三重県伊賀市を本拠地とする伊賀FCくノ一三重は、なでしこリーグ1部に所属する女子サッカークラブです。
1976年に「伊賀上野くノ一サッカークラブ」として創設され、2026年にクラブ創設50周年を迎えました。日本女子サッカーリーグで3度、皇后杯で3度の優勝を経験している、長い歴史を持つクラブです。
2026シーズンの大きな特徴は、高い最終ラインと前線からのプレス。チーム全体をコンパクトに保ち、中盤の強度とセカンドボールへの反応で相手の前進を制限します。ボールを奪えば、両サイドの推進力を生かして一気にゴールへ向かいます。第14節の静岡SSUボニータ戦、第15節のヴィアマテラス宮崎戦でも、この守備と前進の強さが際立ちました。
本ページでは、伊賀FCくノ一三重のチームとしての特徴、注目選手、関連する試合レビュー記事をまとめて紹介します。
チームスタッツ
チームの特徴
50年の歴史、現行のなでしこリーグでも上位を争う
伊賀FCくノ一三重は1976年に創設され、2026年に50周年を迎えた歴史あるクラブです。
現在のなでしこリーグ体制となった2021シーズンには、17勝2分3敗でリーグ優勝。翌2022シーズンは2位、2023シーズンは3位、2024シーズンは5位、2025シーズンは再び2位と、継続して上位争いに加わってきました。
| シーズン | 最終順位 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 得点順位 | 全チーム平均得点 | 全チーム中央値 | 失点 | 失点順位 | 全チーム平均失点 | 全チーム中央値 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021 | 1位 | 17 | 2 | 3 | 53 | 1位 | 30.1 | 26.5 | 17 | 1位 | 30.1 | 28.0 |
| 2022 | 2位 | 14 | 4 | 4 | 37 | 4位 | 27.7 | 25.0 | 18 | 2位 | 27.7 | 25.5 |
| 2023 | 3位 | 11 | 7 | 4 | 39 | 2位タイ | 32.0 | 33.5 | 20 | 2位 | 32.0 | 31.5 |
| 2024 | 5位 | 10 | 4 | 8 | 33 | 5位タイ | 30.9 | 31.5 | 30 | 8位 | 30.9 | 26.5 |
| 2025 | 2位 | 11 | 8 | 3 | 36 | 2位 | 28.2 | 28.0 | 21 | 2位タイ | 28.2 | 28.0 |
数字を見ると、伊賀の安定感がよく分かります。
2021シーズンから2025シーズンまで、得点数はすべてリーグ5位以内。守備面でも、2024シーズンを除く4シーズンで失点数はリーグ2位以内です。
攻撃だけ、守備だけに偏るのではなく、攻守の両面でリーグ上位水準を維持してきたことが、伊賀の継続的な強さにつながっています。
高い最終ラインと連動したプレス
2026シーズンの伊賀を見ていて、特に印象的なのが高い最終ラインと前線からのプレスです。
前線の選手が相手のビルドアップへ圧力をかけると、中盤も素早く前へ出る。最終ラインも高い位置を保ち、チーム全体の縦幅をコンパクトにします。
相手がロングボールでプレスを回避しようとしても、最終ラインが前向きに対応。こぼれ球には中盤が反応し、再び伊賀のボールにする。
一人の守備力だけではなく、前線、中盤、最終ラインが連動して相手のプレーエリアを狭めていくチームです。
セカンドボールを回収し、何度でも攻める
伊賀の強さは、最初の攻撃だけではありません。
相手に一度ボールを跳ね返されても、中盤がセカンドボールを回収して再び攻撃を始める。二次攻撃、三次攻撃と続けることで、相手を自陣から出させない時間を作ります。
第15節の宮崎戦では、この特徴が特に鮮明でした。宮崎がボールをクリアしても、常田麻友選手らを中心に伊賀が再び回収。シュート15本を放つ一方、宮崎のシュートを3本に抑えました。
また、ボールを奪った後は、ゆっくり攻撃を作り直すだけではありません。
増田玲那選手や渡邊凜選手がサイドから前進し、スペースがあれば一気に縦へ向かう。守備から攻撃へ切り替わった瞬間の推進力も、伊賀の大きな武器です。第14節の静岡戦では、増田選手と渡邊選手が左サイドから前進する場面が伊賀の攻撃を支えました。
上位3連戦で見えた完成度と、最後の一歩
第13節から第15節まで、伊賀は名古屋、静岡、宮崎と上位チームとの対戦が続きました。
名古屋には1-2で敗れたものの、第14節では首位だった静岡を1-0で撃破。第15節は宮崎を長い時間押し込みながら0-0で引き分け、上位3連戦を1勝1分1敗で終えました。
