第12節終了時点で2位につける朝日インテック・ラブリッジ名古屋が、ホームに4位の伊賀FCくノ一三重を迎えた。
第2節の対戦は1-1のドロー。当時の名古屋は昨季王者としての難しさを抱え、伊賀も持ち前の強度と守備力で真っ向からぶつかった。互いの良さを消し合う、緊張感の高い試合だった。
前回対戦のレビュー
第2節:伊賀FCくノ一三重 1-1 朝日インテック・ラブリッジ名古屋
再戦となった第13節も、やはり両者の強度と守備力が際立つ好ゲームとなった。伊賀はハイプレスと球際の強さで名古屋のビルドアップを制限しようとしたが、名古屋は相手の武器を消しながら、自分たちの強みである運動量、切り替えの速さ、ビルドアップの精度を90分間維持。最後まで迫る伊賀を退け、2-1で勝利を収めた。
名古屋にとっては、上位直接対決で大きな勝点ち3。優勝争いにおいて、非常に価値のある勝利だった。
この記事の要点
- 名古屋は伊賀の右サイド、特に渡邊凜の関与を抑え、相手の最大の武器を使わせなかった
- 伊賀は先制を許しながらも、常田麻友のゴールで前半のうちに同点。最後まで名古屋を押し込む時間を作った。
- 勝敗を分けたのは、名古屋の試合運びの巧さと、強度を落とさずにビルドアップと切り替えを続けた完成度だった。

試合情報
2026プレナスなでしこリーグ1部 第13節
| 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 伊賀FCくノ一三重 |
|---|---|
| 2 | 1 |
| 35分 渕上 野乃佳 50分 藤原 愛里 | 39分 常田 麻友 |
| 日時 | 2026年06月13日 13:00 |
| 会場 | 豊橋市民球技場(愛知県) |
| 観客数 | 653人 |
スターティングラインナップ・登録メンバー
朝日インテック・ラブリッジ名古屋
| Pos | No. | 氏名 | 交代 |
|---|---|---|---|
| GK | 16 | 流川 桐佳 | |
| DF | 24 | 角田 菜々子 | |
| DF | 10 | 橘 麗衣 (Cap.) | |
| DF | 17 | 堀内 意 | |
| DF | 2 | 夏目 歩実 | |
| MF | 14 | 上田 真子 | 82▼ |
| MF | 5 | 安部 由希子 | 71▼ |
| MF | 4 | 逸見 桃子 | |
| MF | 8 | 渕上 野乃佳 | 82▼ |
| FW | 11 | 藤原 愛里 | 60▼ |
| FW | 28 | 永田 晶子 | 71▼ |
| 控え | |||
| GK | 1 | 横山 野ノ香 | |
| DF | 3 | 森口 莉子 | 82▲ |
| DF | 25 | 河合 野乃子 | 82▲ |
| MF | 15 | 中村 友香 | 71▲ |
| MF | 20 | 増永 朱里 | 60▲ |
| MF | 21 | 大場 柚季 | 71▲ |
| MF | 26 | 長谷原 彩音 | |
| 監督: 磯村 健 | |||
伊賀FCくノ一三重
| Pos | No. | 氏名 | 交代 |
|---|---|---|---|
| GK | 16 | 小野 未織 | |
| DF | 18 | 井上 歩香 | |
| DF | 26 | 清 悠香 | |
| DF | 3 | 秦 美結 | |
| MF | 14 | 増田 玲那 | |
| MF | 6 | 常田 麻友 (Cap.) | |
| MF | 7 | 渡邊 凜 | |
| MF | 8 | 島野 美央 | 75▼ |
| MF | 24 | 唐沢 芽依 | 85▼ |
| FW | 10 | 平田 ひなの | |
| FW | 11 | 児野 楓香 | 60▼ |
| 控え | |||
| GK | 21 | 合田 朱里 | |
| DF | 13 | 髙山 菜々香 | |
| DF | 5 | 常田 菜那 | 60▲ |
| MF | 15 | 竹島 加奈子 | 85▲ |
| MF | 25 | 上田 彩葉 | |
| MF | 23 | 米澤 心花 | |
| FW | 22 | 松田 吏真 | 75▲ |
| 監督: 永井 良明 | |||
試合展開
伊賀のハイプレスと、名古屋の回避策
立ち上がりから伊賀は、名古屋のビルドアップに対して強く圧力をかけた。前線からのプレッシャーで時間と選択肢を奪い、名古屋に自由な前進を許さない狙いである。
対する名古屋は、相手のプレスが整う前にスローインを素早く再開し、サイドから前進する場面を作った。最近の名古屋には、このクイックリスタートから相手の守備配置をずらす形が多く見られる。

