW28永田 晶子87▼
Pos No. 氏名 交代
GK16流川 桐佳
DF3森口 莉子
DF25河合 野乃子87▲
MF15中村 友香63▲
MF20増永 朱里63▲
MF21大場 柚季81▲
FW9水野 亜美81▲
監督: 磯村 健
愛媛FCレディース
Pos No. 氏名 交代
GK21小松 里弥
DF25足立 寧々70▼
DF5西村 紀音 (Cap.)
DF24前田 花依
DF13丸山 ちさと
MF19黒岩 沙羽70▼
MF15榎谷 岬57▼
MF11小島 和希子
MF26桜井 由衣香
FW8深澤 里沙83▼
FW14近藤 彩優子70▼
Pos No. 氏名 交代
GK33山内 れな
DF2松村 菜美70▲
MF6兵頭 來良
MF29安齋 結花70▲
MF32平塚 万貴57▲
FW9谷口 清夏83▲
FW18髙尾 真莉奈70▲
監督: 長谷川 歩

試合展開

立ち上がりの奇襲 愛媛が前線の圧力で主導権を握る

開始1分で、いきなり試合が動く。先制したのは愛媛だった。

名古屋のゴールキック。GK横山野ノ香が、下りてきた#4逸見桃子にパスを出す。名古屋としては、いつものように低い位置からビルドアップを始める意図だったのだろう。だが、ここに愛媛#14近藤彩優子が素早くプレスをかける。逸見のトラップがわずかに浮いたことで近藤との距離が一気に縮まった。しかも逸見の近くにいた味方はGK横山しかおらず、その横山にも愛媛#8深澤里沙が詰めている。どこに逃がすか一瞬迷った逸見からボールを奪った近藤がそのままシュートを放つが、これは逸見は何とか近藤のシュートを体を張って防いだ。しかし、こぼれ球に最も早く反応したのも愛媛だった。19黒岩沙羽がワンタッチで押し込み、愛媛が最高の形で先制する。

前半1分、愛媛FCレディースの先制点。名古屋の最終ラインに対してプレスをする#14近藤から、最後は#19黒岩が決めた。

この場面は偶発的な要素もあったが、愛媛が名古屋の最終ラインに強い圧力をかける狙いを明確に持っていたことは、試合全体を見ても明らかだった。昨季王者を相手に、試合開始直後から精神的な優位性を得た意味は大きい。

名古屋のビルドアップを封じた愛媛 7分の追加点で試合を傾ける

名古屋は気持ちを切り替えてビルドアップを試みる。しかし、愛媛の運動量と連動した守備がそれを許さない。前線のファーストディフェンスと2列目の圧力でパスコースを制限し、名古屋をサイドへ追い込みながら逆サイドへの展開もケアして奪い切る。守備の設計がよく整理されていた。

そして7分、愛媛が追加点を奪う。これもまた、名古屋の低い位置からのつなぎを突いた形だった。

自陣深くで#24角田菜々子が相手のスルーパスをカットしたまではよかったが、その後も名古屋はつなぐ選択を取る。角田は自陣ゴールに近づきながらパスコースを探し、下がってきた#8渕上野乃佳へ出そうとしたように見えた。しかしこのボールがコース上の#5安部由希子に当たり、背後でフリーになっていた#14近藤彩優子の足元へこぼれる。近藤はこれを逃さず右足を振り抜き、名古屋ゴール右隅へ突き刺した。

愛媛FCレディースの2点目。ビルドアップを狙われ、運よくこぼれたボールを#14近藤が冷静に決めた。

この追加点は極めて大きかった。開始直後の失点で動揺していたであろう名古屋を、さらに混乱させた印象がある。名古屋はその後も低い位置からのビルドアップを継続したが、愛媛のプレス、追い込み、パスコース限定が見事にはまり続けた。ボールを奪えば一気に縦へ運ぶ。運動量を要する戦い方ではあるが、この日の愛媛にはそれをやり切るだけの強度があった。

一方の名古屋にも、前線やサイドに良い形でボールが入る場面はあった。ただ、この試合は周囲のサポートが遠い。今季ここまでの名古屋は、ボールホルダーの近くに必ず味方が顔を出していた印象があるが、この試合では2失点の影響もあったのか、2列目やサイドバックの押し上げが遅れ、サポートが間に合わない。結果として単独での打開を迫られ、そこを愛媛が複数人で囲い込む。名古屋は前半、完全に愛媛の狙いの中でプレーさせられていた。

前半の決定打 愛媛が3点目で昨季王者を圧倒

31分にも、名古屋は低い位置でもつなぐことを優先したことで危険な場面を招く。#24角田からGK横山へのバックパスに、愛媛#19黒岩が鋭く反応。最後は#17堀内意が外へ逃がして難を逃れたが、ここでも愛媛の狙いははっきり表れていた。

