【試合レビュー】6発快勝で好発進の静岡、ホーム開幕戦で課題が露呈した世田谷|2026プレナスなでしこリーグ1部 第1節 スフィーダ世田谷FC vs 静岡SSUボニータ

2027シーズンからFC東京との統合により「FC東京スフィーダ」へ改称予定のスフィーダ世田谷FCにとって、2026年は現クラブ名で戦う最後のシーズンとなる。その開幕戦で世田谷は、昨季3位の静岡SSUボニータをホームに迎えた。

世田谷は昨季攻撃面で一定の数字を残しながらも守備面に課題を抱え、最終順位は10位。対する静岡は横山久美を中心とした高い得点力を武器に上位争いを展開。開幕節から難しい相手との対戦となった。

試合は開始4分に静岡が先制すると、以後も主導権を握り続け、最終的には6得点を奪って1-6で快勝した。世田谷は39分に内田美鈴のゴールで1点を返したものの、リーグ開幕前からの不安を払拭するには至らず、厳しい船出となった。

リソース

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注目ポイント

  • 大幅な陣容変化と新監督体制で開幕を迎えたスフィーダ世田谷FCが、短い準備期間の中で開幕戦でどこまで組織的に戦えるか
  • 優勝を狙う静岡SSUボニータが、昨季から続く攻撃力を開幕戦でも発揮できるか

試合情報

結果スフィーダ世田谷FC 1-6 静岡SSUボニータ
会場AGFフィールド
観客数911人

スターティングラインナップ

以降、敬称略。

出典:https://www.nadeshikoleague.jp/2026/nadeshiko1/match_page.html?mno=6

大きく変化した世田谷

ホームの世田谷は、オフに主力級の退団や引退、さらに監督交代も重なり、大きな変化のなかで新シーズンを迎えた。残留組には経験ある選手もいるものの、陣容の継続性という点では不安が残り、開幕時点でどこまで組織を整えられているかが大きな焦点だった。濱田堯監督の就任発表は1月27日で、戦術の浸透という意味でも準備期間は決して十分とは言いがたかった。

  • 退団選手
    • MF金子ゆい(現 オルカ鴨川FC)
    • MF近藤彩優子(現 愛媛FCレディース)
    • GK石野妃芽佳
    • FW樫本芹菜
    • MF金子麻優
  • 引退選手
    • DF小泉 杏織
    • DF湯江 歩
    • MF望月麻央
    • FW川邉汐夏

継続路線の静岡

対する静岡は、主力クラスの退団・引退はあったものの、昨季の高い攻撃力をベースにしながら、今季は守備陣の整備も進めて開幕を迎えた。GKには田谷春海、最終ラインには上西可奈子、櫻田彩乃らを加え、攻撃だけでなく後方の安定感にも上積みを図っている。加えて、本田美登里監督が継続してチームを率いる点も、開幕戦では小さくないアドバンテージだったと言えそうだ。

  • 退団・引退選手(抜粋)
    • 土屋佑津季(現 ヴィアマテラス宮崎)
    • 杉田めい
    • 大河内友貴(現 福岡J・アンクラス)
    • 小池快(現 ASハリマアルビオン)

試合展開

前半序盤、静岡が世田谷の隙を突く

前半は、静岡が世田谷の守備ブロックの隙を的確に突き、主導権を握った45分だった。世田谷も39分に1点を返したが、内容面では静岡の攻撃が優勢だったと見るべきだろう。

試合は開始4分に動く。静岡はコーナーキックの流れから生まれたルーズボールを#6万力安純が押し込み、早い時間帯に先制した。開幕戦で先にスコアを動かしたことで、静岡は精神的にもかなり楽になったはずだ。

先制後の静岡は、迷いなく前に出て世田谷に圧力をかけた。一方の世田谷は、失点直後からやや落ち着きを欠いたようにも見え、最終ラインやGKへのプレッシャーに対して余裕を持って対応できない場面があった。静岡はこうした揺らぎを見逃さず、追加点に迫るシーンを立て続けに作っていく。

この日の静岡は、昨季までの縦に速い攻撃に加え、低い位置からのビルドアップにも落ち着きがあった。これに対し世田谷は、ボランチが高い位置を取るぶん最終ラインとの間にスペースが生まれやすく、その穴をセンターバックが埋めに出ることで、今度はサイドバックの選手が中に絞ることによってサイドが空く。静岡は横山、三輪、中島の連携でそのズレを的確に突いていた。

その中で際立っていたのが、昨季MVPの横山久美の存在感だった。相手のプレッシャーを受けても簡単に失わず、体の使い方で時間をつくり、周囲を使って前進する。個の強さだけでなく、攻撃全体のテンポを整える役割まで担っていたのが印象的だった。

守備のズレを突いて生まれた2点目

26分、静岡はその狙いを得点につなげる。#10横山久美が中央でうまくボールを流し、その先のスペースへ走り込んだ#9中島咲友菜が冷静に決めて2-0。世田谷の守備のズレが、そのまま失点に結びついた場面だった。

