2026プレナスなでしこリーグ1部は第21節。全22節のリーグ戦も残り2試合となり、6位のニッパツ横浜FCシーガルズが8位の愛媛FCレディースをホームに迎えた。
ニッパツはリーグ中断明けから5連勝と好調だったものの、前節のVONDS市原FCレディース戦では相手の攻勢に苦しみ、終了間際の同点ゴールで辛くも勝点1を獲得。再び勝利をつかみ、勢いを取り戻したい一戦となった。
一方の愛媛は、前回対戦となった第10節で、ハードワークとセットプレーを武器にニッパツを3-1で撃破している。
試合は開始5分でニッパツが2得点を奪う激しい幕開けとなった。室井胡心が前半だけでハットトリックを達成するも、愛媛は内容を大きく崩すことなく反撃を続け、後半に同点に追いつく。
終盤は勝ち越しを狙うニッパツが猛攻を仕掛けたものの、愛媛は最後まで守り切り、3-3の引き分けに終わった。
この記事の要点
- ニッパツの室井胡心が前半だけでハットトリックを達成。今季13得点で得点ランキング3位に浮上
- 愛媛は開始5分で2失点も、サイド攻撃とハードワークで主導権を握り、2点差を追いつく
- ニッパツは3得点を勝利につなげられず。リード時の守備と試合運びに課題を残す
試合情報
試合展開
開始5分で2得点。室井胡心がスピードで愛媛を圧倒
試合は開始早々から大きく動いた。
3分、愛媛のコーナーキックをしのいだニッパツは、セカンドボールを回収し#7浦島里紗から#10室井胡心へとパスをつなぐ。
自陣でボールを受けた室井は、一気にスピードを上げて左サイドを駆け上がる。ペナルティエリア内では左足のキックフェイントで対応する愛媛DF2人をかわし、シュートコースを作ると、右足で低く鋭いシュートを放つ。
ボールは愛媛ゴールに突き刺さり、ニッパツが先制した。
さらに5分、再び室井がゴールネットを揺らす。
愛媛の最終ラインからGKへのバックパスに対し、室井が鋭いプレスで一気に距離を詰める。対応を急いだGKのボール処理が乱れると、室井は体勢を崩しながらも右足を振り抜き、追加点を奪った。
わずか5分間で2得点。室井のスピードと、一瞬の隙を逃さない得点感覚が光る立ち上がりとなった。

愛媛が反撃。巧みな連係で1点を返すも、室井がハットトリック
開始早々に2点を失った愛媛だったが、試合内容まで一方的だったわけではない。
序盤から積極的にシュートを狙い、ボールを奪うと素早く前方へ運ぶ姿勢を見せていた。そして、細かなパスワークでニッパツの守備を突破し、反撃の1点を奪う。
中盤で相手のプレスをかわしてボールを前進させると、右サイドに開いた#20川崎和奏が相手DFを引きつけ、ペナルティエリア手前の#25足立寧々へマイナスのパスを送る。
足立はワンタッチでペナルティエリア内の#29安齋結花へ縦パス。安齋は相手のプレッシャーを受けながらも巧みにボールを後方へ落とし、右サイドからゴール前に走り込んでいた川崎が右足で流し込んだ。
複数の選手が連動し、相手の守備を動かして生まれた鮮やかなゴールだった。
1点差に詰め寄った愛媛は、さらに攻勢を強める。
右サイドに大きく開いて仕掛ける川崎、ゴール前のスペースへ鋭く飛び込む安齋、距離があっても積極的にシュートを狙う#14近藤彩優子。
前線の選手たちが攻守に積極的な姿勢を見せることで、中盤と最終ラインも高い位置を取り、チーム全体でニッパツを押し込んでいく。
開始5分で2失点したチームとは思えないほど、愛媛は試合の主導権を握り始めていた。

