現在なでしこリーグ1部の7位に位置するオルカ鴨川FCと同リーグ8位に位置する岡山湯郷Belleの一戦をオルカ鴨川FC目線で振り返る。
リソース
フルマッチLIVE配信(Youtube)
公式記録

公式ガイドブック
要約
- オルカは開始3分、#10アルマ・デービス選手が起点→#11河野有希選手→#5浅野綾花選手の流れで先制も、PK被弾とバックパスを奪取され失点し前半に逆転を許す。
- 後半56分に#5浅野綾花選手のアーリークロスを#10アルマ・デービス選手が収めて同点弾、最終スコアは2-2。
- #10アルマ・デービス選手は2試合で3ゴール。ターゲットと決定力で存在感、#5浅野綾花選手は一列前で1G1Aと中盤~前線の連動性向上に貢献。
- 湯郷は中盤のプレスと縦への意識で徐々に試合の主導権を握るも、最終ラインの脆さと攻撃の迫力不足で勝ち切れず。
注目ポイント
- 采配と交代カードの影響
- オルカは#9齊藤彩花選手を前半で交代させ、#13浅坂真桜選手を投入。縦への推進力を加えて攻撃に変化をもたらし、後半流れの改善を図った。
- オルカゴールキーパー田谷春海選手のビッグセーブ
- 前半8分の1対1やPK以外の危険な場面で的確なセーブを見せ、チームが崩れるのを防いだ。スコア以上に試合を繋ぎとめた存在感が大きい。
- 若手選手のリーグ初出場
- 終盤に投入された#33田中陽世里選手がなでしこリーグ初出場を果たし、経験の浅い選手層を底上げするチームの姿勢が見えた。
試合情報
会場 | JFE晴れの国スタジアム(岡山湯郷Belleホームスタジアム) |
観客数 | 1,427名 |
フォーメーション・スターティングラインナップ
オルカ鴨川FC

勝利した前節と同じスタメン。ベンチは#8新田琴端選手がベンチ外、変わって#2高村ちさと選手がベンチ入りした。中断期間前まで運動量と献身性で活躍していた#20上田麻莉選手はこれで3試合連続のベンチ外。
岡山湯郷Belle

