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要約
オルカ鴨川FCは辛島啓珠監督を解任し、百武江梨トップチームコーチが第15節まで監督代行を務めることに。
百武監督代行の初陣は伊賀FCくノ一三重戦で、大幅なメンバー入れ替えと積極的な守備連動が見られた。
試合は一進一退も、後半84分に伊賀の#30神谷千菜選手が決勝弾を決め、0-1で敗戦。
内容は前節より改善が見られたが、決定力不足とエースストライカー不在が課題として残った。
オルカ鴨川FC目線で試合を振り返る。
注目ポイント
- オルカ鴨川FCは成績不振により、第4節終了後に辛島啓珠監督が解任。後任は百武江梨トップチームコーチが代行監督を務める。
- オルカ鴨川FCは新体制で今シーズン初得点・初勝利を掴めるか。
試合情報
- 会場:鴨川市陸上競技場(オルカ鴨川FCホームスタジアム)
- 観客数:199名
オルカ辛島監督解任。後任は百武江梨トップチームコーチ
前節0-2で完敗したヴィアマテラス宮崎戦の2日後に、2024シーズンからチームを率いてきた辛島啓珠監督の解任が発表された。
第5節から中断期間前の第15節まで、百武江梨トップチームコーチが監督代行として指揮を執ることになった。
開幕4戦終了時点での監督交代劇は、なでしこリーグとしてはかなり珍しい印象。
フォーメーション・スターティングラインナップ
オルカ鴨川FC
前節からスターティングラインナップを大幅に入れ替えて戦いに臨む百武監督代行。

- GKに昨シーズン先発出場が多かった#1田谷春海選手をスタメン起用。
- 前節ベンチ外だった#4松尾菜月選手がCBでスタメン起用。
- MF登録の#23安東美那選手を右サイドバックでスタメン起用。
- 今シーズンこれまで途中出場だった#6浦部美月選手をDMFとしてスタメン起用。
- 今シーズン新加入でキャプテン#9齊藤彩花選手の妹である#25齊藤桃花選手が初出場、初スタメン。
- 今シーズンこれまで最もチャンスメイクしていた#11河野有希選手、そして開幕から前節までゴールを守ってきた#16大原もも選手は共にはベンチ外。
伊賀FCくノ一三重
基本は3-4-3または3-4-2-1だが、守備時は両ウイングが下がって5バックになる可変システムを採用。

