【試合レビュー】なでしこリーグ1部初挑戦のVONDS市原FCレディース、開幕戦はASハリマアルビオンに0-2|2026プレナスなでしこリーグ1部 第1節

試合レビュー

2026シーズンから、筆者が応援するオルカ鴨川FCと同じ千葉県に本拠地を置くVONDS市原FCレディースが、なでしこリーグ1部の舞台に挑んでいる。

なでしこリーグ2部初挑戦の2025シーズンを優勝で駆け抜け、1年で1部昇格を決めたVONDS市原FCレディース。しかし昇格直後には、コンプライアンス規定に抵触する行為を理由とした監督交代があり、さらに主力を含む大量の移籍も発生した。大きな変化を抱えて迎えた1部リーグ開幕戦の相手は、昨季なでしこリーグ1部で5位に入ったASハリマアルビオンだった。

この試合で印象的だったのは、終盤まで運動量と強度を落とさなかったASハリマアルビオンの完成度、そして1部初挑戦のVONDS市原FCレディースが見せた可能性と課題である。果敢に戦った市原だったが、最後は終盤のセットプレーと交代選手の活躍で突き放され、0-2で敗れた。

本記事では、VONDS市原FCレディース対ASハリマアルビオンの開幕戦を振り返る。

試合情報

結果VONDS市原FCレディース 0-2 ASハリマアルビオン
得点者86分 千葉園子(ASハリマアルビオン)
90+3分 井上麗叶(ASハリマアルビオン)
会場ゼットエーオリプリスタジアム
観客数270人

注目ポイント

  • 昨季からの積み上げがあるASハリマアルビオン
  • 刷新の多いVONDS市原FCレディース

以降、敬称略。

VONDS市原FCレディースは、選手15人が退団し13人が加入。スタッフ陣も大きく入れ替わり、昇格チームでありながら新体制色の濃い状態で新シーズンを迎えた。

それでも、2部時代からキャプテンとしてチームを引っ張ってきた #11村上賀梨、得点力のある #5小田川真奈、そして今季から#10を背負い、独特のリズムでサイドを切り裂く櫻庭琴乃ら、チームの核となる選手は残留している。さらに、1部経験があり前所属では主力だった #9宮本春花、#13玉田愛理(ともに前スペランツァ大阪)が加入。前所属では出場機会に恵まれなかった #14齊藤綾音(前オルカ鴨川FC)も加わり、一定の戦力補強はできている印象だ。

一方で懸念材料もある。今季からチームを率いる落合恵監督は、トップチームの監督経験が浅く、選手・スタッフともに新陣容の中で1部の戦いに適応していく必要がある。2部での快進撃をそのまま1部で再現するのは簡単ではないだろう。

対するASハリマアルビオンは、主力の退団こそあったものの、1部経験者とルーキーをバランス良く補強。#7三冨りりかがWEリーグのちふれASエルフェン埼玉からのレンタル移籍を経て完全移籍となった。#13今蔵綾乃、スピードのある #16左子五月も加入。昨季まで静岡SSUボニータでプレーしていた#8小池快も3シーズンぶりにハリマに復帰した。

また、2024シーズン終盤に就任し、チームを11位(2024)から5位(2025)へと引き上げた菅野監督が今季も続投。さまざまなカテゴリーでの指導経験を持つ指揮官のもと、昨季からの積み上げを感じさせるチームだった。

スターティングラインナップ

出典:https://www.nadeshikoleague.jp/2026/nadeshiko1/match_page.html?mno=2

市原は、2部時代の中心選手だった #11村上、#10櫻庭、#5小田川がスタメン。新加入の#9宮本、#14齊藤も先発に名を連ね、#13玉田はベンチスタートとなった。

市原は2部時代のチームの中心選手だった#11村上、#10櫻庭、#5小田川がスタメン。新加入の#9宮本、#14齊藤もスタメンに名を連ねた。#13玉田はベンチスタート。

