【監督退任】ヴィアマテラス宮崎・佐藤考範監督が退任。王座奪還を目指した2026シーズン、残り3試合での監督交代

コラム

2026年10月3日、ヴィアマテラス宮崎は佐藤考範監督の退任を発表した。

個人的には、かなり驚いたニュースだった。

2026プレナスなでしこリーグ1部は全22節のうち第19節まで終了。宮崎は9勝5分5敗、勝点32の4位につけている。

前半戦は首位争いを繰り広げ、後半戦は思うように勝点を積み上げられていないとはいえ、今も上位に位置するチームだ。
しかも、前節の静岡SSUボニータ戦では、首位を相手に互角以上の戦いを見せた時間帯もあった。

リーグ戦は残り3試合。シーズン終了後には皇后杯も控えている。

このタイミングでの監督退任は、宮崎にどのような変化をもたらすのだろうか。

佐藤考範監督が退任、柳田和洋GMが暫定指揮

クラブの公式発表によると、佐藤考範監督が退任し、当面はゼネラルマネージャーの柳田和洋氏が暫定的にトップチームを指揮するという。

佐藤監督は2026シーズンから就任。
JFA Proライセンスを保有し、大分県サッカー協会の技術委員長やジェイリースFCのコーチなどを歴任してきた。
今シーズンの成績は、第19節終了時点で9勝5分5敗。

佐藤前監督は退任に際し、期待された結果を届けられなかったことについて謝意を示すとともに、苦しい状況でも全力を尽くした選手たちの努力と成長への感謝を述べている。

就任から約9か月。王座奪還を掲げて始まった挑戦は、リーグ戦の終了を待たずに幕を閉じることとなった。

クラブの発表では退任に至った具体的な経緯は明らかにされていない。
契約上の取り決めなのか、成績を踏まえたクラブ側の判断なのか、それとも別の事情があるのか。
現時点では不明である。

2部優勝、1部初挑戦で優勝。鮮烈だった宮崎の躍進

ヴィアマテラス宮崎は、なでしこリーグで短期間のうちに大きな成果を残してきたクラブだ。

2023シーズン、なでしこリーグ2部への参入初年度に14勝4分、無敗で優勝。2位に勝点10差をつける圧倒的な成績で1部昇格を決めた。

そして迎えた2024シーズン。
なでしこリーグ1部初挑戦ながら、開幕10連勝を記録。勢いを維持して16勝1分5敗で初優勝を成し遂げた。

2部参入からわずか2シーズンで1部の頂点に立ったことになる。

ハードワークを惜しまない運動量、球際の強さ、前線へ一気に押し上げる推進力。
そのサッカーは、なでしこリーグ1部に強烈な印象を残した。

しかし、連覇を目指した2025シーズンは状況が変わる。
開幕から3連敗という苦しいスタートを切り、その後は巻き返したものの、最終成績は10勝4分8敗、勝点34の4位。
2024シーズンの優勝から一転し、タイトルを逃す結果となった。

2025年10月には、2022年から4年間チームを率いた水永翔馬監督のシーズン限りでの退任が発表された。

そして2026シーズン、宮崎は新たに佐藤考範監督を迎えた。

クラブが掲げた目標は明確だった。

なでしこリーグ1部優勝、皇后杯優勝、そして王座奪還。

クラブスローガン「Rise to the Challenge」のもと、新体制で再び頂点を目指すシーズンが始まった。

前半戦は2位で折り返し、後半戦で苦戦

今シーズンの宮崎は、開幕から順調に勝点を積み上げた。

第11節終了時点で7勝3分1敗、勝点24の2位。首位・静岡SSUボニータとの勝点差はわずか2だった。
ところが、第12節以降は状況が変わる。第19節までの8試合で2勝2分4敗、獲得した勝点は8にとどまっている。

ここで、1部初優勝を果たした2024シーズン、4位に終わった2025シーズン、そして今シーズンの戦績を比較してみたい。
比較条件をそろえるため、いずれも第19節終了時点までを対象に、第1〜11節と第12〜19節の戦績を集計した。

年期間戦績勝点1試合あたりの
平均勝点
20241〜11節10勝0分1敗302.73
12〜19節4勝1分3敗131.63
20251〜11節5勝1分5敗161.45
12〜19節4勝2分2敗141.75
20261〜11節7勝3分1敗242.18
12〜19節2勝2分4敗81.00

※各年とも第19節までを集計。平均勝点は獲得勝点を試合数で除して算出。

興味深いのは、優勝した2024シーズンも、第12節以降は勝点獲得ペースが低下していたことだ。
2024年は開幕10連勝を記録したが、第12〜19節は4勝1分3敗。平均勝点は2.73から1.63へ低下している。

