2026プレナスなでしこリーグ1部は第20節。
第19節まで5連勝を飾り、6位まで順位を上げたニッパツ横浜FCシーガルズが、最下位のVONDS市原FCレディースをホームに迎えた。
ニッパツはシーズン中盤に一時10位まで順位を落としたものの、中断前後から状態を上げて5連勝。対するVONDSは開幕14連敗を喫したが、第15節の朝日インテック・ラブリッジ名古屋戦でなでしこリーグ1部では初となる勝点を獲得すると、第16節から3連勝。前節はスフィーダ世田谷FCに0-1で敗れたものの、シーズン序盤とは明らかに異なる姿を見せている。
VONDSにとっては、12位の自動降格圏を脱し、11位の入替戦圏へ浮上するためにも勝点3が欲しい一戦だった。
第9節の前回対戦は、ニッパツが室井胡心の2得点、中居未来、岡百々花のゴールで4-0と快勝している。
しかし、今節は前回対戦とは大きく異なる展開となった。
VONDSが中盤の強度と連動したプレスでニッパツの前進を阻み、27分に宮本春花のゴールで先制。ニッパツも後半に徐々に押し返し、終了間際に矢野梨紗が同点ゴールを奪った。
最下位のVONDSが5連勝中のニッパツを長い時間苦しめながら、最後の最後で勝点3を逃した一戦を振り返る。
この記事の要点
- VONDSは4バックと連動したハイプレスでニッパツの前進を阻み、宮本春花のゴールで先制
- ニッパツは前線のスピードを封じられて苦戦したが、後半に押し返して終了間際に矢野梨紗が同点弾
- 1-1でニッパツの連勝は5でストップするも6戦無敗。VONDSは勝点3を目前で逃し、最下位脱出は持ち越し
試合情報
試合展開
VONDSが4バックとハイプレスでニッパツの前進を止める
VONDSは、この日は4バックでスタート。#10櫻庭琴乃が中央の高い位置を取り、攻撃では相手ゴールに近い位置でボールに関わった。
立ち上がりから目立ったのは、VONDSの中盤の強度と前線からの連動したプレスだった。
高さと強さのあるニッパツの中盤に対して一歩も引かず、ボールを奪えば櫻庭が前を向き、#7佐藤寿音、#24増原遥花がいる両サイドへ展開。開始早々には佐藤のクロスに櫻庭が頭で合わせるなど、積極的にゴールへ向かった。

一方のニッパツは、#10室井胡心と#11岡百々花のスピードを生かし、VONDS最終ラインの背後を狙う。
しかしVONDSの守備陣は、前回対戦で大きな脅威となったニッパツの速さに対して準備ができていた。背後を狙うボールには身体を当てながら進路を制限し、危険な場面では無理につながず大きくクリアする。
さらにVONDSは前線からの守備も機能した。
櫻庭がファーストプレスでニッパツのセンターバックが出せるパスコースを限定すると、サイドの選手が連動して追い込み、中盤が回収する。高い位置でボールを奪って再び攻撃につなげ、セカンドボールでもVONDSが先に触る場面が多かった。
ニッパツは左サイドバックの#15渋谷巴菜が積極的に高い位置を取り、#7浦島里紗との連係から室井や#6權野貴子へつなごうとするが、思うようにフィニッシュまで持ち込めない。
27分、守備から攻撃へ。VONDSの狙いが結実した先制点
序盤から流れをつかんでいたVONDSが、27分に先制する。
左サイドで#27木須みそらが相手のパスを奪ったところから攻撃を開始。中盤へ下りてボールを受けた#18増田沙美亜から#10櫻庭琴乃へとつなぐ。
櫻庭がボールを持つとニッパツの守備が集まり、その背後のバイタルエリアにスペースが生まれた。
そこへ走り込んだのが#9宮本春花だった。
櫻庭からパスを受けた宮本は、細かなステップで相手DFとの間合いをずらして左足を振り抜く。コースを突いたシュートがゴールネットを揺らし、VONDSが1-0と先制した。
ボール奪取から前線へつなぎ、櫻庭が相手を引きつけ、そのスペースを宮本が使う。
個人技だけに頼った得点ではなく、守備から攻撃まで複数の選手が連動して生まれたゴールだった。この日のVONDSの良さを象徴する場面だったと言える。

