2026プレナスなでしこリーグ1部は、残り5試合となる第18節。
第17節終了時点で4位につけるヴィアマテラス宮崎は、前節の日体大SMG横浜戦を2-1で制して勝点32。首位・静岡SSUボニータを勝点4差で追い、優勝争いに踏みとどまっていた。
しかも今節は、宮崎の試合より先に首位・静岡がニッパツ横浜FCシーガルズに敗戦。宮崎にとっては、勝てば首位との勝点差を1まで縮められる重要なホームゲームとなった。
対する岡山湯郷Belleは、第17節終了時点で7位。中断明け初戦のオルカ鴨川FC戦では1-5と大敗したものの、前節はASハリマアルビオンを無失点に抑え、0-0で勝点1を積み上げている。
第7節の前回対戦では宮崎が3-1で勝利したが、今回はまったく異なる展開となった。
湯郷は宮崎が低い位置からボールをつなぐ局面を狙い、前半24分までに2得点。宮崎も35分に永野桃子が1点を返したものの、その6分後に新谷楓華が追加点を挙げる。
後半も沖田有由、松﨑こころが加点。宮崎1-5湯郷。宮崎のビルドアップに狙いを定めた湯郷が、奪ったボールを効率よく得点につなげて大勝した。
この記事の要点
- 湯郷は宮崎の低い位置からのビルドアップを狙い、国吉花吏埜、沖田有由の得点で24分までに2点を先行
- 宮崎は永野桃子のゴールで1点差まで迫ったが、41分の新谷楓華の得点で再び2点差。試合の流れを引き戻し切れなかった
- 沖田有由が2得点。湯郷は高い位置でのボール奪取から試合の主導権を握り、押し込まれる時間帯も耐えながらアウェーで5得点
試合情報
試合展開
宮崎は4-1-2-3。公式記録上では、これまで前線で起用されることの多かった#9土屋佑津季と#17小澤寛がMF登録となり、#18中野里乃がアンカー。3トップには#2井上千里、#20坂田美優、#4永野桃子が並んだ。
ただし実際の攻撃時は固定された4-1-2-3ではない。中野を後方に残しながら、土屋、小澤、井上、坂田、永野の5人が流動的にポジションを入れ替え、互いを追い越しながら前線に人数をかける。
前線との距離を縮めるために最終ラインも高く設定し、全体をコンパクトに保とうとしていた。一方で、ボールを失った瞬間には中野の周囲や高く上がった最終ラインの背後が空きやすくなる。攻撃時の厚みと、ボールロスト時のリスクが表裏一体となる配置だった。
湯郷は4-2-3-1。#25香椎彩香と#17新谷楓華がダブルボランチを組み、両ワイドに#24岸波美采と#19沖田有由、トップ下に#30松﨑こころ。ワントップには#23国吉花吏埜が入った。
中盤の人数そのものは3対3だが、湯郷は宮崎の後方でのパス交換を明確なプレスの狙いどころにしていた。
宮崎のビルドアップを狙った湯郷、同じ構造から2得点
立ち上がりは宮崎が後方からパスをつなぎ、前線の動き出しに合わせて縦パスを入れながら押し込もうとする。
しかし10分、先手を取ったのは湯郷だった。
宮崎GK後藤優香がペナルティエリア外へ出てボールを処理し、#3國生乃愛へつなぐ。國生に対して#24岸波美采が勢いよく寄せると、宮崎は一度プレスをかわしたものの、その後のパスがずれた。
このボールを#23国吉花吏埜が奪う。前に出ていたGK後藤の位置を確認すると、そのまま左足を振り抜き、無人となったゴールへ流し込んだ。
湯郷が狙っていた宮崎の後方でのパス交換から、開始10分で先制点が生まれた。