しかし、押し込まれていたニッパツには室井がいた。
サイドでの守備対応から#6權野貴子がプレスバックし、こぼれたボールを#7浦島里紗が素早く前方へ送る。
最終ラインの背後を狙った室井は、自身の爆発的な加速力で愛媛DF2人を振り切ってボールに追いつくと、前に出てきたGKの頭上を越す左足のループシュートでゴールネットを揺らした。
室井は前半だけでハットトリックを達成。ニッパツが再びリードを2点に広げた。
それでも愛媛の攻撃姿勢は変わらない。前線からの積極的な動き出しとサイド攻撃でニッパツを押し込むが、前半は3-1でニッパツがリードして折り返した。
愛媛が攻勢を継続。サイド攻撃から1点差に迫る
後半も愛媛がボールを保持し、ニッパツを押し込む展開が続く。
愛媛は後方から丁寧にパスをつなぎながら、ボールを受ける選手が細かく動いて相手の守備を外す。さらに周囲の選手が連動してパスコースを作り、サイドやバイタルエリアへ進入していく。
一方のニッパツは、前線から積極的にボールを奪いに行く場面が限られ、自陣で守備に回る時間が長くなっていた。

愛媛の攻撃で効果的だったのが、#19黒岩沙羽の右サイドからのドリブル突破だ。
鋭い仕掛けで相手の守備を押し下げ、ゴール前へのクロスからチャンスを作る。
その黒岩の突破が、愛媛の2点目につながった。
左サイドで#29安齋結花、#26桜井由衣香との連係から#2松村菜美がクロスを供給。これは相手に跳ね返されたものの、愛媛がセカンドボールを回収する。
今度は右サイドから黒岩がドリブルで仕掛け、DFとGKの間へ鋭いアーリークロスを送る。そこへ#26桜井由衣香が走り込み、ゴールに押し込んだ。
後半に入ってから増えていた、相手の守備陣とGKの間を狙うクロスが実を結び、愛媛が1点差に迫った。

80分に愛媛が同点。ニッパツの猛攻もしのぎ切る
ニッパツも#11岡百々花の投入によって攻撃の活路を見いだす。
右サイドに入った岡は、持ち前のスピードを生かして最終ラインの背後へ抜け出し、それまで少なかったロングボールの受け手となった。
守備でも積極的にプレスバックし、中盤の強度を高める働きを見せる。
しかし、チーム全体の守備の連動性は十分に改善されず、愛媛の運動量と攻撃の厚みが上回る展開は変わらなかった。
そして80分、ついに愛媛が同点に追いつく。
左サイドの深い位置でスローインを受けた途中出場の#30田上歩実が、ファーサイドへクロスを送る。
ゴール前でフリーになっていた#15榎谷岬が胸でトラップし、落ち着いて右足を振り抜くと、ボールはゴールネットへ。
愛媛が2点差を追いつき、試合を3-3の振り出しに戻した。

終盤になると、ニッパツが再び攻勢を強める。
前線からの鋭いプレスでボールを奪いに行き、後方からは#10室井胡心と岡のスピードを生かしたロングフィードを繰り出す。
最終ラインの背後を狙う動き出しと積極的なシュートで、ニッパツが持ち味とする縦への速い攻撃を展開した。
しかし、愛媛も集中力を切らさない。
GK山内れなを中心に守備陣が身体を張り、前線の選手も守備に加わってニッパツの猛攻をしのぎ切った。
試合は3-3で終了。ニッパツは室井のハットトリックを勝利につなげられず、愛媛は開始5分で2失点を喫しながらも粘り強く追いつき、アウェーで勝点1を獲得した。
総括
この試合を特徴づけたのは、得点経過と試合内容の対照的な関係だった。
ニッパツは室井胡心の圧倒的なスピードと決定力で前半に3得点を奪った。一方の愛媛は、早々に2点のビハインドを背負いながらも、組織的なパスワークとサイド攻撃で相手を押し込み続けた。
ニッパツが個人の突破力を生かして効率よく得点を重ねたのに対し、愛媛はチーム全体の連係と運動量で攻撃機会を積み重ねた。
異なる強みがぶつかり合った一戦だったが、試合を通じて攻撃を継続できたことが、愛媛の追い上げにつながったと言えるだろう。
ニッパツ横浜FCシーガルズ
室井胡心のハットトリックを勝利につなげられなかったことが、ニッパツにとって最大の悔やまれる点だろう。
室井は小柄ながら、初速からトップスピードに到達するまでの時間が非常に短く、一度前を向いて加速すると相手DFが対応するのは難しい。
この試合では、そのスピードだけでなく、キックフェイントによる駆け引き、GKへの鋭いプレス、相手の動きを見極めたループシュートと、多彩な形でゴールを奪った。
今節の3得点でシーズン通算13得点、得点ランキング3位に浮上した。
相手から警戒される中でも結果を残す姿は、まさにニッパツのエースストライカーと言える。

