蒸し暑い梅雨の中で行われた、2026プレナスなでしこリーグ1部 第15節。
ASハリマアルビオンは、ホームのウインク陸上競技場に静岡SSUボニータを迎えた。
ハリマは直近4試合で3勝1分。苦しい前半戦を耐え、ようやく勝点を積み上げ始めていた。一方の静岡は、前節に伊賀FCくノ一三重に敗れて2位に後退。中断期間前に悪い流れを断ち切り、首位争いに踏みとどまりたい一戦だった。
前回対戦のレビュー
第4節:静岡SSUボニータ 2-0 ASハリマアルビオン
前回対戦は、静岡が前半に2点を奪って勝利した。
ハリマはシュート数を抑え込まれ、攻撃の時間を十分に作れなかった。今回の再戦は、前回の敗戦からどこまで修正できているかを測る一戦でもあった。
結果は、ASハリマアルビオン 0-5 静岡SSUボニータ。
静岡が立ち上がりから試合を動かし、終盤まで攻撃の手を緩めずに5得点。横山久美はなでしこリーグ通算183得点目を決め、歴代最多得点記録を更新した。
この記事の要点
- 静岡が中島咲友菜の2得点などで5-0快勝
- 横山久美が通算183得点目を決め、なでしこリーグ歴代最多得点記録を更新
- ハリマは静岡の強度とプレースピードに苦しみ、ビルドアップを制限された
試合情報
試合展開
立ち上がりに見えたハリマの狙い
試合の入りは、ハリマにも前向きな時間があった。
サイドからクロスを入れ、早い段階でシュートまで持ち込む。静岡のゴール前へ進入する意識は見えた。
しかし、静岡GK#21田谷春海が落ち着いて対応し、ハリマに流れを渡さない。
静岡は慌てなかった。#10横山久美が前線中央だけでなく、左右に顔を出しながらボールを受ける位置を作る。横山を起点に、静岡の攻撃が少しずつ加速していった。
中島咲友菜の先制点で静岡が主導権を握る
試合を動かしたのは静岡だった。
#6万力安純のパスを横山がスルーし、その背後に走り込んだ#9中島咲友菜が右足で決める。立ち上がりにハリマが押し込みかけた流れを、静岡は一つの連係でひっくり返した。

この先制点によって、試合の構図は大きく変わった。
ハリマは後方から丁寧に組み立てたいチームだが、静岡の前線からのプレスがその余裕を奪っていく。受ける位置が少しでも曖昧になると、静岡はすぐに距離を詰め、ボールを回収した。
万力安純のミドルで静岡が追加点
2点目も、静岡の強度が生んだゴールだった。
中盤でボールを奪うと、横山が相手を引きつけながら前進。中島につなぎ、落としを受けた万力安純が強烈なミドルシュートを突き刺した。
奪ってからゴールへ向かう速さ。
横山を経由したときの前進力。
そして、万力の思い切りの良さ。
静岡の強さが凝縮された追加点だった。
後半も静岡の勢いは落ちず
後半の立ち上がり、ハリマは再びシュートまで持ち込む場面を作った。
ただし、静岡の守備は最後の局面で強度を落とさない。シュートコースを限定し、決定機までは持ち込ませなかった。
すると静岡は、後半開始から入った#11大曽根由乃が横山とのワンツーで抜け出し、3点目を決める。
さらにハリマゴール近くのスローインの流れから、大曽根のパスを中島が右足ワンタッチで合わせて4点目。中島はこの日2得点となった。

横山久美が歴史を塗り替える
終盤、ハリマの守備は重心が下がり、運動量も落ちていった。
その中で、最後に記録を刻んだのが横山久美だった。
横山はドリブルで持ち込み、左足でゴール。これが、なでしこリーグ通算183得点目となった。
静岡にとっては勝利を決定づける5点目。
そして横山にとっては、なでしこリーグの歴史を塗り替える一撃だった。

