朝日インテック・ラブリッジ名古屋が静岡SSUボニータの無敗を止める セットプレーと堅守で首位撃破|2026プレナスなでしこリーグ1部 第10節

試合レビュー

開幕から負けなし。大量得点の試合も複数あり、ここまで29得点3失点という圧倒的な成績で首位を走ってきた静岡SSUボニータ。その静岡を、昨シーズン王者の朝日インテック・ラブリッジ名古屋がホームに迎えた。

静岡はすでに、ヴィアマテラス宮崎、岡山湯郷Belleとの上位直接対決を制している。ここで名古屋にも勝利すれば、優勝争いにおける優位性はさらに大きくなる。一方の名古屋も、前節の日体大SMG横浜戦で見せた多彩な攻撃と得点力、そしてシーズンを進めるごとに安定感を増している守備を武器に、首位チームに挑む一戦となった。

第10節屈指の注目カードは、3-0でホームの名古屋が勝利。しかし、スコアほど一方的な試合ではなかった。静岡がボールを握る時間帯も長く、名古屋は何度も押し込まれた。それでも球際で粘り、要所を締め、セットプレーとカウンターで得点を重ねた名古屋が、静岡に今季初黒星をつけた。

この記事の要点

  • 名古屋は静岡の攻撃力を正面から受け止めるのではなく、低い位置でのリスクを抑え、球際と切り替えで対抗した。
  • 前半37分、41分のセットプレー絡みの2得点が試合の流れを大きく左右。静岡は後半に主導権を握ったが、名古屋の堅守を崩し切れなかった。
  • 終盤には藤原愛里の見事なミドルシュートで3点目。昨季王者の名古屋が、首位・静岡に今季初黒星をつける価値ある勝利を収めた。

試合情報

2026プレナスなでしこリーグ1部 第10節

朝日インテック・ラブリッジ名古屋静岡SSUボニータ
3
37分 橘 麗衣
41分 水野 亜美
86分 藤原 愛里
会場CSアセット港サッカー場(愛知県)
観客数1,221人

朝日インテック・ラブリッジ名古屋

PosNo.氏名交代
GK16流川 桐佳
DF24角田 菜々子81▼
DF10橘 麗衣 (Cap.)
DF17堀内 意
DF2夏目 歩実
MF14上田 真子71▼
MF5安部 由希子
MF21大場 柚季58▼
MF8渕上 野乃佳
FW9水野 亜美71▼
FW28永田 晶子58▼
控え
GK1横山 野ノ香
DF25河合 野乃子81▲
MF4逸見 桃子58▲
MF11藤原 愛里58▲
MF15中村 友香71▲
MF20増永 朱里71▲
MF22川添 凛音
監督: 磯村 健

静岡SSUボニータ

PosNo.氏名交代
GK21田谷 春海
DF3彦坂 桃花
DF4青葉 結衣
DF5服部 花音
DF22上西 可奈子
MF6万力 安純
MF7高島 絢音
MF8三輪 玲奈90+1▼
MF9中島 咲友菜
MF15岸野 早奈60▼
FW10横山 久美 (Cap.)
控え
GK1水口 茉優
DF2白井 未来90+1▲
DF17櫻田 彩乃
MF11大曽根 由乃60▲
MF14渡邉 琉那
MF19曽我 来未
FW16藤田 桃加
監督: 本田 美登里

試合展開

名古屋が低い位置でのリスクを避け、縦に速く攻める

立ち上がりから、ホームの名古屋が強い入りを見せた。

この試合の名古屋は、最終ラインから丁寧につなぎ続けるよりも、低い位置でのリスクを極力抑え、縦に速くボールを運ぶ意識が強かった。センターバックからサイドバックへ展開し、そこから前方へ長く速いボールを入れる形を徹底。静岡の前線からの圧力をまともに受ける場面を減らしていた。

中盤では、#5安部由希子と#21大場柚季のダブルボランチが静岡の中盤に厳しく対応。奪った後は素早くパスを散らし、攻撃のテンポを上げた。左サイドの#8渕上野乃佳は低い位置から前線まで上下動を繰り返し、名古屋の攻守に厚みを加えた。

また、#14上田真子は中央へ切り込みながら、サイドバックが外を使うスペースを作り、自らフィニッシュにも関わった。中盤の選手が前を向いた瞬間に、名古屋全体の攻撃速度が一段上がる場面が印象的だった。

静岡が保持する時間を増やすも、名古屋の守備が跳ね返す

時間の経過とともに、試合は徐々に静岡がボールを保持する展開へと移っていく。

静岡はビルドアップで相手を動かしながら、タイミングを見て一気に縦へ入れる形を織り交ぜた。#10横山久美を起点に、前線の選手がゴール前へ飛び出し、名古屋の守備陣に圧力をかけていく。