一方で、チームとしては3得点を奪いながらも、主導権を握る時間は限られた。
特に課題となったのは、前線からのプレスと中盤・最終ラインの距離感だ。
愛媛の前線が積極的に背後を狙うことで、ニッパツの最終ラインは押し上げにくくなった。その一方で、ダブルボランチは比較的高い位置を取る場面があり、最終ラインとの間にスペースが生まれていた。
さらに、誰がボール保持者に寄せ、誰が背後をカバーするのかが曖昧になる場面も見られ、愛媛にゴール前まで攻め込まれる要因となったように見受けられる。
第20節のVONDS市原FCレディース戦に続き、相手に押し込まれる時間が長くなった。
中断明けの5連勝では、前線から積極的に仕掛ける守備と、ボール奪取後の縦への素早い攻撃がかみ合っていた。しかし今節は、早い時間にリードを得たことで、前から仕掛けるのか、守備ブロックを整えるのか、チーム全体の判断が揃わなかった可能性がある。

今節は早い時間に2点のリードを得たことで、さらに前から仕掛けるのか、それとも守備ブロックを整えて試合を落ち着かせるのか、チーム全体の判断が揃わなかった可能性がある。
もちろん、90分間にわたって高い強度のプレスを続けることは難しい。それでも、リードしている場面での守備の位置取りと、相手に主導権を渡した際の立て直し方は、改善が求められる部分だろう。
室井胡心と岡百々花という、最終ラインの背後を一気に攻略できる選手を擁するニッパツ。
この強みを勝点3につなげるためにも、試合状況に応じた守備の連動性が求められる。
愛媛FCレディース
開始5分で2失点を喫しながらも、戦い方を崩さずに主導権を握った愛媛。
序盤の2失点は、室井胡心の個人能力と、自陣でのボール処理のミスによるものだった。
もちろん失点に至る守備対応には改善の余地があるものの、組織全体が一方的に崩されたわけではなく、2点差というスコアほど試合内容に大きな差はなかった。
むしろ、愛媛は前半から積極的にシュートを狙い、得点差に左右されることなく攻撃を続けていた。
効果的だったのは、サイドハーフとサイドバックの縦の関係を生かした連係と、最終ラインの背後を狙う積極的な動き出しだ。
近藤彩優子や安齋結花らが繰り返し背後を狙うことで、ニッパツの最終ラインを押し下げ、中盤との間にスペースを生み出した。
愛媛はそのスペースを使いながらサイドへ展開し、クロスや中央へのパスでゴール前に迫った。
また、前線の選手たちはボールを失った後のプレスバックにも積極的だった。こうしたハードワークがチーム全体を高い位置に押し上げ、攻撃を継続する原動力となっていた。