両チームともコンパクトな陣形を維持し、中盤の強度は高かった。伊賀は最終ラインからシンプルに前線へ入れ、FW#10平田ひなののポストプレーや中盤のサポートを使って前進を狙う。一方の名古屋は、伊賀の強烈なプレスを受けながらも、ピッチを広く使ってボールを動かした。
序盤に大きなチャンスを作ったのは名古屋だった。#11藤原愛里がペナルティエリア内でシュートフェイントから切り返し、逆足でシュート。伊賀GK#16小野未織が弾いたボールに#28永田晶子が詰めたが、小野が続けて身体を投げ出し、ゴールを許さなかった。
名古屋が徹底した「渡邊凜封じ」
この試合で名古屋が徹底していたのは、伊賀の右サイド、特に#7渡邊凜をどう試合から遠ざけるかという点であるように見受けられた。
渡邊はスピードと突破力を備え、伊賀の攻撃において大きな推進力を生み出す選手である。名古屋は自陣の低い位置では、できるだけ渡邊のいるサイドを使わせないようにし、反対サイドから攻撃を組み立てた。

さらに、左サイドを使う場面でも、渡邊を内側や前方に引き出した背後のスペースを狙うなど、伊賀の武器を消しながら自分たちの前進ルートを確保していた。
相手の強みを受けるのではなく、相手の強みが出にくい場所へ試合を動かす。ここに名古屋の試合運びの巧さが表れていた。
35分、渕上野乃佳のPKで名古屋が先制
試合が動いたのは35分だった。
右サイドで#28永田晶子が粘り、#14増田玲那からボールを奪い切る。こぼれ球を拾った#5安部由希子がクロスを上げると、#8渕上野乃佳が頭で飛び込む。その瞬間、#18井上歩香の足が高く上がり、危険なプレーとして名古屋にPKが宣告された。
キッカーは渕上。GK小野はコースを読んで反応したが、渕上のキックはスピードがあり、名古屋が先制に成功した。
均衡した展開の中で得た先制点。名古屋にとっては、相手のミスを待つだけではなく、自分たちの強度と押し込みから生み出した得点だった。

39分、伊賀は常田麻友の一撃で即座に同点
しかし、伊賀も簡単には崩れない。
先制された後もラインを下げず、前からの圧力を維持した。そして39分、前半のうちに試合を振り出しに戻す。
素早いスローインから#11児野楓香、#14増田玲那とつなぎ、増田がクロスを供給。#10平田ひなのが胸で落としたボールに、#6常田麻友が反応する。常田は右足のワンタッチでシュートを放ち、ゴールネットを揺らした。
伊賀にとっては、苦しい時間帯で生まれた大きな同点ゴールである。先制されながらも、キャプテンの一撃で前半のうちに追いついたことは、伊賀の粘り強さを示す場面だった。

後半開始直後、藤原愛里が勝ち越しゴール
後半に入ると、すぐに再び試合が動いた。
50分、名古屋は右サイドからカウンターを発動する。#10橘麗衣から#14上田真子へボールが送られ、上田が前進してクロスを入れる。中央の永田晶子には伊賀DF#26清悠香が身体を張って対応したが、流れたボールの先に#11藤原愛里がフリーで入っていた。
GK小野との1対1。藤原は先にボールへ追いつき、足から飛び込むようにして押し込んだ。名古屋が2-1と勝ち越しに成功した。
前半得点後、すぐに追いつかれた直後の後半立ち上がり。そこで再びリードを奪えたことは、名古屋にとって非常に大きかった。試合の流れを伊賀に渡し切らず、もう一度自分たちのペースへ引き戻す得点だった。

伊賀は配置を変え、終盤に押し込む
再び追う展開となった伊賀は、#14増田玲那を左サイドから中央寄りに配置する時間を増やした。右サイドの#7渡邊凜との距離を近づけ、渡邊の突破力をよりゴールに近い位置で活かそうとする意図が見えた。
増田が中央に入ることで、伊賀はゴール正面からミドルシュートを狙う場面も作った。サイドだけに依存するのではなく、中央からも名古屋に圧力をかけようとした点は、同点を狙ううえで重要な変化だった。
終盤には、DF#3秦美結が最前線に上がり、攻撃の一翼を担った。高さとキック精度を備える秦を前に出すことで、伊賀はゴール前の迫力を高めた。

