2026プレナスなでしこリーグ1部 第17節。
中断明け初戦となった前節、ニッパツ横浜FCシーガルズの前線のスピードと背後を狙った攻撃に苦しみ、0-3で敗れた朝日インテック・ラブリッジ名古屋。順位は2位を維持しているものの、首位・静岡SSUボニータとの勝点差は3ポイントに広がった。
第15節のVONDS市原FCレディース戦を0-0で引き分けており、直近2試合は勝利がない。
その名古屋がホームに迎えたのは10位のスフィーダ世田谷FC。世田谷も第14節から3連敗を喫しており、下位との勝点差を広げるためにも勝利が欲しい状況だった。
リーグ連覇を狙う名古屋と、残留争いから距離を取りたい世田谷。それぞれの目標に向けて勝点3が重要になる一戦となった。
前回対戦時は内田美鈴の2得点で世田谷が前半を2-1で折り返したが、後半62分に橘麗衣のPKで名古屋が追いつく。そして後半アディショナルタイム、角田菜々子が決勝点を挙げ、名古屋が3-2で逆転勝利を収めた。
今回は、その世田谷が前回対戦とは異なる形で名古屋を苦しめた。
前半から名古屋のビルドアップの出口を狙ったハイプレスが機能。内田美鈴の先制点とオウンゴールで2点を先行すると、後半は名古屋の反撃を受けながらもGK大塚美緒を中心に守り切った。
名古屋は後半に攻撃の形を修正したものの、最後までゴールを奪えず。世田谷が2-0で勝利し、5試合ぶりの勝点3を手にした。
この記事の要点
- 世田谷は名古屋の低い位置からのビルドアップをハイプレスで制限し、前半のうちに2得点
- 名古屋は後半に選手交代と配置変更で押し返したものの、フィニッシュの精度とGK大塚美緒の好守に阻まれ無得点
- 世田谷は3連敗を止めて5試合ぶりの勝利。名古屋は3試合勝利なし、2連敗となった
試合情報
試合展開
名古屋の出口を消した世田谷のハイプレス
立ち上がりからボールを保持したのは名古屋だった。
最終ラインから丁寧にパスをつなぎ、両サイドを使って前進を試みる。しかし、世田谷は前線から積極的にプレッシャーをかけ、名古屋が狙う中央へのパスコースを制限した。
前線でプレスの起点となったのは、#13内田美鈴と#9堀江美月。
名古屋にとって、この2人に自陣のゴールに近い位置でボールを奪われることは大きなリスクになる。そのため、ボランチの安部・逸見へ簡単に縦パスを入れられず、ボールを外側へ逃がす場面が増えていった。

とくに世田谷の左サイドでは、#15篠原沙耶が高い位置まで出て、名古屋の#24角田菜々子へのパスを狙っていた。
角田が低い位置で受けようとする瞬間に前へ出てインターセプト。名古屋陣内のバイタルエリア付近で奪い、そのまま決定機につながりかけた場面もあった。
ボールを保持する時間だけを見れば名古屋。
しかし、どこでボールを持たせ、どこで奪うかという試合の設計では、世田谷が主導権を握っていた。
12分、内田美鈴が先制 世田谷がプレスを得点につなげる
12分、世田谷が狙いを結果につなげる。
最終ラインから攻撃参加した#7渡邊那奈が前線までプレッシャーをかけ、名古屋のゴールライン際へ侵入する。
#17堀内意に身体を寄せられながらも粘ってゴール前へボールを送り、#23松本和笑がクリア。しかし、そのボールが転がった先に待っていたのが#13内田美鈴だった。
内田は迷わず左足でダイレクトシュート。
強烈な一撃をゴール上部へ突き刺し、世田谷が先制した。
前節の伊賀FCくノ一三重戦に続く、内田の2試合連続となる先制ゴール。
名古屋のビルドアップに対して前向きに圧力をかけ続けた世田谷が、その勢いを早い時間帯で得点に変えた。

名古屋にとっては、まだ慌てる必要のない時間帯での失点だった。
その後もボール保持のスタイルを変えずに前進を試みるが、20分に再び世田谷がゴールへ迫る。
味方CBのクリアボールを#24谷口真由が回収し、左サイドの#15篠原沙耶へ展開。
篠原がドリブルで前進し、最終ラインと駆け引きする内田へ縦パスを入れる。内田は素早く反転すると、最終ラインの背後へ抜け出した#9堀江美月へ決定的なパスを通した。
堀江の右足ワンタッチシュートに対し、GK#16流川桐佳が素早く飛び出してブロック。
しかし、こぼれたボールが戻ってきた名古屋DFに当たり、そのままゴールへ。オウンゴールとなり、世田谷が20分までに2点のリードを奪った。

