前節、今季初黒星を喫した静岡SSUボニータ。ただ、朝日インテック・ラブリッジ名古屋戦の内容は決して悲観すべきものではなく、首位を走るチームとして、ここから再び勝ち点を積み上げられるかが問われる一戦となった。
一方のVONDS市原FCレディースは、開幕から10連敗。前節の伊賀FCくノ一三重戦で得点を決めた玉田愛理の退団も発表され、苦しい状況で前半戦最終戦を迎えた。それでも、シーズン後半戦につながる勝ち点、あるいは内容面での前進を示したいホームゲームだった。
試合は、静岡SSUボニータが5-1で勝利。VONDSも立ち上がりから前向きな姿勢を見せ、同点に追いつく時間帯もあった。しかし、試合全体を通して見れば、攻守の強度、判断の速さ、ゴール前での質において、現時点での両チームの差がそのままスコアに表れた試合だった。
この記事の要点
- VONDSは序盤に前線から圧力をかけ、櫻庭琴乃の同点弾で一度は試合を振り出しに戻した
- 静岡は同点直後に中島咲友菜の連続ゴールで突き放し、前半だけで4得点。首位チームらしい修正力と決定力を見せた
- VONDSは攻撃面の連動性に改善が見えた一方、守備時の中盤の整理と強度には引き続き課題を残した
試合情報
2026プレナスなでしこリーグ1部 第11節
| VONDS市原FCレディース | 静岡SSUボニータ |
|---|---|
| 1 | 5 |
| 26分 櫻庭 琴乃 | 22分 万力 安純 28分 中島 咲友菜 29分 中島 咲友菜 45+1分 中島 咲友菜 90+3分 横山 久美 |
| 会場 | ゼットエーオリプリスタジアム |
| 観客数 | 172人 |
VONDS市原FCレディース
| Pos | No. | 氏名 | 交代 |
|---|---|---|---|
| GK | 31 | 佐藤 瑠美奈 | |
| DF | 17 | 板倉 瑞穂 | |
| DF | 2 | 小堀 菜緒 | |
| DF | 19 | 小林 和音 | |
| MF | 24 | 増原 遥花 | 73▼ |
| MF | 9 | 宮本 春花 | |
| MF | 10 | 櫻庭 琴乃 (Cap.) | |
| MF | 5 | 小田川 真奈 | |
| MF | 27 | 木須 みそら | 52▼ |
| MF | 7 | 佐藤 寿音 | |
| FW | 28 | 中村 円香 | 83▼ |
| 控え | |||
| GK | 21 | 大久保 佑菜 | |
| DF | 3 | 多崎 真琴 | 73▲ |
| DF | 25 | 安達 優菜 | |
| MF | 8 | 石井 彩千香 | |
| FW | 16 | 吉川 はなの | |
| FW | 18 | 増田 沙美亜 | 83▲ |
| FW | 20 | 高山 杏々葉 | 52▲ |
| 監督: 落合 恵 | |||
静岡SSUボニータ
| Pos | No. | 氏名 | 交代 |
|---|---|---|---|
| GK | 21 | 田谷 春海 | 83▼ |
| DF | 3 | 彦坂 桃花 | |
| DF | 5 | 服部 花音 | |
| DF | 17 | 櫻田 彩乃 | |
| DF | 22 | 上西 可奈子 | 83▼ |
| MF | 6 | 万力 安純 | 83▼ |
| MF | 7 | 高島 絢音 | |
| MF | 8 | 三輪 玲奈 | 76▼ |
| MF | 9 | 中島 咲友菜 | |
| MF | 15 | 岸野 早奈 | HT▼ |
| FW | 10 | 横山 久美 (Cap.) | |
| 控え | |||
| GK | 1 | 水口 茉優 | 83▲ |
| DF | 2 | 白井 未来 | 83▲ |
| DF | 4 | 青葉 結衣 | 76▲ |
| MF | 11 | 大曽根 由乃 | HT▲ |
| MF | 14 | 渡邉 琉那 | 83▲ |
| MF | 19 | 曽我 来未 | |
| FW | 16 | 藤田 桃加 | |
| 監督: 本田 美登里 | |||
試合展開
立ち上がりはVONDSが積極性を見せる
試合の入りは、VONDS市原FCレディースも決して悪くなかった。
開始15分頃までは、VONDSがボールを持ちながら高い位置でプレーする時間を作った。静岡の最終ラインに対しても前線から圧力をかけ、横パスに対してプレスを狙う場面も見られた。
