約2か月の中断期間を経て、2026プレナスなでしこリーグ1部が再開した。
開幕から14連敗を喫していたVONDS市原FCレディースは、中断前最後の第15節で、第14節終了時点で首位だった2位の朝日インテック・ラブリッジ名古屋と0-0で引き分け、1部昇格後初めての勝点を獲得した。
今節はホームに11位の日体大SMG横浜を迎える。ともに1部残留へ勝点を必要とする両チーム。第5節の前回対戦では、日体大が後半に4得点を挙げて4-1で勝利していた。
しかし、この日は前回対戦とは異なる展開となった。
VONDSが序盤から高い最終ラインと前線からのプレスで日体大を押し込み、セットプレーから前半だけで2得点。後半は日体大の反撃を受けて1点差まで詰め寄られたものの、最後まで身体を張ってリードを守り切った。
VONDS市原FCレディースが2-1で勝利。なでしこリーグ1部で待望の初勝利を挙げた。
この記事の要点
- VONDSは高い最終ラインと前線からのプレスで陣形をコンパクトに保ち、日体大のビルドアップを制限した
- 櫻庭琴乃、小林和音がセットプレーから得点し、前半だけで2点のリードを奪った
- 後半は日体大が縦への意識を強めて反撃したが、VONDSが1点差を守り切り1部初勝利を挙げた
試合情報
試合展開
高い最終ラインとプレスでVONDSが主導権を握る
VONDSはボール非保持時に5-4-1を基本としながら、ボールを保持したときや敵陣へ押し込んだ場面では両WBが高い位置を取り、3-5-2に近い形へ変化する。
左の#7佐藤寿音、右の#24増原遥花が一列前へ出ることで幅を確保し、#10櫻庭琴乃は中央へ絞りながら前線へ飛び出す。中央では#28中村円香がボールを収め、#27木須みそららがその周囲へ走り込んだ。
対する日体大は4-4-2。2026年のU-20日本女子代表に選出された#7髙橋光莉や、JFA・WEリーグ特別指定選手としてセレッソ大阪ヤンマーレディースでもプレーできる#4菅原眞名らを擁する。左サイドではスピードと運動量のある#9柴原希保がVONDS最終ラインの背後を狙う。
序盤から主導権を握ったのはVONDSだった。
最終ラインを高く設定し、ボールを奪えば中村を目がけてシンプルに前進。櫻庭や木須だけでなく、中盤と両WBも押し上げて攻撃に人数をかける。

#11村上賀梨を中心とした最終ラインも連動して押し上げることで、前線から後方までの距離を短く維持。日体大がボールを奪っても、すぐに次のVONDS選手が寄せられる状態を作った。
日体大がGKからビルドアップを始めれば、VONDSは前線からプレスをかけてサイドへ誘導する。苦しい体勢から出たパスを中盤で回収し、そのまま敵陣から攻撃を再開する場面が続いた。
左サイドを駆け上がった佐藤寿音がフリーで左足を振り抜くなど、VONDSが日体大ゴールへ迫っていく。
セットプレー2発で前半のうちに2点リード
20分、VONDSの積極的な姿勢が得点につながった。
敵陣で得た左CK。木須みそらがゴール前へ送ったボールに、中央でポジションを争っていた櫻庭琴乃が頭で合わせる。
高く跳び上がるというよりも、相手との競り合いの中で先にボールへ触り、地面へ叩きつけたヘディングシュート。VONDSが先制に成功した。
日体大は失点後、長いボールも交えながら前進を試みたが、攻撃は単発になりやすい。
一方のVONDSは、最終ラインの背後やDFとGKの間へボールを送り続ける。33分のFKでも同じスペースを狙い、日体大守備陣へ継続的に判断を迫った。
40分、その狙いが再び実る。
左サイド、やや距離のある位置からのFK。佐藤寿音が左足でDFラインとGKの間へ精度の高いボールを送り込むと、#19小林和音が背後へ抜け出した。
難しい体勢から左足で直接合わせると、しっかりとミートしたシュートがゴールへ突き刺さる。
前半のシュート数はVONDS8本、日体大5本。高い位置から相手を押し込み、狙いを持って攻撃を続けたVONDSが、内容をそのまま2得点へつなげて試合を折り返した。

杉本光羽の投入直後の一撃で日体大が反撃
後半序盤もVONDSは高い位置からの守備を継続した。
ボールホルダーだけではなく、その次のパスを受ける選手にも素早く寄せる。1人目で奪えなくても2人目がカバーし、中盤で自由に前を向かせない。
しかし、2点を追う日体大も縦への意識を強める。
選手交代を使いながら前線へ推進力を加えると、68分に#27杉本光羽を投入。そのわずか1分後だった。
69分、自陣で得たFKを素早く再開。#6西村萌から#8安積和季へつなぎ、前方へ抜け出した杉本へボールが渡る。
杉本はそのまま中央を持ち上がり、ペナルティーエリア付近から右足を振り抜く。シュートはVONDSゴールを揺らし、2-1と差を詰める。
交代直後の杉本が、リスタート直後でVONDSのマークが整う前のわずかな隙を突いた。
さらに日体大は#21佐藤実玖も投入。VONDSの高い最終ラインの背後へ抜け出してループシュートを狙うなど、前半には少なかった直接的な攻撃が増えていく。

