松尾・月東の鉄壁守備が光るも、王者の完成度に屈す。オルカ鴨川FC、名古屋に0-1敗戦|2025プレナスなでしこリーグ1部・第21節 オルカ鴨川FC x 朝日インテック・ラブリッジ名古屋

すでに2025シーズンのなでしこリーグ1部のリーグ優勝を決めている朝日インテック・ラブリッジ名古屋をホームに迎えた。名古屋にとっては消化試合かもしれないがオルカにとっては最終順位を1つでも上で終えるために大事な一戦である。オルカ鴨川FC目線で振り返る。

リソース

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公式記録

日程・結果

公式ガイドブック

要約

  • 優勝を決めた朝日インテック・ラブリッジ名古屋を迎えたオルカ鴨川FCは、最終順位を上げるため臨んだが0-1で敗戦。
  • 前半は名古屋の巧みなパスワークとハードワークに押されつつも、河野有希・アルマ・デービス両選手が決定機を作る。
  • 守備では松尾菜月・月東優季乃両選手が体を張り奮闘し、GK田谷春海の好セーブで追加点を許さなかった。
  • 後半は攻撃的交代で流れを変えようとしたが機能せず、名古屋の組織的な守備と攻撃に終始押される展開。
  • 名古屋の完成度と戦術の柔軟性が際立ち、オルカは次節・日体大SMG横浜戦で意地を見せられるかが焦点となる。

注目ポイント

  • 采配の難しさが露呈したオルカの交代策
    • 後半の選手交代は攻撃的意図があったものの、フォーメーション変更やポジション再配置が混乱を招き、結果的に流れを引き寄せられなかった。百武監督の試合中マネジメントが課題として浮き彫りに。
  • 名古屋の「余裕の采配」と若手起用
    • 優勝を決めた名古屋は今季初スタメンのGK瀬戸口伊織選手、デビューの森口莉子選手らを起用。それでもチームとしての完成度を保ち、控え選手にも実戦経験を積ませる余裕を見せた。
  • 松尾菜月・月東優季乃両選手の守備的リーダーシップ
    • 名古屋の多彩な攻撃に対して最後の砦として体を張り続けた2人。特に松尾選手のカバーリングと月東選手の前へのアプローチが失点を最小限に抑える要因となり、敗戦の中でも光った。

試合情報

会場

鴨川市陸上競技場(オルカ鴨川FCホームスタジアム)

観客数767名

フォーメーション・スターティングラインナップ

オルカ鴨川FC

相手チーム

GK#21瀬戸口伊織選手は今シーズン初スタメン。優勝を決めたチームの余裕が見受けられる。

試合展開

前半

名古屋のパスワークと素早い寄せに苦しむオルカ

開始から名古屋がボールをつないでピッチを広く使いオルカを攻めたてる。ボールを失った時も守備への切り替えが早く、またセカンドボールへの反応も早い。オルカの強みである運動量と守備力だが、名古屋の方がハードワークして守備も固い。オルカは決定機こそ与えないものの、ハイプレスは機能せず自陣深いところで奪ってのカウンター、そしてロストという展開。

アルマ・デービス選手の粘りから河野有希選手がシュート

この日初めての決定機はオルカ。スローインから相手の守備に体を貼って粘った#10アルマ・デービス選手。ボールはこぼれるが名古屋のバックパスがずれたところを#11河野有希選手がかっさらってゴール前に抜け出しほとんどGKと1対1の状況に。河野選手が放ったシュートは名古屋GK#31瀬戸口伊織選手がナイスセーブ。王者とはいえバックパスのズレや判断ミスはあるので、少ないチャンスをものにしたかったオルカだが、ゴールネットを揺らすことはできなかった。

先制は名古屋。オルカの守備ラインのズレをついた見事な得点

名古屋の縦パスに対してアグレッシブに前に出て対応したオルカ#3月東優季乃選手だったが、デイフレクションしたボールはオルカゴールの方向に流れる。それをケアしようと#4松尾菜月選手が釣りだされる。名古屋#9水野亜美選手がそれを躱し、手薄になった最終ラインの裏に走りこんでいた名古屋#24角田菜々子選手にスルーパスが通る。オフサイドでは?と思ったが判定は御サイド。GKと1対1になった角田選手は落ち着いてゴール右隅に蹴りこみ、名古屋が先制点を挙げた。

押されてはいたものの守備意識を高く保ち数少ないチャンスを待つ作戦であったであろうオルカ。名古屋にとっては消化試合の1つにすぎず、リスクが無い状態で臨んだ今節だが、これでさらに優位に立った。

オルカは中盤低い位置でボールを奪うことができても、全体的に引き気味になっているため相手にとって脅威となる攻撃ができず、ボールロストする展開が続く

ビッグチャンス到来、ボールを枠内に飛ばせず不発のオルカ

バックパスの乱れを虎視眈々と狙っていた#10アルマ・デービス選手が見事にボールを奪取する。ゴール前フリーで走りこんでいた#11河野有希選手に完璧なお膳立てのクロスが通る。しかし河野選手はこれをふかしてしまった。同点ならず悔しがる河野選手。ナイスプレーだったアルマ選手もがっくりと肩を落とす。