偶発的な形で生まれた得点ではある。
ただし、その直前には篠原から内田、内田から堀江と中央を縦に割っており、名古屋の守備を完全に崩していた。世田谷にとっては、前半から狙っていた積極的な守備と縦への攻撃が形になった追加点だった。
2失点後の名古屋はボールを保持するものの、攻撃のテンポを上げられない。
対する世田谷はハイプレスを継続し、2点のリードを保ったまま前半を終えた。
後半、名古屋が人と配置を変えて反撃
2点を追う名古屋は、後半開始から修正を加える。
#14上田真子、#13仁木愛実といった技術とシュート力を持つ攻撃的な選手を投入。さらに#20増永朱里を左サイドへ移し、前半はパスに偏っていた攻撃にドリブルでボールを運ぶ選択肢を加えた。
この変更によって名古屋の前進は改善する。
サイドの選手が自らボールを運ぶことで、安部・逸見も前半より高い位置を取れるようになり、前線に人数をかけた厚みのある攻撃が増えていった。
守備でも内田への対応を修正。
低いパスが入った瞬間にDFが身体を寄せ、簡単に前を向かせない。前半に攻撃の起点となっていた内田と堀江を名古屋ゴールから遠ざけた。
さらに#8渕上野乃佳、#28永田晶子といったドリブルで違いを作れる選手も投入。
名古屋は徐々に世田谷を自陣へ押し込み、サイドからの仕掛け、中央へのパス、ミドルシュートと攻撃の選択肢を増やしていった。

押し込まれても耐えた世田谷 大塚美緒がゴールを守る
後半は試合の構図が大きく変わった。
前半に高い位置から名古屋を追い込んだ世田谷だったが、名古屋の配置変更と個の仕掛けによって徐々に後退。自陣で守る時間が長くなる。
それでも最後の局面では身体を張り、GK#1大塚美緒も好セーブでゴールを守った。
名古屋は世田谷の守備ブロックを崩してシュートまで持ち込む場面を作ったものの、最後のフィニッシュをゴールへ結びつけることができない。
試合終盤には縦への意識がさらに強まり、波状攻撃を仕掛けた。
しかし、世田谷も最後までゴール前を守り切る。

前半の2得点を守ったスフィーダ世田谷FCが2-0で勝利。
3連敗を止め、5試合ぶりの勝点3を手にした。
一方の名古屋は、第16節のニッパツ戦に続く無得点での敗戦。リーグ終盤の優勝争いで痛い2連敗となった。
総括
この試合の勝敗を分けたのは、前半の準備の具体性と、相手に合わせた戦い方だった。
世田谷は名古屋のボール保持そのものを止めようとはしていない。
名古屋が最終ラインでボールを持つことはある程度許容しながら、起点となる安部・逸見へのパスコースを消し、サイドへ誘導。そこへサイドバックや前線の選手が強く出ることで、名古屋が前向きにプレーできる場所を限定した。
その守備から12分の先制点が生まれ、20分には中央を縦に突破して追加点につなげた。
対する名古屋も後半には修正した。
増永を左へ移し、上田、仁木、渕上、永田らを投入したことで、パスだけではなくドリブルでも世田谷の守備を動かせるようになった。内田への守備も改善し、後半は試合の主導権を取り戻している。
ただし、その変化を得点へ結びつけることはできなかった。
世田谷が「名古屋のどこを狙うか」を明確にして試合に入ったのに対し、名古屋は世田谷のプレスを外して前進する方法を見つけるまでに時間を要した。
前半の45分で生まれた2点差が、最後まで埋まらなかった。
朝日インテック・ラブリッジ名古屋
前節のニッパツ横浜FCシーガルズ戦に続き、自陣の低い位置からのボール保持を相手に狙われた。
もちろん、低い位置から丁寧につなぐこと自体が問題なのではない。
重要なのは、そのポゼッションによって相手を動かし、どこから前進するかである。
第4節から第14節にかけての名古屋は、相手の特徴に合わせながらボール保持の位置と方法を整理し、高い位置で得意のパスワークとドリブル突破を使い分け、個の能力を発揮していた。
しかし、第15節のVONDS市原FCレディース戦ではボールを保持しながら0-0。中断明けのニッパツ戦では0-3で敗れ、今節も前半から自陣でのボール回しを狙われた。
とくに今節は、ボールを奪い返した直後にも前方ではなく横方向を選択する場面が少なくなく、その瞬間を世田谷に狙われて再び自陣でプレッシャーを受けるケースが見られた。
後半の修正によって攻撃は改善しただけに、それをより早い時間帯から出せるかが課題になる。