日体大の猛攻を耐え、VONDSが1部初勝利
時間の経過とともに、試合の構図は変わった。
前半に高い強度でプレーしたVONDSは徐々に運動量が低下。雨脚も強まる中、前半のように高い位置でボールを奪い続けることが難しくなり、日体大に押し込まれる時間が増えていった。
実際、VONDSの後半のシュートはわずか1本。
それでも、守備では簡単にシュートを打たせなかった。
ボールへ素早く寄せ、1人で止められなければ周囲がカバーする。#11村上賀梨を中心とする最終ラインも身体を張り、日体大のフィニッシュにプレッシャーをかけ続けた。

終盤には日体大が人数をかけ、フィールドプレーヤーが次々とVONDSのペナルティーエリアへ入っていく。
それでも最後の1点を許さない。そして雨の中、試合終了のホイッスル。
VONDS市原FCレディース 2-1 日体大SMG横浜。
開幕から14連敗。前節で初勝点。そして第16節、ついにVONDSがなでしこリーグ1部での初勝利を手にした。
総括
この試合で勝敗を分けたのは、単純なボール保持率や個々の技術ではなく、守備をどのように攻撃へつなげたかだったように思う。
失点を防ぐために守るのか。
ボールを奪い、相手ゴールへ向かうために守るのか。
前半のVONDSは明確に後者だった。
高い最終ラインを保ち、前線からプレスをかけることで日体大を自陣へ押し込む。奪った位置が高いため、攻撃へ転じたときのゴールまでの距離も短い。
さらに日体大がこれまで苦しんできた最終ラインでのパス交換や、DFとGKの間へ落ちるボールへの対応を繰り返し狙った。
そしてセットプレーから2得点。
一方の日体大は、2点を追う状況になってから縦へのスピードを上げ、VONDSの背後を狙うことで試合を押し戻した。
前半と後半で主導権が明確に入れ替わった試合だったが、前半に自分たちの狙いを得点へ結び付けていたことが、最後にVONDSを勝利へ導いた。
VONDS市原FCレディース
後半に運動量が落ちるまで、VONDSは狙い通りに「相手が嫌がること」を徹底していた。
日体大が低い位置からパスをつなごうとすれば、前線から素早く寄せてサイドへ追い込む。
中盤でボールを受けようとする選手にも身体を寄せ、自由に前を向かせない。
ボールを奪えば、中村円香を起点に前方へ進み、佐藤・増原の両WBも高い位置を取って攻撃へ人数をかける。
さらに、DFラインとGKの間へ繰り返しボールを送り、日体大守備陣へ後方へ向かいながらの対応を強いた。

その中で櫻庭琴乃は、身体の強さを生かしてボールを収めるだけでなく、自らドリブルで前進し、周囲へボールを預けながら攻撃の起点となった。中央で相手の守備を引きつけることで、周囲の選手が前へ出る時間も作っていた。
2得点はいずれもセットプレーだったが、偶然得られたものではない。高い位置でプレーする時間を増やした結果として得たセットプレーを、確実に得点へ結び付けた。
守備面にも成長が見えた。
低い位置でボールを失い、危険な状況を招く場面は残っている。それでも、失った直後の切り替えと周囲のカバーはシーズン序盤より明らかに速くなっている。
相手がボールを完全にコントロールする前に寄せ、身体をぶつけ、楽に前を向かせない。
チーム全体で同じ基準を持って守れていたことが大きい。

一方、課題も残った。
日体大が前への人数を増やした後半、VONDSのシュートは1本だけだった。押し込まれた時間帯に、自陣からボールを運び出して試合を落ち着かせるところまでは至っていない。
より上位の相手になれば、90分間この強度だけで押し切ることは難しい。
それでも、追い上げを1失点にとどめて勝点3を手にしたことには大きな意味がある。
1部初勝利、そして今季初の複数得点。
攻撃ではリーグ1部でも違いを作れている櫻庭琴乃を軸に、限られた得点機会を結果へ結び付けられるか。
残留へ向けた状況は依然として厳しいが、この日の一体感と守備強度を再現できれば、さらに勝点を積み上げる可能性はある。
日体大SMG横浜
日体大は、個々の技術を生かして相手を外せる場面もあった。
しかし前半は、VONDSのプレスを受けながら自陣から丁寧につなごうとしたことで、むしろ相手が狙っていた展開へ試合を進めてしまったように見えた。
VONDSが高い位置から人数をかけてくる中でも低い位置でパス交換を続け、ボールを失えば短い距離から再び攻撃を受ける。
この構図を前半のうちに変えられなかったことが、2点のビハインドにつながった。
守備でも課題が残る。
20分のCKでは、最も警戒すべき櫻庭琴乃がゴール正面でヘディングできる状況を許した。
40分にもDFラインとGKの間へ入ったFKに対応できず、小林和音の抜け出しを許している。
上位チームほど、相手の攻撃の起点やストライカーに対して「まず持たせない」「持たせても前を向かせない」という対応が徹底されている。
日体大が今後さらに守備を改善するためには、チーム全体の重心を下げるだけではなく、相手のどの選手を、どの場所で、どのように制限するのかまで整理する必要がある。

