日本列島に台風が接近する中で開催された、2026プレナスなでしこリーグ1部 第15節。
上野運動公園競技場では、伊賀FCくノ一三重がヴィアマテラス宮崎を迎えた。
中断期間前の最終戦。優勝争いに踏みとどまりたい両チームにとって、勝点3が欲しい一戦である。
前回対戦は、宮崎がホームで3-2と競り勝った。伊賀は先制しながらも逆転を許し、追いつく粘りは見せたものの、最終的には勝点を持ち帰れなかった。
その悔しさを晴らしたい伊賀にとって、今節はリベンジの意味も持つ一戦だった。
前回対戦の結果
第4節:ヴィアマテラス宮崎 3-2 伊賀FCくノ一三重
試合は、ホームの伊賀が90分を通して宮崎を押し込む展開となった。高い最終ライン、前線からのプレス、中盤の強度、そして両サイドの推進力。伊賀は自分たちの強みを前面に出し、宮崎のビルドアップとサイド攻撃を大きく制限した。
一方の宮崎は、苦しい時間が長くなりながらも、GK暁清流を中心に最後までゴールを割らせない。伊賀はシュート15本を放ったが、最後の一押しを欠き、試合は0-0のまま終了した。
この記事の要点
- 伊賀が高い守備強度とサイド攻撃で宮崎を押し込み、試合の主導権を握った
- 宮崎はビルドアップと両サイドの前進を制限され、シュート3本に抑えられた
- 伊賀はシュート15本を放ったが無得点。宮崎はGK暁清流の好守もあり、勝点1を持ち帰った
試合情報
試合展開
伊賀のハイプレスが宮崎の前進を制限
立ち上がりから、伊賀が前線から強く圧力をかけた。
最前線では#10平田ひなのと#9桂亜依が宮崎の最終ラインにプレッシャーをかけ、#7渡邊凜と#24唐沢芽依がサイドの出口を限定する。中盤では#6常田麻友と#8島野美央が中央を締め、#3秦美結、#6清悠香、#5常田菜那を中心とした最終ラインも高い位置を保った。
これにより、伊賀はチーム全体をコンパクトに維持。前向きにボールを奪い、そのままショートカウンターへつなげる場面を何度も作った。
今シーズンの宮崎は、基本的には最終ラインから丁寧に前進したいチームである。
しかし、この試合では伊賀のプレスを受け、いつものように中盤を経由してサイドへ展開する形をなかなか作れなかった。
両サイドで優位を作った伊賀
伊賀の攻撃で目立ったのは、両サイドの推進力だった。
左サイドでは、#14増田玲那と#7渡邊凜の縦関係が機能した。増田が低い位置から持ち上がり、渡邊がスピードを生かして背後や内側へ動く。宮崎の守備が一方に寄れば、逆サイドへ展開する選択肢も生まれる。

右サイドでは、#5常田菜那が高い位置を取り、#24唐沢芽依とともに宮崎の左サイドを押し込んだ。相手の両サイドに守備対応を求める場面を増やし、宮崎の攻撃の出口を制限した点も大きかった。
宮崎が本来狙いたいのは、#4永野桃子や#22山本さゆりがサイドで前向きにボールを受け、#9土屋佑津季や#17小澤寛と絡みながらゴールへ迫る形である。しかし、この試合では両サイドが深い位置からスタートする場面が多く、宮崎らしい前進は限られた。
飲水タイム後も流れは伊賀
前半の飲水タイムを挟んでも、大きな流れは変わらなかった。
宮崎も最終ラインを高く保ち、前から奪いにいく姿勢を見せたが、伊賀の#6常田麻友と#8島野美央のボランチコンビが安定していた。セカンドボールの回収、球際の強さ、前への判断が早く、宮崎が一度跳ね返しても、伊賀が再び押し返す展開が続いた。
伊賀はラインを上げ、ボランチも相手ゴール前に顔を出す。単発の攻撃で終わらず、二次攻撃、三次攻撃へとつなげる厚みがあった。
宮崎の数少ないチャンスは、前半アディショナルタイム。#17小澤寛のクロスに#22山本さゆりが反応し、右足で合わせたが、伊賀GK#16小野未織がしっかりとキャッチした。
前半は、伊賀がハイプレスとサイド攻撃で宮崎を押し込み続け、0-0で折り返した。

