2025プレナスなでしこリーグ1部第18節、7位のオルカ鴨川FCは、8位の岡山湯郷Belleとアウェイで対戦した。
試合は開始早々にオルカが先制する展開となったが、その後は湯郷が中盤の強度と前線への意識を高め、前半のうちに逆転。後半にはアルマ・デービス選手の個人技からオルカが追いつき、最終的には2-2の引き分けに終わった。
オルカ目線では、勝ち切れなかった悔しさと、エースの存在感、浅野綾花選手の攻撃面での貢献、そして若手起用の意味が見えた一戦だった。
注目ポイント
- 采配と交代カードの影響
- オルカは前半終了後、#9齊藤彩花選手に代えて#13浅坂真桜選手を投入した。浅坂選手は縦への推進力とサイドでの仕掛けを加え、後半の攻撃に変化をもたらした。
- 前半は中盤から前線へのボールの供給が停滞する時間帯もあったが、後半は浅坂選手の積極性によって、左サイドから前進する場面が増えた。
- GK田谷春海選手のビッグセーブ
- オルカGK#1田谷春海選手の存在感も大きかった。特に前半8分、オルカのバックパスを奪われて1対1を迎えた場面では、冷静なセーブで失点を防いだ。
- PKではコースを読んでいたものの届かなかったが、それ以外の危険な場面では的確な対応を見せた。スコア以上に、チームを試合にとどめた守護神だった。
- 若手選手のリーグ初出場
- 終盤には#33田中陽世里選手が投入され、なでしこリーグ初出場を果たした。試合展開としては押し込まれる時間帯での起用だったが、経験の浅い選手に実戦の場を与えたことは、チームとしての積み上げにもつながる。
試合情報
| 会場 | JFE晴れの国スタジアム(岡山湯郷Belleホームスタジアム) |
| 観客数 | 1,427名 |
フォーメーション・スターティングラインナップ
オルカ鴨川FC

オルカは勝利した前節と同じスターティングメンバーで臨んだ。
ベンチメンバーでは、#8新田寿端選手が外れ、#2高村ちさと選手がベンチ入り。中断期間前まで運動量と献身性でチームを支えていた#20上田麻莉選手は、これで3試合連続のベンチ外となった。
岡山湯郷Belle

