兵庫県の播磨地域をホームタウンとするASハリマアルビオンは、なでしこリーグ1部に所属する女子サッカークラブです。
2012年12月にクラブを創立し、2014年に日本女子サッカーリーグへ参入。2015年に2部へ昇格し、リーグ再編後の2021シーズンから1部で戦っています。
「アルビオン」は、ギリシャ神話に登場する巨人の名前です。播磨地方にも巨人の伝承が残されていることに加え、ラテン語で「白い」を意味する「albus」を重ね、「白き巨人」をイメージして名づけられました。
本ページでは、ASハリマアルビオンの成績やチームの特徴、注目選手、関連する試合レビュー記事を紹介します。
チームの特徴
2022年の3位から低迷を経て、再び上位を目指す
ASハリマアルビオンは、2021シーズンを7位で終えると、2022シーズンには13勝4分5敗、46得点を記録して3位へ浮上しました。
千葉園子選手は14得点で得点王に輝き、チームの躍進をけん引しました。
その後は2023シーズンが7位、2024シーズンが11位。2024シーズンは22試合で11得点にとどまり、得点力不足に苦しみました。
しかし、2025シーズンは9勝6分7敗、29得点24失点の5位まで順位を上げ、攻守の両面で立て直しを見せています。
| シーズン | 最終順位 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 得点順位 | 全チーム平均得点 | 全チーム中央値 | 失点 | 失点順位 | 全チーム平均失点 | 全チーム中央値 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021 | 7位 | 6 | 8 | 8 | 27 | 5位タイ | 30.1 | 26.5 | 29 | 7位 | 30.1 | 28.0 |
| 2022 | 3位 | 13 | 4 | 5 | 46 | 1位タイ | 27.7 | 25.0 | 23 | 4位 | 27.7 | 25.5 |
| 2023 | 7位 | 7 | 9 | 6 | 31 | 7位 | 32.0 | 33.5 | 34 | 7位 | 32.0 | 31.5 |
| 2024 | 11位 | 3 | 3 | 16 | 11 | 12位 | 30.9 | 31.5 | 37 | 11位 | 30.9 | 26.5 |
| 2025 | 5位 | 9 | 6 | 7 | 29 | 6位 | 28.2 | 28.0 | 24 | 4位 | 28.2 | 28.0 |
※得点順位は得点数の多い順、失点順位は失点数の少ない順で算出。
※「全チーム平均」「全チーム中央値」は、その年のリーグ全体の得点・失点分布を把握するための参考値です。
2026シーズンは、第15節終了時点で4勝4分7敗、勝点16の9位。15得点21失点という成績で中断期間を迎えました。
第10節終了時点では1勝3分6敗でしたが、第11節から第14節までを3勝1分で進み、一時は7位まで浮上。シーズン中盤には戦い方の変化が結果にも表れました。
前線の守備参加が生み出す中盤の厚み
ハリマの基本的な戦い方は、低い位置からのビルドアップです。最終ラインから丁寧にボールを動かしながら、サイドや相手守備陣の背後を狙って前進します。
今シーズン序盤は、前線の選手が比較的低い位置まで下がり、中盤の守備や攻撃の組み立てに加わる場面が多く見られました。
特に千葉園子選手と川﨑咲耶選手は、相手の最終ラインを追うだけでなく、中盤のボールホルダーへの寄せやパスコースの制限、セカンドボールの回収にも関わります。
経験と技術を持つ2人が中盤へ加わることで、中央には厚みが生まれます。ボールを奪った後も、両選手が低い位置でパスを引き出し、周囲と連係しながら攻撃の起点を担いました。
千葉選手と川﨑選手が守備と組み立てへ深く関わることは、ハリマが中盤を安定させるうえで大きな強みです。
中盤の厚みと引き換えに生まれた前線不足
一方で、前線の選手が低い位置まで下がることには、攻撃面での難しさもありました。
ボールを奪った瞬間に高い位置に選手が残っておらず、前進する間に相手が守備ブロックを整える。相手陣内までボールを運べても、ゴール前の人数と迫力が不足し、攻めあぐねる試合が少なくありませんでした。
後方からボールを動かす時間が長くなるほど、相手には帰陣して守備陣形を整える余裕が生まれます。さらに、最前線で背後を狙う選手がいなければ、相手の最終ラインも押し上げやすくなります。