ハリマは、なでしこリーグ通算200試合出場を達成した #9川崎、#10千葉が揃ってスタメン。静岡から復帰した #8小池も先発に入った。

試合展開

前半:ハリマが強度で上回る

立ち上がりから、両チームともハイプレスと運動量を前面に出す展開となった。

攻撃の印象としては、市原が比較的丁寧なビルドアップを選択していたのに対し、ハリマはFW #9川崎の飛び出しや、DF #20山口歌子のオーバーラップを生かしながら、ワンタッチを意識した縦に速い攻撃を見せていた。#10千葉が中盤から前線をハードワークし攻守両面に貢献する姿も目立った。

守備面では、中盤のスペースを埋めながら対応する市原に対し、ハリマはボールホルダーへの寄せが速く、対人の強度も高い。試合を通して見ると、市原は中盤がやや間延びする場面があり、中盤での構成力や圧力のかけ方ではハリマに分があったように映った。

前半は大きな決定機こそ多くなかったが、強いて言えばハリマがやや優勢だった。
#10千葉は豊富な運動量で攻守に関与し、#9川崎も前線に張るだけではなく、中盤まで下がって守備に加わりながら何度もスプリントを繰り返す。市原はその対応に追われることで中盤のスペースが空きやすくなり、試合の主導権を握りきれなかった。

市原の中で目を引いたのは、この日右SBで出場した #10櫻庭だった。独特の間合いでボールを運び、ドリブルで相手を剥がしてチャンスの糸口を作る。ただし、ハリマの守備陣はゴール前にしっかり人数をかけてブロックを形成しており、市原はそこを崩し切るまでには至らなかった。

後半:押し返した市原、しかし次第にハリマがペースを取り戻す

後半開始直後は、前半終盤に押し込まれていた市原がラインを高く保ち、前線からのプレスを強めて押し返す。1部初挑戦のチームとして、受け身にならず前に出た時間帯だった。

しかし、その勢いをしのいだハリマが徐々に落ち着きを取り戻す。
バイタルエリアでワンタッチパスをつなぎながらテンポ良く前進し、65分には #10千葉がシュート。さらに72分には、ロングボールに抜け出した #9川崎がワンタッチのループシュートでゴールポストを叩き、ハリマが決定機を増やしていった。

この時間帯になると、運動量と陣形のコンパクトさでハリマの良さがより明確になる。一方の市原は、前線からの守備と中盤・最終ラインの連動が少しずつ難しくなり、試合終盤に向けて消耗が見え始めた。

85分、ハリマ #10千葉のヘディングで均衡破る

ハリマ優勢の流れで迎えた85分、コーナーキックから #10千葉がヘディングで合わせ、ついに市原のゴールを破る。

相手の死角に入る動きと、ボールを叩きつける技術が光る見事な一撃だった。
終盤に入り足が止まりかけていた時間帯で生まれたこの先制点は、チームに勢いを与える大きなゴールだったと言える。

失点を受けた市原は、直後に途中出場した #15小林一歩に代えて、スピードのある #13玉田を投入。#9宮本と #13玉田の並びは、スペランツァ大阪時代を思い起こさせる組み合わせでもあり、同点を狙う意図は明確だった。

後半アディショナルタイム、途中出場の #23井上が追加点

追いすがる市原に対し、試合を決定づけたのはハリマの交代選手たちだった。
後半アディショナルタイム、なでしこリーグ初出場となった #23井上麗叶が、右足のダイレクトシュートで追加点を奪う。

この場面は、途中出場の #2児玉耀が縦へクロスを送り、同じく途中出場の #25鷹野あかりが落とし、#9川崎がワンタッチでつないで、最後は #23井上が仕留めた。交代選手が複数絡んだ、ハリマらしい鋭い縦の攻撃だった。

対して市原は、この時間帯には中盤と最終ラインの足が止まり気味で、相手に十分な圧力をかけることができなかった。終盤の強度と運動量、そして交代選手の活性化という点で、両チームの差が出た場面だったように思う。

