この週末、なでしこリーグ1部2026シーズンが開幕した。筆者が応援するオルカ鴨川FC(昨シーズン9位)は豊富な運動量と高いインテンシティを武器とする伊賀FCくノ一三重(昨シーズン2位)と対戦した。
会場のローヴァーズ袖ケ浦スタジアムには1,064人が来場。第1節のなでしこリーグ1部の中では最多の観客数となった。昨シーズン9位のオルカにとっては、新体制の初陣として現在地を測る一戦でもあった。
昨シーズン終了後、オルカはGKを含めた一部の入れ替わりこそあったものの、主力の骨格は大きく崩れなかった。そこに実績ある移籍組と大学・高校年代からの新戦力が加わり、戦力の上積みと得点力向上が期待されるシーズンでもある。石田学監督のもとで、どのような戦い方を見せるのかにも注目して現地で見守った。
注目ポイント
- 2026シーズン開幕戦
- 新加入選手たちの起用とパフォーマンス
- 攻撃面の改善度合い
試合情報
| 結果 | オルカ鴨川FC 0-0 伊賀FCくノ一三重 |
| 会場 | ローヴァーズ袖ケ浦スタジアム(袖ケ浦市陸上競技場) |
| 観客数 | 1,064人 |
フォーメーション・スターティングラインナップ
多くの新加入選手がスターティングラインナップとベンチに名を連ねた。以下、敬称略。

オルカ鴨川FC
移籍組
他チームからの移籍加入で、この試合のメンバーに入った4人は全員がスタメンだった。
- GK #1 米澤萌香(前 FCふじざくら山梨)
- DF #2 吉田紫穂(前 ASハリマアルビオン)
- MF #7 並木千夏(前 伊賀FCくノ一三重)
- MF #14 蔵田あかり (前 ニッパツ横浜FCシーガルズ)
ルーキー
なでしこリーグ初登録の選手では、FW#19太田凪砂(前 帝京平成大学)がスタメン出場。下記の3人がベンチスタートだった。
- GK #26 力丸里保(前 武庫川女子大学)
- MF #24 江藤里桜奈(前 神奈川大学)
- MF #29 中西茉里奈(前 大阪桐蔭高等学校)
昨シーズン得点ランキング9位タイの5得点を記録したFW #10 Alma Davisはベンチスタート。さらに、昨シーズン序盤の負傷で長期離脱していたFW #22 北村ほのかもベンチ入りした。個人的には北村に注目しており、苦しい状況の中でも前向きに戦う姿勢とフィジカルを生かしたプレーは、昨季序盤から強く印象に残っている。
一方で、昨シーズン終盤に負傷したFW #11 河野有希、FW #27 今田紗良はメンバー外。得点力と攻撃の組み立てに課題を抱えるオルカにとって、前線の選択肢がまだ万全ではないことも改めて感じさせられた。

試合前
この日は風こそ感じたが、空は明るく、開幕戦らしい雰囲気に包まれていた。スタンドには多くの観客が集まり、今季のオルカへの関心の高さもうかがえた。ウォーミングアップから選手たちの表情は引き締まっており、新シーズンのスタートに向けた緊張感が伝わってきた。