しかし、名古屋の守備は崩れなかった。サイドでは1対1で粘り強く対応し、中央では人数を絞ってスペースを消す。シュートやクロスに対しても、最後は身体を投げ出してブロックした。静岡がゴール前に迫る場面はあったが、名古屋の赤い壁が粘り強く跳ね返した。

セットプレーから橘麗衣が先制、水野亜美が追加点

静岡がボールを持つ時間を増やし始めた中で、名古屋は苦しい時間帯でも可能性の低い位置からシュートを放ち、プレーを切る場面を作った。得点の可能性だけでなく、ラインを押し上げる時間を確保し、相手に次の攻撃を意識させる意味でも、名古屋のプレー選択には意図があったはず。

そして、先に試合を動かしたのは名古屋だった。

37分のセットプレー、#5安部由希子がゴール前へクロスを送る。これを#10橘麗衣がワントラップで収め、左足を振り抜いた。キャプテンの一撃で、名古屋が先制する。

さらにその4分後、再びセットプレー絡みの局面から名古屋が追加点を奪う。セカンドボールをしぶとく拾い続けると、#21大場柚季が後方から最終ラインとGKの間へクロスを供給。そこへ抜け出した#9水野亜美が合わせ、名古屋が2点目を奪った。

静岡にとっては、同じようなシチュエーションから短時間で2失点を喫したことが痛かった。前半は2-0、名古屋のリードで折り返した。

後半は静岡が押し込むも、名古屋は最後の局面で崩れない

後半は、静岡がさらに前へ圧力を強めた。

#10横山久美を中心とした攻撃は、やはり脅威だった。ポストプレー、ドリブル、スルーパス、相手の走るコースを遮るポジショニング、そしてシュート。ひとつひとつのプレーに高い質があり、名古屋の守備陣に常に判断を迫った。

名古屋は押し込まれる時間帯が続いたが、守備の対応は最後まで大きく崩れなかった。サイドでは球際で強く寄せ、中央ではコンパクトに絞る。奪った後はカウンターを狙ったものの、静岡の中盤に阻まれる場面も多く、簡単に押し返せたわけではなかった。

藤原愛里のミドルで勝負あり

静岡が1点を求めて前に出る中、次の得点も名古屋に生まれた。

86分、中盤で相手のパスをカットした#8渕上野乃佳が、前線の#11藤原愛里へパスを送る。抜け出した藤原はペナルティエリア外から相手GKの位置を確認し、コースを狙ったミドルシュート。ボールはポストに当たってゴールへ吸い込まれた。

静岡の守備が大きく崩された場面ではなかった。むしろ、渕上のパス、そして藤原の判断と技術を称えるべきゴールだった。この3点目で、試合の行方は決定的となった。

終盤、静岡はなおも前へ出たが、名古屋の守備は最後まで集中を切らさない。逆にスローインから橘麗衣の縦パスを起点に、渕上野乃佳がGKと1対1の決定機を迎える場面もあったが、ここは静岡GK田谷春海が阻止した。

試合は3-0で終了。名古屋が首位・静岡に今季初黒星をつけた。

総括

スコアは3-0だったが、名古屋が終始押し切った試合ではない。むしろ、静岡に押し込まれる時間帯は長かった。だからこそ、この勝利には大きな価値がある。

名古屋は、静岡を相手に真正面からボール保持で上回ろうとしたわけではなかった。低い位置でのリスクを避け、サイドを広く使い、奪った後は素早く前へ出る。守備では球際で負けず、中央を締め、最後の局面で身体を張った。
どっしり構えて受け止めるというより、最後まで走り、寄せ、粘り、泥臭く戦い切った勝利だった。

静岡は今季ここまで攻守両面の完成度が際立っていた。名古屋はその9試合分の戦いを研究し、どこでリスクを避けるか、どこで勝負をかけるかを明確にして臨んだ。特に、起点でありフィニッシャーでもある横山久美に対して最大限の警戒を払い、静岡の攻撃速度と精度を少しでも落とすための守備が徹底されていたように見えた。

静岡の攻撃力を無得点に抑えた名古屋の守備組織は、試合を追うごとに洗練されている。シーズン序盤の名古屋であれば、同じ内容にはならなかったかもしれない。今季ここまでの課題と反省を積み重ね、首位チームを相手に結果で示した一戦だった。

朝日インテック・ラブリッジ名古屋

名古屋は、勝つために戦い方を明確に変えてきた。

左右のサイドを広く使い、長短のパスとドリブルを組み合わせながら前進。流れの中で静岡の守備を完全に崩す場面は多くなかったが、セットプレーから短時間で2点を奪えたことが試合を大きく動かした。