試合展開
オルカ、開始早々に先制
試合は立ち上がりから動いた。
前半4分、オルカは中盤のこぼれ球を#10アルマ・デービス選手が拾い、ドリブルで前進。左サイドへスプリントした#11河野有希選手へスルーパスを通す。
河野選手はペナルティエリア内からグラウンダーのクロスを送り、中央へ走り込んだ#5浅野綾花選手が左足でワンタッチ。シュートはゴール右隅へ決まり、オルカが幸先よく先制した。
この場面では、湯郷の守備人数はそろっていたものの、中央のマークが曖昧だった。さらにファーサイドには#23安東美那選手も走り込んでおり、オルカとしては複数の選択肢を作れていた攻撃だった。
田谷春海選手が1対1を阻止
しかし、先制後のオルカはすぐに危険な場面を迎える。
前半8分、オルカのバックパスを湯郷に奪われ、#5内田好美選手がGKと1対1に。決定的な場面だったが、オルカGK#1田谷春海選手がシュートに反応し、ボールを弾き出した。
このセーブは非常に大きかった。立ち上がりに先制した直後、すぐに追いつかれていれば、試合の流れは大きく変わっていた可能性がある。
前半16分には、湯郷のコーナーキックに対して田谷選手がファンブルする場面もあったが、湯郷は押し込めず。オルカとしては肝を冷やす場面だった。
オルカは追加点のチャンスを作るも決め切れず
前半18分、オルカはアルマ・デービス選手が味方DFのクリアボールに競り勝ち、そのまま左足でシュートまで持ち込んだ。湯郷GKにキャッチされたが、一人でシュートまで完結できる強さと技術を見せた場面だった。
さらに同じ18分、右SBの#23安東美那選手がボールを奪い、左サイドへ展開。#6浦部美月選手のアーリークロスに#5浅野綾花選手がフリーで合わせたが、ヘディングシュートは惜しくもゴール上へ外れた。
湯郷の守備対応はこの時間帯、やや後手に回っていた。オルカとしては、ここで追加点を奪えていれば、より優位に試合を進められたはずだ。
前半25分には、飲水タイム明けのフリーキックから、湯郷DFが弾き返したボールを#24谷口愛奈選手がダイレクトボレー。積極的な狙いだったが、シュートはゴール上へ外れた。
湯郷がPKで同点に追いつく
前半27分、湯郷がPKを獲得する。
左サイドから#10中野琴音選手がクロスを上げると、対応したオルカDF#3月東優季乃選手の手にボールが当たったとして、主審はPKを判定した。
このPKを#6小松未奈選手が確実に決め、湯郷が1-1の同点に追いつく。田谷春海選手はコースを読んでいたが、ボールに手は届かなかった。
オルカにとっては不運な形の失点だったが、湯郷にとっては試合の流れを引き戻す大きな同点ゴールとなった。
中盤の主導権が湯郷へ
30分頃から、試合の流れは少しずつ湯郷へ傾いていく。
中盤の競り合いで湯郷が優位に立つ場面が増え、オルカは前線のアルマ・デービス選手までスムーズにボールを届けられなくなった。
前半34分には、湯郷が逆転の決定機を迎える。DFラインまで下げたボールから、#11塩谷瑠南選手が前線へ浮き球のパス。オルカDFの背後を取った#13秋元美雨選手が見事にトラップし、シュートまで持ち込んだが、ボールは惜しくもゴール左へ外れた。
オルカのミスから湯郷が逆転
前半39分、湯郷が逆転に成功する。
オルカ#9齊藤彩花選手のバックパスが中途半端になり、湯郷がこれを奪取。右サイドから#13秋元美雨選手がクロスを送り、中央で#8南山千明選手がヘディングで合わせた。
ボールはオルカゴールへ吸い込まれ、湯郷が2-1と試合をひっくり返した。
オルカにとっては、非常にもったいない失点だった。1失点目は不運な面もあったが、2失点目は自分たちの判断ミスから生まれたもの。先制した試合を自ら難しくしてしまった印象が残る。
前半終盤、アルマ・デービス選手が存在感を示す
苦しい展開の中でも、アルマ・デービス選手は違いを見せた。
前半45分、ルーズボールを収めると、右サイドのペナルティエリア内からマイナスのクロスを供給。中に味方はいなかったが、前を向いた時の迫力は際立っていた。
前半アディショナルタイムにも、相手のクリアボールを奪って強引に持ち込み、シュートで終わってコーナーキックを獲得。得点にはつながらなかったが、個の力で局面を打開できる選手であることを改めて示した。
前半は2-1、湯郷のリードで終了した。
オルカは開始早々に先制し、セカンドボールへの反応の速さも見せた。しかし、1失点目はPK、2失点目は自陣でのミスから生まれたもの。良い入りをしながら、自分たちで試合を難しくしてしまった前半だった。
一方の湯郷は、入りこそ不安定だったが、ホームの声援を受けながら徐々に縦への意識を強めた。中盤でのプレスからオルカのミスを誘い、前半のうちに逆転できたことは大きかった。
後半、浅坂真桜選手の投入でサイドに変化
後半開始から、オルカは#9齊藤彩花選手を下げ、#13浅坂真桜選手を投入した。

前半は中盤から前線へのつながりが停滞する時間帯もあったため、縦への推進力を加える狙いがあったように見える。浅坂選手は左サイドで積極的に1対1を仕掛け、ファウルを受けてフリーキックを獲得するなど、後半の攻撃に変化をもたらした。
前半に比べると、後半の入りは落ち着いた展開となった。オルカとしては、まず試合を整え直し、同点の機会をうかがう時間帯だった。
アルマ・デービス選手が同点弾
後半57分、オルカが同点に追いつく。
右サイドから#5浅野綾花選手がアーリークロスを入れると、#10アルマ・デービス選手がこれを収める。湯郷DFが届かない位置にボールを置き、カットインから右足を一閃。低く鋭いシュートがゴール左隅へ突き刺さった。
苦しい展開の中で、オルカのエースが一発で試合を振り出しに戻した。
アルマ・デービス選手は、前節のASハリマアルビオン戦に続くゴール。力強さ、決定力、そしてシュートまで持ち込む形の作り方に、エースストライカーとしての存在感が表れていた。
また、浅野綾花選手は先制点に続き、この同点弾もアシスト。1ゴール1アシストの活躍で、攻撃面で大きな役割を果たした。
湯郷は前線の高さを加える
同点に追いつかれた湯郷は、後半58分に選手交代。逆転ゴールを決めた#8南山千明選手に代えて、169cmの#4丸形梨恵選手を投入した。