注目はFW#30神谷千菜選手。神谷選手は2023シーズンまで朝日インテック・ラブリッジ名古屋のエースFWとして活躍し、2024シーズンにWEリーグの日テレ東京ベレーザに移籍後、2024シーズン中に伊賀FCに移籍した攻撃の核。ターゲットとしてもポストプレイヤーとしても、そしてストライカーとしても高い能力を持っている。
試合展開
冷たい雨が降り注ぐ鴨川市陸上競技場。未だ勝ちがなく0勝3分1敗のシーズン序盤で監督交代を断行したオルカ鴨川FCの再出発を、ホームに訪れた約200人のサポーターたちが見守る。
一方アウェイの伊賀FCくノ一三重は、開幕2連勝をした後に2試合勝ちがなく2勝1分1敗でオルカ戦を迎えた。
前半
伊賀くノ一三重はFW#30神谷千菜選手を中心にゲームを組み立てる。
5分、伊賀FCくノ一三重のゴールキックをオルカがクリア。こぼれ球をFW#11正野瑠菜選手が拾ってゴールから30mはある位置から強烈なミドルシュートを放つ。しっかりと枠内に飛んだシュートをオルカGK#1田谷春海選手がパンチングでセーブ。今シーズン初出場の守護神が早速チームを救う。
8分、オルカGK#1田谷選手の低めのフィードを元オルカの伊賀FC#17並木選手がカットしフリーの#11正野選手に送る。正野選手が左足で狙ったグラウンダーシュートはゴールポスト直撃。
セカンドボールをオルカ#10アルマ選手が#20上田選手に見事なスルーパス。上田選手が相手ペナルティエリア内まで持ちあがりフェイントを1ついれて伊賀FC#13高山選手を剥がすも#3秦選手に引っかかってしまう。こぼれ球に走りこんでいたオルカ#6浦部選手が逆足の左足でシュートを放つもボールは枠の上へ。伊賀FC#4西林選手も反応しており、#6浦部選手にプレッシャーをかけていた。
オルカの攻撃は続く。9分、 GK田谷選手からパスを受けた#4松尾選手が右サイドに開く#23安東選手にパス。伊賀FC#8島野選手のプレスが少し甘く、安東選手は右サイドの裏を取る#9齊藤彩花選手に高精度のロングパスを送る。これが通って#9齊藤選手がドリブルで右サイドを縦に走り、中央に猛然と走りこんでくる#10アルマ選手にラストパス。フリーだったアルマ選手だが雨で滑る鴨陸のピッチで軸足が滑ってミートできず、前に飛び出していた伊賀FC#16GK後藤選手も良い反応を見せてオルカ今シーズン初ゴールならず。
オルカが試合のペースを握りかけたところで、伊賀FCは前線と2列目の選手が連動してプレスを仕掛け、オルカに自由にビルドアップをさせまいとするが、オルカは#17越路選手が伊賀のシュートチャンスをつぶしたり、#20上田選手が積極的に1対1を仕掛けて伊賀FC陣内を攻める。
23分、オルカ左サイドバックの#17越路選手がアーリークロスを上げると#5浅野選手が飛び込むがこれはわずかに合わず。
が25分、伊賀FCは右サイドからのスローインからオルカのパスがズレたところを見逃さずに#11正野選手→#14増田選手へとつなぐ。増田選手から上がったアーリークロスはオルカ#4松尾選手と#3月東選手の上を越え、ゴール前に走りこんでいた#17並木選手が頭で合わせるがオルカGK田谷選手の正面に飛びパンチングで防ぐ。こぼれ球を#3月東選手がサイドに掻き出して難を逃れる。
35分、伊賀は再び右サイドのスローインから最後は左サイドでフリーになっていた#14増田選手がロングシュートを放つ。しっかりと枠内に飛んでいたがオルカGK#1田谷選手がジャンプしてセーブ。
36分、オルカ鴨川FCが自陣深い位置からスピーディーなカウンター。伊賀のペナルティエリアに侵入するも伊賀#11正野選手が最終ラインまで下がってカット。
逆に伊賀FCのカウンター。#17並木選手がボールを運び右サイドをフリーで駆け上がっていた#4秦選手にはたく。秦選手から#13高山選手を経由して#5藤田選手から最前線の#30神谷選手にロングパス。オルカDF陣は完全に裏を取られていたが神谷選手のトラップが少し大きくなり、右サイドの#4西森選手にボールを預ける。西森選手がダイレクトでクロスを上げるが精度を欠き、オルカGK田谷選手がキャッチング。
42分、オルカ#5浅野選手がターンで相手を躱して#17越路選手にスルーパスを送るも若干合わず。この日も浅野選手は守備的MFながら攻撃にも多く関与している。
43分、 伊賀FC#14増田選手がスペースに走りこむ#8島野選手スルーパスを送るが、オルカ#9齊藤彩花選手が最終ラインまで下がって体を入れたナイスプレイ。伊賀にクロスを上げさせない。
一進一退の攻防が続く中、前半終了のホイッスルが鳴り響く。前半終了時点のシュート数はオルカ3本、伊賀6本。
シュート数・決定機の数は伊賀の方が多いが、この日のオルカは#20上田選手が最前線で守備のスイッチを入れることで2列目の選手たちも連動してプレスを仕掛けることができていた。また、#9齊藤彩花選手、#25齊藤桃花選手、#10アルマ・デービス選手と高さのある選手たちが前にいるため、ゴールキックの競り合いを若干優位に進めていた。前へ前への意識が強く、ホームで今シーズンの初得点と初勝利を掴みに行く姿勢が見受けられた。
対するアウェイの伊賀FCくノ一三重は、オルカDFに対して素早くコンパクトにプレスを仕掛けてパスコースを限定し、ボールを奪うとFW3人が一斉に駆け上がって鋭い攻撃を展開した。また、遠目からでも積極的にシュートを放ち、しっかりと枠内に飛ばしてくる怖さも見せていた。#30神谷選手は高さ・強さ・ポジショニングのすべてが高水準で、オルカの脅威になり続けていた。
後半
ハーフタイムにオルカ鴨川FCが選手交代を行う。辛島前監督時代は選手交代が遅かった印象だが、百武監督代行は後半開始から#10アルマ・デービス選手に替えて#8新田琴瑞選手を投入した。新田選手はそのまま左SHに入った。#20上田選手と#25齊藤桃花選手はFWの位置でお互いの立ち位置を変えた様子。