ただし、全体を押し上げ切れていたわけではない。前線は積極的に出ていく一方で、最終ラインと中盤の間にはスペースが生まれやすく、静岡に一度かわされると、中盤で前を向かれる場面があった。このあたりは、VONDSが抱える守備面の課題でもある。
15分を過ぎると、静岡がVONDSのボール保持に徐々に適応していく。中盤でボールを奪うと、ショートカウンターで一気にゴール前へ迫る場面が増えた。球際の強度、判断の速さ、奪ってから前進する迫力では、やはり静岡が上回っていた。
静岡が先制も、VONDSは櫻庭琴乃の一撃で反撃
22分、静岡が先制する。
#10横山久美のコーナーキックから、#3彦坂桃花が頭で折り返し、最後は#6万力安純が頭で押し込んだ。試合が落ち着き始めた時間帯にセットプレーから先制点を奪うあたりに、今季の静岡の安定感と得点力が表れていた。
しかし、VONDSもすぐには崩れなかった。
26分、VONDSは前線からの圧力を継続し、高い位置でのプレーからスローインを獲得。その流れから#10櫻庭琴乃がペナルティエリア内で相手を一人外し、キーパーの足の間を抜いたシュートを決めた。
技術的にも見事なゴールだったが、それ以上に評価したいのは、失点後もVONDSが前への姿勢を失わなかったことだ。静岡相手に受け身にならず、前線から圧力をかけ続けたことで生まれた同点弾だった。
同点直後に突き放す静岡の強さ
ただ、ここで相手を乗せないのが、静岡が首位を走っている理由だろう。
同点からわずか2分後の28分、静岡はビルドアップから右サイドを崩す。#15岸野早奈が#10横山久美とのワンツーで抜け出し、アーリークロスを供給。ゴール前で数的優位を作ったところに#9中島咲友菜が入り、右足で冷静に決めた。
さらにその1分後、再び中島がミドルシュートを決めて3-1。VONDSとしては人数が足りていなかったわけではないが、寄せ切れず、シュートコースも消し切れなかった。中島のシュート技術はもちろん見事だったが、VONDSにとっては守備時の中盤の構成力と強度に課題が出た場面でもあった。
一度追いついた直後に、わずかな時間で2点を奪い返す。静岡の勝負どころでの強さが際立つ時間帯だった。
前半終了間際の4点目で試合の流れは決定的に
前半の時間が進むにつれて、両チームの強度差はより明確になっていった。
静岡はビルドアップ、裏抜け、中央突破を組み合わせながらVONDSゴールへ迫る。横山が中盤に下りてボールを引き出し、そこからサイドや前線へ質の高いパスを通す形も多かった。
一方のVONDSも、相手最終ラインへのプレスは継続していた。点差ほど内容が一方的だったわけではなく、前に出ようとする意図は見えていた。
それでも、前半アディショナルタイムに痛い失点を喫する。スローインに対するプレスが弱まったところから静岡にボールをつながれ、横山のクロスに岸野がダイレクトで合わせる。シュートはポストに阻まれたものの、こぼれ球の混戦から最後は中島が押し込み、ハットトリックを達成した。
VONDSも身体を張ってしのごうとしたが、最後の一歩で静岡が上回った。前半を1-4で折り返すことになり、この4点目が試合をさらに難しくした。
後半もVONDSは前へ出るが、静岡が試合をコントロール
後半も、VONDSは果敢に静岡の最終ラインへプレスをかけた。
シーズン序盤に見せていたような、低い位置から丁寧にビルドアップする場面は多くなかった。自陣の危険なエリアでボールを回収すると、無理につながず、前線へ大きく蹴り出す形が増えた。点差や相手の強度を考えれば、リスクを抑える現実的な選択だったと言える。
静岡は、守備時に4バック気味になるVONDSに対して、横山が中盤へ下りる動きを見せた。相手DFを引き出し、空いたスペースにサイドの選手が走り込む。横山からそこへ正確なパスが通るため、VONDSにとっては非常に対応が難しい形だった。
それでも、VONDSの最終ラインは粘り強く対応した。数的同数に近い状況で静岡の前線が仕掛けてきても、最後のところでは身体を張り、後半は大量失点を避けようとする意地も見えた。
終盤にPKで横山久美が5点目
時間が進むにつれて、VONDSは体力的にも厳しくなっていった。
中盤と最終ラインの判断速度が落ち、ボールを保持してもパスコースを探している間に静岡の選手に囲まれる場面が増えた。前へ出る意欲はあっても、そこに技術と判断の余裕が伴わず、ボールを失う回数が増えていった印象。
それでも、最後の局面では粘っていた。後半の多くの時間帯で失点を防いでいただけに、試合終了間際の失点は避けたいところだった。
