開幕節以来勝利がなく、リーグ下位に沈むASハリマアルビオンにとって、この一戦は浮上のきっかけをつかみたいホームゲームだった。さらに、この日は小池快のなでしこリーグ通算200試合出場達成という節目の試合でもある。チームとしても、個人としても、勝利で飾りたい一戦だった。
一方の伊賀FCくノ一三重は、3連勝のあと前節に岡山湯郷Belleに敗戦。上位争いに食い込むためには連敗を避け、中位グループに踏みとどまる勝点3が必要だった。
試合は序盤、ハリマが前線の人数と運動量を生かして主導権を握った。しかし、伊賀は押し込まれながらも大崩れせず、時間の経過とともにボール保持と前進の形を取り戻していく。後半72分、伊賀は右サイドを起点に最終ラインを崩し、最後は平田ひなのが頭で押し込んで先制。ハリマも終盤にかけて反撃を試みたが、伊賀のコンパクトで粘り強い守備を崩し切れず、試合は0-1で終了した。
伊賀が少ない好機をものにし、ハリマは前半の優勢を得点に結びつけられなかった。その差が、そのまま勝敗を分けた一戦だった。
この記事の要点
- ハリマは序盤から前線の枚数と運動量で伊賀を押し込み、主導権を握ったが、最後の崩しとクロスの精度を欠いた
- 伊賀は前半の劣勢を耐え、後半に渡邊凜、常田麻友、増田玲那を絡めた右サイドの崩しから平田ひなのが決勝点を奪った
- ハリマは攻撃的な入りを得点に変えられず、伊賀は堅守と勝負どころの決定力で接戦を制した
試合情報
2026プレナスなでしこリーグ1部 第9節
| ASハリマアルビオン | 伊賀FCくノ一三重 |
|---|---|
| 0 | 1 |
| 72分 平田 ひなの |
| 会場 | 五色台運動公園アスパ五色(兵庫県) |
| 観客数 | 289人 |
ASハリマアルビオン
| Pos | No. | 氏名 | 交代 |
|---|---|---|---|
| GK | 41 | 小暮 千晶 | |
| DF | 4 | 阪中 澪 | |
| DF | 5 | 小島 美玖 (Cap.) | |
| DF | 6 | 佐々木 美悠 | |
| DF | 2 | 児玉 耀 | 72▼ |
| MF | 8 | 小池 快 | |
| MF | 17 | 唐橋 万結 | |
| FW | 23 | 井上 麗叶 | 83▼ |
| FW | 9 | 川﨑 咲耶 | |
| FW | 10 | 千葉 園子 | |
| FW | 33 | 椎野 彩香 | 72▼ |
| 控え | |||
| GK | 1 | 原田 実歩 | |
| DF | 19 | 高松 芹羽 | |
| DF | 20 | 山口 歌子 | 72▲ |
| DF | 24 | 村田 かえで | |
| MF | 18 | 阿部 文音 | |
| MF | 25 | 鷹野 あかり | 83▲ |
| FW | 13 | 今蔵 綾乃 | 72▲ |
| 監督: 菅野 将晃 | |||
伊賀FCくノ一三重
前節の岡山湯郷Belle戦で途中出場から意地のゴールを決めた平田ひなのが、この試合では先発に名を連ねた。
| 伊賀FCくノ一三重 | |||
|---|---|---|---|
| Pos | No. | 氏名 | 交代 |
| GK | 16 | 小野 未織 | |
| DF | 5 | 常田 菜那 | |
| DF | 26 | 清 悠香 | |
| DF | 3 | 秦 美結 | |
| MF | 14 | 増田 玲那 | |
| MF | 6 | 常田 麻友 (Cap.) | |
| MF | 7 | 渡邊 凜 | 89▼ |
| MF | 8 | 島野 美央 | 89▼ |
| MF | 9 | 桂 亜依 | 70▼ |
| MF | 24 | 唐沢 芽依 | 83▼ |
| FW | 10 | 平田 ひなの | |
| 控え | |||
| GK | 21 | 合田 朱里 | |
| DF | 13 | 髙山 菜々香 | |
| DF | 17 | 松久保 葵子 | |
| DF | 18 | 井上 歩香 | 70▲ |
| MF | 15 | 竹島 加奈子 | 83▲ |
| MF | 25 | 上田 彩葉 | 89▲ |
| FW | 22 | 松田 吏真 | 89▲ |
| 監督: 永井 良明 | |||
試合展開
序盤はハリマが前線の枚数で主導権を握る