平田の落としから秦がゴール正面でシュートチャンスを迎えた場面もあったが、名古屋の#4逸見桃子がしっかりとシュートコースを消していたこともあり、シュートは枠の上へ外れた。
最後まで伊賀はゴールを目指した。だが、名古屋の守備は崩れなかった。集中力と強度を保ち、2-1のまま試合終了。上位直接対決は、名古屋が勝利した。
総括
名古屋の試合運びの巧さと、伊賀の粘り強さがぶつかった好ゲームだった。
伊賀は決して内容で大きく劣っていたわけではない。先制されても前半のうちに追いつき、後半に再び失点しても崩れず、終盤には名古屋を押し込む時間を作った。
それでも勝ち切ったのは名古屋だった。
相手の長所を消し、自分たちの強みを出す。ボールを保持するだけでなく、どこで相手の攻撃を削り、どこで自分たちが前進するかを整理していた。第10節の静岡SSUボニータ戦、第12節のヴィアマテラス宮崎戦に続き、名古屋は上位グループ相手に対して非常に高い実行力を見せている。
「自分たちのサッカー」を貫くだけではなく、「相手に得意な形を出させないサッカー」を遂行できること。それこそが、今の名古屋の強さである。
朝日インテック・ラブリッジ名古屋
伊賀の長所を徹底的に研究して試合に入っていた。
特に目立ったのは、渡邊凜への対応である。伊賀の右サイドにスピードと突破力があることを踏まえ、名古屋は危険な位置で渡邊に前を向かせる回数を減らした。自陣では反対サイドを使い、伊賀の攻撃の起点を遠ざける。左サイドを使う場合も、渡邊を動かした背後を狙う。単なる警戒ではなく、試合全体の設計として「渡邊の関与を減らす」ことが徹底されていた。
攻撃面では、ビルドアップの安定感が光った。伊賀のプレスは強く、簡単に前進できる相手ではなかった。それでも名古屋は、スローインの素早い再開やサイドチェンジ、前線の走力を使いながら、伊賀の守備を動かした。

藤原愛里、永田晶子ら前線の選手はオフサイドラインを積極的に攻め、セカンドボールへの反応も速かった。先制点につながるPKも、勝ち越し点も、名古屋が相手の守備を動かし続けた結果として生まれたものである。
静岡、宮崎、伊賀という上位陣を相手に勝利を重ねた名古屋は、後半戦の優勝争いの中心に立つ存在になったと言ってよいだろう。
伊賀FCくノ一三
伊賀にとっては、悔しさの残る敗戦である。
最大の武器である右サイドを名古屋に警戒され、渡邊凜が最も危険な形でボールを受ける場面は限られた。渡邊がボールに触るために中央へ絞ると、その背後や周辺のスペースを名古屋に使われる。名古屋の準備と実行力によって、伊賀の得意な攻撃パターンはかなり制限された。
それでも、一方的に押し込まれたわけではない。左サイドからクロスを供給し、常田麻友をはじめとする中盤の選手たちがセカンドボールに反応してシュートを狙った。プレスの強度は90分間維持され、名古屋に簡単な前進を許さず、前半のうちに同点に追いついた点は素晴らしかった。

また、秦美結の働きも印象的だった。3バックの左CBとして、名古屋が徹底的に狙ってきたサイドに対応し続け、終盤には前線に上がって攻撃にも関与した。守備でも攻撃でも、チームを前に進めようとする姿勢が見えた。
結果として同点ゴールは生まれなかったが、伊賀は最後まで名古屋を追い詰めた。勝ち点こそ得られなかったものの、上位相手に対して十分に戦える力を示した試合だった。
順位表
第13節全試合終了待ち
次節に向けて
朝日インテック・ラブリッジ名古屋は、次節、愛媛FCレディースとのアウェー戦に臨む。
第3節の対戦では、名古屋は試合開始直後から愛媛にビルドアップを狙われ、前半だけで3失点。後半に4点を返したものの、最終的には4-5で敗れた。現在の名古屋は当時とはチーム状況が大きく異なるが、リーグ連覇を目指すうえで、同じ相手に足元をすくわれるわけにはいかない。確実に勝ち点3を取りたい一戦である。
前回対戦のレビュー
第3節:朝日インテック・ラブリッジ名古屋 4-5 愛媛FCレディース
伊賀FCくノ一三重は、次節、アウェーで首位の静岡SSUボニータと対戦する。
前回対戦では、持ち前の運動量と守備の固さで、爆発的な攻撃力を持つ静岡を0-0のスコアレスドローに抑えた。名古屋、静岡、宮崎という上位対決が続く中で、初戦を落とした意味は小さくない。優勝争いに再び食い込むためにも、次節は勝ち点3が求められる。
前回対戦のレビュー
第3節:伊賀FCくノ一三重 0-0 静岡SSUボニータ
リソース
フルマッチLIVE配信
第13節全試合ハイライト動画
公式記録