後半も伊賀が押し込み、宮崎は耐える展開に
後半も、主導権を握ったのは伊賀だった。
宮崎は最終ラインでボールを奪っても、チーム全体が押し込まれているため、得意のサイドの裏抜けに展開しにくい。#9土屋佑津季に預けて味方の押し上げを待つ場面もあったが、宮崎の上がりよりも伊賀の戻りの方が速く、カウンターとしては発展しなかった。
宮崎は選手交代と配置の修正で流れを変えようとした。#4永野桃子がより中央寄り、あるいは前線に近い位置で関わる場面も見られ、土屋が前を向いてボールを持った時には可能性を感じさせた。
ただし、宮崎がサイドの構成を変更すれば、伊賀はそれを見逃さない。左サイドだけでなく右サイドも使い、クロスから#8島野美央がヘディングでゴールに迫る場面を作った。
伊賀は後半開始から入った#11児野楓香も前線で起点となった。#10平田ひなのとともにハイボールやポストプレーを担い、#7渡邊凜、#8島野美央、#6常田麻友らの押し上げにつなげていく。
終盤になっても、伊賀の運動量は大きく落ちなかった。

最後まで割れなかったゴール
後半アディショナルタイム、伊賀はセットプレーの流れから決定機を迎える。
#8島野美央が頭でつなぎ、#6常田麻友がゴール前で相手DFを外して右足を振る。しかし、ここは宮崎GK#1暁清流がビッグセーブ。試合終了間際の失点を許さなかった。
伊賀は最後まで押し込み、シュートを積み重ねた。
それでもゴールは生まれない。
試合は0-0。
伊賀が内容面で優位に立ちながらも、宮崎が粘り強く守り切り、勝点1を分け合う結果となった。
総括
伊賀は、チームとしての練度が上がっている。
戦い方が明確になり、迷いが少ない。前線から圧力をかけ、中盤で回収し、サイドから一気にゴールへ迫る。守備から攻撃への切り替えも速く、チーム内に共通認識が浸透していることがうかがえる。
中断期間前の上位3連戦は、名古屋戦で敗戦、静岡戦で勝利、宮崎戦で引き分け。1勝1分1敗で勝点4を積み上げた。
前半戦の同カードでは、名古屋戦が引き分け、静岡戦が引き分け、宮崎戦が敗戦。2分1敗の勝点2だったことを考えれば、同じ相手との再戦で結果を上げている。
完成度を高めている名古屋には敗れたものの、当時首位だった静岡を無得点に抑えて勝利し、宮崎相手にも90分を通して主導権を握った。伊賀が中断期間明けの上位争いをさらに面白くする存在であることは間違いない。
一方の宮崎にとっては、厳しい一戦だった。
シュート数は3本。今季の中でも、かなり少ない部類の数字である。相手の守備が固いだけでなく、推進力と強度もある場合、シーズン前半戦で機能していたビルドアップとサイド攻撃が大きく制限される。
それでも、苦しい試合を無失点で終え、勝点1を持ち帰った点は評価できる。優勝争いにおいて、内容が苦しい試合を負けにしないことも重要である。
伊賀FCくノ一三重
ここ数試合で見せている、左サイドの渡邊凜と増田玲那の縦関係が非常に良い。
以前は、渡邊のボールへの関与を制限されると、攻撃が停滞する場面もあった。しかし、現在は一列低い位置にスピード、アジリティ、推進力を備える増田がいる。増田が単独で運び、相手を剥がすことで、渡邊は外に張るだけでなく、内側へ絞る選択肢も取りやすくなっている。
右サイドには唐沢芽依と常田菜那の縦関係がある。高さと強さ、そして前へ出ていく迫力があり、左だけを警戒すればよいチームではなくなっている。
常田麻友と島野美央の中盤も安定感が高い。球際、セカンドボール、ハイボールの競り合いで強く、守備の前衛でありながら、攻撃の起点にもなっていた。