またしても低い位置のパスを狙われた名古屋。最後は#17堀内が懸命にクリア。

愛媛は、名古屋陣内の低い位置での横パスやバックパスに対してFWが激しく制限をかけ、ビルドアップを安定して進めさせない。奪えればそのままフィニッシュまで持ち込む。前線からの守備が極めて機能していた。

その流れの中で32分、愛媛に3点目が生まれる。スローインから右サイドを崩し、最後はグラウンダーのクロスを#8深澤里沙がフリーでワンタッチシュート。深澤はDFの死角へ一度消えてから入り直しており、ベテランらしい駆け引きが光る得点だった。

愛媛FCレディース#8深澤里沙のゴールで3点目。筆者はこの時点で試合が決まってしまったと感じた。

筆者はこの3点目で、試合が大きく傾いたと感じた。

もっとも、名古屋にも反撃のチャンスはあった。41分、低い位置からの横パスを起点に縦パスが差し込まれ、#13仁木愛実が完全に抜け出してGKと1対1に。しかし、このシュートは浮いてしまい、大きく枠を外れた。

決定的なチャンスを迎えたが、朝日インテック・ラブリッジ名古屋#13仁木のシュートは大きく外れた。

名古屋は開始1分の失点から、GKとDFラインが落ち着きを取り戻せないまま前半を終えた印象が強い。「攻撃のための守備」は息をひそめてしまった。愛媛は前半だけで3点を奪い、内容面でも昨季王者を圧倒した。

後半開始直後も愛媛ペース 4点目で勝負は決まったかに見えた

後半開始時点で両チームに交代はなかった。序盤は名古屋らしいビルドアップと前線の飛び出しも見られたが、49分、再び愛媛が最終ラインへの圧力から得点を生む。

名古屋#17堀内意が後方からパスコースを探すが、前線との距離が遠く、選択肢が限られていた。そこへ愛媛#8深澤がプレスバックしてコースを消し、苦しい形で出された#4逸見へのパスを#15榎谷岬がカット。榎谷が持ち上がり、中央を走る#14近藤を経由して、左から上がった#26桜井由衣香へ展開する。桜井がペナルティエリア外から美しい軌道のシュートを沈め、愛媛が4点目を挙げた。49分、名古屋はさらに苦しい状況に追い込まれた。

49分、またしても最終ラインのビルドアップを狙った愛媛の選手たち。愛媛FCレディース#8深澤、#15榎谷、#14近藤が絡んで最後は#26桜井が見事なゴールを決めた。

この時点で、さすがに勝負ありと思わせる展開だった。だが、ここから名古屋が昨季王者の意地を見せる。

名古屋の反撃と愛媛の逃げ切り 壮絶な点の取り合いの終盤

54分、中盤でボールを奪った名古屋は右サイド高い位置へ展開し、#28永田晶子がクロスを送る。これに飛び出した愛媛GK小松里弥が触れたボールが#8渕上野乃佳の足元へこぼれる。渕上はキックフェイントでDFをかわし、GKの股を抜く低いシュートを決めて1-4。名古屋の反撃の狼煙となる#8渕上の今季初ゴールだった。

朝日インテック・ラブリッジ名古屋は54分、#8渕上野乃佳の得点で1点を返した。

コーナーキックから愛媛#26桜井の弾丸ミドルが名古屋ゴールポストを叩く場面もありながら、名古屋は中盤で人数をかけてボールを奪う場面が増え、前線への送り方もよりシンプルになる。両サイドが追い越す動きも見え始め、交代策も含めて流れを変えようとしていた。愛媛の激しいプレスとカウンターに苦しみながらも、名古屋は少しずつ修正を施していく。

その中で生まれたのが67分のPKだ。最終ラインから#2夏目歩実が前へ蹴り出したボールを起点に、途中出場の#15中村友香がフレッシュな動きで前進。そこからボールを受けた#28永田晶子がペナルティエリア内で倒され、主審はPKを指示した。映像で見る限り判定はやや微妙にも映ったが、永田が自ら決めて2-4とする。

#15中村友香のドリブルから#28永田晶子がペナルティエリア内でファイルを受けてPKゲット。これを永田が自ら決めて2-4。

この直後、愛媛は3枚替えを敢行。この日、名古屋を大いに苦しめていたファーストディフェンスの担い手であり、得点にも絡んでいた近藤と黒岩を下げた。フレッシュな選手を入れて強度を保つ意図だったのだろうが、相手への脅威という観点では、どちらか一人は残してもよかったのではないかと筆者は感じた。

名古屋もまた、前半とは明らかに違う表情を見せていた。相手ボール時の前線からのチャレンジが強まり、攻撃では左サイドバック#2夏目歩実がリスクを負ってでも前へ出る回数も増える。さらに、低い位置で保持してもビルドアップに固執せず、#20増永朱里や#28永田晶子の背後へのランを使う形が増え、よりダイレクトにゴールへ向かうようになった。

それでも、追い上げムードの中で再び突き放したのは愛媛だった。85分、コーナーキックから#13丸山ちさとがヘディングで決めて5-2。名古屋にとっては、残り時間を考えても極めて厳しい3点差となる。

