VONDS市原FCレディース

千葉県市原市を拠点とするVONDS市原FCレディースは、2026シーズンからなでしこリーグ1部に初挑戦しているチームです。

2017年に発足すると、千葉県リーグ、関東リーグを勝ち上がり、2025シーズンになでしこリーグへ初参入。参入初年度の2部で優勝し、1年で1部昇格を決めました。

本ページでは、VONDS市原FCレディースの歩み、2026シーズンの特徴、注目選手、後半戦の展望を紹介します。

チームの特徴

地域リーグ連覇から、なでしこリーグ2部初年度優勝へ

VONDS市原FCレディースは2017年に発足しました。クラブ名の「VONDS」は、「絆」を意味する「BOND」の頭文字を、勝利を意味する「Victory」の「V」に変え、複数形とした造語です。

初年度に千葉県女子サッカーリーグ2部で優勝すると、2020年には千葉県リーグ1部を制して関東女子サッカーリーグへ昇格しました。

2022年は関東リーグ2部を無敗で終え、得失点差によって2位。入替戦を経て1部へ上がると、2023年、2024年と関東リーグ1部を連覇しました。2024年には皇后杯でベスト16へ進出し、なでしこリーグ参入も決めています。

2025シーズンは、なでしこリーグ2部初挑戦ながら15勝4分3敗、51得点18失点。第21節で優勝を決め、1年で1部昇格を果たしました。

シーズン所属順位勝ち点得点失点
2021関東2部4位237252217
2022関東2部2位3611304811
2023関東1部1位331031267
2024関東1部1位361130278
2025なでしこ2部1位4915435118
2026なでしこ1部12位10114639

※2026シーズンは第15節終了時点。
※2021~2024年は関東女子サッカーリーグ、2025年以降はなでしこリーグの成績です。

2部王者ではなく、新しいチームとして迎えた1部

2025年10月24日、クラブは、川本峻輔監督についてコンプライアンス規定に抵触する行為が確認されたとして、双方合意のもと10月23日付で契約を解除したと発表しました。クラブは関係者のプライバシー保護と再発防止の観点から、詳細を公表していません。

さらにオフには15選手が退団し、2026シーズンは13選手が加入。スタッフも大きく入れ替わりました。村上賀梨選手、櫻庭琴乃選手、小田川真奈選手ら前年の中心選手は残ったものの、2部優勝時の先発構成から大部分が変わっています。

2026年1月には落合恵監督が就任しました。新体制のスローガンは「新化」。それまでの良さを残しながら、新加入選手の力を引き出し、新しいステージへ挑む意味が込められています。

ただし、1部の強度へ適応しながら選手間の関係を構築する作業は簡単ではありません。前年の2部優勝チームというより、新しいチームを一から作り直す状態で1部初年度を迎えたことが、今季の苦戦を考えるうえで重要です。

守備強度を90分間維持できるか

2026シーズンのVONDSは、前線から相手のビルドアップへ圧力をかけ、奪ったボールを素早く攻撃へつなげようとしています。

第5節の日体大SMG横浜戦では、櫻庭琴乃選手らが相手最終ラインへ積極的に寄せ、序盤の主導権を握りました。セットプレーから一度は同点に追いつきましたが、終盤に運動量と守備強度が落ち、85分以降に3失点。1-4で敗れています。

前線の選手がプレスへ出ても、中盤と最終ラインが連動できなければ、その間にスペースが生まれます。相手の前進を遅らせるのか、ボール保持者へ強く出るのかが曖昧になり、簡単に前を向かれる場面も少なくありません。

第12節のASハリマアルビオン戦でも、最終ラインを高く保ちながら前から奪おうとしましたが、中盤の守備が整理できず、相手のビルドアップを制限できませんでした。ゴール前では粘ったものの、押し込まれる時間が長くなり、90分に決勝点を許しています。

前から奪う姿勢そのものではなく、プレスを始める位置と中盤・後方の押し上げをそろえられるかが課題です。

ボールを持つ時間を、決定機へ結びつけられるか

VONDSは相手や試合展開によって、後方からボールをつなぐ時間も作っています。

第13節の岡山湯郷Belle戦では、ボールを保持して相手陣内へ押し込む時間を作り、シュート数でも7本対4本と上回りました。櫻庭琴乃選手の浮き球のパスから宮本春花選手がゴール前へ入るなど、組織的な決定機も生まれています。

一方、攻撃のテンポがフィニッシュの手前で落ち、無得点のまま0-2で敗れました。守備では、クロスに対するマークが外れ、塩谷瑠南選手に2本のヘディングシュートを決められています。

ボールを保持するだけでなく、攻撃を得意とする選手が前を向いた瞬間に周囲が動き、シュートまで攻撃を完結させる必要があります。

名古屋戦で示した、守備の新しい基準

開幕から14連敗となったVONDSですが、第15節では前年王者の朝日インテック・ラブリッジ名古屋と0-0で引き分け、1部初の勝ち点を獲得しました。

この試合では守備の開始位置を下げながらも、相手が低い位置でボールを持ったときには前線からプレスをかけてコースを限定。中盤では身体を当て、複数人で挟み込み、ゴール前でも最後まで集中を保ちました。

