神奈川県横浜市を拠点とする日体大SMG横浜は、日本体育大学女子サッカー部を母体とし、なでしこリーグ1部に所属するチームです。
日本体育大学女子サッカー部は1985年に創部され、2010年から日本女子サッカーリーグへ参戦。2022年に現在の「日体大SMG横浜」へ名称を変更しました。学生主体のチームでありながら、世代別日本代表やWEリーグへ進む選手を継続的に輩出しています。
2026シーズンは、嶋田千秋監督が就任2年目の指揮を執ります。前線のスピードと後方からのビルドアップを組み合わせた攻撃的なサッカーを目指す一方、第15節終了時点では守備の安定と攻撃の再構築が課題となっています。
本ページでは、日体大SMG横浜の成績、チームの特徴、注目選手、後半戦の展望を紹介します。
チームの特徴
2023年のリーグ最多得点から、2025年の11位へ
日体大SMG横浜は、2021シーズンを4位で終えると、2022シーズンは7位。2023シーズンにはリーグ最多となる45得点を挙げましたが、勝点を伸ばしきれずに最終順位は6位でした。
2024シーズンも10勝を記録して6位を維持した一方、2025シーズンは3勝10分9敗。引き分けには持ち込んだものの勝ち切れない試合が増え、最終順位を11位まで下げました。
| シーズン | 最終順位 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 得点順位 | 全チーム平均得点 | 全チーム中央値 | 失点 | 失点順位 | 全チーム平均失点 | 全チーム中央値 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021 | 4位 | 11 | 3 | 8 | 24 | 9位 | 30.1 | 26.5 | 27 | 6位 | 30.1 | 28.0 |
| 2022 | 7位 | 9 | 2 | 11 | 19 | 9位 | 27.7 | 25.0 | 28 | 8位 | 27.7 | 25.5 |
| 2023 | 6位 | 9 | 7 | 6 | 45 | 1位 | 32.0 | 33.5 | 28 | 5位 | 32.0 | 31.5 |
| 2024 | 6位 | 10 | 3 | 9 | 30 | 7位 | 30.9 | 31.5 | 25 | 5位タイ | 30.9 | 26.5 |
| 2025 | 11位 | 3 | 10 | 9 | 27 | 7位 | 28.2 | 28.0 | 40 | 12位 | 28.2 | 28.0 |
※得点順位は得点数の多い順、失点順位は失点数の少ない順で算出。
※「全チーム平均」「全チーム中央値」は、その年のリーグ全体の得点・失点分布を把握するための参考値です。
2026シーズンは第15節終了時点で3勝1分11敗、勝点10の11位。13得点45失点となっています。
得点力だけでなく、相手に主導権を握られた試合で連続失点を止められるかが大きな課題です。
掲げていた超攻撃的なサッカーから、失点を抑える戦い方へ
2026シーズン序盤の日体大は、最終ラインのビルドアップからボールをつなぎ、相手を引きつけたうえで前線のスピードを生かす攻撃に取り組みました。そうすることで、相手を引きつけて生まれた背後のスペースを、前線のスピードで突く狙いが見られました。
しかし、第2節の静岡SSUボニータ戦では、低い位置でのパス回しを相手の前線からの守備に狙われ、前半だけで6失点。ボールを失った後の対応やセットプレーの守備も整理できず、0-9で大敗しました。
それでも、第3節のASハリマアルビオン戦では、ビルドアップに固執せず、前線の選手が狙う相手最終ラインの背後へ素早くボールを送りました。前線からの守備も機能し、終盤に決勝点が生まれ、1-0でシーズン初勝利を挙げています。
一方、第9節の朝日インテック・ラブリッジ名古屋戦では、高い最終ラインの背後を突かれ、0-8で敗戦。後方からのビルドアップでも相手のプレスを越えられず、第2節で表れた課題が再び大量失点につながりました。
第10節の岡山湯郷Belle戦からは最終ラインを下げ、相手に使われるスペースを減らす戦い方へ変更。ロングボールを増やして失点のリスクを抑え、終盤に相手GKの処理ミスを逃さず、1-0で勝利しました。
大敗を避けるための現実的な判断でしたが、第11節以降は5試合連続無得点。守備のリスクを減らした一方、前線を支える人数と距離が不足し、攻撃力が低下しています。
