2025年8月17日にジェフ千葉レディースのホーム開幕戦がフクダ電子アリーナで開催された。相手はRB大宮アルディージャWOMEN。
WEリーグの試合観戦自体初めてですが、現地観戦したのでマッチレビューを作成します。
リソース
ダイジェスト(Youtube)
公式記録

要約
- ジェフ千葉レディースは新加入のGK#16田中桃子選手・MF#37木村彩那選手・FW#84北沢明未選手を先発起用し、北沢選手はWEリーグ初出場で臨んだ。
- 開幕直後に大宮が先制し、前半はインテンシティとサイド攻撃で圧倒し多数のシュートを放った。
- 千葉は#7小川由姫選手や#25増田咲良選手の突破、#84北沢選手のポストプレーで反撃を試みるが、守備組織が不安定で苦しい展開。
- 後半に入り#84北沢選手の押し込みで同点ゴールを奪ったが、その後も大宮が主導権を握り、両チーム決定機を逃す。
- 試合は1-1ドローで終了。千葉は新監督トレスの戦術浸透に課題があるように見え、大宮は運動量と攻撃力の高さを示した。
ジェフ千葉レディースの目線でレビューする。
注目ポイント
- ジェフ千葉レディース#84北沢明未選手がWEリーグ初出場・初ゴールと存在感を示した。
- RB大宮アルディージャWOMENの高いインテンシティと両サイド攻撃が試合を支配した。
- トレス新監督の就任間もない千葉が守備面で課題を残しつつも開幕戦を引き分けに持ち込んだ。
試合情報
会場 | フクダ電子アリーナ(ジェフ千葉レディースホームスタジアム) |
観客数 | 1,470名 |
フォーメーション・スターティングラインナップ
ジェフ千葉レディース

新加入のGK#16田中桃子選手(前ベレーザ、期限付き)、MF37木村彩那選手(前ベレーザ、完全移籍)、FW84北沢明未選手(前なでしこリーグ1部日体大SMG横浜、JFA・WEリーグ特別指定選手)がスタメン。北沢選手はWEリーグ初先発・初出場。
今シーズンからチームを率いるのはカルメレ・トレス監督。クラブからの就任発表が開幕まで2ヶ月を切っており、トップチームの監督歴が少ないことも気になるが、果たしてこの短期間でどこまでチームをまとめてきたか注目である。

RB大宮アルディージャWOMEN

新加入のGK#1福田史織(前三菱重工浦和レッズレディース、期限付き移籍)、DF#34浜田芽来選手(前ノジマステラ神奈川相模原、完全移籍)が先発。浜田選手はFW登録の選手だがこの日は左サイドバックとして出場。
キックオフ前

入場時に2025/26シーズンのWEリーグオフィシャルガイドブックと、ジェフ千葉レディースオフィシャルマガジンである「United ELLA 2025/26」をいただいた。来場者特典だそうだ。