押し込むVONDS、山田二千華が室井胡心の決定機を阻止
先制後もVONDSが優勢に試合を進めた。
ニッパツは低い位置からのビルドアップを試みるが、VONDSのプレスを外せず、自陣でボールを失う場面が増えていく。
VONDSは最終ラインを高く保ちながらセカンドボールを回収。ニッパツが自陣深くまで押し込まれ、守備に人数を割く時間帯も生まれた。
ただし、ニッパツにも大きなチャンスが訪れる。
VONDSのゴールキックを跳ね返した流れから、#7浦島里紗が守備陣形の整う前に#10室井胡心へパス。室井が最終ラインの背後へ抜け出してシュートを狙ったが、VONDSのGK#1山田二千華が素早く飛び出して阻止した。
劣勢の中でも、一瞬で決定機まで持ち込めるのがニッパツの怖さだった。
それでもVONDSはリードを守り、1-0で前半を折り返した。
後半はニッパツが徐々に押し返す
後半に入っても、VONDSの強度は大きく落ちなかった。
ニッパツが後方からつなごうとすれば前線からプレスをかけ、中盤でも簡単には前を向かせない。#10櫻庭琴乃は球際の強さを見せながら前進し、右サイドの#24増原遥花はドリブルと背後へのランニング、#7佐藤寿音は左足からニッパツ最終ラインの背後を狙った。
左右に揺さぶったところから、増原のクロスにゴール前でフリーとなった#18増田沙美亜が頭で合わせる場面もあったが、シュートは枠を外れる。
さらにCBの#11村上賀梨が相手のロングボールをカットすると、そのまま前へ運んで櫻庭とのワンツーからミドルシュート。VONDSは追加点を奪う機会を作っていた。
一方、時間の経過とともにニッパツも押し返す。
#10室井胡心が少し低い位置まで下りてボールを受け、攻撃の組み立てに参加。右サイドバックの#31俣野佑果も高い位置を取り、ゴール前へのボール供給を増やしていく。

前半ほど一方的にVONDSが押し込む展開ではなくなり、試合は次第にニッパツがVONDS陣内でプレーする時間も増えていった。
それでもVONDSには追加点の好機があった。
相手のバックパスに櫻庭がプレスをかけてGKのパスコースを限定。その先でDFが前に蹴ったボールを#27木須みそらが奪取。木須は前に出ていたGK#19松井里央の頭上を狙ってループシュートを放ったが、松井が間一髪で弾き出した。
VONDSにとっては、ここで2点目を奪えていれば試合を大きく引き寄せられる場面だった。
90分、矢野梨紗が土壇場で勝点1をもたらす
VONDSが1点のリードを守ったまま、試合は最終盤を迎える。
しかし、5連勝中だったニッパツは最後までゴールを諦めなかった。
#31俣野佑果が右サイドの背後へ長いボールを送る。競り合いからこぼれたボールに#9矢野梨紗が反応し、最終ラインの裏へ抜け出した。
矢野は前へ出てきたGK山田二千華の位置を確認すると、その頭上を越すシュートを選択。
ボールはそのままゴールへ吸い込まれ、終了間際にニッパツが1-1に追いついた。
試合はそのまま終了。
ニッパツの連勝は5で止まったものの、6試合負けなし。VONDSは勝てば11位へ浮上できる状況だったが、最下位脱出を目前で逃す結果となった。
総括
90分を通して見れば、VONDSが今季の成長を強く印象づけた試合だった。
前半は中盤の強度、攻守の切り替え、前線からのプレスでニッパツを上回り、最大の武器である室井胡心・岡百々花のスピードを生かした攻撃を抑え込んだ。
そして、その優位性を宮本春花の先制点につなげたことも大きい。
一方、後半はニッパツが徐々に押し返した。VONDSにも追加点のチャンスはあったが決め切れず、最後は一度のロングボールと矢野梨紗の判断・技術によって同点に追いつかれた。
VONDSにとっては、内容を勝点3へ変えるための最後の一歩が足りなかった。
ニッパツにとっては苦しい試合だったが、ほとんど武器を封じられながらも最後の一度のチャンスを結果へ変えた。
「内容ではVONDS、最後の勝負強さではニッパツ」。
両チームの現在地が表れた1-1だった。
ニッパツ横浜FCシーガルズ
この日のニッパツは、シーズン中盤まで勝点を伸ばせなかった時期に見られた課題が再び顔を出した。
VONDSに中盤の球際で後手を踏み、前線からのプレスを受けて低い位置でのパス交換が停滞。押し込まれると室井胡心や岡百々花も守備に戻る時間が増え、本来最も怖さを発揮する相手最終ライン付近でプレーする機会が減った。
特にこの試合では、後方からボールを動かそうとするところをVONDSに狙われた。
ただし、後半は室井が低い位置まで下りてボールに触れ、俣野佑果も攻撃参加を増やすことで徐々に前進できるようになった。
そして最後は、俣野の長いボールから矢野梨紗が同点ゴール。
思うような展開に持ち込めなくても、最後の一度のチャンスを得点に変えて負けなかったところには、5連勝を積み上げてきた終盤戦の粘り強さが表れていた。