一方で、後半には改善も見えた。
2点を追う中で縦への意識を強め、杉本光羽、佐藤実玖らを投入。相手最終ラインの背後を直接狙うことで、VONDSの高いラインを下げさせた。
杉本の得点も、その変化から生まれている。
第10節以降、まず失点を抑えることを優先する意識が強く見える日体大だが、守備を整えるだけでは相手の狙いまで消すことはできない。
自分たちのサッカーをするためには、相手が何をしたいのかを見極め、その強みを制限する必要がある。
この試合では後半に修正できただけに、その変化を試合のもっと早い段階で出せるか。残り6試合に向けて、日体大が改善したいポイントのひとつだ。
順位表
第16節を終え、VONDS市原FCレディースは今季初勝利を挙げて勝点を4へ伸ばした。
順位は12位のままだが、11位の日体大SMG横浜との勝点差を6まで縮めた。
日体大も11位を維持している。
| 順位 (前節) | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 | 過去5試合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 静岡SSUボニータ | 35 | 16 | 11 | 2 | 3 | 48 | 11 | +37 | |
| 2(2) | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 32 | 16 | 9 | 5 | 2 | 37 | 15 | +22 | |
| 3(4) | オルカ鴨川FC | 31 | 16 | 9 | 4 | 3 | 25 | 11 | +14 | |
| 4(3) | ヴィアマテラス宮崎 | 29 | 16 | 8 | 5 | 3 | 29 | 18 | +11 | |
| 5(5) | 伊賀FCくノ一三重 | 29 | 16 | 8 | 5 | 3 | 19 | 12 | +7 | |
| 6(6) | 岡山湯郷Belle | 23 | 16 | 7 | 2 | 7 | 23 | 28 | -5 | |
| 7(8) | ニッパツ横浜FCシーガルズ | 21 | 16 | 6 | 3 | 7 | 29 | 27 | +2 | |
| 8(10) | ASハリマアルビオン | 19 | 16 | 5 | 4 | 7 | 18 | 22 | -4 | |
| 9(7) | 愛媛FCレディース | 19 | 16 | 5 | 4 | 7 | 18 | 31 | -13 | |
| 10(9) | スフィーダ世田谷FC | 16 | 16 | 4 | 4 | 8 | 23 | 29 | -6 | |
| 11(11) | 日体大SMG横浜 | 10 | 16 | 3 | 1 | 12 | 14 | 47 | -33 | |
| 12(12) | VONDS市原FCレディース | 4 | 16 | 1 | 1 | 14 | 8 | 40 | -32 |
次節に向けて
VONDS市原FCレディース
次節、VONDS市原FCレディースは9位の愛媛FCレディースとのアウェー戦に臨む。
前回対戦では攻撃面で一定の成果を見せた一方、守備のほころびを突かれて1-2で敗れた。
愛媛FCレディースは第16節に首位の静岡SSUボニータに3-1で敗れたものの、最後まで運動量を落とさず、終盤には静岡を押し込む時間も作った。
また、第3節では名古屋を相手に5得点を奪っており、攻撃がかみ合ったときの爆発力もある。
VONDSとしては、今節機能した前線からのプレスをどの位置から始めるのかを改めて整理したい。
同時に、自陣の低い位置では無理なドリブルやパスによるボールロストを減らし、愛媛の速い攻撃へ移行させないことも重要になる。
日体大SMG横浜
日体大SMG横浜は、ホームに4位のヴィアマテラス宮崎を迎える。
前回対戦は前半の4失点が重く、後半に2点を返したものの2-4で敗れた。
宮崎は第16節、開始6分に退場者を出し、ASハリマアルビオンに1-3で逆転負けした。
それでも前線の推進力と運動量はリーグでも高い水準にある。
日体大が受け身になり続ければ、再び自陣へ押し込まれる展開になりかねない。
VONDS戦の後半に見せたように、相手の守備が整う前に前方へ出ていく意識を序盤から持てるか。守るだけではなく、自ら試合の強度を上げる時間を作れるかがポイントになりそうだ。
リソース
チーム紹介


第16節 振り返り
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第16節 個人的ベストイレブン
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フルマッチLIVE配信
第16節全試合ハイライト動画
公式記録