試合展開

7/13に行われたジェフ千葉レディースとの練習試合では45 分x3本で合計5-0と圧勝した大宮。あくまでも練習試合だが、トレス監督就任後の1か月間で千葉がどこまでチーム力を高めて来たか楽しみ。
前半
開始わずか1分でアウェイの大宮が先制ゴールを挙げる。
- 左サイドからフリースローを受けたFW#17齊藤夕眞選手がワンタッチでMF#13仲田歩夢選手にパス、左サイド深いところから仲田選手がクロス。千葉#37木村選手がクリアミスしたボールが大宮#4髙橋美紀選手に渡り、高橋選手は右足を振りゴールマウス左にシュートが突き刺さった。
- 千葉は開幕戦で固くなっていたところに手痛い失点。
これで勢いづいた大宮は高い走力と強度を武器に試合を優勢に進める。大宮は両SHが極端にワイドに張り、左サイド中心に千葉を攻め、次々にチャンスを作る。
15分頃、千葉はゴールまでの距離25m付近から#14植本愛実選手がチームとして今シーズン初めてのシュートを放つが、ゴール右に外れる。
18分頃、大宮は#6杉澤海星選手がミドルシュートを放つ。これを千葉GK#16田中桃子選手が横っ飛びで好セーブ。千葉は押し込まれてラインが低くなっており、バイタルエリアに相手が侵入してきた時の寄せも遅い悪循環。
20分頃、千葉#25増田咲良選手が大宮#13仲田選手との球際を制して右サイドを駆け上がる。これを#84北沢選手、#7小川由姫選手がシュートに持ち込めず右サイドに開き、上がったクロスを最後は#25増田選手がヘディングで合わせるがボールはゴール上に外れる。
20分頃、大宮は右サイドからのクロスにシュートを合わせたがわずかにゴール左に外れる。
28分頃、千葉の#7小川選手が右サイドを個人技で2人躱して突破。ペナルティエリア内に持ち込みグラウンダーのクロスを送るが#37木村彩那選手にはわずかに合わず。この日#7小川選手は攻守に渡って運動量豊富に顔を出し、前半は特に守備でピンチを未然に防いでいた印象。カウンターを受けた場面でも前線から戻ってボールを奪うなど、押し込まれる千葉にあって獅子奮迅の働き。
なでしこリーグ1部から特別指定選手として加入した千葉FW#84北沢選手はフィジカルを活かして楔になったりポストになったりと、身体を張ってボールを収めることができていた。プレスバックも怠らず、なかなかチャンスが訪れず劣勢なチーム状況の中で光るものがあった。
30分頃、千葉はボールを持つも出しどころがなく横パスとバックパスを繰り返す。大宮の高いインテンシティの前に攻めあぐねる。戦術や選手間のコミュニケーション、なにより戦力自体も大宮の方が頭一つ整っている印象。
40分頃、千葉#25増田選手が相手に競り勝って#7小川選手にパス。小川選手は#37木村選手にグラウンダーのパスを送り、木村選手はこれをヒールで落とすが合わせる選手が周りにおらず。
41分頃、大宮は千葉のゴールキーパーと守備陣のゴール前の連携ミスを奪うがシュートは打てず。
43分頃に大宮は#13仲田選手から#9井上綾香選手にスルーパスが通る。井上選手がシュートを打つが千葉GK田中選手が落ち着いてキャッチ。
44分頃、大宮は右サイドバックから#9井上選手に見事なロングフィードが通る。千葉は誰が寄せにいくか曖昧な様子だった。#9井上選手が抜け出してシュートまで持ち込むが、千葉#22井上千里選手が体を投げ出してブロック。
前半は全体的に開始1分でゴールを挙げたRB大宮アルディージャWOMENが高いインテンシティとフィジカル、スピードを生かして両サイドからダイナミックでスピーディーな攻撃を展開し千葉を押し込んだ。縦に早く、そしてシュート意識が高く、前半だけで10本以上のシュートを記録した。
さらに大宮は守備に関してもピッチ上で共通認識があり、プレスをかけるタイミングとボールを奪うルールが整理されていて、千葉が自陣半分まで攻めてきた時にプレスをかけ、横パスとバックパスを狙っているようだった。また、千葉の低い位置での横パスも狙い続けていた。
後半


両チーム選手交代なし。
ハーフタイムに千葉は戦術の修正がなされたようで、チームとして縦に早くの意識が強くなったように感じた。しかし前の選手と後ろの選手とのコミュニケーションが整理されていない様子、前線は縦パス求めるが後ろはパスを出さず。トレス監督は縦パスをしろとジェスチャーしているが…。そして最終ラインからズレたタイミングで縦パスが送られるが、合わずに易々とクリアされる。
48分頃、大宮が遠目からシュートを打つがゴール上に外れる。後半も大宮が積極的な攻勢を見せる。
50分頃、千葉FW#17山口千尋選手がシュート。相手DFにブロックされたがこれをFW#84北沢選手がバックヘッドを試みるもボールに勢いはなく大宮GK#1福田選手がキャッチ。
52分頃、千葉DF#3石田菜々海選手が最終ラインからドリブルで持ちあがるが相手選手に引っかかりボールを奪われピンチに。大宮FW#9井上選手にペナルティエリア内に持ち込まれてシュートを打たれてしまうが、これはゴール左側に外れて命拾い。
56分、千葉は右サイドで#7小川由姫選手のスルーパスに抜け出した#25増田咲良選手がマイナスのパスをペナルティエリア内の#37木村彩那選手に出す。フリーに見えた木村選手のシュートは大宮DF#4高橋美紀選手が懸命に戻って防ぎ、コーナーに。
58分、千葉が先に交代カードを切る。#37木村彩那選手に代わって#8小林ひなた選手が入る。