もっとも、開幕10連勝という非常に高い水準を維持することは容易ではない。
シーズンが進めば対戦相手の分析や対策も進み、各チームが戦い方を修正してくる。勝点獲得ペースの低下には、さまざまな要因が考えられる。

一方、2025年は第1〜11節の平均勝点1.45から、第12〜19節では1.75へと改善していた。

そして2026年。
前半戦の平均勝点は2.18。優勝した2024年には及ばないものの、王座奪還に向けて順調なスタートを切っていた。
しかし、第12〜19節では平均勝点が1.00まで低下している。

2024年も後半に勝点獲得ペースが落ちたとはいえ、同じ第12〜19節では13ポイントを積み上げていた。対する2026年は8ポイントにとどまっている。

もちろん、これらの数字だけで苦戦の原因を特定することはできない。
ただ、今シーズンの宮崎が第12節以降、2024年や2025年の同期間と比較しても勝点を積み上げられていないことは確かだ。

ビルドアップへの挑戦と、表面化した課題

今シーズンの宮崎を観戦していて印象的だったのは、攻撃の組み立て方の変化だった。

従来の宮崎は、豊富な運動量とフィジカルの強さを生かし、ボールを奪ってから素早くゴールへ向かうサッカーが特徴的だった。

今季は、それらの強みに加えて、GKや最終ラインからパスをつないで攻撃を組み立てる「ビルドアップ」を積極的に取り入れている。
相手を引きつけながらパスをつなぎ、中盤を経由して前進する。
従来の縦への推進力に加え、ボールを保持して攻撃を構築する選択肢を増やそうとしていたように見えた。

この取り組みは、試合を見た印象だけではない。

第14節のVONDS市原FCレディース戦後、佐藤監督は、選手全員がボールに関わりながら前進することを今季のテーマとして説明している。
また、第15節の伊賀FCくノ一三重戦後には、選手からもビルドアップの精度向上を中断期間の課題として挙げていた。

2026シーズンは、ヴィアマテラス宮崎が戦い方を進化させ、さらなる高みを目指す挑戦の年だったと考えられる。

しかし、シーズン後半に入ると、そのビルドアップの起点を狙われる場面が目立ち始める。

特に象徴的だったのが、第18節の岡山湯郷Belle戦だ。
湯郷は宮崎の低い位置からの組み立てに対して積極的にプレスをかけ、高い位置でボールを奪って攻撃につなげた。
宮崎もロングボールを活用し、相手のプレスを回避する場面はあったものの、最終的には1-5の大敗を喫した。

もちろん、後半戦の失点をすべてビルドアップの問題に結びつけることはできない。
しかし、自陣からパスをつなごうとする場面で相手に狙われ、危険なボールロストにつながるケースがあったことは確かだ。

新たな戦い方を積み上げる過程で、そのリスクへの対応という課題が見えていた。

第19節 静岡戦で見せた、これまでとは異なるアプローチ

そして迎えた第19節、首位・静岡SSUボニータとの直接対決。

この試合の宮崎は、今シーズン取り組んできたビルドアップに固執せず、よりシンプルに前線へボールを運ぶ場面が目立った。

相手のプレスを受ける場面では無理につながず、前方へ送る。
そしてセカンドボールを積極的に回収し、前線のスピードを生かしてゴールへ迫る。
21分には小澤寛が先制点を挙げ、前半は宮崎が1-0でリードした。

この戦い方には、2023年、2024年の宮崎を特徴づけていたハードワークと縦への推進力に通じるものがあったように感じる。

興味深いのは、佐藤監督自身がこの試合をどのように位置づけていたのかという点だ。

シーズンを通してビルドアップの精度向上に取り組んできた宮崎。しかし、優勝争いを左右する静岡戦では、無理につなぐことを避け、前方への速さをより重視する場面が見られた。

それが、静岡の守備を分析したうえで準備した戦術的な選択だったのか。
あるいは、後半戦の苦戦を踏まえ、これまで積み上げてきた戦い方を修正する必要性を感じていたのか。

佐藤監督は試合後、選手たちがゲームプランを理解して戦ってくれたと評価する一方、勝利につなげられなかったことについて、自らの指示にも改善の余地があったとの認識を示している。

少なくとも、静岡戦の戦い方が何の準備もなく生まれたものではなく、ゲームプランに基づくものだったことはうかがえる。

結果は1-2の逆転負け。

それでも宮崎は、首位を相手に前半の主導権を握り、勝利の可能性を感じさせる戦いを見せていた。
個人的には、今シーズンの課題と向き合うなかで、残り試合に向けたひとつの方向性が見えた一戦だったと感じている。