先制後の湯郷は、無理にボールを保持する必要がなくなった。
宮崎が後方からつなげば前線から圧力をかけ、奪えば素早く前へ。国吉が最前線で宮崎のセンターバックを引き付けることで、その後方や周囲へ#30松﨑こころ、#19沖田有由、岸波らが入り込むスペースも生まれた。
宮崎も一度湯郷陣内まで運べば、サイドの1対1からクロスまで持ち込む。ただし前進するまでの過程でミスが出ると、湯郷は複数人が素早くボール周辺へ集まり、ショートカウンターへ移行する。
24分の2点目も、その構造から生まれた。
再び宮崎が自陣からつなごうとしたところを沖田有由がインターセプト。ボールを受けた国吉が左足でシュートを放つと、クロスバーを直撃したボールに沖田が反応し、ヘディングで押し込んだ。
10分、24分。宮崎はどちらも低い位置からの前進を試みた局面でボールを失い、その直後に失点した。湯郷にとっては狙いが結果として表れ、宮崎にとっては同じリスクが続けて顕在化した2失点だった。

プレスを飛ばした宮崎、永野桃子が1点を返す
2点を追う宮崎も、徐々に変化を見せる。
湯郷の最終ラインで横方向のパスが増えれば、#9土屋佑津季が持ち前のスピードを生かして一気に距離を詰める。ボールを奪って#4永野桃子のクロスにつなげるなど、前線からの圧力を強めていった。
そして35分、宮崎が反撃する。
この場面で#3國生乃愛は、ここまでのように足元のテクニックや短いパスで相手のプレスをかわそうとせず、低い位置から一気に前線へロングフィードを送った。
中盤を越えたボールを#17小澤寛が回収。相手DFを引き付けてから、背後へ飛び出した#4永野桃子にスルーパスを通す。
永野はペナルティエリア内へ進入すると左足を振り抜き、強烈なシュートをゴールネットへ突き刺した。
土屋と井上もゴール前まで走り込んでおり、仮にシュートがGKに阻まれても次のボールを狙える形を作っていた。

この得点は、この試合の宮崎にとって重要な示唆を含んでいた。湯郷のプレスを一つずつパスで外すのではなく、その頭上を越えて小澤、永野ら前線のスピードを直接使う。湯郷が狙っていたエリアを飛ばすことで、一気に決定機まで持ち込んだ。
1点差となった宮崎は中盤の運動量と球際の強度を上げ、湯郷の前進を阻む。
小澤、土屋も高い位置から鋭く寄せ、宮崎がホームで流れを引き戻しかけた。
しかし、その時間帯に湯郷がもう一度突き放す。
宮崎が流れをつかみかけた41分、新谷楓華が3点目
41分、湯郷は宮崎のスローインに対して岸波美采が強く寄せ、ルーズボールを生み出す。
松﨑こころが拾ってペナルティエリアへ進入。一度は宮崎守備陣に阻まれたものの、こぼれ球を岸波が回収し、ゴールライン際からクロスを送った。
沖田のヘディングは宮崎DFに当たったが、そのこぼれ球へ#17新谷楓華が反応。左足で押し込み、湯郷が3-1とした。
永野の得点からわずか6分。
宮崎が勢いを増し、試合の流れがホーム側へ傾きかけていた時間帯だけに、この3点目は大きかった。
1-3で前半終了。宮崎は反撃の糸口をつかみながらも、再び2点差に広げられてハーフタイムを迎えた。
宮崎が押し込む後半、それでも湯郷が先に得点
宮崎はハーフタイムに#20坂田美優を下げ、#31上永ひかりを投入。後半は最終ラインを押し上げ、前線からの圧力をさらに強めて湯郷陣内へ押し込んだ。
しかし54分、次のゴールを奪ったのも湯郷だった。
宮崎が一度ボールをクリアしたものの、セカンドボールを湯郷が回収。松﨑がGK後藤と1対1となり、シュートは後藤が防いだが、攻撃は終わらない。
岸波が右サイドから再びクロスを入れると、沖田がヘディング。今度はゴールネットを揺らし、この試合2得点目を挙げた。
宮崎が後半の入りから攻勢を強めていただけに、湯郷にとっては相手の勢いを断ち切る4点目となった。

3点差となった宮崎は、#11板倉楓、#22山本さゆり、#8嘉数飛鳥を投入し、さらに攻撃へ人数をかける。
宮崎が攻撃へ人数をかける中、湯郷が再び得点につなげる。
67分、#19沖田有由と#25香椎彩香を中心にテンポよくパスをつなぎ、宮崎の守備陣を揺さぶる。
ゴール前でボールを得た#30松﨑こころの前にはシュートコースが開いていた。松﨑は迷わず右足を振り抜き、宮崎ゴールへ突き刺した。スコアは1-5となった。
4点差、それでも攻め続けた宮崎
大きく点差が開いた後も、宮崎は攻撃の手を緩めなかった。
コーナーキックからゴールへ迫り、土屋、永野らを中心に縦への速い攻撃を繰り返す。
湯郷はペナルティエリア内で身体を張り、GK戸梶有野里もシュートに対応。ボールを奪えば岸波らが前へ運び、押し込まれ続けないための時間を作った。

