2026プレナスなでしこリーグ1部は第20節。全22節のリーグ戦はいよいよ最終盤を迎えた。
第19節終了時点で勝点32の5位につけ、逆転優勝の可能性を残す伊賀FCくノ一三重が、10位のASハリマアルビオンをホームに迎えた。
伊賀は前節、岡山湯郷Belleに4-1で逆転勝利。優勝には他チームの結果も必要となるが、残された可能性をつなぐためにも連勝を目指す一戦となった。
一方のハリマは、前日に行われた朝日インテック・ラブリッジ名古屋vs日体大SMG横浜で日体大が敗れたことにより、1部残留が確定。降格の重圧から解放され、今季の残り3試合でチームの立て直しを図りたいところだった。
第9節の前回対戦は、平田ひなののゴールで伊賀が1-0の勝利を収めている。
試合は伊賀が序盤から積極的に攻め込み、17分に島野美央が先制。後半には唐沢芽依、松田吏真が追加点を挙げた。
ハリマもパスワークから好機を作り、終盤に川﨑咲耶が1点を返したものの、伊賀が3-1で勝利。中盤の強度と攻守の切り替えの速さを生かし、優勝への望みをつないだ。
この記事の要点
- 伊賀が3-1で2連勝。島野美央、唐沢芽依、松田吏真の得点でハリマを下し、4位に浮上。
- 伊賀は中盤の連係と攻守の切り替えが機能。コンパクトな陣形でセカンドボールを回収し、素早いパスワークと縦への攻撃で主導権を握った。
- ハリマは川﨑咲耶が通算50得点を達成。パスワークから決定機を作ったものの、伊賀の攻撃を抑えられず敗戦。
試合情報
試合展開
伊賀の素早いパスワークから島野美央が先制
試合は序盤から伊賀が積極的に攻め込んだ。
サイドと中央を使い分けながらボールを前進させ、ハリマを押し込む。
#24唐沢芽依が鋭いミドルシュートを放つなど、積極的にゴールを狙う伊賀に対して、ハリマも反撃。右サイドでワンタッチパスをつなぎ、#23井上麗叶がゴール前でヘディングシュートを放つなど、互いに決定機を作る展開となった。

そして17分、伊賀が鮮やかなパスワークから先制点を奪う。
GK#1井上加菜美から#3秦美結へのショートパスを起点に、FW#10平田ひなのも中盤まで下りてパス交換に参加。
素早いワンタッチパスを連続させ、ハリマの守備が寄せ切る前にボールを動かしていく。
#25上田彩葉が中央で一呼吸置いて#15竹島加奈子へ縦パスを送ると、竹島は相手最終ラインの背後へ飛び出した#8島野美央にワンタッチでパス。
ハリマGK#41小暮千晶との1対1を迎えた島野は、一度はシュートを防がれたものの、こぼれ球を自ら押し込んだ。
複数の選手が連動し、相手の守備を崩して生まれた先制点だった。
失点したハリマも反撃に出る。
前線の#9川﨑咲耶を起点に左サイドから攻撃を組み立て、ゴール前までボールを運ぶと、#8小池快が放ったシュートはゴールポストを直撃。
その後も両チームがゴール前へ迫ったものの、伊賀が1点をリードして前半を折り返した。
唐沢芽依の追加点、松田吏真が2試合連続ゴール
後半も、先に試合を動かしたのは伊賀だった。
高い位置に最終ラインを設定し、陣形をコンパクトに保ちながらハリマの攻撃に対応。ボールを奪えば、素早く前線へ展開していく。
64分、伊賀が追加点を奪う。
#3秦美結と#26清悠香がセンターライン付近でボールを奪うと、一度GK#1井上加菜美まで戻して攻撃を組み立て直す。井上が左サイドを駆け上がる#14増田玲那へロングフィードを送ると、増田はダイレクトで前線へボールをつないだ。
途中出場の#9桂亜依が相手DFと競り合いながらボールを残すと、こぼれ球を#24唐沢芽依が回収。
唐沢はそのままドリブルでペナルティエリア内へ進入し、GKとの1対1から右足のシュートを決めた。
中盤でのボール奪取から一度GKへ戻し、素早く左サイドへ展開。増田のダイレクトパス、桂の競り合い、そして唐沢の積極的な仕掛けがつながって生まれた追加点だった。