また、第11節の伊賀FCくノ一三重戦では3失点、第13節の静岡SSUボニータ戦では5失点を喫しました。守備に一定の改善は見られるものの、相手に押し込まれたときの対応が完全に安定したとはいえません。
攻撃的な姿勢をどこまで残しながら、後方で抱えるリスクを抑えるか。そのバランスを探しています。
前線のスピードを生かすには、後方の押し上げが必要
日体大の攻撃を支えているのは、前線のスピードです。
相手最終ラインの背後にスペースがあれば、縦パスやロングボールから一気にゴール前まで進むことができます。相手のパスミスや処理の乱れに素早く反応し、そのまま得点へ結びつけることも可能です。
第5節のVONDS市原FCレディース戦では、後半途中から出場した山本葉桜選手が後半アディショナルタイムに2得点。交代選手の勢いを生かし、4-1で勝利しました。
しかし、最終ラインを下げた試合では、前線へ送ったボールを収めても、後方から味方が追いつくまでに時間がかかります。第15節のオルカ鴨川FC戦では、ロングボールとビルドアップのどちらでも前進が安定せず、相手にセカンドボールを回収されました。
前線の速さだけで局面を解決するのではなく、守備の陣形を保ちながら中盤が前線との距離を縮め、こぼれ球を回収する必要があります。守備の安定を保ちながら、チーム全体の距離を縮められるかが攻撃を改善する鍵です。
直近3シーズンは、夏季中断後に勝点ペースが上昇
苦しい戦いが続く日体大ですが、リーグ後半に成績を上げる印象があります。そこで、2021年以降について、夏季中断前の第1~15節と、中断後の第16~22節を比較しました。
| シーズン | 第1~15節 | 勝点 | 1試合平均勝点 | 第16~22節 | 勝点 | 1試合平均勝点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021 | 9勝2分4敗 | 29 | 1.93 | 2勝1分4敗 | 7 | 1.00 |
| 2022 | 7勝1分7敗 | 22 | 1.47 | 2勝1分4敗 | 7 | 1.00 |
| 2023 | 4勝7分4敗 | 19 | 1.27 | 5勝0分2敗 | 15 | 2.14 |
| 2024 | 5勝2分8敗 | 17 | 1.13 | 5勝1分1敗 | 16 | 2.29 |
| 2025 | 1勝7分7敗 | 10 | 0.67 | 2勝3分2敗 | 9 | 1.29 |
2023年から2025年までは、3シーズン連続で中断後の1試合平均勝点が上昇しています。特に2024年は、中断前の1.13から中断後は2.29まで改善しました。
一方、2021年と2022年は中断後に成績を落としているため、「毎年後半に強い」とまでは言えません。正確には、直近3シーズンに中断後の改善傾向が見られる、という評価になりました。
世代別日本代表とWEリーグへの進路
日体大SMG横浜は、大学サッカーとなでしこリーグを通じて選手を育成し、世代別日本代表やWEリーグへ送り出しています。
2026年6月のU-20日本女子代表には、本田悠良選手、髙橋光莉選手、鈴木温子選手の3名が選出されました。また、同年に開催されたAFC U20女子アジアカップ2026には、本田選手と鈴木選手が出場メンバーとして選ばれています。
WEリーグへの進路では、藤澤和心選手の日テレ・東京ヴェルディベレーザ加入が内定しています。2027年から正式加入する予定で、2025-26シーズンにはJFA・WEリーグ特別指定選手としても承認されました。

また、菅原眞名選手は2027年1月からセレッソ大阪ヤンマーレディースへ加入することが発表され、正式加入まで特別指定選手として登録されています。

学生チームでありながら、なでしこリーグ1部の強度を経験できることは、選手育成における大きな特徴です。
注目選手
ここからは、筆者が2026シーズンの試合を追う中で特に印象に残った選手を紹介します。
DF 鈴木 温子(HARUKO SUZUKI)
スピードと豊富なスタミナ、左利きを活かしたサイドのスペシャリストです。サイドバックやサイドハーフなど複数のポジションをこなし、高精度なクロスや突破、配球で攻撃を活性化させます。
第1節の愛媛FCレディース戦では、相手守備陣の処理が乱れた場面でロングボールを追い、64分に同点ゴールを記録。DF登録ながら、相手ゴール前まで走り切る積極性を示しました。
U-17年代から世代別日本代表を経験し、2026年にはU-20日本女子代表へ選出されています。