愛媛FCレディースが朝日インテック・ラブリッジ名古屋を突き放す5得点目。決めたのは#13丸山ちさと。

ここから奇跡の逆転劇を起こすために、もう前へ出るしかなくなった名古屋。86分、愛媛ゴールから25メートルほどの位置で獲得した直接フリーキックを、途中出場の#15中村友香が見事に決めて5-3と追いすがる。さらに後半アディショナルタイム、スローインから右サイドを突破した#20増永朱里のクロスを、最後は途中出場の#9水野亜美が押し込んで5-4。ついに1点差まで詰め寄った。

朝日インテック・ラブリッジ名古屋#15中村友香がフリーキックを直接決めて5-3。
朝日インテック・ラブリッジ名古屋#20増永のクロスに最後は#9水野。5-4の1点差まで追い上げる。

残り時間、名古屋は猛攻を仕掛けたが、あと一歩届かず。5-4でアウェーの愛媛が逃げ切り、今季初勝利を挙げた。

総括

この試合は、まず愛媛の作戦勝ちだったと言ってよいだろう。それをピッチで実現した選手たちのハードワーク、そして監督・スタッフ陣の準備が見事だった。開始7分までに2点を先行したことで、愛媛は自分たちの狙いを継続しやすい展開を手にした。

試合を通じて愛媛は、名古屋が得意とする低い位置からのビルドアップを徹底して狙い続けた。とりわけ、新加入でここまで3試合で2ゴールの#14近藤彩優子の存在感は大きい。スピードを生かして前線守備のスイッチを入れ、攻撃ではサイドから斜めに走って相手の脅威になる。この試合でも得点を挙げており、愛媛にとっても本人にとっても非常に良いスタートと言えそうだ。

近藤、深澤、黒岩、桜井を中心とした前線は、速さと強さを兼ね備えており、勢いに乗った時の破壊力は相当なものがある。一方で、警告の多さはやや気になる材料でもある。この試合で名古屋に警告がなかったのに対し、愛媛は4枚の警告を受けた。悪質なラフプレーが目立ったわけではないが、選手層に絶対的な厚みがあるチームとは言い切れないだけに、今後に向けては注意したいポイントだろう。

一方の名古屋は、自分たちの得意な形を封じられた時の脆さを露呈した。昨季王者である以上、相手に徹底的に研究され、対策される立場にある。それを上回る完成度がなければ、勝ち切るのは難しい。GKを含めたビルドアップは、選手間の意思疎通と連係の質がそのまま表れるスタイルだ。昨季の堅守と滑らかな前進を支えた主力級の退団もあり、その再構築には時間を要するのだろう。形だけでなく、新加入選手も含めたチーム全体のDNAとして落とし込むには、まだ積み上げが必要に見える。

それでも、圧倒的に不利な状況から交代策と戦い方の修正で1点差まで追い上げたところには、さすが昨季王者と思わせる底力があった。途中出場の#20増永朱里、#15中村友香、#9水野亜美は展開を大きく動かした存在だった。少なくともこの試合に限って言えば、後半途中から入った選手たちのコンディションの良さが、反撃の勢いを支えたように映った。

同日同時刻に行われたスフィーダ世田谷と岡山湯郷Belleの一戦は5-0で世田谷が圧勝した。筆者はこの試合もあわせて視聴していたが、ビルドアップとパスサッカーを持ち味とする名古屋と湯郷の両チームが、前線から厳しくプレスをかけてくる相手に苦しみ、敗れたという共通項があった。

もちろん一戦だけで一般化はできないが、自分たちのやりたいサッカーを貫くことと同時に、相手の強みを消す設計の重要性を改めて感じさせる90分だった。

朝日インテック・ラブリッジ名古屋 公式マッチレポート(X)

愛媛FCレディース 公式マッチレポート(Instagram)

順位表

3月29日の試合結果待ちの時点で、朝日インテック・ラブリッジ名古屋は暫定9位、愛媛FCレディースは暫定7位となった。

順位チーム名勝点試合数得点失点得失点
1静岡SSUボニータ62200151+14
2岡山湯郷Belle63201550
3ヴィアマテラス宮崎4211031+2
3ASハリマアルビオン4211031+2
5オルカ鴨川FC4211020+2
6スフィーダ世田谷FC43111770
7愛媛FCレディース4311178-1
8伊賀FCくノ一三重22020110
9朝日インテック・ラブリッジ名古屋2302156-1
10日体大SMG横浜12011211-9
11ニッパツ横浜FCシーガルズ0200215-4
12VONDS市原FCレディース0200205-5

次節、名古屋はアウェーでVONDS市原レディースFCと、愛媛FCレディースは再びアウェーで岡山湯郷Belleと対戦する。

朝日インテック・ラブリッジ名古屋には今季初勝利を、愛媛FCレディースにはアウェー2連勝を期待したい。

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