一方で、前線のスピードを消されたときに、どのようにボールを前進させて決定機を作るのか。
残り2試合に向けて、この試合で改めて浮かび上がった課題でもある。
なお、渋谷巴菜がこの試合でリーグ通算100試合出場を達成した。
VONDS市原FCレディース
勝点3には届かなかった。
それでも、この日のVONDSは今季でも屈指の内容だったと言ってよいだろう。
特に前半は、守備の狙いと攻撃へのつなげ方が明確だった。
櫻庭琴乃を起点に前線からパスコースを限定し、周囲の選手が連動してボールを奪う。奪った後は素早く前を向き、中央だけでなく佐藤寿音、増原遥花、木須みそらがいる両サイドも使ってニッパツを揺さぶった。
宮本春花の先制点は、その積み重ねが最も分かりやすい形で表れた場面だった。
増田沙美亜、木須みそら、小田川真奈らも相手のフィジカルに簡単には負けず、中盤でニッパツの前進を止め続けた。

前回対戦ではニッパツの強度とスピードに押し切られて0-4。
それから約5か月。
同じ相手に対して、今度はVONDSの側が中盤の強度と連係で優位に立つ時間を長く作った。この変化は大きい。
ただし、残留争いでは内容だけでは順位を上げられない。
追加点を奪える場面で決め切れず、終了間際の一度の対応の遅れから勝点2を失ったことも、この試合のもう一つの側面だった。
第20節終了時点で勝点11の12位。11位・日体大SMG横浜との勝点差は2。残り2試合。
少なくともこの日のパフォーマンスは、最下位という順位だけでは測れないものだった。あとは、その内容を勝利へつなげられるか。
VONDSの1部残留を懸けた戦いは、最後まで続く。
順位表
第20節終了時点で、ニッパツ横浜FCシーガルズは勝点31の6位、VONDS市原FCレディースは勝点11の12位。
VONDSと11位・日体大SMG横浜との差は勝点2となっている。
過去5試合:勝利 引き分け 敗戦
| 順位 (前節) | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 | 過去5試合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 静岡SSUボニータ | 40 | 20 | 12 | 4 | 4 | 51 | 14 | +37 | |
| 2(2) | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 38 | 19 | 11 | 5 | 3 | 42 | 19 | +23 | |
| 3(4) | ヴィアマテラス宮崎 | 35 | 20 | 10 | 5 | 5 | 36 | 26 | +10 | |
| 4(5) | 伊賀FCくノ一三重 | 35 | 20 | 10 | 5 | 5 | 28 | 19 | +9 | |
| 5(3) | オルカ鴨川FC | 33 | 19 | 9 | 6 | 4 | 27 | 15 | 12 | |
| 6(6) | ニッパツ横浜FCシーガルズ | 31 | 20 | 9 | 4 | 7 | 34 | 28 | +6 | |
| 7(7) | 岡山湯郷Belle | 28 | 20 | 8 | 4 | 8 | 30 | 34 | -4 | |
| 8(8) | 愛媛FCレディース | 25 | 20 | 7 | 4 | 9 | 24 | 38 | -14 | |
| 9(9) | スフィーダ世田谷FC | 23 | 20 | 6 | 5 | 9 | 29 | 33 | -4 | |
| 10(10) | ASハリマアルビオン | 20 | 20 | 5 | 5 | 10 | 20 | 30 | -10 | |
| 11(11) | 日体大SMG横浜 | 13 | 20 | 4 | 1 | 15 | 20 | 56 | -36 | |
| 12(12) | VONDS市原FCレディース | 11 | 20 | 3 | 2 | 15 | 13 | 42 | -29 |
次節に向けて
ニッパツ横浜FCシーガルズ
次節、ニッパツ横浜FCシーガルズはホームに8位の愛媛FCレディースを迎える。
前回対戦ではオウンゴールを含む3失点を喫し、1-3で敗れている。
愛媛は中断明けこそ苦戦したものの、第18節には伊賀、第19節にはハリマを破った。安齋結花や近藤彩優子ら、前線にも違いを作れる選手がいる。
ニッパツにとって重要になるのは、相手のプレスをどのように外し、前線のスピードがある選手たちにへボールを届けるか。
今節はVONDSにその経路を封じられた。愛媛戦では、後方で無理にボールを動かすだけではなく、相手の守備を見ながら中盤の組み立ての調整と長いボールも使い分け、ニッパツ本来の縦への速さを取り戻したい。
VONDS市原FCレディース
VONDS市原FCレディースは、ホームに4位の伊賀FCくノ一三重を迎える。
第10節の前回対戦ではVONDSが先制したものの、前半終了間際に追いつかれ、後半に勝ち越しを許して1-2で逆転負けを喫した。
伊賀は第20節終了時点で勝点35の4位。残り2試合で首位・静岡SSUボニータとの勝点差は5となっており、わずかながら優勝の可能性を残している。
VONDSにとっても1部残留へ向けて勝点が必要な一戦となる。
今節のように中盤で強度を保ち、前線から連動して相手の前進を止められるか。そして、奪った後のカウンターやセットプレーを得点につなげられるか。
内容を結果へ変えることができるかが問われるホーム最終戦となる。
リソース
チーム紹介


第20節 振り返り

第20節 個人的ベストイレブン

フルマッチLIVE配信
第20節全試合ハイライト動画
公式記録