守備を安定させながら、どのタイミングで攻撃参加するか。鈴木選手が左サイドで前進できれば、髙橋光莉選手や柴原希保選手をより高い位置でプレーさせることができます。
MF 柴原 希保(KIHO SHIBAHARA)
スピードを生かしたサイドでのドリブル突破、背後への積極的な飛び出し、豊富な運動量を活かしたプレスとプレスバックでチームを支えるMFです。
第3節のASハリマアルビオン戦では、浅香美結選手とともに相手の背後を狙い、日体大が縦に速い攻撃へ切り替える起点となりました。
第6節のヴィアマテラス宮崎戦では、72分にゴールを記録。相手に主導権を握られた試合でも、前線へ出ていくスピードを得点へ結びつけています。
一方、第12節の愛媛FCレディース戦では左サイドの守備対応に追われ、持ち味であるスピードをゴール方向へ使う機会が減りました。柴原選手を低い位置に固定せず、より前向きな状態でボールを渡せるかが、日体大の攻撃力を左右します。
MF 髙橋 光莉(HIKARI TAKAHASHI)
左足の技術とドリブルを武器に、中盤からの果敢な飛び出しが持ち味です。
組織的な前進が止まった試合でも、個人で相手をかわして攻撃の起点になれる選手です。
第14節のASハリマアルビオン戦では、チームが前線へボールを届けられない中、ドリブルによって相手陣内へ進入して相手に脅威を与えました。
2026年6月にはU-20日本女子代表へ選出。日体大の攻撃に変化を加えるだけでなく、国際大会を糧にした成長にも期待がかかります。
髙橋選手が単独で前進した後に、中盤と逆サイドの選手がどれだけ早く関われるかが日体大の攻撃に推進力を出すポイントです。
FW 浅香 美結(MIYU ASAKA)
ハードワークを武器に相手最終ラインの背後へ繰り返し走り、前線からの守備にも献身的なFWです。
2025シーズン最終節のオルカ鴨川FC戦では、左サイドから相手最終ラインの背後へ抜け出し、スルーパスを右足のワンタッチシュートで仕留めました。
2026シーズンも、第3節のASハリマアルビオン戦や第9節のラブリッジ名古屋戦で背後への速さを示しています。
浅香選手を生かすためには、足元へボールを入れるだけでなく、動き出した瞬間に縦パスを送る必要があります。前線からの守備で消耗させず、ゴールへ向かう動きを増やせるかが得点力向上の鍵です。
FW 山本 葉桜(HAO YAMAMOTO)
前線でのボールキープ力や、巧みなフリーラン、機敏な仕掛けを持ち味としています。
第5節のVONDS市原FCレディース戦では68分から出場し、90+1分と90+3分に連続ゴール。相手の運動量が落ちた終盤に背後へ走り、4-1の勝利を決定づけました。
第10節の岡山湯郷Belle戦では、長谷川想選手のロングフィードを山本選手が追い、相手GKの処理ミスに反応。86分に決勝点を挙げ、連敗を4で止めました。
第15節終了時点で4得点を記録し、安部美琴選手と並んでチーム最多得点者です。
組織的に多くの決定機を作れない試合でも、山本選手は一度の隙を得点へ変えられます。先発と途中出場のどちらでも、相手最終ラインへ圧力をかけられることが強みです。
守備の安定を、得点へつなげられるか
日体大SMG横浜は、第9節までに34失点を喫した後、最終ラインを下げ、失点を抑えることを優先する戦い方へ変更しました。
第10節の岡山湯郷Belle戦を無失点で終えると、第12節、第14節、第15節はいずれも1失点。第2節の9失点、第9節の8失点と比べれば、大量失点に至る試合は減っています。
一方、第11節の伊賀FCくノ一三重戦では3失点、第13節の静岡SSUボニータ戦では5失点を喫しました。守備に一定の改善は見られるものの、相手に押し込まれたときの対応が完全に安定したとはいえません。
また、第11節から第15節までは5試合連続無得点です。前線へ送ったボールを収めても、後方からの押し上げが遅く、前線の選手が孤立する場面が増えました。
中断明け最初の第16節は、最下位のVONDS市原FCレディースとの直接対決です。11位の日体大が残留へ向けて差を広げ、10位以上を追うためにも重要な試合となります。
改善策として考えられるのは、序盤のように無理に低い位置でボールを繋いだり、最終ラインを上げることではなく、守備の陣形を保ちながら中盤が前線との距離を縮めることです。
直近3シーズンは、夏季中断後に勝点ペースを上げています。守備の安定を維持しながら前線の速さを取り戻せるか。中断期間を経て、日体大SMG横浜がどのようなバランスを選択するかに注目です。