世田谷にも狙いはあった。左サイドではサイドバックの#15篠原沙耶の上下動を使い、前線では#9堀江美月と#13内田美鈴の力を生かして押し返したい意図が感じられた。ただ、そのためにサイドバックや中盤が前へ出たとき、背後や中盤の脇のスペースをどう埋めるかは整理し切れていなかったように見える。静岡はその空間を繰り返し使いながら、世田谷を自陣へ押し込んでいった。

PKストップと内田のゴールで望みをつなぐ世田谷

前半終盤には、世田谷がさらに苦しい場面を迎える。静岡はリスタートから素早く攻め込み、左サイドを破ってPKを獲得。だが、ここで世田谷のGK#21石川愛紘が横山久美の難しいコースへのシュートを見事に止め、チームを踏みとどまらせた。試合の流れそのものを変えるには至らなかったものの、このセーブは非常に大きかった。

すると39分、世田谷が意地を見せる。ロングボールを起点に前線で#9堀江→#13内田→#17青木とつなぎ、最後は内田美鈴が決めて1-2。苦しい時間帯が続いていた世田谷にとって、この1点は試合をつなぎ止める意味のあるゴールだった。

スコアは1-2で前半を折り返したものの、内容面では静岡が優勢だった。世田谷は1点を返したことで望みをつないだが、両サイドの守備対応と、中盤と最終ラインの間のスペース管理という課題は前半の時点でかなりはっきり表れていた。後半、この部分をどう修正できるかが最大のポイントだった。

後半も修正できなかった世田谷の守備

後半に入ると、世田谷は前線から強度高くプレスをかけ、いくつか攻撃の形を作った。ただし、左サイドの#15篠原の攻撃参加を軸にした構図そのものは大きく変わらず、前半から見えていた両サイドバックの背後とボランチ脇のスペースも依然として残っていた。

追いつきたい世田谷を黙らせたのが、静岡のキャプテンでありエースの#10横山だった。52分、左サイドから前進した攻撃の流れで最後は横山が受け、相手DFを外してゴール。世田谷としては後半の入りで反撃の気配を見せていただけに、この3失点目は非常に痛かった。

これで再び出鼻をくじかれた世田谷だったが、戦術面で大きく立て直した印象は乏しかった。高い位置を取りたい意図は見える一方で、陣形のコンパクトさを保ち切れず、中盤から最終ラインにかけての守備強度も上がり切らない。静岡は落ち着いて試合を進め、一方的な展開へと持ち込んでいった。

終盤に突き放した静岡、勝負あり

73分、静岡は世田谷の高い最終ラインの背後を突き、最後は#8三輪玲奈が押し込んで4点目。79分には左からの崩しから再び三輪が決め、試合を完全に決めた。後半だけで4失点という結果は、世田谷にとってあまりにも重かった。

さらに75分には右サイドからのクロスを#9中島咲友菜がダイレクトで合わせて5点目。中島はこの日2ゴール目。

79分には左からの崩しから再び#8三輪が決め、試合を完全に決めた。三輪もこの日2ゴール目。

後半だけで4失点という結果は、世田谷にとってあまりにも重かった。

その後も静岡は攻撃の手を緩めず、試合は1-6で終了。スコア通り、静岡の攻撃力が際立つ90分だった

総括

両チームの選手層や個の力の差はもちろんあるが、それ以上にチームとしての準備状況の違いが色濃く表れた試合だったように感じる。

スフィーダ世田谷FCは、濱田監督就任から開幕までの時間が短く、攻守両面でまだ整理し切れていない部分が目立った。高い位置を取ってサイドから前進し、堀江や内田の力を生かしていく狙いは見えたものの、中盤の守備強度が足りず、最終ラインもそのしわ寄せを受け続けた。しかも、その問題は試合の最後まで大きく修正されなかった。基本戦術が機能しないときの代案もまだ十分には見えず、ピッチ上の判断で局面を変えるには、現状のチーム編成はあまりにも難しい。ルーキーや経験の浅い選手も多いだけに、この大敗を引きずらずに次節へ向かえるかが重要になる。

6発快勝の静岡SSUボニータは、昨季からの攻撃力をそのまま開幕戦でも示した。横山の存在感はもちろんだが、この試合では三輪と中島の躍動が目立ち、攻撃が特定の個に偏りすぎなかった点は好材料といえる。一方で、守備面やビルドアップの真価が問われるのは、点が簡単には入らない試合になってからだろう。開幕戦は申し分ない内容だったが、優勝争いを勝ち抜くうえでは、苦しい展開での対応力も引き続き見ていきたい。

スフィーダ世田谷FC 公式マッチレポート (X)

静岡SSUボニータ 公式マッチレポート (X)

順位表

第1節終了時点にはなるが、6ゴールを挙げて勝利した静岡が得失点差+5で1位。世田谷は最下位となる12位でのスタートとなった。

出典:https://www.nadeshikoleague.jp/2026/nadeshiko1/standings.html

次戦、静岡SSUボニータは日体大SMG横浜とホーム開幕戦、スフィーダ世田谷FCはアウェーでASハリマアルビオンと対戦する。世田谷がこの敗戦からどこまで課題を修正できるか、そして静岡がこの勢いを本物にできるか。両チームの次戦にも注目したい。

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