後半に入ると伊賀くノ一三重はDFラインを高く保ってオルカに圧をかける。ボールホルダーに対して素早くプレスをかけてプレーを制限しボールを奪う。オルカは流れの中で中盤で前を向くことができなくなる。
それでもオルカは#9齊藤彩花選手のクリアボールを#8新田選手が競り合って#20上田選手が前を向く。右サイドに開いた新田選手だが、DFに阻まれてクロスを上げることができずボールはタッチラインを割る。劣勢の場面で全く伊賀ゴールに迫れない時間が続いていたので、新田選手にはサイドに開かずに中に切り込んで勝負してもらいたかった。
64分、オルカは#23安東選手がコーナーキックを蹴る。ゴール前の混戦を伊賀FC#16GK後藤選手がオルカ#5浅野選手と接触しながらも右手一本でパンチングで弾き返す。
徐々にオルカが試合の流れを押し返す中、70分に伊賀はこの日1人目の選手交代。#8島野選手に替えて#24唐沢選手がピッチに入る。

両チームのボランチ、オルカ#5浅野選手と#17並木選手の相手の攻撃を未然に防ぐ動きが光る。両者ともサイズがあり、加えて並木選手はスピードもある。オルカからすると厄介な選手だろう。
74分にオルカは右サイドのスローインから#20上田選手がボールをキープして最後は後ろから#6浦部選手が左足でシュートを放つが威力がなく伊賀GKがキャッチ。浦部選手に対する伊賀#6常田選手の寄せの速さが効いた。
75分にオルカは2人目の選手交代を行う。後半開始から投入された#8新田琴瑞選手に代わって#13浅坂真桜選手がピッチイン。今シーズン新加入のマイナビ仙台レディースユース出身・浅坂選手はなでしこリーグ初出場となった。相手の寄せもあって新田選手は少し消極的なプレーが多いかな、と見えていたが、百武監督代行は早めの決断をしたようだ。