結果だけを見れば五分ですが、内容面では伊賀の守備とプレスの完成度が強く印象に残りました。
一方で、宮崎戦では15本のシュートを放ちながら無得点。押し込む時間を作り、相手の攻撃を制限しても、最後のゴールを奪えない試合があります。
第15節終了時点で伊賀は勝点26の5位。7勝5分3敗で中断期間を迎えています。
高い強度で試合の主導権を握る力を、どれだけ得点につなげられるか。
2026シーズン後半、上位との差を縮めるための大きなポイントになりそうです。
注目選手
ここからは、筆者が2026シーズンの試合を追う中で特に印象に残った4選手を紹介します。
伊賀の強みである高い最終ライン、連動した守備、中盤の強度、サイドからの推進力を支えてきた選手を中心に取り上げます。
CB 秦 美結(MIYU HATA)
伊賀の高い最終ラインを支える、守備陣の中心的な存在です。
対人守備の強さに加え、相手の前線へ積極的に寄せる前向きな守備が魅力。最終ラインを高く保つ伊賀では、背後のスペースへの対応やライン全体の連動が求められますが、その中で安定したプレーを続けています。
第14節の静岡SSUボニータ戦では、横山久美、中島咲友菜、三輪玲奈ら強力な攻撃陣に自由を与えず、静岡をシュート5本に制限。第15節の宮崎戦でも、伊賀の最終ラインを支え、相手のシュートを3本に抑える守備に大きく貢献しました。
また、第11節の日体大SMG横浜戦では無失点勝利に貢献し、自らも得点を記録。守備だけではなく、セットプレーでも存在感を示しています。
MF 常田 麻友(MAYU TSUNEDA)
2026シーズン中断前まで、チームキャプテンを務め、伊賀の中盤を支えた中心選手です。
セカンドボールへの反応、球際の強さ、相手に自由を与えない守備が大きな魅力。ボールを奪った後は前への判断も早く、伊賀が相手を押し込み続けるためのつなぎ役にもなります。
第13節の名古屋戦では、先制された4分後に同点ゴールを記録。前からの圧力を落とさず戦った伊賀の姿勢を象徴する一撃でした。
第14節の静岡戦では中央を締めて相手の攻撃の起点を制限。第15節の宮崎戦でも、セカンドボールを回収し続け、伊賀の二次攻撃、三次攻撃を支えました。
中断期間には、AC長野パルセイロ・レディースへの完全移籍が発表されました。伊賀で5年6か月プレーし、中盤の中心としてチームを支えた常田選手がWEリーグへ挑戦します。今後の活躍にも注目です。
MF 増田 玲那(RENA MASUDA)
左足のキックと豊富な運動量、前への推進力が魅力のMFです。クラブ公式プロフィールでも左利きとして登録されています。
低い位置まで戻って守備に関わりながら、ボールを持てば一気に前進。左サイドから鋭いボールを前線へ送り、試合の局面を変えられる選手です。
第12節のオルカ鴨川FC戦では、低い位置から左足でGKとDFの間へ鋭いボールを供給。第14節の静岡戦では、左足のミドルシュートで決勝点を記録しました。
攻撃だけではなく、試合終盤まで運動量を落とさず守備へ戻る点も大きな強みです。
守備から攻撃へ一気に移る伊賀のスタイルを、サイドから体現する選手の一人です。
MF 渡邊 凜(RIN WATANABE)
スピードと豊富な運動量を生かし、サイドから伊賀の攻撃を前へ進めるMFです。
相手の背後へ抜け出す動きが鋭く、ボールを受ければ前向きにゴールへ向かう。守備でも低い位置まで戻り、ボールを奪えば再び前線へ走るなど、攻守を繰り返せる運動量も大きな強みです。
シーズンが進むにつれ、左サイドで増田玲那選手との連係も目立つようになりました。増田選手が低い位置からボールを運び、渡邊選手がスピードを生かして背後や内側へ動く形は、伊賀がサイドから前進する大きな武器の一つです。
第11節の日体大SMG横浜戦では先制ゴールを記録。さらに、自ら放ったシュートがクロスバーを叩き、唐沢芽依選手の追加点につながりました。積極的にゴールへ向かう姿勢と豊富な運動量で、伊賀の攻守を支えました。
中断明け、中盤の核を欠く伊賀はどう変わるか
2026年にクラブ創設50周年を迎えた伊賀FCくノ一三重。長い歴史を持つクラブは、2026シーズンも高い最終ラインと連動したプレス、中盤の強度を武器に上位を追っています。
第13節から続いた上位3連戦では、名古屋には敗れたものの、首位・静岡を撃破。宮崎戦でも相手を押し込み、伊賀の強さを改めて示しました。
一方、中断期間には常田麻友選手が移籍。チームの強みを支えてきた中盤の中心を欠く中で、これまでの強度を維持しながら、どのような新しい形を作るのか。
創設50周年のシーズンで、再び優勝争いへ加わることができるのか。
中盤の核を失った伊賀が、中断明けにどのような答えを見せるのか。2026シーズン後半も、伊賀FCくノ一三重の戦いから目が離せません。


