前節、ASハリマアルビオンに主導権を握られながらも粘り強く耐え、後半の決勝点で勝利した伊賀FCくノ一三重。中位グループが混戦となる中、今節はここまで勝ち点を得られていないVONDS市原FCレディースをホームに迎えた。
両チームともキャプテンがメンバー登録外となり、個の力だけでなく、チーム全体の連携と修正力が問われる一戦となった。試合は、劣勢だったVONDSが前半に先制する展開。しかし伊賀は前半終了間際に追いつくと、後半は交代選手が流れを変え、勝ち越しに成功した。
主導権を握る時間の長さ、サイド攻撃の継続性、守備の強度、そして途中出場選手の仕事ぶり。最後はその差が結果に表れ、伊賀が2-1で勝利を収めた。
この記事の要点
- 伊賀は序盤からサイド攻撃を軸に主導権を握り、前半終了間際の同点弾で試合を振り出しに戻した。
- VONDSは劣勢の中でも前線からのプレスをきっかけに先制したが、守備の強度と連携面に課題を残した
- 後半は伊賀の交代策が的中し、途中出場の桂亜依と松田吏真が決勝点に絡んで2-1の逆転勝利につなげた。
試合情報
2026プレナスなでしこリーグ1部 第10節
| 伊賀FCくノ一三重 | VONDS市原FCレディース |
|---|---|
| 2 | 1 |
| 45分 平田 ひなの 69分 松田 吏真 | 37分 玉田 愛理 |
| 会場 | キックオフ 上野運動公園競技場(三重県 |
| 観客数 | 390人 |
伊賀FCくノ一三重
キャプテンのMF常田麻友はメンバー登録外。DF秦美結がキャプテンマークを巻いた。
| Pos | No. | 氏名 | 交代 |
|---|---|---|---|
| GK | 16 | 小野 未織 | |
| DF | 5 | 常田 菜那 | |
| DF | 26 | 清 悠香 | |
| DF | 3 | 秦 美結 (Cap.) | |
| DF | 13 | 髙山 菜々香 | |
| MF | 14 | 増田 玲那 | |
| MF | 7 | 渡邊 凜 | 83▼ |
| MF | 8 | 島野 美央 | 62▼ |
| MF | 24 | 唐沢 芽依 | 62▼ |
| FW | 11 | 児野 楓香 | HT▼ |
| FW | 10 | 平田 ひなの | 90+1▼ |
| 控え | |||
| GK | 21 | 合田 朱里 | |
| DF | 17 | 松久保 葵子 | |
| DF | 18 | 井上 歩香 | 62▲ |
| MF | 15 | 竹島 加奈子 | 83▲ |
| MF | 9 | 桂 亜依 | HT▲ |
| MF | 25 | 上田 彩葉 | 90+1▲ |
| FW | 22 | 松田 吏真 | 62▲ |
| 監督: 永井 良明 | |||
VONDS市原FCレディース
キャプテンのDF村上賀梨がメンバー登録外。MF櫻庭琴乃がキャプテンを務めた。
| Pos | No. | 氏名 | 交代 |
|---|---|---|---|
| GK | 31 | 佐藤 瑠美奈 | |
| DF | 17 | 板倉 瑞穂 | |
| DF | 2 | 小堀 菜緒 | |
| DF | 13 | 玉田 愛理 | |
| MF | 9 | 宮本 春花 | 86▼ |
| MF | 5 | 小田川 真奈 | |
| MF | 7 | 佐藤 寿音 | |
| MF | 19 | 小林 和音 | |
| MF | 27 | 木須 みそら | 73▼ |
| MF | 10 | 櫻庭 琴乃 (Cap.) | |
| FW | 18 | 増田 沙美亜 | 73▼ |
| 控え | |||
| GK | 21 | 大久保 佑菜 | |
| DF | 3 | 多崎 真琴 | 73▲ |
| DF | 22 | 鈴木 菜々海 | |
| MF | 8 | 石井 彩千香 | |
| FW | 16 | 吉川 はなの | |
| FW | 20 | 高山 杏々葉 | 86▲ |
| FW | 28 | 中村 円香 | 73▲ |
| 監督: 落合 恵 | |||
試合展開
伊賀が主導権を握るも、VONDSがプレスから先制
立ち上がりからペースを握ったのは伊賀だった。
開始早々、伊賀は素早いリスタートから#7渡邊凜が抜け出し、惜しいシュートまで持ち込む。以降も最終ラインと中盤から落ち着いてボールを動かし、両サイドの#7渡邊凜、#24唐沢芽依、そして#14増田玲那へ展開。サイドを深く取ってクロスを入れる形を繰り返した。
一方のVONDSは、序盤から自陣で受ける時間が長くなった。中央を固めてクロスを跳ね返す場面は作れていたものの、伊賀のビルドアップに対するプレスはやや緩く、前進を許す時間が続いた。
それでも、試合を先に動かしたのはVONDSだった。