かなりの運動量を必要とするサッカーではある。
しかし伊賀は、それを90分間やり遂げることができている。ボールを奪ってからのアクションが速く、チーム全体が次に何を狙うかを共有できている。
課題は、やはり決定力である。
相手GKの好セーブがあったとはいえ、シュート15本で無得点は悔いが残る。優勝争いを見据えるなら、内容で上回った試合を勝点3につなげる力が必要になる。
強固な最終ライン。
運動量と強度で相手に勝る中盤。
スピードと推進力のある両サイド。
そこに決定力が加われば、伊賀は中断期間明けの優勝争いを大きく動かす存在になる。
ヴィアマテラス宮崎
宮崎は、戦い方のベースであるビルドアップを伊賀のハイプレスに制限された。
中盤での競り合い、サイドの攻防、判断の速さ。多くの局面で伊賀の強度が上回り、宮崎は守備に時間を割く展開となった。
被シュートは15本。
それでも無失点で終え、勝点1を持ち帰ることができたのは、GK暁清流の活躍が大きい。最後まで集中を切らさず、ゴール前でチームを救った。
一方で、攻撃面では課題が残る。
宮崎が放ったシュートは3本。コーナーキックも多くは獲得できず、流れの中でもセットプレーでも、相手を押し込む時間を十分に作れなかった。

両サイドの永野桃子、山本さゆりが高い位置を取れない場合、攻撃は土屋佑津季や小澤寛の個の力に頼る場面が増える。土屋が前を向いてボールを持った時には可能性を感じさせたが、伊賀はそこを承知で潰しに来ていた。
相手との戦力差が大きくない試合で、得意な形を制限された時にどうするか。
つなぐのか。
背後を狙うのか。
中央で起点を作るのか。
サイドの位置取りを変えるのか。
第10節の世田谷戦から見え始めた課題は、ニッパツ戦を経て、この伊賀戦でも続いている。中断期間で攻撃の選択肢を整理できるかどうかが、終盤戦の大きなポイントになる。
順位表
第15節を終えて、伊賀FCくノ一三重は5位、ヴィアマテラス宮崎は3位を維持している。
| 順位 (前節) | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 | 過去5試合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1(2) | 静岡SSUボニータ | 32 | 15 | 10 | 2 | 3 | 45 | 10 | +35 | |
| 2(1) | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 32 | 15 | 9 | 5 | 1 | 37 | 12 | +25 | |
| 3(3) | ヴィアマテラス宮崎 | 29 | 15 | 8 | 5 | 2 | 28 | 15 | +13 | |
| 4(4) | オルカ鴨川FC | 28 | 15 | 8 | 4 | 3 | 20 | 10 | +10 | |
| 5(5) | 伊賀FCくノ一三重 | 26 | 15 | 7 | 4 | 3 | 17 | 11 | +6 | |
| 6(6) | 岡山湯郷Belle | 23 | 15 | 7 | 2 | 6 | 22 | 23 | -1 | |
| 7(9) | 愛媛FCレディース | 19 | 15 | 5 | 4 | 6 | 17 | 28 | -11 | |
| 8(8) | スフィーダ世田谷FC | 16 | 14 | 4 | 4 | 6 | 22 | 24 | -2 | |
| 9(7) | ASハリマアルビオン | 16 | 15 | 4 | 4 | 7 | 15 | 21 | -6 | |
| 10(10) | ニッパツ横浜FCシーガルズ | 15 | 14 | 4 | 3 | 7 | 23 | 27 | -4 | |
| 11(11) | 日体大SMG横浜 | 10 | 15 | 3 | 1 | 11 | 13 | 45 | -32 | |
| 12(12) | VONDS市原FCレディース | 1 | 15 | 0 | 1 | 14 | 6 | 39 | -33 |
次節に向けて
中断期間明けの第16節、伊賀FCくノ一三重はスフィーダ世田谷FCとのアウェー戦に臨む。
前回対戦は、第5節。伊賀がホームで2-1と勝利した。
一度は先制を許したが、桂亜依の得点で追いつき、試合終了間際に松田吏真が勝ち越しゴール。伊賀にとっては、今季リーグ戦初勝利を手にした相手でもある。
優勝戦線に本格的に食い込むためには、中断明け初戦で確実に勝点3を取りたい。守備強度とサイドの鋭さを維持しながら、今節で課題となった決定力をどこまで磨けるかが問われる。
ヴィアマテラス宮崎は、ASハリマアルビオンをホームに迎える。
前回対戦は、第5節。宮崎は前半に先制を許したが、後半に土屋佑津季のゴールで追いついた。
宮崎は前節のVONDS戦、第13節のニッパツ戦でも、試合序盤の失点や守備の入り方に課題を残している。優勝争いに残るためには、まず立ち上がりの守備を安定させたい。
そのうえで、伊賀戦で制限された攻撃の形をどう修正するか。
中断期間明けのホームゲームは、宮崎にとって優勝戦線に踏みとどまるための重要な一戦となる。
リソース
フルマッチLIVE配信
第15節全試合ハイライト動画
公式記録