DF登録の選手ではあるが、この試合では前線に入り、ターゲットとしての役割を担ったように見えた。湯郷としては、前線に高さと収まりどころを作り、再び勝ち越しを狙う意図があったのだろう。
その後は、同点の状況ながら湯郷が押し気味に試合を進める。
後半65分には、湯郷#10中野琴音選手が複数の相手に囲まれながらもボールを運び、左サイドへ展開。チャンスの起点となった。
オルカは交代で流れを変えにいく
流れを変えたいオルカは、後半68分に#24谷口愛奈選手を下げ、#25齊藤桃花選手を投入した。#11河野有希選手が右サイドハーフへ移り、齊藤桃花選手は前線に入った。

後半70分には、左サイドで#13浅坂真桜選手が1対1を仕掛け、ファウルを受けてフリーキックを獲得。浅坂選手は、縦への仕掛けや推進力という点で、#20上田麻莉選手と近い要素を感じさせる選手だった。
後半74分には、湯郷が右サイドからチャンスをうかがうが、オルカ#3月東優季乃選手が冷静に対応。月東選手は、スピードで振り切られる場面を除けば、対人対応とカバーリングの安定感が非常に高い選手だと感じる。
後半76分、オルカは#23安東美那選手に代えて#17越路萌永選手を投入。越路選手が左サイドバックに入った。

湯郷も後半76分に#13秋元美雨選手を下げ、#24岸波美采選手を投入。さらに84分には、#2島村公美子選手に代えて#27成田夢愛選手、#6小松未奈選手に代えて#15山本早織選手を送り出した。

終盤は湯郷が押し込むも決め切れず
後半84分、湯郷FW#10中野琴音選手がオルカ#5浅野綾花選手からボールを奪い、ロングシュートを狙った。しかし、オルカGK#1田谷春海選手がしっかりキャッチした。
この場面は、中野選手が自ら狙う判断をしたが、#5内田好美選手に預けて組み立てれば、より可能性が広がったかもしれない。
後半86分、オルカは最後の交代カードを切る。同点ゴールを決め、相手の脅威になり続けていた#10アルマ・デービス選手に代えて、シーズン途中にジェフ千葉レディースから完全移籍した#27今田紗良選手を投入。
さらに、後半開始から入っていた#13浅坂真桜選手を下げ、#33田中陽世里選手をピッチへ送り出した。田中陽世里選手は、これがなでしこリーグ初出場となった。