今季ここまで得点力不足に苦しむハリマは、この試合で前線に人数をかける攻撃的な布陣を採用した。#9川﨑咲耶と#23井上麗叶を前線に置き、#10千葉園子と#33椎野彩香がウイングに入る形。井上は守備時に低い位置まで下がってブロック形成に加わり、川﨑は前線に残ってファーストディフェンス、裏抜け、ポストプレーを担った。
伊賀が平田ひなのを最前線に置く形だったことを考えると、序盤の前線の厚みはハリマの方が明らかに上回っていた。実際、ハリマは前線からのプレスとサイド攻撃で伊賀を押し込み、試合の入りで主導権を握った。
伊賀は簡単に前進できず、ハリマの圧力を受ける時間が続いた。ただし、そこで大きく崩れなかった点が伊賀の強さだった。ブロックを崩さず、中央を閉じ、ハリマのクロスやラストパスを粘り強く跳ね返していく。ハリマは押し込んでいたが、最後の局面で伊賀の守備を完全に崩し切る場面は多くなかった。
伊賀が徐々にプレスを剥がし、試合を押し返す
30分を過ぎると、伊賀が少しずつ試合を押し返し始める。ショートパスとポジショニングでハリマのプレスを外し、縦パスと右サイドの推進力を使って前進する場面が増えていった。
前半序盤は受けに回っていた伊賀だったが、ボールを前に運べるようになると守備にも余裕が生まれた。相手を挟み込む守備、前向きに奪い返す守備が機能し、ハリマの攻撃を単発に抑える時間が増えていく。
ハリマが序盤に作った流れを得点に結びつけられなかった一方で、伊賀は前半終了間際にかけて試合の流れを引き戻した。前半は0-0。スコアこそ動かなかったが、前半の中でも主導権がハリマから伊賀へと少しずつ移っていく展開だった。
後半、ハリマは組み立て重視へ 伊賀は運びやすくなる
後半のハリマは、川﨑を最前線に置き、千葉と椎野がサイド、井上がシャドー気味に入る形に見えた。そして前半のように前線の枚数と勢いで押し込むというより、後方から丁寧につなぎながら前進する意識が強まった印象を受けた。
ただ、この変化は伊賀にとってはやや好都合だったかもしれない。ハリマの球際の強度自体は落ちていなかったものの、チーム全体で前に出ていく圧力の速さは前半よりも緩やかになった。その分、伊賀は前半より落ち着いてボールを運べるようになった。
伊賀は守備でも大きく乱れなかった。前線からのプレス、コンパクトな陣形、最終ラインの集中力を維持し、ハリマのビルドアップを制限していく。試合は拮抗したまま、終盤へ向かった。
72分、伊賀が右サイドの崩しから先制
均衡が破れたのは72分だった。
伊賀はセットプレー後の流れから、右サイドで#7渡邊凜がボールを受ける。渡邊は#6常田麻友に預けると、左斜め前方へ走り込んで最終ラインの背後を狙った。そこへ#14増田玲那がスルーパスを通し、渡邊が抜け出してシュート。ハリマGK#41小暮千晶が何とか触ったボールはポストに当たったが、こぼれ球に詰めていた#10平田ひなのが頭で押し込んだ。
前節に続くゴールとなった平田は、先発起用に結果で応えた。伊賀にとっては、前半から狙い続けていた右サイドの突破と、平田のゴール前での嗅覚が結びついた大きな先制点だった。
ハリマは終盤に反撃も、伊賀の堅守を破れず
失点後のハリマは選手交代を行い、ラインを上げて同点を狙った。しかし、伊賀の守備は最後まで崩れなかった。
伊賀は前線からのプレス強度を維持し、ハリマのビルドアップを自由にさせない。守備ブロックもコンパクトで、中央を簡単に使わせず、サイドに追い込んで対応した。ハリマは最後まで攻める姿勢を見せたが、クロスや縦パスは伊賀の守備に弾き返され、決定的な形を作るには至らなかった。
試合はそのまま0-1で終了。伊賀が接戦を制し、勝点3を手にした。
総括
ハリマとしては、内容面で前向きに捉えられる時間帯がありながらも、勝点には結びつかなかった。
前半の主導権を握っていた時間帯に先制点を奪いたかった。序盤の狙いは明確で、前線の人数、運動量、サイド攻撃によって伊賀を押し込むことには成功していた。しかし、伊賀の守備ブロックが大きく崩れない中で、最後の崩しのアイデアやクロスの質に課題が残った。
一方の伊賀は、前節の敗戦から立て直し、堅守と決定力で中位グループに踏みとどまった。
前半の苦しい時間帯を耐え切ったことが勝利につながった。多くのチャンスを作った試合ではなかったが、後半に流れを引き寄せ、勝負どころで決め切った。
ASハリマアルビオン
少なくとも前半途中までは試合のペースを握っていた。伊賀の両サイドの前進を限定し、前線に人数をかけて攻める狙いは機能していた。サイドから何度もクロスを入れ、伊賀を自陣に押し込む時間も作れていた。