60分頃、大宮#13仲田歩夢選手がFWとのパス交換から左サイドを抜け出す。仲田選手は少し厳しい角度からシュートを打つがゴール右側に外れる。この日の仲田選手は左サイド(千葉の右サイド)を切り裂いている。一方で千葉も、大宮#13仲田選手が上がったスペースを狙う。大宮の右サイドバックは本職FWの#34浜田芽来選手が守っており、ここに突破口を定めたか。
65分頃、千葉DF#31足立梓選手が故障したようで、ストレッチャーでピッチを後にする。#2藤代真帆選手が代ってピッチイン。

66分、ついに千葉が同点ゴールを挙げる。右サイドで粘った#7小川由姫選手が#25増田咲良選手にスルーパス。千葉はペナルティエリア内で#2藤代選手、#84北沢明未選手、#17山口千尋選手が待ち構えており、#25増田選手はクロスを上げる。#17山口選手のシュートは相手DFにブロックされてしまったが、#84北沢選手がこれを押し込んでゴール。北沢選手はWEリーグ初ゴールを記録した。
67分、大宮が選手交代。一気に3枚変える。FWを変えて攻撃の活性化を図る。

- OUT DF#34 浜田芽来選手、IN MF#2 落合依和選手
- OUT FW#17 齊藤夕眞選手、IN FW#30 西尾葉音選手
- OUT FW#9 井上綾香選手、IN FW#18 平井杏幸選手
70分頃 千葉は左サイドバックから右ウイングにロングパスが通ったがシュートにつながらず。やはり大宮の左サイド(千葉の右サイド)を攻め込んでいる。
72分、大宮は#13仲田歩夢選手を下げてFW#14田中聖愛選手を投入。仲田選手にやられていた千葉の左サイドだが、田中聖愛選手によっても切り裂かれる。

大宮#14田中聖愛選手はプレスバックにも積極的で、さらに縦に鋭い突破を何度も見せる。スピードがある田中選手の縦への突破を警戒して千葉のDFは身体を当てたり足を出せないでズルズルと後退すると、田中選手はどんどん前に出てきてクロスやシュートまで持ち込む。千葉は同点ゴールで息を吹き返しつつあったが、この田中聖愛選手によって再び勢いが殺されたように感じた。
81分、千葉が2人同時の選手交代。
- OUT DF#22 井上千里選手、IN DF#99 鈴木菫選手
- OUT FW#17山口千尋選手、IN FW#11 根津里莉日選手

後半に入っても千葉はゴール前で慌てる場面が見受けられる。どうやら低い位置からビルドアップを試みるようだが、大宮はそこにプレスをかけて狙っており、苦しくなった時にどうするかの共通認識が整理されていないように感じた。
その後も大宮が攻めたて、守る千葉の展開。千葉がカウンターに転じれる場面が何度かあったが運動量が落ちており不発。そしてアディショナルタイム5分が経過して試合終了。ジェフ千葉レディースの開幕戦はホームで1-1のドローで終わった。

総括
交代策も含めて両チーム最後まで勝ち越しゴールと勝ち点3を諦めず、またクリーンで見ごたえのある試合だった。現地観戦できてよかったと感じた。
ジェフ千葉レディース
スコアは1-1だったが、特に前半だけ見ると内容的には大宮が圧倒しており、よく1失点で済んだなという印象。後半に入って千葉は後ろからの丁寧なビルドアップよりもFW#84北沢明未選手に当てて中盤を押し上げ、またはサイドの選手が#7小川由姫選手経由してスペースに飛び出る動きを強めた。守備面の決まりごとが整理されていない印象を受けたので、監督就任してまだ日が浅いカルメレ・トレス監督の今後の手腕に期待したい。

RB大宮アルディージャWOMEN
インテンシティが高くて運動量も豊富で、特に両SHの#11大島暖菜選手、#13仲田歩夢選手、そして後半途中出場の#14田中聖愛選手は常に千葉の脅威であり続けた。前半に10本、後半に11本のシュートを放つなどシュート意識も高いチームだった。強豪チーム相手にどのような試合を見せてくれるか楽しみである。
