2026シーズンの開幕戦で相まみえたのは、2025シーズン王者の朝日インテック・ラブリッジ名古屋と、2024シーズン王者のヴィアマテラス宮崎。試合はスコアレスドローに終わったものの、随所に上位候補同士らしい緊張感と質の高さが表れた、見応えのある90分だった。
リソース
フルマッチLIVE配信(Youtube)
第1節全試合ハイライト動画
公式記録
公式ガイドブック
注目ポイント
- 一昨シーズン王者・宮崎を、ホームで迎え撃つ昨季王者・名古屋
- 高い完成度を誇る名古屋と、充実した補強で上積みを図ったヴィアマテラス宮崎
試合情報
| 結果 | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 0-0 ヴィアマテラス宮崎 |
| 会場 | CSアセット港サッカー場 |
| 観客数 | 472人 |
スターティングラインナップ
以降、敬称略。

ホームの名古屋は、若干名の主力メンバーが退団したものの、なでしこリーグ1部の各クラブからの補強に加え、大学・高校年代のルーキーもバランスよく獲得した。昨シーズンにチームを優勝へ導いた磯村健監督が今季も指揮を執る。よく組織された「攻撃のための守備」と、前への圧力を伴うポゼッションサッカーで、今シーズンもリーグの中心となれるかが注目される。なかでも、筆者が応援しているオルカ鴨川FCで昨シーズンは公式戦出場のなかったGK#1横山野ノ香が、前年王者の開幕戦でゴールマウスを任されていることは、何とも誇らしい。
対する宮崎は、なでしこリーグ1部の他クラブから主力級の選手を積極的に補強した。もともと縦に速く、ゴール前に迫力のある攻撃が持ち味のチームに、FW#9土屋佑津季、DF#3國生乃愛、GK#50後藤優香ら、実力と実績を兼ね備えた選手たちが加わった。今シーズンから指揮を執る佐藤考範監督のもと、2シーズンぶりのリーグ優勝を目指す。
試合展開
前半、名古屋が中盤の主導権を握る
前半は、名古屋の中盤底を担う#4逸見、#5安部の攻守にわたる貢献が目立った。適切なプレスと効果的な前線への飛び出し、それに連動するDF陣のポジショニングが素晴らしい。左SB#2夏目のオーバーラップも効いており、縦に速く進みたい宮崎の出足を鈍らせていた。
名古屋は得意のパスワークで、狭い密集地帯でもワンタッチパスを通して宮崎の守備網をかいくぐり、ゴール前へ迫る場面を何度も作る。FW#13仁木、#9水野も最前線から中盤まで幅広く動き、守備のスイッチを入れながら、攻撃ではボールの引き出し役として機能していた。
宮崎も高い位置から対抗、0-0で折り返し
一方の宮崎も、両サイドバックが高い位置を取り、縦へ、前へという姿勢を全面に押し出してハードワークを見せた。コンパクトな陣形で前への意識が強い半面、両サイドバックの背後には広大なスペースも生まれる。名古屋はそこを狙ったが、宮崎も攻守の切り替えが速く、簡単にはプレーさせない。前半は0-0で終了した。
後半序盤、宮崎のプレッシングが名古屋を揺さぶる
後半に入ると、宮崎がより前向きな姿勢を強める。FW#4永野を筆頭とした前線からのプレッシングで、名古屋のビルドアップの自由を奪いにいった。開始早々には、#18中野の決定機につながる裏抜けからのクロスを生み出し、さらに名古屋の右サイドの背後も執拗に狙う。対応した名古屋#17堀内が警告を受ける場面もあり、鉄壁の名古屋守備陣を揺さぶった。
高い位置でボールを奪うと、宮崎の選手たちは一斉に前へ走り出し、波状攻撃を仕掛ける。ヴィアマテラス宮崎といえば、この運動量と迫力だと改めて感じさせられる時間帯だった。
名古屋が押し返す、耐える宮崎
しかし、そこで耐えるのが王者・名古屋である。しっかりとゴール前にブロックを敷き、対人能力の高さでも簡単には崩れない。しかも、やみくもにクリアするのではなく、パスをつないで自分たちの攻撃へとつなげる。まさに「攻撃のための守備」を体現していた。
後半開始から10分ほどが過ぎると、徐々に宮崎のプレス強度が落ち始める。すると、高い最終ラインの背後を狙う名古屋が押し返し、試合は再び拮抗した展開へ。攻守が目まぐるしく入れ替わる中で、互いに決定打を欠く時間が続いた。