しかし90+3分、ペナルティエリア内で相手を倒してしまい、静岡にPKが与えられる。これを#10横山久美が落ち着いて決め、5-1。静岡SSUボニータが、首位チームらしい強さと安定感を示して勝利を収めた。
総括
現時点での両チームの力の差が、スコアにも内容にも表れた試合だった。
VONDSは立ち上がりから前向きに入り、同点に追いつくところまでは十分に評価できる内容だった。櫻庭琴乃のゴールは、個の技術だけでなく、チームとして前線から圧力をかけ続けた成果でもある。
一方で、同点直後に立て続けに失点した時間帯、そして前半終了間際の4失点目は重かった。静岡の質が高かったことは間違いないが、VONDSとしては守備時の距離感、寄せの強度、ボールサイドに人数をかけた後の背後や中央の管理に課題を残した。
静岡は、前節の敗戦を引きずらなかった。セットプレーで先制し、一度追いつかれてもすぐに突き放し、前半のうちに試合を決定づけた。横山久美が下りて起点となり、周囲の選手がどこへ走るのかも整理されている。中島咲友菜の決定力も含め、攻撃の再現性と個の質が高いレベルで噛み合っていた。
VONDS市原FCレディース
VONDSにとって、改めて課題として浮き彫りになったのは、守備時における中盤の組織力と強度だ。
前線からプレスに行く姿勢は見える。しかし、そこで奪い切れなかったときに、中盤と最終ラインの間にスペースが生まれやすい。静岡のように判断が速く、技術のある相手に対しては、そのスペースを使われて一気にゴール前まで運ばれてしまう。
また、最終ラインを統率してきた村上賀梨の不在も影響しているように見えた。村上は守備面だけでなく、精度のあるロングフィードで攻撃の起点にもなれる選手だ。その存在を欠くなかで、苦しい時間帯にどう押し返すかは、チームとして大きな課題になっている。
前半戦は勝利どころか引き分けもなく、11連敗で折り返すことになった。それでも、リーグが進むにつれて攻撃面の連動性は少しずつ改善されている。静岡相手にも、前線から圧力をかけて同点ゴールにつなげた場面は、後半戦に向けた材料になる。
苦しい状況であることは間違いない。ただ、今できることを出そうとする姿勢は見えた。守備の決まり事を整理し、試合の中で崩れる時間帯を減らすことができれば、後半戦の早い段階で勝ち点をつかむ可能性はあるはずだ。
静岡SSUボニータ
静岡SSUボニータは、前半戦最終戦を危なげなく勝利で終えた。
8勝2分1敗、勝ち点26、得失点差+27。首位を走るチームにふさわしい成績で前半戦を折り返した。試合終盤にはゴールキーパーを交代する余裕もあり、チーム全体として試合をコントロールできていた。
特に印象的だったのは、横山久美の立ち位置に応じて、周囲の選手がどこへ前進するのかが整理されていたように見えた点だ。横山が中盤に下りれば、サイドやボランチ、サイドバックが前方のスペースへ入っていく。そこへ高精度のパスが通るため、相手からすれば非常に厄介な攻撃になる。
この試合でも、横山は得点だけでなく、攻撃の起点として大きな存在感を示した。パスの質、受ける位置、周囲を生かす判断、そして最後に自ら決め切る力。なでしこリーグ1部でこの選手を見られること自体が、リーグの魅力の一つだと感じる。
また、服部花音の守備面での貢献も見逃せない。VONDSは増原遥花、櫻庭琴乃が関わるサイドから決定機を作る印象があるが、服部はVONDSの右サイドの突破を制限し、増原に大きな仕事をさせなかった。攻撃陣の得点が目立つ試合ではあったが、こうした個々の守備対応も静岡の安定感を支えていた。
順位表
第11節全試合終了待ち
次節に向けて
VONDS市原FCレディースは、次節ASハリマアルビオンとのアウェー戦に臨む。11位と12位の直接対決であり、いわゆる裏天王山とも言える一戦だ。ここで勝ち点をつかむことができれば、後半戦に向けてチームに希望が見えてくる。まずは守備面の整理を進め、試合の中で崩れる時間帯をどれだけ減らせるかが鍵になる。
静岡SSUボニータは、ホームにスフィーダ世田谷FCを迎える。開幕節では6-1で勝利した相手だが、世田谷は第10節でヴィアマテラス宮崎と引き分けており、チーム状態は上向き。内田美鈴、堀江美月という得点力のある選手も擁している。決して油断できる相手ではない。
それでも、静岡としてはこの勝利の流れを後半戦につなげたい。首位を守るだけでなく、さらに突き放すためにも、次節も勝ち切ってリーグ後半戦へ弾みをつけたいところだ。
リソース
フルマッチLIVE配信
第11節全試合ハイライト動画
第11節全試合終了待ち
公式記録

