今シーズン初勝利が欲しいオルカ鴨川FC。対するは今シーズン6連敗中でまだ勝ち点0のスペランツァ大阪をホームに迎えた一戦。どちらのチームが今シーズン初勝利を手にするのか。
オルカ鴨川FC目線で試合を振り返る。
リソース
フルマッチLIVE配信(Youtube)
公式記録

公式ガイドブック
要約
今シーズンこれまで勝利がないチーム同士の対決。オルカ鴨川FCが念願のホームゲームで初得点、そして今シーズンの初勝利を挙げた。スウェーデン出身の新加入選手であるFW#10アルマ・デービス選手が先制点を記録。同じく新加入のFW#20上田麻莉選手のキレキレなドリブル、こちらも新加入のMF#15今西那歩選手の攻守への貢献が光った。
注目ポイント
- 今シーズンこれまで勝利がないチーム同士の対決
- デビュー戦の存在感
- #15MF今西那歩選手がリーグデビューながら守備で果敢なブロックや攻守のハードワークを見せ、序盤のオルカに勢いをもたらした。
- 交代策の明暗
- オルカは#24谷口愛奈選手ら投入選手が結果に直結する活躍を見せた一方、スペランツァの交代策は連携不足で流れを変えられなかった。
試合情報
会場 | 鴨川市陸上競技場(オルカ鴨川FCホームスタジアム) |
観客数 | 493名 |
フォーメーション・スターティングラインナップ
オルカ鴨川FC

MF#15今西那歩選手は、なでしこリーグデビュー戦。左SHに入った。
ゲームキャプテンはGK#1田谷春海選手が務める。
スペランツァ大阪

試合展開
前半
序盤、オルカは左サイドからFW#20上田麻莉選手、MF#15今西那歩選手、オーバーラップしたDF#17越路萌永選手が連動してスペランツァゴールに迫るがシュートまでは行けず。
逆に5分、オルカの後ろ方向気味のパスを奪ったスペランツァ大阪はスローインを経て左サイドから展開。左サイド深い位置からFW#18平岩依々菜選手のグラウンダーのクロスを後方から上がってきていたDF#3上西可奈子選手が右足でこの試合初めてのシュート。オルカMF#15今西那歩選手がスライディングでナイスブロック。
11分、苦しい体制でパスを受けたオルカ#5浅野綾花選手が粘ってパスを出すと、それを受け取った#11河野選手がスピードを活かして一気に右サイドから中央に駆け上がる。左に#25齊藤桃花選手、右に#20上田麻莉選手が開き、河野選手は上田麻莉選手を選択。少しパスが大きくなり、上田麻莉選手はシュート体制にいけずにクロスを選択。ファーサイドに上がったクロスを#15今西那歩選手がシュートするもスペランツァ選手たちにブロックされる。こぼれ球を#17越路萌永選手が左足でシュートを打ったが、スペランツァGK#16津田明日翔選手がキャッチング。味方にリフレクションして軌道が変わった難しいボールだったが落ち着いて対応した。
よく似たチーム同士、攻めあぐねる両者 若干スペランツァ大阪ペース
前半15分まではスペランツァ大阪が押し気味。オルカ鴨川FCはカウンターからシュートまでいけるようになった。印象としては、似ているチームだなーと。戦力的にも差がない印象。ボランチ(オルカ#5浅野綾花選手、スペランツァ#5谷本景選手)がバランサーと守備としての貢献度が高く、サイドハーフ(オルカ#11河野有希選手、スペランツァ大阪#13玉田愛理選手)のスピードがある(が最後の精度が惜しい)選手が相手サイドに切り込む。
違いがあるとすれば、FWはオルカ#20上田麻莉選手が高卒ルーキーとは思えないようなパフォーマンスで、スペランツァ大阪は対応ができていない様子。#20上田麻莉選手が前を向いてプレーできるように#15今西那歩選手が攻守両面でハードワークしているのも好印象。
スペランツァ大阪はMF#7宮本春花選手が攻撃の軸であり、強さもある。ハードワークも出来て前への意識が強く、コースがあるとシュートを打つ思い切りの良さもある。
百武監督代行新体制、戦術面・連携面ともに未成熟か
オルカはイージーなパスミスが目立つ。特に横パス・バックパス時の選手間の意思疎通ができていないようでズレが生じている印象。
18分、スペランツァは再び左サイドから崩してMF#13玉田愛理選手からの低いクロスを受けたFW#18平岩依々菜選手が狭いスペースでオルカの選手を3人躱してシュートまで持ち込むも、ボールに力はなくGK#1田谷春海選手の正面。
30分、スペランツァ大阪#5谷本景選手をオルカの#25齊藤花選手と#6浦部美月選手が挟んでボール奪取、齊藤選手から送られたスルーパスを受け取った#20上田麻莉選手がゴール前で相手DF1人のみというチャンスを迎える。が、味方の上がりを待つための一度溜めてからクロスを選択。このクロスはクロスバーを叩いてしまう。
強引にシュートで終わってもよかったのかなぁと感じた。シュート本数が少なくゴール前で怖さがないことがオルカの課題だと思うので、多少期待値が低くても打って試合の流れを引き寄せたいところだった。
オルカは#20上田浅利選手・#11河野有希選手がドリブルから何度か攻撃の形を作るがシュートを打てない。仕方なくボールを戻すが、これといった打開策は見当たらず。
スペランツァはバイタルエリアでしっかりと体を寄せてシュートコースを塞ぎ、カウンターへとつなげる。スペランツァの攻撃に対してはオルカ#4松尾菜月選手を中心に高めのラインを保ってセーフティファーストでクリアする展開が続く。
42分にオルカは右サイド深い位置からスローイン。#20上田麻莉選手が上手く体を入れてボールを落とし、#6浦部美月選手がフリーでシュートを放つもGK正面。スペランツァ#5谷本選手がコースに入っていたので狙えきれなかったか。
さらにオルカは44分にまたしても右サイドのスローインから#11河野有希選手が抜け出してクロス、#15今西那歩選手がヘディングシュートを放つがキーパーにキャッチされる。
逆にスペランツァもチャンスを迎える。ゴールキックがオルカの選手に当たってディフレクションしたボールを#7宮本春花選手が#13玉田愛理選手に繋ぐ。玉田選手はドリブルで持ち込んでシュートを放つが精度を欠いたところで前半終了のホイッスル。
強度が高いプレーをしていたのはスペランツァ大阪だが、カウンターの鋭さはオルカ鴨川FCだったという前半45分間。両チームともスコアレスのまま後半勝負となった。
後半
アルマ・デービス選手が後半開始からピッチイン
今シーズンにスウェーデンリーグから加入し、出場した試合では圧倒的なフィジカルとスピードを見せつけてオルカ鴨川FCの中で明らかに違いを作っているFW#10アルマ・デービス選手が後半開始時点からピッチに入る。#25齊藤桃花選手がいたFWのポジションにそのまま入った。
そして#15今西那歩選手に代わって#18松本はな選手もピッチに入る。前節同様にアルマ選手と松本選手が2トップを形成し、#20上田麻莉選手はSHにポジションを移した。
スペランツァ大阪は選手交代なし。