守備の中心だった橘麗衣が中断期間中にAC長野パルセイロ・レディースへ移籍した影響は小さくない。
ただ、現在見えている問題を橘一人の退団だけで説明するのは難しい。
ビルドアップ時の配置、相手のプレスを受けた際の逃げ道、ボールを失った直後の守備まで含めて、チーム全体で整理する必要があるだろう。
個の能力は高く、選手層も厚い。
だからこそ、自分たちの得意なサッカーを押し出すだけでなく、相手がどこにプレスの狙いを定めているのかを早い段階で見極め、立ち位置や前進方法を試合の中で変えていきたい。
第15節から3試合勝利なしとなり、中断明けは2連敗。
リーグ連覇を狙う名古屋にとって、終盤戦での大きな踏ん張りどころを迎えている。
スフィーダ世田谷FC
世田谷にとっては、相手の特徴を研究した準備が前半から表れた試合だった。
ボールコントロールやビルドアップの質では名古屋に分がある。
そこで、ボールを奪いに行く場所を明確にした。
内田と堀江が中央へのパスコースを限定し、名古屋をサイドへ誘導。SBの篠原だけでなく、CBの渡邊も積極的に前へ出て相手陣内でプレッシャーをかけた。
後方の人数を減らすリスクを負ってでも前向きに守備をすることで、名古屋が得意とするパスワークを高い位置で発揮させなかった。
前半の谷口真由の働きも大きい。
セカンドボールを広い範囲で回収し、名古屋が攻撃へ転じるきっかけを何度も断った。
自陣からのゴールキックやスローインでは、堀江が安部または逸見を背負ってボールを受ける場面が多くあった。
名古屋の攻撃の起点となる選手を競り合いに巻き込むことで、仮にセカンドボールを失っても、その直後に精度の高いパスを前線へ供給させにくくする意図が感じられた。
ボール保持率とは別のところで、世田谷が試合をコントロールしていた前半だった。

一方、後半には課題も残った。
名古屋が配置を変えてドリブルで前進するようになると、前半ほど高い位置でボールを奪えなくなった。
内田と堀江も前を向く回数が減り、攻撃機会そのものが大きく減少。終盤は自陣へ押し込まれ、大塚の好セーブに救われた場面も少なくない。
また、最終ラインを高く設定し、DFが積極的に前へ出るスタイルは、最初のプレスを外された際に背後へ大きなスペースを残す。
この試合では名古屋が前進するまでに時間をかけさせたことで中盤が帰陣できたが、より早く背後を使ってくる相手にはリスクにもなり得る。
それでも、3連敗中だったチームが優勝争いを続ける名古屋を相手に、自分たちから仕掛ける守備で勝点3をつかんだ意味は大きい。
内田・堀江という得点源を生かしながら、高い守備ラインの背後をどう管理するか。
残り5試合で勝点を積み上げていくうえで、攻撃力を守備の安定につなげられるかが鍵になりそうだ。
順位表
第17節の全試合終了待ち
次節に向けて
朝日インテック・ラブリッジ名古屋
次節、朝日インテック・ラブリッジ名古屋はASハリマアルビオンとのアウェー戦に臨む。前回対戦時は名古屋が試合の主導権を握り、2-1で勝利している。
ハリマは第16節ではヴィアマテラス宮崎に先制を許しながらも、退場者を出した相手に対して前半のうちに3得点を奪って3-1で逆転勝利した。
シーズン序盤には苦しい時期を過ごしたものの、徐々に結果を残し始めている。
対する名古屋は3試合勝利がなく、中断明けは2連敗。
優勝争いに踏みとどまるためには、第18節で流れを変えたい。
自分たちのボール保持をどう生かすのか。それと同時に、相手がどこを狙っているのかを試合の早い段階で見極められるか。
首位に食らいつき、3位以下の上位グループを再び引き離すためにも、勝利が求められる一戦となる。
スフィーダ世田谷FC
スフィーダ世田谷FCは次節、日体大SMG横浜をホームに迎える。前回対戦時は内田美鈴が2得点を挙げ、終盤の北川心子の決勝点で世田谷が3-2の勝利を収めた。
日体大は第17節のヴィアマテラス宮崎戦で、試合の主導権を握る時間も長く、これまでとは違った姿を見せた。2-1で敗れはしたものの、残留争いに向けて明るい傾向がある。
安積和季をはじめ、前線や中盤にはボールを運びながら局面を変えられる選手が多数いる。今節の名古屋戦と同様に高い位置からプレッシャーをかけたい世田谷だが、最初の守備を外された際の背後への対応はより重要になるだろう。
名古屋戦で見せた前向きな守備を継続しながら、高い最終ラインのリスクをどう管理するか。
5試合ぶりの勝利を単発で終わらせず、終盤戦で順位を上げるためにも、連勝を狙いたい一戦となる。
リソース
チーム紹介


第17節 振り返り
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