総括
この試合は、上位チームと戦ううえで何が必要かを強く示した一戦だった。
強者を相手にするときは、自分たちの得意な形を出すだけでは足りない。相手の得意な形を出させないことが、まず必要になる。
ハリマはビルドアップから前進したいチームだが、静岡のプレスと切り替えの速さに苦しんだ。自陣でのパス回しに余裕を持てず、前線に人数をかける時間も限られた。
一方の静岡は、前節の敗戦を引きずらなかった。
前線の強度、横山を中心とした攻撃の組み立て、中島・万力・大曽根の決定力。攻守両面でハリマを上回り、中断期間前の一戦で改めて優勝候補としての力を示した。
ASハリマアルビオン
ハリマにとっては、厳しい現実を突きつけられる敗戦だった。
前節までの4試合は3勝1分。順位の近い相手に勝点を積み上げ、チーム状態は上向いていた。
しかし、静岡のような上位チームを相手にすると、細かな立ち位置や判断の遅れがそのまま失点リスクにつながる。
ハリマはGKや最終ラインから低い位置でパスを受け、攻撃を始める形を大切にしている。ただ、この試合では受け手との距離や角度が整う前に、静岡のプレスを受けてしまう場面が目立った。
前線では川﨑咲耶がプレス、ポストプレー、シュートと幅広く奔走した。
それでも、チーム全体としてのプレスの連動性は高まり切らず、静岡のCBや中盤に対して十分な制限をかけられなかった。彦坂桃花、青葉結衣を中心とした静岡守備陣も安定しており、ゴールは遠かった。
中断期間に必要なのは、ビルドアップを捨てることではない。
むしろ、自分たちの土台を維持しながら、強度の高い相手に対してどう前進するか。押し込まれたときに、どこでボールを奪い返し、どこからカウンターへ出るのか。
その整理が、中断期間明けの巻き返しにつながるはずだ。
静岡SSUボニータ
静岡は、前節の伊賀戦とは大きく異なる内容で勝利した。
伊賀戦では、横山に良い状態でボールを入れさせてもらえず、攻撃のリズムを作る前に制限を受けた。しかしこの試合では、横山が多くの場面でボールに関わることができた。
横山が前を向けば、静岡の攻撃は一気に怖さを増す。
自ら運ぶだけでなく、周囲を使う判断も速い。中島の先制点、大曽根の得点、終盤の自身のゴールと、静岡の攻撃は横山を中心に多くの形を作った。
今季、静岡が敗れた名古屋、世田谷、伊賀はいずれもハードワークを徹底し、高い位置から横山をボールとゴールから遠ざけてきた。静岡に勝つには、そのプランを90分続けるだけの運動量と連係、そして集中力が必要になる。
裏を返せば、横山に時間とスペースを与えたとき、静岡の攻撃力はリーグ屈指であることをこの試合は示している。
また、この日を最後にチームを離れる万力安純と大曽根由乃がそろってゴールを決めたことも、静岡にとって大きな意味を持つ試合だった。
そして横山久美の183得点目。
なでしこリーグの歴史に残る記録が生まれた試合で、静岡は5得点無失点。中断期間前のラストゲームとして、これ以上ない形で勝点3を手にした。
順位表
第15節終了時点で、静岡SSUボニータは首位に返り咲いた。
勝点は朝日インテック・ラブリッジ名古屋と同じ32だが、得失点差で静岡が上回っている。
ASハリマアルビオンは9位に後退。中位から下位にかけての勝点差は大きく開いていないだけに、中断期間明けの戦いが重要になる。
| 順位 (前節) | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 | 過去5試合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1(2) | 静岡SSUボニータ | 32 | 15 | 10 | 2 | 3 | 45 | 10 | +35 | |
| 2(1) | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 32 | 15 | 9 | 5 | 1 | 37 | 12 | +25 | |
| 3(3) | ヴィアマテラス宮崎 | 29 | 15 | 8 | 5 | 2 | 28 | 15 | +13 | |
| 4(4) | オルカ鴨川FC | 28 | 15 | 8 | 4 | 3 | 20 | 10 | +10 | |
| 5(5) | 伊賀FCくノ一三重 | 26 | 15 | 7 | 4 | 3 | 17 | 11 | +6 | |
| 6(6) | 岡山湯郷Belle | 23 | 15 | 7 | 2 | 6 | 22 | 23 | -1 | |
| 7(9) | 愛媛FCレディース | 19 | 15 | 5 | 4 | 6 | 17 | 28 | -11 | |
| 8(8) | スフィーダ世田谷FC | 16 | 14 | 4 | 4 | 6 | 22 | 24 | -2 | |
| 9(7) | ASハリマアルビオン | 16 | 15 | 4 | 4 | 7 | 15 | 21 | -6 | |
| 10(10) | ニッパツ横浜FCシーガルズ | 15 | 14 | 4 | 3 | 7 | 23 | 27 | -4 | |
| 11(11) | 日体大SMG横浜 | 10 | 15 | 3 | 1 | 11 | 13 | 45 | -32 | |
| 12(12) | VONDS市原FCレディース | 1 | 15 | 0 | 1 | 14 | 6 | 39 | -33 |
次節に向けて
中断期間明けの第16節、ASハリマアルビオンはアウェーでヴィアマテラス宮崎と対戦する。
前回対戦は第5節、ASハリマアルビオン 1-1 ヴィアマテラス宮崎。
ハリマは先制しながらも同点を許し、宮崎の攻撃に耐えながら勝点1を得た。宮崎も運動量と強度に優れるチームであり、今節の静岡戦で見えた課題をどこまで修正できるかが問われる。
静岡SSUボニータは、ホームで愛媛FCレディースと対戦する。
優勝争いの先頭を走り続けるためにも、シーズン再開初戦で確実に勝点を積み上げたい。
リソース
フルマッチLIVE配信
第15節全試合ハイライト動画
公式記録