2点を追うハリマは、#13今蔵綾乃や#33椎野彩香といった推進力のある選手を投入。縦へのロングボールも交えながら反撃を試みる。
しかし74分、伊賀がさらに突き放す。
相手陣内の左サイド深い位置でフリーキックを獲得すると、#3秦美結がゴール前へ速いボールを供給。
ニアサイドへ飛び込んだ#22松田吏真が体に当てて押し込み、3-0とした。
松田は72分に投入されたばかり。前節の岡山湯郷Belle戦に続き、交代出場直後のセットプレーから2試合連続ゴールを挙げた。
川﨑咲耶が通算50得点を達成も、伊賀はリードを守り切る
3点差となったハリマだったが、攻撃の姿勢を失わなかった。
78分、右サイドで細かくパスをつなぎ、コーナーキックを獲得する。
ゴール前に選手が密集するなか、#17唐橋万結が変化をつけたキックを供給。
ペナルティアーク付近でフリーになった#9川﨑咲耶がボールを収めると、素早くゴール方向へ体を向け、右足を振り抜いた。
鋭いシュートが伊賀のゴールネットに突き刺さり、ハリマが1点を返す。
このゴールで、川﨑はなでしこリーグ通算50得点を達成した。
ハリマはさらにゴールを狙ったものの、伊賀も運動量と攻撃の姿勢を維持。終盤にも決定機を作り、ハリマGK小暮千晶の好セーブに阻まれる場面があった。
試合は3-1で伊賀が勝利。2連勝を飾り、優勝争いに踏みとどまった。
総括
勝敗を分けたのは、中盤での選手間の距離感と、攻守の切り替えの速さだった。
伊賀はコンパクトな陣形を維持し、複数の選手が近い距離でサポートし合うことで、素早いパス交換から前進。ボールを失った場面でも周囲の選手が即座に寄せ、セカンドボールを回収して攻撃を継続した。
中央とサイドを使い分けた攻撃に加え、ボールを失っても素早く奪い返すことで、ハリマに守備を立て直す時間を与えなかった。
ハリマにもパスワークで伊賀の守備を崩す時間帯はあった。前半には決定機を作ったものの、得点につなげられず、後半は伊賀の速い攻撃に対応し切れなかった。
単純な運動量や技術の差だけではない。
ボールを動かす速さ、奪われた後の寄せ、そして前線までの距離感。そうした一つひとつの積み重ねが、3-1という結果につながった一戦だった。
伊賀FCくノ一三重
伊賀は中央とサイドで攻撃の方法を使い分け、ハリマの守備を揺さぶった。
相手のプレスが強まる中央では、ワンタッチパスを使って素早くボールを動かす。サイドでは積極的に1対1を仕掛け、周囲の選手がサポートに入ることで攻撃を継続した。
その中心となったのが、平田ひなのと上田彩葉だった。
平田は前線で相手DFと競り合うだけでなく、中盤まで下りてパスを受け、攻撃の起点となった。
上田も中央で前を向いてプレーする場面が多く、相手をかわしてボールを保持しながら、平田、竹島加奈子、唐沢芽依らへ縦パスを供給。
こうした連係により、伊賀は相手の守備が整う前に前進し、攻撃を繰り返すことができていた。
ボールを失っても近くに複数の味方がいるため、すぐに寄せて奪い返すことができる。セカンドボールへの反応も速く、相手に攻撃を落ち着かせる時間を与えなかった。

後半になると、左サイドバックの増田玲那が高い位置や中央寄りの位置を取る場面も増えた。
増田が内側へ入ることで中盤のパスコースが増え、ドリブルとパスの両面から攻撃に変化を加えた。
得点を挙げた島野美央と唐沢芽依も、序盤から積極的な姿勢が目立った。
島野は相手最終ラインの背後を突き、素早いパス交換から先制点を奪った。唐沢もミドルシュートやドリブルで相手ゴールに迫り続け、後半に追加点を挙げた。
そして、途中出場の松田吏真。
前節の岡山湯郷Belle戦に続き、交代直後のセットプレーから得点した。限られた出場時間の中で結果を残し、終盤戦における貴重な得点源となっている。
守備では清悠香、秦美結、橋沼真帆らが高い対人強度と連係を見せた。
特に清は相手との競り合いで強さを発揮し、最終ラインの背後を狙うハリマの攻撃を何度も阻止。
大卒1年目ながら、伊賀の堅い守備を支える存在となっている。

ただし、前半にはハリマのパスワークから守備を崩され、決定機を許す場面もあった。
今節は高い最終ラインとコンパクトな陣形が機能したが、背後へのボールを徹底して狙う相手に対しては、同じ戦い方が通用するとは限らない。
最終ラインの高さと背後のスペースの管理をどう両立させるかは、残りのリーグ戦に向けた課題になるだろう。
それでも、前節に続く複数得点での勝利は大きい。
チームとしての連動性を高めながら、残された優勝の可能性を追い続けたい。
ASハリマアルビオン
ハリマは前節の愛媛FCレディース戦と比べ、縦への意識が強くなったように見えた。
ゴールキックからのロングフィードも織り交ぜ、自陣の低い位置でボールを失うリスクを抑えながら、相手ゴールに近い位置でプレーしようとする姿勢がうかがえた。
前半はサイドでワンタッチパスをつなぎ、相手の守備を動かしながらゴール前まで進む場面もあり、決定機を作っている。
しかし、そうした時間帯に得点を奪えなかった。
伊賀の中盤の守備が機能すると、パスを受ける選手へのプレッシャーが強まり、前方へボールを運ぶことが難しくなった。
後半はロングボールも増やしたものの、伊賀のコンパクトな守備に苦しみ、追加点を許す展開となった。