そのアルマ・デービス選手が早速存在感を放つ。フィジカルを活かして中盤でボールを奪い右サイドをスプリントしていた#11河野有希選手にスルーパス。河野選手はシュートまで持ち込むことが出来なかったがボールをキープして、ノーマークのアルマ選手にクロス。アルマ選手は胸トラップでボールを納めてすかさず右足を振り抜く。低く抑えの効いた強いシュートだったが僅かにゴール左へと逸れた。
さらに54分、ペナルティエリア内で後ろからのチャージを体で抑えて角度が無いところからシュート。積極的な姿勢が見える。
試合を優勢に進めるもゴールが遠いスペランツァ大阪
前半に引き続きスペランツァ大阪はキャプテン#5谷本景選手が中心となって中盤を構成、#7宮本春花選手が前線でゴールを狙う。オルカはFWの選手まで自陣深くまで戻って守備に体を張り、ス ペランツァは攻めながらもゴールが遠い。人数をかけて守るオルカゴール前を崩せない。
59分、スペランツァが決定機を迎える。中盤の競り合いを制したスペランツァが#5谷本選手を起点に右サイドを突破、クロスは流れてしまったが逆サイドの#13玉田愛理選手が左足で強烈なシュートを放つ。これは惜しくもクロスバーを叩く。
オルカ#10アルマ・デービス選手の強靭なフィジカルを活かしたボールキープ。直後のパスの精度は欠いてしまったが、後ろからチャージを受けても、相手選手の方が崩れていく。やはり一人だけパワーの質が違う…。
65分にスペランツァ大阪がサイド決定機。この試合で何回か見せている最終ラインからのロングボールをワンタッチでさばいてキープ、前線の選手が飛び出す動きが機能し、#7宮本選手のキープからのパスを#25増永朱里選手がゴール前まで持ちこんでシュート。オルカGK#1田谷春海選手がガッチリとキャッチして事なきを得たが、若干、増永選手のワンタッチ目のボールの置き所が良くなかったのでシュート精度を欠いた印象。しかしアウェイのスペランツァ大阪が攻勢のまま、試合が進んでいく。
ホームゲームで今シーズン初勝利を掴みたいオルカは66分に2枚替え。ボランチの#6浦部美月選手に代えて#14菅原千尋選手、左サイドバックの#17越路萌永選手に代えて#24谷口愛奈選手が入る。中盤を支配され気味だったので、フレッシュな選手を入れて改善を図ったか。
今シーズンここまで最下位に沈んでいるスペランツァ大阪も#8吉尾香音選手を下げてFW#14武田菜々子選手を投入。攻撃の活性化を図る。