試合展開
前半
前半3分、早くもオルカ鴨川FCが先制点を挙げる。
オルカ、開始3分で先制点
3分、オルカのエースストライカー#10アルマ・デービス選手が起点となり、#5浅野綾花選手が早くも先制点を挙げる。
中盤のこぼれ球をアルマ選手が拾ってドリブル。左サイドに開いてスプリントしている#11河野有希選手にスルーパス。河野選手はペナルティエリア内で岡山#14今野瞳選手の股を通るグラウンダーのクロスを蹴り、中央にフリーで走りこんでいた#5浅野選手がワンタッチで左足で合わせてゴール右隅へと決めた。
前節、静岡SSUボニータに1-5と大敗している岡山湯郷Belleは守備が安定していなかった。守備の人数はそろっているものの、ファーサイドにはオルカ#23安東美那選手もフリーで走りこんできていた。
8分、1点を追う湯郷は、オルカのバックパスを奪ってビッグチャンスを迎える。キーパーと1対1となった#5内田好美選手がシュートを放つが、オルカGK#1田谷春海選手がナイスセーブを見せてボールを弾き出して難を逃れた。
16分、湯郷のコーナーキックをオルカGK#1田谷春海選手がファンブル。しかしこれを押し込めず。
18分、味方DFのクリアボールを競り勝ちマイボールにして左足シュート。湯郷GKにキャッチされるが、一人でシュートまで持ち込める強さと上手さを見せる。
さらに18分、オルカ右SBの#23安東美那選手がボールを奪って左サイドに展開。#6浦部美月選手のアーリークロスを#5浅野綾花選手がフリーでヘディングを放つが惜しくもゴール上に外れた。
このシーンも湯郷はディフェンス対応が曖昧で、されるがままといった印象。オルカの決定機の少なさと決定力のなさに助けられている。前節、攻撃力だけならなでしこリーグ1部トップであろう静岡SSUボニータに5失点したことも納得できる。
25分、飲水タイム開けのオルカ鴨川FCのフリーキック。湯郷DFが弾き返したボールを左SHの#24谷口愛奈選手がダイレクトボレー。精度を欠いてゴール上へと外れた。
湯郷のサイドからの崩しにPKを献上。これを決めて湯郷が同点に追いつく
27分に湯郷がPKを獲得。湯郷#10中野琴音選手が左サイドから上げたクロスに反応したオルカDF#3月東優季乃選手だったが、ボールが手に当たってしまった。
湯郷、同点のチャンス。このPKを#6小松未奈選手がしっかり決めて、前半のうちに1-1に追いつき試合を振り出しに戻す 。オルカGK#1田谷春海選手はコースは読めていたものの手が届かず。
30分頃から、中盤の競り合いを湯郷が制するようになり、オルカはエースストライカーの#10アルマ・デービス選手までボールをつなげなくなってくる。
34分に岡山が逆転の決定機を迎える。一旦ディフェンスラインまで戻したボールをDF後ろまで戻してDF#11塩谷瑠南選手が前線に浮き球のパス。オルカDFを抜けた#13秋元美雨選手がこれをピタリとトラップしてシュート。惜しくもゴール左に外れた。
相手の不用意なバックパスを奪い、ついに逆転する岡山湯郷Belle
39分に湯郷は逆転を決める。オルカ#9齋藤彩花選手の中途半端なバックパスを奪った湯郷は右サイドから#13秋元美雨選手が上げたクロスを#8南山千明選手が頭で合わせ、オルカのゴールネットを揺らした。
完全に勢いに乗った湯郷に押されて苦しいオルカだが、アルマ・デービス選手が違いを見せる。45分にルーズボールを収めて右サイドペナルティエリア内からマイナスのクロスを上げる。これは合わせる見方が居なかったが、前を向いた時の存在感と怖さは突出している。
AT、さらにアルマ・デービス選手は相手のクリアボールを奪って強引に切り込んでシュートで終わらせ、コーナーキックのチャンスを得たが、このチャンスを活かすことができずに前半終了。
オルカ鴨川FCは幸先良く開始3分で先制ゴール、そしてセカンドボールへの反応の速さを見せた。しかし1失点目はアクシデント、2点目は完全に自らの判断ミスで逆転ゴールを献上する事となった。
対するホームの岡山湯郷Belleは消極的な試合の入り、そしてDFラインが不安定、開始3分で先制点を許す嫌な流れだった。だが1400人を超える観客の応援を受けて徐々に縦への意識が強くなり、中盤でプレスをかけて相手のミスを誘発させ、前半終盤で逆転する事ができた。
後半
後半開始、オルカ鴨川FCは致命的な判断ミスが目立っていた#9齊藤彩花選手を下げて#13浅坂真桜選手を投入。縦への推進力を改善する狙いであろう。また、両サイドバックがポジションチェンジ(RSB安東選手・LSB浦部選手 → LSB浦部選手→RSB安東選手)。

前半に比べて落ち着いた展開の後半。後半開始から入ったオルカ#13浅坂真桜選手は積極的に縦へ向かう姿勢とサイドで1対1を仕掛けてファイルゲットしフリーキックを獲得するなど、善戦している印象。
オルカ鴨川FC、エースのアルマ・デービス選手が同点ゴールを叩き込む
56分、右サイドから#5浅野綾花選手のアーリークロスをアルマ・デービス選手がトラップして湯郷DFが届かない位置にボールを落とす。そしてそのままカットインして右足を一閃。低く鋭いシュートがゴール左隅に突き刺さった。苦しい展開のオルカだったが、後半の早い時間帯に追いついた。オルカ鴨川FC#10アルマ・デービス選手は2試合連続ゴールで今シーズン5ゴール目。オルカのエースストライカーとして#5浅野綾花選手はこの試合1G1Aの活躍。
同点に追いつかれた岡山湯郷Belleは58分に選手交代。逆転ゴールを決めた#8南山千明選手に変えて、169cmの#4丸形梨恵選手がピッチイン。DF登録の選手だが南山選手がいたFWに入り、前線のターゲットとして活かすようだ。

同点の状況だが湯郷が押し気味で試合を進める。65分に岡山10番が3人に囲まれながらも抜いて左サイドに展開しチャンスの起点を作る。
流れを変えたいオルカ鴨川FCは68分に選手交代。#24谷口愛奈選手がOUT、#25齊藤桃花選手がピッチに入る。#11河野選手が右SHにポジションチェンジし、#25齊藤選手はFWに入った。