数字を見ると、宮崎のシュートは15本、湯郷は14本。CKは宮崎9本に対して湯郷はわずか1本だった。
湯郷は押し込まれながらも自陣ゴール前で粘り強く守り、逆に宮崎のミスや守備陣形が整う前の局面を高い確率で得点につなげた。
宮崎1-5岡山湯郷Belle。
攻撃量以上に、どこでボールを失ったか、そして決定機をどれだけ得点に変えたかがスコアを大きく分けた一戦となった。
総括
4-1-2-3の宮崎と4-2-3-1の湯郷。単純な人数では中盤は3対3だが、配置と守備の狙いでは湯郷が宮崎の弱点をうまく突いた。
宮崎は中野をアンカーに置き、その前の選手たちが流動的に動くことで攻撃に厚みを作った。一方、後方からのビルドアップでボールを失えば、中野の周囲や押し上げた最終ラインの背後が一気に危険なエリアとなる。
湯郷はそこを狙った。
特に前半の2得点は、いずれも宮崎の低い位置でのボール保持に圧力をかけて奪ったところから生まれている。
一方で宮崎の35分の得点は、そのプレスを正面から解こうとせず、國生から小澤へ一気にボールを届けたところから生まれた。
つまり、この試合で重要だったのは「ビルドアップをやめるか、続けるか」ではない。
相手が短いパスを狙っているのであれば長いボールを混ぜ、相手が下がれば再びつなぐ。宮崎にとっては、自分たちが持つ複数の武器を、相手の守り方に応じてどう使い分けるかが問われた試合だった。
ヴィアマテラス宮崎
最も重く受け止めたいのは、前半の2失点が似た構造から生まれたことだ。
湯郷は宮崎がGK、センターバックを経由して前進しようとする局面へ明確に圧力をかけていた。最初のプレスを個人技でかわすことはできても、その直後のパスで再び圧力を受け、10分と24分に失点した。
それだけに、35分の永野の得点との対比は興味深い。
國生が短いパスではなく、湯郷の中盤を越えるロングフィードを選択。小澤が受け、永野が背後へ走る。それだけで一気にゴールまで到達した。

宮崎には土屋、永野をはじめ、相手最終ラインの背後を一瞬で突ける選手がいる。土屋はこの試合、両チーム最多となる7本のシュートを記録した。
後方から丁寧につなぐことは宮崎の武器だが、それだけを選択し続ければ相手も狙いを定めやすくなる。
短くつなぐ攻撃と、前線のスピードを直接使う攻撃。この2つを相手の守り方に応じて使い分けることができれば、宮崎の攻撃はさらに止めにくくなるだろう。
5失点という数字だけでなく、同じような形から失点を繰り返した原因を整理し、次節までにどこまで修正できるかが重要になる。
岡山湯郷Belle
湯郷は、宮崎のビルドアップに狙いを定めた守備と、奪った後の素早い攻撃が噛み合った。
国吉花吏埜は10分の先制点だけでなく、最前線で宮崎のセンターバックに圧力をかけ、攻撃時にはボールを収めて周囲の押し上げを待つ役割も担った。
岸波美采は左サイドから宮崎のボール保持へ鋭く寄せ、攻撃へ転じればスピードを生かして前進。41分の新谷の得点、54分の沖田の得点はいずれも岸波がゴール前へボールを供給したところから生まれている。
そして新キャプテンの沖田有由。
8月にシーズン途中からキャプテンを任された沖田は、24分と54分に2得点。サイドを上下動しながら守備でもゴール前まで戻り、攻守に存在感を示した。