37分、VONDSは伊賀のビルドアップに対して前線から圧力を強める。GKへのバックパスに#10櫻庭琴乃が素早く寄せると、伊賀はサイドへ逃げるようにパス。そのボールを#13玉田愛理がインターセプトし、相手をかわして左足を振り抜いた。
劣勢の時間が続いていたVONDSにとって、前線からの守備がそのまま得点に結びついた大きな先制点だった。玉田はDF登録ながら、この日は右サイドで高い位置を取る場面も多く、縦への推進力と攻撃参加が得点という形で実を結んだ。
渡邊凜の突破から平田ひなのが同点弾
先制を許した伊賀だったが、試合の流れを大きく手放したわけではなかった。
失点後も伊賀はサイド攻撃を継続。VONDSはラインを押し上げきれず、自陣で守る時間が続いた。そして前半終了間際、伊賀が押し込み続けた成果を同点弾につなげる。
右サイドで#7渡邊凜が相手2人を引きつけると、オーバーラップした#5常田菜那へスルーパス。常田が低いクロスを入れると、中央でフリーになっていた#10平田ひなのが合わせ、伊賀が1-1に追いついた。
平田はこれで3試合連続ゴール。VONDSとしては、前半をリードして折り返すチャンスがあっただけに、終了間際の失点は痛かった。特に、サイドで人数をかけて対応した後、中央の平田を空けてしまった点は悔やまれる場面だった。
前半は1-1で終了。VONDSが先制しながらも、試合全体の主導権は伊賀が握る展開となった。
後半も伊賀が押し込み、交代策が決勝点につながる
後半も構図は大きく変わらなかった。
伊賀が両サイドを起点に攻め、VONDSはゴール前中央を固めて対応する。VONDSもカウンターから少ないタッチ数で伊賀陣内へ進入する場面はあったが、流れの中で伊賀の守備を崩し切るところまでは至らなかった。
膠着した展開を動かしたのは、伊賀の選手交代だった。
62分、伊賀は#22松田吏真と#18井上歩香を投入。すると69分、その松田が勝ち越しゴールを奪う。
伊賀のゴールキック後、セカンドボールの処理をVONDS守備陣が誤ったところを、後半開始から出場していた#9桂亜依が奪取。数的優位の形を作ると、桂のラストパスを受けた#22松田吏真が右足ワンタッチで流し込み、伊賀が2-1と逆転に成功した。
停滞しかけた試合の中で、途中出場の選手たちが決定的な仕事を果たした場面だった。桂のボール奪取、松田の抜け出しとフィニッシュ。交代策がそのまま勝ち越し点に結びついたことは、伊賀にとって大きな収穫だった。
VONDSは終盤に反撃も、伊賀が守り切る
終盤、VONDSはリスクを取って前に出た。なでしこリーグ1部初の勝ち点を目指し、同点ゴールを狙って攻勢を強める。
アディショナルタイムには、VONDSが攻め込んでコーナーキックを獲得。#5小田川真奈のヘディングはGKの手が届かないコースへ飛んだが、伊賀の#15竹島加奈子が頭でクリアし、決定機を防いだ。
さらにその流れから、伊賀の#3秦美結が一気にドリブルで持ち上がる。VONDSのゴール前には#13玉田愛理しか残っていない状況となり、伊賀は追加点のチャンスを迎えたが、右サイドで受けた#25上田彩葉のシュートは枠を捉えられなかった。
最後までVONDSは反撃を試みたが、伊賀がリードを守り切り、試合は2-1で終了した。
総括
この試合を分けたのは、伊賀の継続したサイド攻撃と、後半の交代策だった。
VONDSは劣勢のなかでも、前線からのプレスをきっかけに先制点を奪った。攻撃面では櫻庭琴乃を中心にボールを前進させる形があり、玉田愛理の攻撃参加も得点につながった。前節に続き、攻撃面では一定の可能性を示した試合だった。
一方で、守備面では伊賀のサイド攻撃を止め切れなかった。伊賀の前進に対して中盤で強く制限をかける場面が少なく、最終ラインが押し下げられる時間が長くなった。先制後に前半をリードしたまま終えられなかったことも、試合の流れを大きく左右した。
伊賀は、攻める時間の長さに対して決定機の数はやや物足りなかったものの、前半終了間際に追いつけたことが大きかった。後半をイーブンで迎えられたことで焦りを抑え、交代カードを使いながら勝ち越し点を奪う展開に持ち込めた。
内容面ではまだ改善の余地を残しながらも、勝ち切ったことは大きい。中位グループから抜け出すためには、こうした接戦で勝ち点3を取り切ることが重要になる。
伊賀FCくノ一三重
伊賀は序盤から試合の主導権を握り、両サイドを使ってVONDSを押し込んだ。特に#7渡邊凜はドリブルとスピードで相手に脅威を与え続け、同点ゴールの起点にもなった。
ただし、押し込む時間が長かった一方で、シュートまで持ち込む回数や決定機の質には課題も残った。サイドから深く入る形は作れていたが、最後のクロス、中央での合わせ、こぼれ球への反応を含め、もう一段精度を高めたい試合でもあった。
それでも、後半から出場した#9桂亜依、#22松田吏真が決勝点に絡んだことは大きい。先発だけでなく、途中出場の選手が流れを変えられることを示した点は、今後の戦いに向けても好材料だ。