その結果、ハリマが自陣から前進しようとしてもパスコースを狭められ、再び守備へ回る場面も増えていました。
得点数にも、シーズン序盤の難しさが表れています。
| シーズン | 第10節終了時点の得点 | シーズン順位 |
|---|---|---|
| 2021 | 10 | 7位 |
| 2022 | 16 | 3位 |
| 2023 | 13 | 7位 |
| 2024 | 5 | 11位 |
| 2025 | 14 | 5位 |
| 2026 | 9 | 9位(第15節終了時点) |
2026シーズンの第10節終了時点での9得点は、2021シーズン以降では、11位に沈んだ2024シーズンの5得点に次いで少ない数字です。
3位となった2022シーズンの16得点、5位だった2025シーズンの14得点と比べても、序盤の得点ペースは明確に落ちていました。
第6節の岡山湯郷Belle戦では3得点を挙げましたが、第7節から第10節までの4試合は合計2得点。第9節の伊賀FCくノ一三重戦、第10節のオルカ鴨川FC戦は連続無得点に終わっています。
得点数だけで選手配置との因果関係を断定することはできません。ただし、中盤の守備を厚くする一方で、攻撃時に前線の人数が不足したという傾向は、数字にも表れているように見えます。
取り戻しつつある攻撃の迫力
シーズンが進むにつれて、ハリマは川﨑咲耶選手と千葉園子選手を高い位置へ残す時間を増やしました。
高い位置に攻撃力のある選手を張り、常に相手最終ラインの背後への飛び出しを狙うことで、相手DFは簡単にラインを押し上げられなくなります。
第9節の伊賀戦では、川﨑選手と井上麗叶選手を前線に配置。川﨑選手が背後を狙い続けることで、伊賀の最終ラインへ継続的に圧力をかけました。試合には0-1で敗れましたが、序盤とは異なり、前線に速さを残す意図が明確になっています。
川﨑選手がスピードで背後を狙い、千葉選手が技術と得点感覚を生かしてゴール前へ入る。2人が高い位置を取ることで、相手はどちらか一方だけではなく、両選手を継続して警戒しなければならなくなりました。
第10節まで9得点だったハリマは、第11節から第14節までの4試合で6得点を記録。千葉選手と川﨑選手を高い位置で生かす形へ変化した後、攻撃の迫力は戻りつつあります。
前線の脅威と中盤の強度、そのバランスを模索
千葉選手と川﨑選手を前線へ残すことで、ハリマは相手最終ラインの背後へ継続的な脅威を与えられるようになりました。
しかし、2人が中盤の守備から離れれば、その分だけ中央で守る人数は減ります。
特に技術、判断、運動量に優れた上位チームを相手にすると、球際やセカンドボール争いで後手に回り、相手に前向きでプレーされる場面も増えました。
また、中盤でパスを受ける選手が減ることで、相手のハイプレスを受けた際に、低い位置でボールを失う危険も高まります。
どの相手に対して、どの時間帯に攻撃の選手を前線へ残すのか。周囲の選手が中盤の守備と前進をどこまで補えるのか。
2026シーズンのハリマは、攻撃の迫力と中盤の強度を両立するため、最適なバランスを探している段階で中断期間を迎えたように見えます。
決定機を得点へ変えられるか
配置の調整と同時に、ゴール前での精度にも伸びしろがあります。
第3節の日体大SMG横浜戦では、ハリマが主導権を握りながら得点を奪えず、86分の失点で0-1と敗れました。
第10節のオルカ鴨川FC戦でも、相手陣内までボールを運びながら、公式記録上のシュート数は3本。決定的な場面を十分に作れないまま無得点に終わっています。
第14節の日体大戦では公式記録上20本のシュートを放ちましたが、得点は正野可菜子選手の1点のみでした。
作った好機を確実に得点へ変えられるか。特に上位チームとの試合では、一つのチャンスを仕留める精度が勝点を左右します。
注目選手
ここからは、筆者が2026シーズンの試合を追う中で特に印象に残った選手と、今季初出場を待ちたい選手を紹介します。
FW 千葉 園子(SONOKO CHIBA)
豊富な経験と技術、得点感覚でハリマの攻撃を支える、ハリマを代表する選手です。
プレーエリアが広く、前線でボールを収めるだけでなく、中盤まで下がって攻撃を組み立て、守備では相手のボールホルダーへ寄せ続けます。
2022シーズンには14得点を挙げ、なでしこリーグ1部得点王を獲得。2025シーズンにはリーグ戦通算200試合出場を達成しており、なでしこリーグを代表する経験豊富な選手です。