一方で、攻撃面の充実ぶりに対し、守備には課題も残った。特にGKへのバックパスを狙われた2失点目は、試合結果に大きく影響している。
それでも、同点に追いついた後のニッパツの猛攻を、GK山内れなを中心に選手全員が身体を張ってしのぎ切った守備は見事だった。
序盤の2失点にも動じず、積極的な攻撃と献身的な守備を最後まで継続して獲得した勝点1。
愛媛の強みであるハードワークが結果につながった一戦だった。
順位表
第21節を終えて、ニッパツ横浜FCシーガルズは勝点32で6位を維持。
愛媛FCレディースは勝点26となったが、スフィーダ世田谷FCがヴィアマテラス宮崎に勝利したため、前節の8位から9位へ順位を落とした。
| 順位 (前節) | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 | 過去5試合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 静岡SSUボニータ | 41 | 21 | 12 | 5 | 4 | 51 | 14 | +37 | |
| 2(2) | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 39 | 21 | 11 | 6 | 4 | 42 | 20 | +22 | |
| 3(3) | オルカ鴨川FC | 39 | 21 | 11 | 6 | 4 | 29 | 15 | +14 | |
| 4(5) | 伊賀FCくノ一三重 | 36 | 21 | 10 | 6 | 5 | 29 | 20 | +9 | |
| 5(4) | ヴィアマテラス宮崎 | 35 | 21 | 10 | 5 | 6 | 38 | 30 | +8 | |
| 6(6) | ニッパツ横浜FCシーガルズ | 32 | 21 | 9 | 5 | 7 | 38 | 32 | +6 | |
| 7(7) | 岡山湯郷Belle | 28 | 21 | 8 | 4 | 9 | 31 | 36 | -5 | |
| 8(9) | スフィーダ世田谷FC | 26 | 21 | 7 | 5 | 9 | 33 | 35 | -2 | |
| 9(8) | 愛媛FCレディース | 26 | 21 | 7 | 5 | 9 | 27 | 41 | -14 | |
| 10(10) | ASハリマアルビオン | 20 | 21 | 5 | 5 | 11 | 20 | 31 | -11 | |
| 11(11) | 日体大SMG横浜 | 16 | 21 | 5 | 1 | 15 | 22 | 57 | -35 | |
| 12(12) | VONDS市原FCレディース | 12 | 21 | 3 | 3 | 15 | 14 | 43 | -29 |
過去5試合:勝利 引き分け 敗戦
次節に向けて
ニッパツ横浜FCシーガルズ
最終節、ニッパツ横浜FCシーガルズは10位のASハリマアルビオンとのアウェー戦に臨む。
前回対戦となった第11節では、ビルドアップの乱れとセットプレーから2失点を喫し、0-2で敗れている。
ハリマは後方からのビルドアップを重視し、前線には経験豊富な選手を擁するチームだ。終盤戦に入ってから実力のある選手たちが次々と出場機会を得ており、現在の順位だけで実力を判断することは難しい。
ニッパツにとっては、相手のビルドアップに対して前線から効果的にプレスをかけられるかが重要になる。
また、今節のようにリードした際、チーム全体で守備の位置取りを整え、試合の主導権を手放さないことも課題となるだろう。
中断明けの5連勝で見せた、スピードと強度を兼ね備えたサッカーを取り戻し、最終節を勝利で締めくくれるか。
愛媛FCレディース
愛媛FCレディースは最終節、ホームに8位のスフィーダ世田谷FCを迎える。
前回対戦の第11節では、愛媛が相手を押し込む時間を長く作ったものの、決定機を生かせず0-0の引き分けに終わった。
世田谷は得点ランキング暫定首位の内田美鈴に加え、堀江美月も上位につけるなど、攻撃陣の得点力はリーグ屈指。
前線の攻撃力だけでなく、守備陣も積極的に攻撃参加し、チーム全体で縦への推進力を生み出すことが特徴だ。
愛媛としては、相手の強力な攻撃陣を警戒しつつ、前掛かりになった背後のスペースを攻略したい。
今節のニッパツ戦では、敵地で2点のビハインドを追いつく粘り強さを見せた。
最終節では、持ち味のハードワークを勝点3につなげ、ホームのサポーターとともに笑顔でシーズンを締めくくりたい。
リソース
チーム紹介


第21節 振り返り

第21節 個人的ベストイレブン

フルマッチLIVE配信
第21節全試合ハイライト
公式記録