試合展開
主導権を握ったのは伊賀
試合全体を通して見ると、主導権を握っていたのは伊賀だった。オルカの前線からの圧力がやや限定的だったのに対し、伊賀は高いライン設定とコンパクトな守備で試合を優位に進める。オルカは中盤のブロックがうまくはまらず、#4松尾菜月、#2吉田紫穂らを中心とした最終ラインが跳ね返し続ける展開になった。
伊賀の攻撃は非常にわかりやすく、ハイライン・ハイプレスをベースにしながら、縦のワンツーで相手の守備を外していく。特に右サイドに入った#7渡邊凜の推進力は目立ち、何度もスピードある裏抜けとドリブルでチャンスを生み出していた。中盤でボールを奪った瞬間に複数人が前へ走り出すため、出しどころが多く、攻撃に勢いがある。伊賀側の開幕戦報道でも、高い位置から奪いに行く守備で無失点に抑えたことが強調されており、この試合でもその特徴がよく表れていた。
対するオルカは、ボール奪取後の動き出しが少なく、前進の出口を見つけにくかった。左サイドでは新加入の#7蔵田あかりがスピードを活かして何度か背後のスペースへ走ったものの、そこにタイミングよくボールが届く場面は多くなかった。#20上田麻莉が自ら運ぶシーンもあったが、周囲のサポートが薄く、結果的にロストやパスミスにつながる場面も目立った。
低い位置からビルドアップを試みる意図は見えた。ただ、伊賀の強度の高いプレスを受ける中で、ボール保持から前進までがややちぐはぐになっていた印象である。攻撃の設計自体は感じられるが、まだ選手同士の距離感や共通認識は発展途上だと感じた。
前半最大の好機はオルカ
それでも、決定機を先に作ったのはオルカだった。前半43分、FW#19太田凪砂が中盤まで下がってボールを収め、一度は失ってもルーズボールを#20上田麻莉が回収。斜めに持ち運んで左の#7蔵田あかりへ展開し、最後はペナルティエリア内へ走り込んだ#25齊藤桃花へつなぐ。齊藤が右足でコースを狙ったシュートを放つと、これは伊賀GKが片手で弾くスーパーセーブ。先制には至らなかったが、この場面はオルカの狙いがうまく出た形だった。
このときは複数の選手が縦に走り、伊賀の最終ラインにズレを生じさせていた。90分を通じて常時出せた形ではないが、オルカの攻撃が機能する可能性を感じさせるプレーだった。
米澤萌香のビッグセーブで勝ち点1
後半74分には、今度は伊賀に大きな決定機が訪れる。クリアボールが最前線を走るFW#10平田ひなのにわたり、オルカGK#1米澤萌香と1対1の場面に。平田は落ち着いてコースを狙ったが、米澤が読み切ってビッグセーブ。この場面は伊賀側の試合報道でも大きな好機として触れられている。
このセーブは、勝ち点1をもたらしたと言ってよいほど大きかった。無失点という結果だけでなく、相手の決定機をきちんと止め切った点で、米澤の開幕戦パフォーマンスは高く評価できる。
交代選手が見せた前向きな材料
オルカの交代選手の中では#24江藤里桜奈が印象を残した。なでしこリーグデビュー戦ながら、スピードあるスプリントとドリブルを見せ、短い時間でも積極性が伝わってきた。結果には直結しなかったものの、今後に向けて楽しみを感じさせるプレーだった。
また、82分から出場した#22北村ほのかも、前線からの守備、裏への抜け出し、体を張ったキープで持ち味を見せた。警告は受けたものの、限られた時間で存在感を示した点はポジティブに受け止めたい。長期離脱を経て再びピッチに立つ姿を見られたこと自体もチームにとっては明るい材料だろう。

一方で、FW#10アルマ・デービスには最後まで出場機会がなかった。最大の得点源になり得る選手を使わずに終えた点も含め、オルカがまだ攻撃面の最適解を模索している段階であることが伝わってくる。
総括
守備は収穫、攻撃はこれから
試合は0-0のスコアレスドロー。率直に言えば、伊賀は勝ち切れず、オルカはよく耐えた試合だった。
伊賀の強度、運動量、切り替えの速さはさすが昨シーズン上位チームらしく、開幕戦から完成度の高さを見せていた。
対するオルカは押し込まれる時間が長く、苦しい展開が続いた。それでも、昨シーズンからの主力である #5浅野綾花、#3月東優季乃、#4松尾菜月に加え、新加入の#2吉田紫穂、#1米澤萌香も含めて守備陣は粘り強く対応した。無失点で開幕戦を終えたことは、まず前向きに受け止めたい。
攻撃面では、#25齊藤桃花のテクニック、#17越路萌永のオーバーラップと左足のキック、#19太田凪砂の球際の強さなど、見どころは確かにあった。ただ、チーム全体として見ると、ボールを奪った後の動き出し、前線と中盤の連動、どのレーンを誰が使うのかという共通認識は、まだ十分に揃っているとは言いがたかった。
昨シーズンに比べれば、今季のオルカは明らかに戦力が整っている。強豪クラブにすぐ肩を並べる段階ではないかもしれないが、守備の土台と新戦力の上積みは感じられた。だからこそ、今後の焦点は攻撃面の連動性をどこまで高められるかにあるだろう。
開幕戦で勝ち点1を積み上げたことを土台に、次戦アウェーの愛媛FCレディース戦ではシーズン初ゴール、そして勝ち点3を期待したい。

順位表
第1節終了時点の順位表を見ると、静岡SSUボニータの得点力が際立つスタートになった。

現経営体制で戦う最後のシーズンとなるスフィーダ世田谷FCは静岡に大量失点で厳しい開幕戦となった。静岡が強すぎるのもあるけど…。
昨年王者の朝日インテック・ラブリッジ名古屋は、充実した補強を実施したヴィアマテラス宮崎とドロー発進。
今シーズン初めて1部を戦うVONDS市原FCレディースはASハリマアルビオンに敗戦し黒星スタート。昨シーズン2部で圧倒的な攻撃力を誇り1年での1部昇格を決めたチームから監督交代、さらに多くの選手が入れ替わり別チームの様相を呈する市原は苦しい戦いとなるか。
オルカとしては、まずは自分たちの課題を一つずつ改善しながら、勝点を積み上げていきたいところである。
リソース
フルマッチLIVE配信(Youtube)
第1節全試合ハイライト動画
公式記録