また、後半アディショナルタイムに#3秦美結が見せた長いスプリントは、伊賀の運動量と粘り強さを象徴する場面だった。守備でも大きく崩れる場面は少なく、終盤のVONDSの反撃にも最後まで集中して対応した。
一方で、失点場面のように低い位置でのバックパスやビルドアップにはリスクもある。無理につなぐ場面と、安全に外へ逃がす場面の判断は、今後も修正していきたいポイントになる。
VONDS市原FCレディース
VONDSは敗れたものの、攻撃面では前節に続いて良さを見せた。
特に#10櫻庭琴乃の存在感は大きかった。ボールを持ったときの落ち着き、独特のリズムで相手を外すドリブル、広い視野からのパスに加え、先制点の場面ではGKへのバックパスに対する鋭い追い込みで得点のきっかけを作った。
また、#9宮本春花、#13玉田愛理の攻撃参加も相手にとっては厄介だった。玉田は先制点を決めただけでなく、右サイドで高い位置を取りながら、VONDSの攻撃に推進力を加えていた。
一方で、守備面では課題が残った。伊賀のサイド攻撃に対してラインが下がり、中盤で前進を止め切れない時間が長かった。コースを切る対応は見られたものの、強度を持って寄せ切る場面は限られ、伊賀に余裕を持って展開される場面が目立った。
キャプテンでありDFリーダーでもある村上賀梨が不在だった影響も、守備の統率面では少なからずあったように見える。先制点を奪えた試合だっただけに、前半終了間際の失点、そして後半のセカンドボール処理からの失点は悔やまれる。
これで開幕から10連敗。要所にタレントはいるだけに、まずは守備の連携と強度をどこまで整えられるかが、初勝ち点獲得への大きな鍵になりそうだ。
順位表
第10節終了時点で、伊賀FCくノ一三重は勝利したものの、他カードの結果もあり5位を維持。VONDS市原FCレディースは未勝利のまま12位となっている。
過去5試合:勝利 引き分け 敗戦
| 順位 (前節) | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 | 過去5試合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 静岡SSUボニータ | 23 | 10 | 7 | 2 | 1 | 29 | 6 | +23 | |
| 2(2) | ヴィアマテラス宮崎 | 21 | 10 | 6 | 3 | 1 | 21 | 10 | +11 | |
| 3(3) | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 19 | 10 | 5 | 4 | 1 | 25 | 11 | +14 | |
| 4(4) | オルカ鴨川FC | 18 | 10 | 5 | 3 | 2 | 15 | 6 | +9 | |
| 5(5) | 伊賀FCくノ一三重 | 18 | 10 | 5 | 3 | 2 | 12 | 9 | +3 | |
| 6(6) | ニッパツ横浜FCシーガルズ | 14 | 10 | 4 | 2 | 4 | 19 | 17 | +2 | |
| 7(7) | 岡山湯郷Belle | 14 | 10 | 4 | 2 | 4 | 13 | 18 | -5 | |
| 8(9) | 愛媛FCレディース | 12 | 10 | 3 | 3 | 4 | 13 | 19 | -6 | |
| 9(8) | スフィーダ世田谷FC | 11 | 10 | 3 | 2 | 5 | 18 | 19 | -1 | |
| 10(10) | 日体大SMG横浜 | 10 | 10 | 3 | 1 | 6 | 13 | 34 | -21 | |
| 11(11) | ASハリマアルビオン | 6 | 10 | 1 | 3 | 6 | 9 | 14 | -5 | |
| 12(12) | VONDS市原FCレディース | 0 | 9 | 0 | 0 | 10 | 4 | 28 | -24 |
次節に向けて
次節は、12チーム総当たりによるリーグ戦前半の最終戦となる。
伊賀FCくノ一三重は、アウェーで日体大SMG横浜と対戦する。中位グループが混戦となる中、上位をうかがうためにも確実に勝ち点を積み上げたい一戦だ。今節のようにサイド攻撃で押し込む形を作りながら、最後の精度をどこまで高められるかがポイントになる。
VONDS市原FCレディースは、ホームに首位の静岡SSUボニータを迎える。相手はここまでリーグトップの得点力を誇り、守備も堅い。厳しい相手ではあるが、今節見せた前線からのプレスや櫻庭を起点とした攻撃を、より長い時間継続できるかが問われる。
VONDSにとっては、まず守備の安定が最優先になる。後半戦につながる内容を残すためにも、チーム全体での守備強度と連携をどこまで改善できるかに注目したい。
リソース
フルマッチLIVE配信
第10節全試合ハイライト動画
公式記録