雨と難しいピッチ状態が試合に影響した面はあります。それでも、相手の攻撃を受けるだけだった試合とは異なり、どこで寄せ、どこで耐えるかが以前より明確になっていました。

一方、シュートは前半の3本のみで、後半は0本でした。初勝ち点につながった守備の基準を維持しながら、攻撃へ移る人数を増やせるかが中断明けの焦点です。

注目選手

ここからは、nadefootball12の2026シーズン試合レビューと個人的ベストイレブンをもとに、特に注目したい選手を紹介します。

MF 櫻庭 琴乃(KOTONO SAKURABA)

高い技術力を備え、ドリブルとボールキープで攻撃を前進させる背番号10です。前線からの守備にも力を発揮し、2026シーズンは副キャプテンを務めています。

開幕戦では右サイドバック、第3節では前線に入るなど、試合によって複数の役割を担当。低い位置からボールを運ぶだけでなく、相手最終ラインへ圧力をかけ、奪ったボールを得意のドリブルで相手守備を切り裂き、自らシュートまで持ち込めます。

第3節のヴィアマテラス宮崎戦では、相手最終ラインへ素早く寄せてボールを奪い、そのまま右足でゴール左隅へ流し込みました。これはVONDSにとって、なでしこリーグ1部でのクラブ初得点です。

第15節の名古屋戦では、3人に囲まれながらも身体の使い方と細かなタッチでボールを保持し、守備から攻撃へ移るキープレイヤーとなりました。

櫻庭選手を自陣深くに下げすぎず、相手陣内でボールを持たせられるかがVONDSの得点力を左右します。

当サイトの独自ベストイレブン選出:1回(第15節終了時点)

第15節 個人的ベストイレブン

MF 佐藤 寿音(KOTONE SATO)

VONDS市原FCレディースU-15からトップチームへ進み、2025シーズンのなでしこリーグ2部新人賞を受賞した若手MFです。2026年にはU-17日本女子代表としてポルトガル遠征や国内での国際親善試合に参加しており、世代別代表での活躍にも注目したい選手です。

左足の技術に加え、前線への飛び出しとゴールへ向かう積極性があります。中盤だけでなく前線でも起用され、守備から攻撃へ切り替わった場面では、自らボールを運んでシュートまで持ち込めます。

第13節の岡山湯郷Belle戦では、終盤にペナルティーエリア手前から左足で強烈なシュートを放ちました。得点には至りませんでしたが、相手GKに好セーブを強いる決定機でした。

第14節のヴィアマテラス宮崎戦では、開始直後のセットプレーでクリアボールの落下地点へ入り、ヘディングで先制点を記録しています。

高い個人能力を持つ佐藤選手の存在は、厳しい戦いが続くチームにとって明るい材料です。中断期間を経て、なでしこリーグ1部の強度へさらに適応していく佐藤選手の活躍に注目です。

DF 村上 賀梨(KARIN MURAKAMI)

2026シーズンのキャプテンを務めるDFです。関東リーグ時代からチームを支え、2部優勝後に選手が大幅に入れ替わった中でも残留した中心選手の一人です。

最終ラインで身体を張る守備に加え、攻撃へ出たときの力強い持ち上がりも特徴です。

第5節の日体大SMG横浜戦では、左コーナーキックから中村円香選手の同点ゴールを演出。第12節のASハリマアルビオン戦では途中から前線へ入り、自らドリブルで持ち上がってシュートを放ちました。

DF登録ながら、試合展開に応じて前線の起点にもなれます。新加入選手と前年から残る選手をつなぎ、苦しい状況でチームの集中力を保つ役割も担っています。

村上選手を中心に、名古屋戦で示した守備の集中力と粘り強さを継続できるか。後半戦の巻き返しには、キャプテンとして最終ラインを統率し、最後方からチームを鼓舞する働きが欠かせません。

初勝ち点を、残留争いの転機にできるか

第15節終了時点のVONDS市原FCレディースは、0勝1分14敗、勝点1の12位です。11位の日体大SMG横浜とは勝点9差があり、1部残留するためには残り7試合での巻き返しが必要です。

中断明け最初の第16節では、その日体大をホームに迎えます。第5節の対戦では、1-1に追いつきながら85分以降に3失点し、1-4で敗れました。

再戦で重要になるのは、名古屋戦で見せた守備の集中力を保ちながら、前線を孤立させないことです。

守備の開始位置を定め、前線がプレスへ出たときには中盤も連動する。ボールを奪った後は櫻庭琴乃選手や佐藤寿音選手へ預けるだけでなく、周囲が素早く追い越して攻撃の人数を増やす必要があります。

セットプレーとクロスに対する守備も課題です。ゴール前へ人数をそろえるだけでなく、相手の動き出しを捕まえ、クリア後のセカンドボールまで回収できるかが問われます。

2部優勝チームの戦力と勢いをそのまま持ち込めなかった今季は、1部挑戦とチーム再構築を同時に進める苦しいシーズンとなりました。それでも、名古屋戦で初めて「負けない試合」を作れたことは大きな前進です。

この勝ち点1を一度きりの結果にせず、日体大との直接対決で初勝利へつなげられるか。中断期間を経たVONDS市原FCレディースの変化に注目です。