中断明け初戦ではオルカ鴨川FCに1-5で敗れた湯郷。しかし続くハリマ戦を0-0で終え、この試合では逆に5得点を挙げた。守備を立て直したうえで、高い位置で奪ったボールを得点へつなげる攻撃まで機能したことは、終盤戦へ向けて大きな材料となる。
宮崎にも個の推進力で押し込まれる時間はあった。それでも湯郷は全員で守り、チャンスになれば一気に前へ出る。個々の局面とチーム全体の守備が噛み合ったからこその5得点だった。
順位表
第18節終了時点で、ヴィアマテラス宮崎は勝点32の4位。岡山湯郷Belleは勝点を27に伸ばし、7位を維持した。
過去5試合:勝利 引き分け 敗戦
| 順位 (前節) | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 | 過去5試合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 静岡SSUボニータ | 36 | 18 | 11 | 3 | 4 | 49 | 13 | +36 | |
| 2(2) | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 35 | 18 | 10 | 5 | 3 | 39 | 18 | +21 | |
| 3(3) | オルカ鴨川FC | 32 | 18 | 9 | 5 | 4 | 26 | 14 | +12 | |
| 4(4) | ヴィアマテラス宮崎 | 32 | 18 | 9 | 5 | 4 | 32 | 24 | +8 | |
| 5(5) | 伊賀FCくノ一三重 | 29 | 18 | 8 | 5 | 5 | 21 | 17 | +4 | |
| 6(6) | ニッパツ横浜FCシーガルズ | 27 | 18 | 8 | 3 | 7 | 32 | 27 | +5 | |
| 7(7) | 岡山湯郷Belle | 27 | 18 | 8 | 3 | 7 | 28 | 29 | -1 | |
| 8(10) | 愛媛FCレディース | 22 | 18 | 6 | 4 | 8 | 21 | 35 | -14 | |
| 9(8) | ASハリマアルビオン | 20 | 18 | 5 | 5 | 8 | 19 | 24 | -5 | |
| 10(10) | スフィーダ世田谷FC | 19 | 18 | 5 | 4 | 9 | 27 | 32 | -5 | |
| 11(11) | 日体大SMG横浜 | 13 | 18 | 4 | 1 | 13 | 18 | 51 | -33 | |
| 12(12) | VONDS市原FCレディース | 10 | 18 | 3 | 1 | 14 | 12 | 40 | -28 |
次節に向けて
ヴィアマテラス宮崎
次節、4位のヴィアマテラス宮崎は首位・静岡SSUボニータをホームに迎える。前回対戦は第8節。今シーズン屈指の強度とテクニックを見せた好カードで、横山久美のPK弾が決勝ゴールとなり静岡が1-0で勝利した。
宮崎にとって今回の5失点をどう修正するかはもちろん重要だが、それと同時に、この試合で見せた縦への速さをどう生かすかにも注目したい。
静岡は第18節でニッパツ横浜FCシーガルズに0-1で敗れている。ニッパツは静岡の最終ライン背後や、ボールを奪った直後の縦への攻撃を効果的に使った。
宮崎にも永野、土屋をはじめ、背後へ一気に走り込める選手がいる。この試合で見せたように、相手のプレスを一気に飛ばすボールも織り交ぜられるか。
自分たちのビルドアップを貫くだけではなく、静岡が嫌がる攻撃をどう組み合わせるか。優勝争いに踏みとどまるためにも、大きな意味を持つ一戦となる。
岡山湯郷Belle
7位の岡山湯郷Belleは、5位の伊賀FCくノ一三重をホームに迎える。
前回対戦は第8節。寺尾星奈、国吉花吏埜の得点で湯郷が2点を先行し、終了間際に1点を返されたものの2-1で勝利した。
伊賀は中盤の運動量と球際の強さがあり、後方から長いボールで一気に前進することもできる。
湯郷としては、この宮崎戦で機能した前線からの守備を再現できるか。ただし宮崎のように低い位置でボールをつなぎ続ける相手とは異なるため、どこを奪いどころとするのかは改めて整理する必要がある。
奪った直後に国吉、岸波、沖田、松﨑らがテンポよく前へ出られれば、伊賀に対しても十分に脅威となる。
宮崎相手の5得点を一試合限りの爆発で終わらせず、終盤戦の継続的な強さにつなげられるかに注目したい。
リソース
チーム紹介


第18節 振り返り

第18節 個人的ベストイレブン

フルマッチLIVE配信
第18節全試合ハイライト動画
公式記録