この状況を変えるべく、先に動いたのは宮崎だった。60分にFW#9土屋、FW#30富沢を一気に投入し、明確に勝ち点3を狙う姿勢を打ち出す。
その直後、名古屋がボール奪取から細かなパスワークとドリブルで右サイドを崩し、最後はクロスに#13仁木が左足で飛び込む。しかし、これは惜しくもゴールならず。苦しい体勢ではあったが、GKもDFも完全には反応できておらず、決まっていてもおかしくない場面だった。
名古屋は#2夏目が、宮崎#4永野と、背後を狙う#9土屋への対応に追われる中で、やや縦への推進力を抑えられる。その一方で、一列前の左サイドに入る#8渕上が存在感を増していった。#5安部とポジションを入れ替えながら中盤でボールを回収し、パスとドリブルを織り交ぜて前進。得点の匂いを高めていく。
新加入の宮崎GK#50後藤がチームを救うビッグセーブ
75分には、名古屋GK#1横山のロングフィードを#13仁木が中盤で収めてタメを作る。そこから抜け出した#8渕上がそのままゴール前までドリブルで持ち込みシュートを放つが、これを宮崎のGK#50後藤がビッグセーブ。伊賀FCくノ一三重から新加入し、開幕スタメンを任された後藤が大仕事をやってのけた。
終盤は名古屋がボールを保持し、宮崎がカウンターを狙う構図となったが、最後まで両チームの守備陣が踏ん張り、試合は0-0のまま終了した。
総括
強豪同士のハイレベルな一戦だった。
両チームに共通していたのは、中盤で生まれた甘いパス、緩いパスに対して即座に反応し、マイボールへとつなげる鋭さである。互いに距離感とポジショニングが良く、簡単に前進を許さない。そうした中で、奪った後の展開力では名古屋に分があるように感じた。パスで前へ運び、宮崎の陣形が整う前の隙を突く流れが整理されていたからだ。
一方の宮崎は、選手個々が縦への突破を第一選択肢に置いている印象が強く、名古屋の速い寄せに苦しむ場面もあった。その守備をかわすためにパスを選択しても、#10橘、#17堀内を中心とした名古屋守備陣の統率と個の強さに跳ね返される。さらに名古屋は守備から攻撃への転換が非常にスムーズで、ワンタッチのパス交換と効果的なドリブルを織り交ぜながら、宮崎の選手たちを走らせていた。
名古屋はパスワークを得意とするチームだが、とりわけサイドの選手たちは個の能力も高く、ドリブルで運ぶこともできる。相手にとっては、飛び込むのか、スペースを埋めるのかという判断を常に迫られる、厄介な存在だ。
宮崎は、移籍で加わった戦力が今後どのようにチームにフィットしていくかが鍵になりそうだ。GK#50後藤は、チームを救うビッグセーブを含めて安定したパフォーマンスを見せた。一方で、リーグを代表する万能型FW#9土屋は、まだ本来の怖さを十分に出し切れていない印象も残った。彼女のパフォーマンスがさらに上がってくれば、既存戦力に新戦力が上積みされた宮崎は、間違いなく他チームにとって大きな脅威になる。
また、試合が行われたCSアセット港サッカー場は、YouTube配信から見ても芝の状態が良く、ボールがよく走る印象だった。名古屋のようなテンポの良いパスサッカーにとっては、プレーしやすいピッチだったのではないか。これは映像から受けた印象にすぎないが、試合全体の技術的な質を高めていた要素の一つに見えた。
名古屋を相手に複数の好機を作った宮崎は、今季も上位争いに食い込んでくるだろう。一方の名古屋も、シーズンを通してさらに成熟度を高めていけば、どこまで隙のないチームになるのか楽しみである。さらに開幕節では静岡SSUボニータも大量得点で白星発進しており、2026シーズンのなでしこリーグ1部は序盤から見どころの多いシーズンになりそうだ。
朝日インテック・ラブリッジ名古屋 公式レポート(Instagram)
ヴィアマテラス宮崎 公式レポート

順位表
第1節を終えて、名古屋・宮崎ともに7位タイのスタートとなった。

次戦、朝日インテック・ラブリッジ名古屋は、ヴィアマテラス宮崎とやや似た強度と前進力を持つと筆者が見る伊賀FCくノ一三重と、アウェーで対戦する。ヴィアマテラス宮崎は、開幕戦で黒星発進となったニッパツ横浜FCシーガルズをホームに迎える。
開幕ダッシュで積み上げた勝点は、後半戦で大きな意味を持つ。名古屋、宮崎の両チームは今季も上位争いを面白くしてくれる存在だと思うだけに、それぞれの次戦にも期待したい。