また、静岡に押し込まれそうな時間帯でも、遠目の位置から積極的にシュートを放った。得点の可能性だけでなく、流れを切ること、ラインを押し上げること、相手に次のプレーを警戒させること。そうした意味でも、名古屋のプレー選択には意図があったように思える。

守備面では、最終ラインでのパス交換を限定し、自陣でのリスクを避けた。センターバックからサイドバックへ展開し、そこから前方へ長く速いボールを入れる形を徹底。静岡のプレスを自陣深くで受け続けないようにした。

さらに、横山久美を孤立させるように、ダブルボランチとサイドハーフが静岡の中盤へ厳しく対応。横山と周囲の距離を遠ざけることで、静岡の攻撃の連動性を落とそうとしていた。

シーズン序盤に愛媛FCレディース相手に5失点を喫したチームとは、別のチームのようだった。自分たちの得意なプレーに潜む弱みを受け入れたうえで、勝つために戦い方を調整し、各選手がそれを体現した。

自陣では安全第一でボールを外に出す判断。前線の選手の献身的なプレスバック。終盤まで落ちなかった強度と走力。決して順調ではなかったシーズン序盤から修正を重ね、首位を走る静岡を相手に全員で勝ち取った価値ある勝利だった。

静岡SSUボニータ

静岡にとっては、今シーズン初の黒星となった。複数失点を喫した試合も初めてである。

ただし、出来自体が大きく悪かったわけではない。特に後半は主導権を握る時間帯も長く、名古屋を押し込む場面も作れていた。だからこそ、前半にセットプレー絡みで4分間に2失点を喫したことが重く響いた。

2失点はいずれも似たシチュエーションだった。修正し切る前に立て続けに失点してしまったことが、試合の難易度を一気に上げてしまったように思える。

3失点目についても、静岡の守備が完全に崩されたというより、渕上野乃佳のパスと藤原愛里のシュートが見事だったと見るべきだろう。GKの位置を見て、ペナルティエリア外からコースを狙った判断と精度は素晴らしかった。

それでも、横山久美のクオリティは際立っていた。ポストプレー、ドリブル、スルーパス、相手の走るコースを遮る位置取り、そしてシュート。攻撃の起点にもフィニッシャーにもなれる存在として、やはり一段抜けた質を見せていた。

静岡にとっては悔しい敗戦だが、内容面で大きく崩れたわけではない。むしろ、この試合で突きつけられたセットプレー対応と、押し込んだ時間帯に堅い相手にどうゴールを奪い切るかという課題を、次節以降にどう修正するかが問われる。課題をしたとき、さらなる完成度を手に入れることができるはずだ。

順位表

第10節終了時点で、朝日インテック・ラブリッジ名古屋は3位、静岡SSUボニータは1位と、それぞれ上位を維持した。

ただし、首位・静岡との直接対決を名古屋が制したことで、勝ち点差は4に縮まった。静岡が依然として首位に立つ一方で、名古屋も優勝争いに踏みとどまる大きな勝利を手にした。

過去5試合:勝利 引き分け 敗戦

順位
(前節)
チーム名勝点試合数得点失点得失点過去5試合
1(1)静岡SSUボニータ2310721296+23
2(2)ヴィアマテラス宮崎21106312110+11
3(3)朝日インテック・ラブリッジ名古屋19105412511+14
4(4)オルカ鴨川FC1810532156+9
5(5)伊賀FCくノ一三重1810532129+3
6(6)ニッパツ横浜FCシーガルズ14104241917+2
7(7)岡山湯郷Belle14104241318-5
8(9)愛媛FCレディース12103341319-6
9(8)スフィーダ世田谷FC11103251819-1
10(10)日体大SMG横浜10103161334-21
11(11)ASハリマアルビオン610136914-5
12(12)VONDS市原FCレディース090010428-24

次節に向けて

次節は前半戦の最終節。12チーム総当たり戦の1巡目、最後の試合となる。

朝日インテック・ラブリッジ名古屋は、再びホームで岡山湯郷Belleを迎える。静岡相手の勝利で2連勝と勢いに乗る中、ビルドアップとパスワークが武器の岡山湯郷Belleを相手に3連勝を飾れるか。

一方の静岡SSUボニータは、アウェーでVONDS市原FCレディースと対戦する。今季初黒星からどう切り替えるか。首位チームとして、再び連勝街道へ踏み出す一戦にしたい。

リソース

フルマッチLIVE配信

第10節全試合ハイライト動画

公式記録

日程・結果

なでしこリーグ公式ガイドブック

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