総括

1部初挑戦の市原は善戦。だが成熟度と試合運びではハリマが上回った

もともと、戦力と成熟度の面では差のある一戦だった。それでも、1部初挑戦となる市原の選手たちは果敢に戦い、試合の中で押し返す時間帯も作った。

その市原を最後に突き放したのは、#10千葉、#9川崎らチームの中心選手が誰よりも走り、最後まで強度を落とさなかったハリマだった。
戦力差だけではなく、チームとしての成熟度、試合の運び方、そしてベンチワークを含めた完成度の差が結果に表れた一戦だったと感じる。

もともとチームの戦力と成熟度の差はあれど、1部初挑戦となる市原の選手たちは果敢に戦ったと感じる。それを打ち砕いたのは#10千葉・#9川崎らチームの心臓となるベテラン選手たちが誰よりも走ったハリマ。戦力、成熟度、そして監督の差が出た結果だと感じる。

攻守で違いを見せたVONDS市原FCレディース #10櫻庭琴乃

市原の中で、試合を通して最も存在感を放っていたのは #10櫻庭琴乃だった。

攻撃では、スピードとテクニック、そして独特のテンポを持つドリブルでハリマ守備陣に揺さぶりをかけた。守備面でも献身性があり、攻守両面で1部でも十分に通用する力を示していたように見える。

今回はサイドの低い位置からのプレーが多かったが、より高い位置でSHやWGとして起用された場合には、さらに相手にとって脅威になる可能性を感じさせた。市原にとって、今季の攻撃の鍵を握る選手の一人であることは間違いないだろう。

明暗を分けたのは、戦術の整理と交代策

縦に速く、選手間の距離を保ちながらコンパクトな陣形を維持していたハリマに対し、市原は中盤が間延びする場面が目立った。

特に気になったのは、市原のボランチの守備対応である。スペースを埋めるだけでなく、もう一歩前に出て相手に体をぶつけるような対応が必要になる場面もあった。縦に速い攻撃を仕掛けてくる相手に対しては、受けるだけでは苦しくなる。名古屋、静岡、伊賀、宮崎など上位を狙うチームは例外なく推進力があり、縦への意識も高いだけに、市原にとっては今後の重要な改善ポイントになりそうだ。

また、選手交代でも差が見えた。
ハリマは菅野監督の采配が当たり、途中出場の選手たちが流れを変え、結果にも直結した。一方で市原は、運動量が落ち始めた中盤にテコ入れするタイミングや、#13玉田の投入時期について、もう少し早めの判断があってもよかったように感じる。

前線からのファーストプレスに対し、2列目が十分に連動しきれない場面もあり、ビルドアップを重視するにしても、強度で上回る相手のプレスをどう外していくのかは再考の余地があるだろう。

個の能力は十分。今後の成長と房総ダービーに期待

市原は敗れたものの、所属選手の個々の能力が低いとは感じなかった。
先述の #10櫻庭に加え、#9宮本、#13玉田など、相手にとって嫌な存在になれる選手は揃っている。チームとしての連係や守備強度、試合運びが整ってくれば、1部でも十分に戦える可能性はある。

筆者としては、オルカ鴨川FCとVONDS市原FCレディースによる房総ダービーが今から楽しみである。県内クラブ同士が1部の舞台でぶつかる意義は大きく、VONDS市原FCレディースには今後さらに良いチームになっていってほしい。

第1節終了時の順位

まだ第1節を終えた段階ではあるが、ASハリマアルビオンは2位、VONDS市原FCレディースは10位タイでのスタートとなった。

出典:https://www.nadeshikoleague.jp/2026/nadeshiko1/standings.html

次節、市原の相手は開幕戦でニッパツ横浜FCシーガルズに2-0で快勝した岡山湯郷Belle。湯郷も若い選手が多く、監督も今季から就任したばかりで、なでしこリーグでの指揮経験は多くない。市原にとっては、1部で初めての勝点獲得を狙う重要な一戦となる。

開幕戦で見えた課題をどう修正し、1部の強度にどう適応していくのか。
次節は、その一歩を占う試合になりそうだ。

リソース

フルマッチLIVE配信(Youtube)

第1節全試合ハイライト動画

公式記録

日程・結果
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