2026シーズンは、第15節終了時点で7得点。第11節のニッパツ戦では先制点を記録し、第13節の世田谷戦では終盤の2得点で勝点1をもたらしました。
低い位置で中盤を助ける力と、ゴール前で試合を変える力の両方を持っています。だからこそ、千葉選手をどの位置で生かすかが、ハリマ全体のバランスにも大きく関わります。
FW 川﨑 咲耶(SAYA KAWASAKI)
スピードを生かした背後への抜け出しと、前線からの献身的な守備が魅力のFWです。
相手最終ラインの背後を繰り返し狙い、ボールが入れば身体を使って起点になります。低い位置まで戻って中盤の守備を助ける運動量も備えています。
第12節のVONDS市原FCレディース戦では、90分にループシュートで今季初得点を記録。これが決勝点となり、勝点1で終わりかけた試合を勝点3へ変えました。
このゴールはリーグ通算49得点目。通算50得点まで、あと1ゴールに迫りました。中断明けの記録達成に期待がかかります。
川﨑選手が最前線へ残ることで、相手守備陣は簡単にラインを上げられません。得点やアシストだけでなく、相手の守備位置を下げさせることも大きな役割です。
FW 井上 麗叶(REIKA INOUE)
スピードを生かした背後への抜け出しと、サイドでの豊富な運動量が魅力の選手です。
公式登録はFWですが、サイドやウイングバックに近い位置でも起用され、攻守の両面で広い範囲へ関わります。2026シーズンに四国大学から加入したルーキーです。
開幕節のVONDS市原FCレディース戦では、途中出場から後半アディショナルタイムに追加点を記録。第11節のニッパツ横浜FCシーガルズ戦でも、コーナーキックからヘディングで試合を決定づける2点目を決めています。
第12節のVONDS戦では、相手を背負いながらボールを収め、前線へ走った川﨑咲耶選手の決勝点をアシストしています。
守備へ戻る運動量を備えながら、攻撃ではゴール前へ入り込める井上選手の存在が、ハリマのサイド攻撃に推進力を加えています。
MF 三冨 りりか(RIRIKA MITOMI)
精度の高いキックとゲームメイクで、攻撃の流れを整えられるMFです。
2025シーズンに、ちふれASエルフェン埼玉から期限付き移籍で加入。シーズン終了後には完全移籍へ切り替わりました。
2026シーズンは、第15節終了時点でリーグ戦の出場記録がありません。
現在のハリマは、千葉園子選手と川﨑咲耶選手を高い位置へ残すと、中盤でボールを落ち着かせ、前線まで運ぶ役割が不足することがあります。
正確なキックで展開を変え、自らもシュートを狙える三冨選手がピッチに立てば、前線の2人を高い位置で生かしながら、中盤から攻撃を組み立てる選択肢が増えます。
中位以上への浮上に向けて、筆者が出場を待望している選手の一人です。
FW 南條 里緒(RIO NANJO)
力強いドリブルで相手を切り裂き、自ら攻撃を前へ進められるFWです。
相手と正面から向き合い、接触を受けながらでもボールを運べることが特徴です。
2025シーズンに、ニッパツ横浜FCシーガルズから加入。FWだけでなくMFでもプレーでき、2025シーズンのオルカ鴨川FC戦では、自陣左サイドからボールを運び、攻撃のきっかけを作る場面が見られました。
2026シーズンは、第15節終了時点でリーグ戦の出場記録がありません。
現在のハリマは、相手が守備ブロックを整えた後に、個人で一人をかわして局面を動かすプレーが不足する試合があります。
南條選手のドリブル突破が加われば、サイドから相手を押し下げ、クロスやシュートまで持ち込む回数を増やせます。千葉選手や川﨑選手へ相手の警戒が集まる中で、別の位置から違いを作れる存在です。
三冨選手とともに、中断明けの出場を待ちたい選手です。
中位以上への浮上へ、前線の脅威と中盤の強度を両立できるか
2026シーズンのハリマは、開幕節の勝利後に苦しい時期を経験しながら、戦い方を修正し続け、再び勝点を積み上げ始めました。
前線には、運動量と縦への速さがあります。シーズンを通してボールを前線に繋げる部分の修正を続けており、一定の結果を出せるようになってきました。しかし、ビルドアップに対して激しくプレスをかけられたり、中盤での競り合いが激しくなると、攻撃の形を出せずに押し込まれる展開になりやすいことは課題です。
前線に怖さを残しながら、中盤の強度と推進力を保ち、ビルドアップの精度を磨けるか。
僅差の試合を勝点へ変え、中位以上へ浮上できるか。
中断期間を経たASハリマアルビオンの変化に注目です。