ただし、伊賀の守備は人数とポジションが大きく乱れなかった。ハリマは外からボールを入れる場面こそ多かったが、ゴール前で相手を動かし切る工夫や、中央を割るためのもうひとつのアイデアが足りないように感じた。前半の優勢を得点に変えられなかったことが、結果的に大きく響いた。
後半は戦い方を少し変えたように見えたが、その変化によって伊賀がボールを運びやすくなった面もあった。選手たちは最後まで諦めずに戦ったが、ゴールは遠かった。内容面で手応えがあったからこそ、次節以降は「良い時間帯をどう得点につなげるか」がより重要になる。
伊賀FCくノ一三重
前半、ハリマの前線の圧力に押される時間が長かった。それでも失点しなかったことが、この試合最大の土台になった。前半を0-0で折り返せたことで、後半に自分たちのリズムを取り戻す余地が生まれた。
特に後半は、渡邊凜と増田玲那を絡めた縦への推進力が機能した。前節の岡山湯郷Belle戦では、渡邊の突破や左サイドを起点にした攻撃が制限された印象があったが、この試合では勝負どころでその形を出すことができた。渡邊が前を向き、増田が背後へ差し込むパスを出せると、伊賀の攻撃には一気に得点の匂いが出る。
そして最後に決めたのが平田ひなのだった。シュートのこぼれ球に詰める動き、ポストに当たったボールへの反応、頭で押し込む落ち着き。派手なゴールではないが、ストライカーらしい価値のある一撃だった
伊賀の選手たちは全体的に運動量が豊富で、90分を通して守備強度を落とさなかった。上位争いに食い込むチームに共通する要素として、最後まで走り切る力、そして苦しい時間帯を耐える力がある。この試合の伊賀は、その両方を示した。
順位表
第9節終了時点で、ASハリマアルビオンは11位のまま。伊賀FCくノ一三重は5位に浮上した。
過去5試合(左から新しい順に表示):勝利 引き分け 敗戦
| 順位 (前節) | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 | 過去5試合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 静岡SSUボニータ | 23 | 9 | 7 | 2 | 0 | 29 | 3 | +26 | |
| 2(2) | ヴィアマテラス宮崎 | 20 | 9 | 6 | 2 | 1 | 20 | 9 | +11 | |
| 3(4) | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 16 | 9 | 4 | 4 | 1 | 22 | 11 | +11 | |
| 4(5) | オルカ鴨川FC | 15 | 9 | 4 | 3 | 2 | 14 | 6 | +8 | |
| 5(6) | 伊賀FCくノ一三重 | 15 | 9 | 4 | 3 | 2 | 10 | 8 | +2 | |
| 6(7) | ニッパツ横浜FCシーガルズ | 14 | 9 | 4 | 2 | 3 | 18 | 14 | +4 | |
| 7(3) | 岡山湯郷Belle | 14 | 9 | 4 | 2 | 3 | 13 | 17 | -4 | |
| 8(8) | スフィーダ世田谷FC | 10 | 9 | 3 | 1 | 5 | 17 | 18 | -1 | |
| 9(9) | 愛媛FCレディース | 9 | 9 | 2 | 3 | 4 | 10 | 18 | -8 | |
| 10(10) | 日体大SMG横浜 | 7 | 9 | 2 | 1 | 6 | 12 | 34 | -22 | |
| 11(11) | ASハリマアルビオン | 6 | 9 | 1 | 3 | 5 | 9 | 13 | -4 | |
| 12(12) | VONDS市原FCレディース | 0 | 9 | 0 | 0 | 9 | 3 | 26 | -23 |
次節に向けて
ハリマは次節もホーム戦となり、4位のオルカ鴨川FCを迎える。中位以上のチームとの対戦が続く中で、今節前半のような積極性をどう得点に結びつけるかが問われる。
伊賀FCくノ一三重は次節、ホームでVONDS市原FCレディースと対戦する。上位争いに食い込むためには、取りこぼしが許されない一戦になる。
リソース
フルマッチLIVE配信
第9節全試合ハイライト動画
公式記録