その後も左右のパスでオルカを揺さぶり、縦に1本強く長いパスを入れてゴールを狙う名古屋。オルカは耐えて耐えてカウンター。で、0-1のまま前半終了。

後半

攻撃的な選手を入れて同点そして逆転を狙うオルカ、しかし流れは変わらず

後半開始から、守備に秀でる#24谷口愛奈選手に代えて、攻撃的な#13浅坂真桜選手を投入したオルカ。リスクを負って得点を狙う。

リードしている名古屋に選手交代はなし。

51分、名古屋の右SH#3平尾愛穂選手が右サイドを突破してグラウンダーのクロス、ペナルティエリア内ゴール正面でボールを受けた#8渕上野乃佳選手は落ち着いてオルカ#6浦部美月選手を躱してGKと1対1のビッグチャンス。左足でコントロールシュートを放つがゴール左に外れ、命拾いをしたオルカ。

さらに名古屋の猛攻は続く。52分に#3平尾選手がオルカ#13浅坂選手を切り返しで振り切って左足のミドルシュート。これはオルカGK#1田谷選手が右手一本でギリギリのセーブを見せる。

オルカ左SHと左SBに攻撃的な選手を並べているが、名古屋は研究済みなのだろう。明らかにそのサイドからの突破を何度も見せている。前半のみで交代した#24谷口愛奈選手が左SHにいた方が安定感があったように感じるが、得点が欲しいので難しい判断。

苦しいオルカは#3月東選手のゴール前へのロングキックからバウンドしたボールを#10河野選手が頭で合わせるがゴールマウス左に外れる。

選手交代で流れを変えたいオルカ、攻め続ける名古屋

#10アルマ・デービス選手と#17越路萌永選手が退いて#8新田琴瑞選手と#20上田麻莉選手がピッチイン。

#6浦部美月選手が右SB→左SB、#23安東美那選手が右SH→右SBへとポジションを変え、#8新田選手が右SH、#20上田選手はFWに入る。

それでも流れは全く変わらず、名古屋の左右への揺さぶりと裏抜け、一気にギアを上げて攻めたてるスタイルに防戦一方のオルカ。GK#1田谷春海選手の好セーブが目立つが、それだけ攻められているということ。

名古屋はペナルティエリア内外から積極的にシュートを放ち、オルカにラインを上げるタイミングと勇気を与えないゲーム支配は、さすがだと感じる。

64分に2枚替えの名古屋。#8渕上野乃佳選手→#15中村友香選手、#9水野亜美選手→#7柴山史菜選手が交代。

後半から途中出場した#13浅坂真桜選手を下げ、71分に#14菅原千尋選手が右SHに入る。#8新田選手は左SHにポジションを移す。浅坂選手は気持ちは見せてくれているが、球離れが悪くチャンスを潰してしまっているのと、相手からボールを奪う個所として狙われていた印象だった。

80分頃からオルカはラインを上げて追加失点覚悟で攻めに転じる。名古屋の鋭いカウンターをDF陣の踏ん張りで首の皮一枚つなぎつつ、素早いスローインから#11河野有希選手が強烈な右足ミドルシュートを名古屋ゴール枠内に飛ばすが、セーブされる。

選手交代、名古屋は余裕を見せ、オルカは焦りが見える

86分、両チームとも交代枠を使い切る。名古屋はなでしこリーグデビューとなる#19森口莉子選手を投入。

追うオルカは71分に途中交代で入ったばかりの#14菅原千尋選手を下げて#33田中陽世里選手が入る。田中選手はFWとなり、新田選手がFW、河野選手が左SH、上田選手は右SHに移る。

終盤、名古屋は焦るオルカを手玉に取って丁寧にビルドアップからの縦に早い攻撃を見せる。オルカは#4松尾菜月選手が獅子奮迅の働きで決定機を作らせない。オルカは#33田中陽世里選手、#20上田麻莉選手を中心に縦に攻めるが名古屋の組織された守備ブロックを崩しきれず、そのまま試合終了。0-1でオルカは敗れ、采配に余裕をもった名古屋に翻弄され続けた。

総括

オルカ鴨川FC

機能しない選手交代。それでも奮起の守備陣

交代選手が結果を出す傾向にあるオルカだが、この日の百武監督の采配は機能せず。後半、矢継ぎ早に選手交代を繰り返したがピッチ上の選手たちが混乱しただけで効果は見受けられなかった。個・組織の両面で名古屋に圧倒されており、よく1失点で済んだな、という内容だった。体を投げ出し、身を挺して名古屋の攻撃を跳ね返し続けた#4松尾菜月選手・#3月東優季乃選手がいなかったら、もっと点差は開いていたと感じる。

#20上田麻莉選手のコンディションが前節よりも上向いてきたと感じた。運動量あり、鋭いドリブルとターンも戻ってきていた点は、攻撃陣にとっては好材料だろう。

朝日インテック・ラブリッジ名古屋

ピッチを広く使った揺さぶり、献身的なオフザボールの動き、相手DFを吊り出すFW陣の動き、守備の乱れを突いた縦パスと裏抜け、中が固ければ外から打つ柔軟性、そして守備面においては球際強く、セカンドボールに泥臭く、網を張るように各選手がゾーンを敷いて絡めとる。何よりも、全員がよく走る。優勝にふさわしいチームだと感じた。

今節、結果的に1点のみだったが、3点差以上の実力差はあったように見えた。この戦力が来季も継続し、戦い方をさらに煮詰めていけるのならば、長期政権も視野に入るのではないかと思う。

次節は2025シーズン最終戦

次節のオルカは日体大SMG横浜とのアウェイゲーム。今シーズンのリーグ最終節を勝利で終え、勝利することができれば最大で6位でリーグを終えることができる。昨シーズンのリーグ8位を上回ることができるか、期待したい。

なでしこリーグ1部順位表 第21節終了時点

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