70分にオルカ左サイドで1対1を仕掛けた#13浅坂選手がファイルを受けてフリーキックを獲得。浅坂選手は#20上田麻莉選手と似たプレイスタイルの印象。
74分、湯郷は右サイドに展開してチャンスを伺うもオルカ#3月東優季乃選手がさすがの対応を見せる。月東選手は1対1をスピードで振り切られる以外、対人能力もカバーリング能力も相当高いと感じる。
75分に両チーム選手交代。オルカは#23安東美那選手が下がって#17越路萌永選手が左サイドバックに入った。

湯郷は75分、#13秋元美雨選手を下げて#24岸波美采選手が入る。続けて84分にも選手交代。#2島村公美子選手に替えて#27成田夢愛選手、#6小松未奈選手に替えて#15山本早織選手。

84分、湯郷FW#10中野琴音選手がオルカ#5浅野綾花選手からボールを奪ってロングシュートでゴールを狙うが、オルカGK#1田谷春海選手がしっかりキャッチ。中野選手は#5内田好美選手に預けて組み立てれば可能性は上がったかもしれない。
85分、オルカが2枚替え。最後の選手交代をおこなう。同点ゴールであり相手の脅威になり続けていた#10アルマ・デービス選手に替えてシーズン途中でジェフ千葉レディースから完全移籍した#27今田紗良選手がピッチイン。そして後半開始から入ったが少し疲れが見えていた#13浅坂真桜選手を下げて#33田中陽世里選手が投入された。#33田中陽世里選手はなでしこリーグ初出場となった。

オルカは押される流れを変える事ができないが、湯郷の攻撃にも迫力がなく、後半ATの湯郷#5内田選手のヘディングシュートはゴールマウスの右へと外れてしまった。
そして試合は2-2同点のまま終了のホイッスルが吹かれた。
総括
オルカ鴨川FC
チームにフィットしたエースFW、アルマ・デービス選手
前節のASハリマアルビオン戦では2ゴール、そして今節の岡山湯郷Belle戦では1ゴールで大活躍中のアルマ・デービス選手。ゴールシーン以外でも前線のターゲットや味方が上がるためのタメを作ったりで攻撃に貢献、更には積極的なチェイスで守備面での貢献度も高い。
パスとサイドで崩してシュート、しか見られなかった(しかも期待値が低かった)シーズン序盤のオルカの戦い方だったが、強靭なフィジカルと決定力、そしてストライカーとしての嗅覚と実績を持つアルマ・デービス選手に預ければ何か起こしてくれそうな期待感が高まっていると感じる。多少雑なボールやマークが外れてなくてもアルマ選手がそれをマイボールとしてくれるから、味方はアルマ選手を信じて縦に行くことができていると感じる。
1列ポジションを上げ、攻撃面で広い視野と展開力が活きている浅野綾花選手
中断期間前はアンカーとして広い視野で危機を察知し献身的な動きと豊富な運動用で早めの守備貢献、そして攻撃の起点となるパスを散らしていた#5浅野綾花選手は前節からCMFあるいはトップ下に位置している。この効果が表れていて、オルカは前線と中盤のつなぎがスムーズになっている。そして浅野選手は決定力も高く、万能型のプレイヤーとしてチームの中盤の核として活躍していると感じる。
消極的なバックパスと戦う姿勢
この試合、残念だったのはキャプテンの#9齋藤選手のプレイだった。消極的な判断が目立ち、球際の競り合いも苦手な様子。キャプテンシーの在り方は人・チームそれぞれだが、キャプテンマークを巻いているにも関わらず早めの途中交代や出場しない試合が多いことから、彼女が置かれている状況を少なからず察する事ができる。なでしこリーグの経験が浅い選手が多いチーム状況の中、オルカ鴨川FCの顔である斎藤選手には奮起していただいて、苦しい場面でも戦う姿勢を若手に見せてほしいと願う。
岡山湯郷Belle
前節1-5で大敗を喫した後のホームゲームという事もあり集中して臨んだであろう試合だが、序盤の慌しい展開の中で早々に失点を許してしまった。その後は相手のミスや幸運が味方して一時はリードするも、守備ラインの脆さは最後まで改善されずに同点で試合を終えることとなった。中盤の構成力はあると感じるので、守備が安定すれば失点数が減りもう少し上位に位置できると思うが、1部昇格初年度とすれば、最下位ではないので健闘している。次節は現在11位の日体大SMG横浜戦なので、勝ち点3を狙いたい。