その中で、存在感を示したのが川﨑咲耶だった。
78分にはコーナーキックから鋭いシュートを決め、なでしこリーグ通算50得点を達成。
この試合では得点だけでなく、前線での仕掛けも際立っていた。
味方のサポートが少ない場面でも自らドリブルで相手をかわし、ペナルティエリア付近で粘り強くボールを保持。
味方が前線へ押し上げる時間を作り、二次攻撃、三次攻撃につなげる役割を担っていた。
川﨑の個人技を生かしてチャンスを作れていただけに、周囲の選手との連係を高め、より多くの決定機につなげたいところだ。

今シーズン、ハリマは序盤から苦しい戦いが続いている。
丁寧なビルドアップはチームの持ち味の一つだが、相手の守備ブロックを十分に動かせないまま自陣でボールを奪われ、カウンターを受ける場面も見られた。
また、中盤や最終ラインでの競り合いで後手に回ると、相手の攻撃を連続して受けてしまう。
今節も、パスワークで決定機を作る良さと、攻守の切り替えで後手に回る課題の両方が表れた。
1部残留は確定したが、残り2試合は来シーズンへ向けた重要な機会となる。
ボールを保持する良さを維持しながら、縦への速さや守備への切り替えを改善し、皇后杯にもつながる戦いを見せたい。
順位表
第20節終了時点で、伊賀FCくノ一三重は勝点35となり、5位から4位に浮上した。
ASハリマアルビオンは勝点20のまま、10位を維持している。
過去5試合:勝利 引き分け 敗戦
| 順位 (前節) | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 | 過去5試合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 静岡SSUボニータ | 40 | 20 | 12 | 4 | 4 | 51 | 14 | +37 | |
| 2(2) | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 38 | 19 | 11 | 5 | 3 | 42 | 19 | +23 | |
| 3(4) | ヴィアマテラス宮崎 | 35 | 20 | 10 | 5 | 5 | 36 | 26 | +10 | |
| 4(5) | 伊賀FCくノ一三重 | 35 | 20 | 10 | 5 | 5 | 28 | 19 | +9 | |
| 5(3) | オルカ鴨川FC | 33 | 19 | 9 | 6 | 4 | 27 | 15 | 12 | |
| 6(6) | ニッパツ横浜FCシーガルズ | 31 | 20 | 9 | 4 | 7 | 34 | 28 | +6 | |
| 7(7) | 岡山湯郷Belle | 28 | 20 | 8 | 4 | 8 | 30 | 34 | -4 | |
| 8(8) | 愛媛FCレディース | 25 | 20 | 7 | 4 | 9 | 24 | 38 | -14 | |
| 9(9) | スフィーダ世田谷FC | 23 | 20 | 6 | 5 | 9 | 29 | 33 | -4 | |
| 10(10) | ASハリマアルビオン | 20 | 20 | 5 | 5 | 10 | 20 | 30 | -10 | |
| 11(11) | 日体大SMG横浜 | 13 | 20 | 4 | 1 | 15 | 20 | 56 | -36 | |
| 12(12) | VONDS市原FCレディース | 11 | 20 | 3 | 2 | 15 | 13 | 42 | -29 |
次節に向けて
伊賀FCくノ一三重
次節、伊賀FCくノ一三重はVONDS市原FCレディースとのアウェー戦に臨む。
第10節の前回対戦では、当時VONDSに在籍していた玉田愛理に先制を許したものの、平田ひなのと松田吏真の得点で逆転勝利を収めている。
VONDSは依然として12位に沈んでいるものの、開幕14連敗から立て直しを見せている。
第15節では朝日インテック・ラブリッジ名古屋に引き分け、中断明けからは3連勝。今節も5連勝中だったニッパツ横浜FCシーガルズを相手に先制し、終盤までリードを守ったものの、同点に追いつかれ、1-1の引き分けとなった。それでも、粘り強い守備と鋭いカウンターに加えてセットプレーも備え、シーズン序盤とは異なる手強い相手になっている。
特に警戒したいのが櫻庭琴乃だ。
高い技術とフィジカルを備え、ボールを持って前を向けば、自ら仕掛けるだけでなく、周囲の選手を生かすプレーもできる。
伊賀としては、中盤での競り合いに勝ち、櫻庭に自由に前を向かせないことが重要になる。
今節のように素早いパスワークと攻守の切り替えを機能させ、相手の守備が整う前にゴールへ迫りたい。
優勝の可能性をつなぐには、残り2試合で勝点を落とすことはできない。
ASハリマアルビオン
ASハリマアルビオンは次節、オルカ鴨川FCとのアウェー戦に臨む。
第10節の前回対戦では、前半に許した1点を返せず、0-1で敗れている。
オルカは依然として優勝の可能性を残しており、勝点3を目指して積極的に攻め込んでくることが予想される。
ハリマとしては、相手の高い守備強度に対応しながら、前がかりになった背後のスペースを突きたい。
今節の川﨑咲耶のように、前線でボールを保持し、自ら仕掛ける選手の存在は大きな武器になる。
オルカの守備の堅さと対人の強さはリーグ屈指だが、変化をつけたセットプレーも交え、受け身になりすぎずにゴールを目指したい。
リソース
チーム紹介


第20節 振り返り

第20節 個人的ベストイレブン

フルマッチLIVE配信
第20節全試合ハイライト動画
公式記録