オルカ鴨川FC、ホームゲームのサポーターの前で先制ゴール
これまで劣勢だったオルカは、この試合でも運動量豊富に攻守に走り回っている#20上田麻莉選手がGK田谷選手からのロングフィードを見事な体の使い方でマイボールにする。そのまま左サイド深くまでドリブルでえぐってDFを引きつける。交代で入った#24谷口愛奈選手がフリーになり、上田選手は谷口選手にマイナスのパス。そして谷口選手が落ち着いてクロスを上げると、ファーサイドで待ち構えていた#10アルマ・デービス選手が相手DFをフィジカルで押さえこみながらヘディングシュートをスペランツァゴールに叩き込んだ。
#20上田選手のハードワークと仕掛け、交代で入った#24谷口愛奈選手の落ち着いたクロス、そして#10アルマ・デービス選手のフィジカルが見事に嚙み合ったゴールだった。
交代策が機能せず、1点が遠いスペランツァ大阪
逆に攻撃の選手を投入して失点してしまった形となったスペランツァは、一層前への意識を強めるしかなくなった。
ところが、今シーズンにホーム初得点を挙げたオルカが試合を支配し始める。最終ラインを高く保ち、左サイドの上田選手・谷口選手が良好な連係プレーを見せてチャンスを創出する。
なんとか流れを変えたいスペランツァ大阪は77分、#25増永朱里選手に代えて#17左子五月選手を投入し中盤の圧力と前への推進力にテコ入れを図る。

さらに86分に#5谷本景選手に代えて#22原田和佳選手、#18平岩依々菜選手に代えて#9渡谷祥乃選手を入れて1点を追いかけるものの、最後まで集中して守り切ったオルカが立ちはだかり試合終了。

総括
オルカは待ちに待った今シーズン初勝利をホームスタジアムで挙げることができた。対するスペランツァ大阪はこれで泥沼の開幕7連敗。未だ勝ち点0で最下位の厳しい状況。#14武田選手、#13玉田選手、#7宮本選手、#5谷本選手と前線に良い選手はいるものの、それぞれの連携がまだ整理できていない印象。また、守備の不安定さも痛い。
オルカ鴨川FC
スペランツァ大阪の放り込みと中盤の強さに何度か決定機を迎えたが、相手のフィニッシュ精度と選手たちの身を挺した守りによってなんとかクリーンシートで、ようやく今シーズン初勝利を挙げることができた。
今期新加入の#10アルマ・デービス選手、#20上田麻莉選手、#24谷口愛奈選手を始め、新戦力が活躍し待望の今シーズン初勝利。最下位のスペランツァ大阪相手にホームでは絶対負けられない戦いを見事に制した。
また、百武監督代行の采配も的中した。シーズン序盤の監督交代で急遽トップチームの監督に就任し、再構築中で混乱するチームを指揮する大変さは想像もできないが、開幕4戦目までの重たい雰囲気は少し払拭できただろう。選手間の意思疎通や連携には課題を残すものの、この勝利をきっかけにチームとして自信をもって取り組んでいただければと思う。
スペランツァ大阪
後半開始から出場したオルカ#10アルマ・デービス選手に全く対応できずにやられてしまった印象。ルーキーの#20上田麻莉選手にも手を焼き、ディフェンスラインは混乱していた。
シュートまで持ち込むものの決めきれずに、精度に課題を残す。
また、オルカとか対照的に交代策も機能しなかった。得点を期待された#14武田菜々子選手は時折上手さを見せるものの周りの選手との連携に課題があるのか、ゴールに近い位置で仕事ができなかった。残り5分を切っての2枚替えも、負けている立場としては判断が遅いと感じた。