その直後に発表された佐藤監督の退任。

ビルドアップへの挑戦と、静岡戦で見せた現実的な戦術選択。

この2つがどのように結びついていたのか、そして今回の退任と関係があったのかは、明らかになっていない。

シーズン途中の監督交代、2025年のオルカにも前例

なでしこリーグ1部において、シーズン途中の監督交代は前例のない出来事ではない。
とはいえ、頻繁に見られる出来事でもない。

記憶に新しいのは、2025シーズンのオルカ鴨川FCだ。

オルカは2025年4月8日、第4節終了後に辛島啓珠監督の解任を発表した。
クラブは、1部優勝を目指すなかで得点のための組織的な改善が見られず、残り18試合の戦い方を総合的に考慮して判断したと説明している。

オルカは2023シーズンになでしこリーグ1部を制覇。
翌2024シーズンは優勝時のメンバーから選手構成が大きく変わり、チームの再構築を迫られるなかで苦戦。最終順位は8位となった。
そして再びリーグ優勝を目標に始まった2025シーズンのことだった。

偶然にも、その第4節でオルカが0-2で敗れた相手こそ、ヴィアマテラス宮崎だった。
宮崎が開幕3連敗を止めた試合で、オルカは開幕からの未勝利が続き、2日後に監督解任を発表した。

そして翌2026シーズン。

今度は宮崎が、優勝争いを続けながらも勝点を伸ばせない状況で、シーズン途中の監督交代を迎えることになった。

ただし、オルカはクラブ側が解任理由を明示していた一方、今回の宮崎は退任の具体的な経緯を公表していない。

2023シーズン優勝チームが2シーズン後の2025シーズンに監督解任。
2024シーズン優勝チームが2シーズン後の2026シーズンに監督退任。
奇しくも、いずれも優勝から2シーズン後のことだ。

両者の事情を同一視することはできないものの、優勝を目指すクラブにとって、シーズン途中の指揮官交代も選択肢になり得ることを示す事例ではある。

柳田和洋GMの暫定指揮、残り3試合で何が変わるか

残り3試合でチームを率いるのは、ゼネラルマネージャーの柳田和洋氏だ。

柳田氏は、地域リーグ時代のテゲバジャーロ宮崎などで監督経験があり、ヴィアマテラス宮崎でも総監督を務めてきた。
一方、なでしこリーグ1部で監督として指揮した実績は、確認できた資料では見当たらない。

選手やクラブの事情を知る人物が暫定的に指揮を執ることで、チームがどのような変化を見せるのか。

これまでの戦い方を継続するのか。それとも、宮崎本来のハードワークと縦への推進力をより前面に押し出すのか。

残された準備期間は長くない。

注目したいのは、戦術の大幅な変更よりも、選手たちが迷いなくプレーできる状態をつくれるかどうかだ。

3位以内で強化費、残り3試合の意味

宮崎にとって、残り3試合は決して消化試合ではない。

2026プレナスなでしこリーグ1部の試合実施要項第22条では、最終順位に応じた強化費が定められている。

最終順位強化費
優勝500万円
2位200万円
3位100万円

※同順位が複数チームの場合は、規定に従って配分される。

第19節終了時点で宮崎は4位。

3位のオルカ鴨川FCとは勝点32で並んでいるが、オルカは宮崎より消化試合数が1試合少ない。
5位の伊賀FCくノ一三重も勝点32で並んでおり、上位争いは依然として混戦だ。

3位以内に入ることができれば、順位に応じた強化費を得ることができる。
クラブの今後の強化という観点からも、残り試合で1つでも多くの勝点を積み上げる意味は大きい。

宮崎の残り日程は次のとおり。

節開催日対戦相手
第20節10月4日愛媛FCレディース(A)
第21節10月18日スフィーダ世田谷FC(A)
第22節10月25日オルカ鴨川FC(H)

リーグ最終節には、3位争いの直接対決となる可能性のあるオルカ戦も控えている。

そして、リーグ戦終了後には皇后杯が待っている。

シーズン終盤のこの時期の監督交代は、宮崎の残り3試合にどのような変化をたらすのだろうか。

監督は去る。それでも選手たちの戦いは続く

2023年の2部無敗優勝、2024年の1部初優勝。

鮮烈な躍進を遂げた宮崎は、2025年に4位となり、王座奪還を掲げた2026年は苦しい終盤戦を迎えている。

新たな戦い方への挑戦があり、手応えを得た試合があり、その一方で課題も表面化した。

佐藤監督の退任が、その挑戦とどう関係しているのかはわからない。
ただ、静岡戦の前半に見せたように、今の宮崎にも十分な力が残されていると感じる。

監督交代が必ずしも好結果につながるとは限らない。

それでも、今回の変化をきっかけとして、チームが再び勢いを取り戻す方向に進むことを個人的には期待したい。

監督は去る。しかし、選手たちは残り、戦うのだから。

残り3試合、そして皇后杯。

ヴィアマテラス宮崎がどのような姿を見せるのか、最後まで見届けたい。