終盤、オルカは押される流れを変え切れなかったが、湯郷の攻撃にも決定的な迫力は不足していた。後半アディショナルタイムには、湯郷#5内田好美選手がヘディングシュートを放ったが、ボールはゴール右へ外れた。
試合はそのまま2-2で終了。オルカは先制しながら逆転を許し、後半に追いついて勝ち点1を持ち帰る結果となった。
総括
オルカ鴨川FC
チームにフィットしたエースFW、アルマ・デービス選手
前節のASハリマアルビオン戦で2得点を挙げたアルマ・デービス選手は、この試合でも1ゴール。オルカ加入後、完全にチームの攻撃を変える存在になっている。
ゴールシーンだけでなく、前線でターゲットとなり、味方が押し上げる時間を作るプレーも目立った。さらに、相手DFへのチェイスも怠らず、守備面での貢献度も高い。
シーズン序盤のオルカは、サイドから崩してクロス、あるいは細かくつないでシュートまで持ち込む形が中心だった。しかし、攻撃の期待値という意味では、なかなか得点の匂いが強くならない試合も多かった。
その中で、アルマ・デービス選手の加入は大きい。多少難しいボールでも収められる。相手のマークが外れていなくても、個の力でシュートまで持ち込める。味方にとっても「アルマ選手に預ければ何かが起きる」という信頼感が生まれているように見える。
この試合の同点ゴールは、まさにその象徴だった。
1列上がった浅野綾花選手の攻撃性能
#5浅野綾花選手の起用位置も、オルカの攻撃に良い影響を与えている。
中断期間前はアンカーとして、広い視野と危機察知能力を活かし、守備面で大きな貢献を見せていた。豊富な運動量で相手の攻撃の芽を摘み、攻撃ではパスを散らす役割を担っていた。
一方、前節からはCMF、あるいはトップ下に近い位置でプレーしている。この配置によって、前線と中盤のつながりが以前よりもスムーズになっている印象がある。
この試合では先制点を挙げ、さらにアルマ・デービス選手の同点ゴールをアシスト。1ゴール1アシストという結果だけでなく、攻撃の中継点としても存在感があった。
守備もでき、展開もでき、ゴール前にも入っていける。浅野選手は、オルカの中盤における万能型の核になりつつある。
消極的なバックパスと、苦しい場面での判断
この試合でオルカにとって課題として残ったのは、後方での判断と、苦しい時間帯のプレー選択だった。
特に前半39分の2失点目は、避けたかった失点である。自陣でのバックパスが中途半端になり、そこから湯郷にボールを奪われて逆転ゴールを許した。
もちろん、ひとつのミスだけで選手を評価するべきではない。ただ、キャプテンマークを巻く#9齊藤彩花選手には、苦しい場面でこそ前向きな判断や、チームを押し上げるプレーを期待したい。
今のオルカは、なでしこリーグでの経験が浅い選手も多いチームである。だからこそ、経験ある選手がどのように振る舞うかは、試合の流れだけでなく、チーム全体の雰囲気にも影響する。
齊藤選手は、オルカ鴨川FCの顔ともいえる存在である。苦しい時にこそ戦う姿勢を見せ、若い選手たちを引っ張っていく姿を今後に期待したい。
勝ち切れなかったが、追いついたことは評価できる
オルカは先制しながら逆転を許したため、勝ち点3を逃した悔しさは大きい。
一方で、前半の悪い流れから後半に追いつけたことは評価できる。アルマ・デービス選手の個の力、浅野綾花選手の攻撃参加、浅坂真桜選手の推進力など、後半に改善の材料は見えた。
ただし、同点後にもう一度流れを引き寄せ、勝ち越しまで持っていく力はまだ足りなかった。今後、上位を狙うためには、試合の中で悪い時間帯を短くし、リードした後の試合運びをさらに安定させる必要がある。
岡山湯郷Belle
湯郷は、前節に静岡SSUボニータ相手に1-5で敗れていたこともあり、ホームで立て直しを図りたい試合だった。
しかし、試合の入りは決して良くなかった。開始早々に守備の間を使われ、オルカに先制を許した。守備ラインの対応も不安定で、前半序盤は追加点を奪われてもおかしくない場面があった。
それでも、湯郷は徐々に中盤での強度を高め、オルカのミスを誘う形で流れを引き寄せた。PKで同点に追いつき、さらに前半終盤には相手のミスから逆転。ホームの声援を受けながら、試合をひっくり返した点は評価できる。
一方で、後半にアルマ・デービス選手の個人技を止め切れず、同点ゴールを許した。全体として中盤の構成力や前線への意識は見えたが、守備の安定感にはまだ課題が残る。
1部昇格初年度として見れば、最下位に沈まずに戦えていることは健闘と言える。中盤の組み立てや前線の個の力はあるだけに、守備が安定すれば、さらに勝ち点を積み上げられるチームだと感じた。
次節は下位に位置する日体大SMG横浜戦。ホームで得た勝ち点1を、次の勝ち点3につなげたいところだ。
順位表

リソース
フルマッチLIVE配信(Youtube)
公式記録