77分にオルカ#23安東選手がフリーキック、ハイボールを#3月東選手が落として走りこんでいた#9齊藤彩花選手が左足でワンタッチシュートを放つ。しっかりと枠内に飛んでいたが、ここも伊賀#17並木選手が長い足を伸ばしてクリア。
続くコーナーキックを蹴るのは#17越路選手。良いコーナーキックを蹴るなあ。何か期待させてくれる。
越路選手のコーナーキックは伊賀GKにパンチングで防がれるが、伊賀DFがセカンドボールを処理しようとしたところにオルカ#25齊藤桃花選手がスライディングでボールを奪う。最終的にクリアされてしまうが、この日FWに入っている#20上田麻莉選手と#25齊藤桃花選手は運動量豊富にピッチを駆け回り、攻守に貢献している。
81分、オルカの攻撃を凌いだ伊賀はオルカのゴールキックを#5藤田選手が競り勝ち、#30神谷選手と#11正野選手が粘って繋ぎ、最後は後方から上がってきた#17並木選手がシュートを放つが少しタイミングが合わずオルカGK田谷選手が落ち着いてキャッチ。
百武監督の選手交代策がハマってないと感じ、少しずつまた伊賀ペースに傾きかけてきたかな、と思った84分。伊賀FCに先制点が生まれる。
ラインを押し上げていた伊賀。オルカのクリアボールを拾った#6常田選手が左に開いていた#14増田選手にパス。#30神谷選手はオルカ守備陣の死角に入ってボールを引き出す動き。増田選手が神谷選手に向けてクロスを入れると、これを神谷選手がダイレクトでヘディングシュート。ループ気味の軌道を描いたシュートはオルカGK田谷選手が伸ばした手の上を越えてゴールに吸い込まれた。神谷選手はこれで今シーズン4点目。
神谷選手が頭で合わせる瞬間、オルカGK田谷選手は足を滑らせて体制を崩していた。もししっかりと踏ん張れていたなら止めることができたシュートコースのように見えた。田谷選手としては悔しくて仕方がないと思う。
攻めるしかないオルカは86分、選手交代を行う。この日最前線で積極的に動いたFW#25齊藤桃花選手に代わってDF#18松本はな選手を投入。171cmの松本選手をFWに据え、パワープレイの意志表示をするオルカ百武監督代行。

87分、右サイド深い位置からフリーキックのオルカ。#17越路選手が得意の左足で蹴ったボールは伊賀の選手に当たってあわやオウンゴールかというところだったが、伊賀GK後藤選手が横っ飛びでボールを掻き出した。
後半アディショナルタイム、伊賀FCが選手交代。この日積極的に攻撃を仕掛けていた#11正野瑠菜選手に代わってルーキーの#25上田彩葉選手、#4西林里恵選手に代わって今シーズン岡山湯郷Belleから加入した#2多崎美玖選手がピッチイン。コーナーキックでしっかり時間を使い、オルカ0-伊賀1で試合は終了した。

総括
百武江梨監督代行体制になっての初戦、残念ながらオルカ鴨川FCはシーズン初得点・初勝利を挙げることができなかった。前節よりも戦えるチームになっていたと感じたが、チームにエースストライカーがいるかいないかが勝敗を分けた印象。敗れはしたがチーム状態は上向いているように感じた。第1節、第2節と比べると特に前線の守備と連携が整理されたように見える。
オルカ鴨川FC
ルーキーながらエースストライカー候補だったであろう長身FWの#22北村ほのか選手は第3節に負傷しており、今シーズンはもう出場が難しい様子。

となるとスウェーデンのUmeå IKから加入した#10アルマ・デービス選手がエースストライカー筆頭だと思うが、フォワードとしての出場とサイドハーフとしての出場がそれぞれ半々くらいの印象で、戦術的にもこれからフィットしていくように見受けられる。
もともとフォワード登録の選手は3人と少ないチーム事情のところに故障者発生、さらにシーズン序盤での監督交代もあり非常に難しい状況だと思うが、今節に見せたようなDF登録の#18松本はな選手を最前線に置いたフィジカルで押す戦術が機能すれば、光明が見えるかもしれない。
また、今節後半開始から途中交代で入った新田琴瑞選手を75分に下げてルーキーの浅坂選手を投入したが、残念ながうまく機能しなかった印象。浅坂選手の持つ鋭いドリブル突破とクロスで攻撃に厚みを持たせる意図だったかもしれないが、伊賀FCのコンパクトで速いプレスに長所を発揮できなかったのかもしれない。浅坂選手は今回がなでしこリーグデビュー戦だったようなので、今後に期待したい。
伊賀FCくノ一三重
エースの#30神谷選手がゴールをするのはさすが。#11正野選手は常に相手が嫌なところを狙っていたし、#17並木選手は攻守において効きまくっていた。戦力的にオルカを上回る伊賀だが、戦術的にも整理されていて、守備においてどこで当たってどう嵌めるかという約束事がチームに浸透しているように見えた。固くて高さのある守備陣とGKは、前節の静岡SSUボニータ戦に続いて2試合連続のクリーンシートとなった。