神奈川県横浜市を拠点とするニッパツ横浜FCシーガルズは、なでしこリーグ1部に所属する女子サッカークラブです。
女性が生涯スポーツとしてサッカーを続けられる環境づくりと、女子サッカーの普及・強化を目的に、横浜FCスポーツクラブと横須賀シーガルズスポーツクラブが提携。2013年に「横浜FCシーガルズ」として新たにスタートしました。
2016シーズンから日本発条株式会社とスポンサー契約を結び、現在の「ニッパツ横浜FCシーガルズ」へ改称しています。2026シーズンは、現役時代にもクラブでプレーした山本絵美監督が、6シーズンぶりに指揮官として復帰しました。
本ページでは、ニッパツ横浜FCシーガルズの成績やチームの特徴、注目選手、関連する試合レビュー記事を紹介します。
チームの特徴
2024年の2位から、再び上位を目指す
ニッパツ横浜FCシーガルズは、2021シーズンを6位、2022シーズンを8位で終えると、2023シーズンには11勝を挙げて5位へ浮上しました。
2024シーズンは13勝5分4敗、勝点44を記録。失点数をリーグ最少の20に抑え、優勝したヴィアマテラス宮崎に次ぐ2位に入りました。
しかし、2025シーズンは6勝7分9敗の8位。失点数は27に抑えた一方、得点数が前年の33から21へ減少し、攻撃面で苦しむシーズンとなりました。
| シーズン | 最終順位 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 得点順位 | 全チーム平均得点 | 全チーム中央値 | 失点 | 失点順位 | 全チーム平均失点 | 全チーム中央値 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021 | 6位 | 8 | 7 | 7 | 31 | 4位 | 30.1 | 26.5 | 25 | 4位 | 30.1 | 28.0 |
| 2022 | 8位 | 7 | 6 | 9 | 24 | 7位 | 27.7 | 25.0 | 26 | 7位 | 27.7 | 25.5 |
| 2023 | 5位 | 11 | 4 | 7 | 36 | 5位タイ | 32.0 | 33.5 | 29 | 5位タイ | 32.0 | 31.5 |
| 2024 | 2位 | 13 | 5 | 4 | 33 | 5位タイ | 30.9 | 31.5 | 20 | 1位 | 30.9 | 26.5 |
| 2025 | 8位 | 6 | 7 | 9 | 21 | 10位 | 28.2 | 28.0 | 27 | 5位タイ | 28.2 | 28.0 |
※得点順位は得点数の多い順、失点順位は失点数の少ない順で算出。
※「全チーム平均」「全チーム中央値」は、その年のリーグ全体の得点・失点分布を把握するための参考値です。
2026シーズンは、第15節のスフィーダ世田谷FC戦が台風の影響で開催中止となったため、7月31日時点で14試合を消化。4勝3分7敗、23得点27失点、勝点15の10位で中断期間を迎えました。代替試合は8月8日に開催されます。
14試合で挙げた23得点は、2025シーズンの全22試合で記録した21得点をすでに上回っています。一方、27失点は前年のシーズン総数と同じです。直近5試合のうち4敗しており、勝利がなく、中断明けの巻き返しに期待がかかります。
前線の得点力を取り戻した反面、守備の安定をどこまで高められるかが、順位を上げるための課題となっています。
前線と中盤が連動して奪い、相手の背後へ速く運ぶ
2026シーズンのニッパツを支えているのは、前線からの守備と中盤の球際の強さ、そしてボールを奪った後の速い攻撃です。
相手の横パスやバックパスを合図に前線が圧力をかけ、その後ろからボランチが距離を詰めます。相手に苦しい状態でボールを蹴らせ、セカンドボールを回収すると、室井胡心選手と岡百々花選手が狙う最終ラインの背後へ素早くボールを送ります。
第3節のオルカ鴨川FC戦では、田村かのん選手と吉田凪沙選手が中央で相手の前線へ厳しく対応。奪った後は中盤で細かくつなぐことにこだわらず、室井選手と岡選手へ縦にボールを届けました。岡選手の2得点と室井選手のゴールにより、3-1で今季初勝利を挙げています。
第8節の日体大SMG横浜戦でも、先制を許した後に前線からの圧力と中盤の強度を高め、試合の主導権を奪い返しました。室井選手、岡選手、内田光選手が得点し、3-1で逆転勝利を収めています。
この守備が最も効果的に表れたのが、第13節のヴィアマテラス宮崎戦です。
開始8分、室井選手がGKへのバックパスに圧力をかけ、相手のミスを誘発。こぼれ球を岡選手が押し込み、先制点を奪いました。
その後も宮崎のパスコースを外側へ限定し、苦しい状態でロングボールを蹴らせます。攻撃では室井選手と岡選手が背後への動きを繰り返し、前半だけで2得点。後方からボールをつなぐ宮崎を相手に、ニッパツが主導権を握りました。
球際で相手に自由を与えず、奪ったボールをスピードのある前線へ届ける。前線と中盤の守備が連動したとき、ニッパツの強みが最も発揮されます。
ビルドアップを前線の武器へつなげられるか
今シーズンのニッパツは、最終ラインから短いパスをつなぎ、相手を動かしながら前進する形にも取り組んでいます。
後方からの組み立てが安定すれば、相手の前線を引きつけたうえで、室井胡心選手や岡百々花選手を広いスペースへ走らせることができます。ボールを保持すること自体ではなく、前線の速さをより良い状態で生かすための手段です。
一方、相手のハイプレスを受けた試合では、低い位置でパスコースを失い、前進が止まる場面もあります。
第11節のASハリマアルビオン戦では、前半に室井選手と岡選手の背後への動きから決定機を作りました。しかし、好機を得点へ変えられず、後半はビルドアップのミスから先制点を献上。縦への推進力とボール保持の安定を両立できないまま、0-2で敗れました。
第12節の岡山湯郷Belle戦でも、GKや最終ラインから中盤を経由し、前線へつなげようとしました。しかし、湯郷の連動したプレスによって出口を塞がれ、前半だけで4失点。前半終了間際に室井選手が1点を返し、後半は押し返したものの、1-4で敗れています。
どの場面で短くつなぎ、どの場面で中盤を省略して前線へ届けるのか。相手の守備位置に応じて前進方法を使い分けられるかが、攻撃の安定性を左右します。
優勢な時間を勝点へ変えられるか
ニッパツは上位チームを押し込む力を持つ一方、優勢な時間帯を勝利へ結びつけ切れない試合もあります。
第13節の宮崎戦では、前線からの守備と背後への攻撃によって相手を上回り、2度のリードを奪いました。しかし、90+1分にコーナーキックから同点ゴールを許し、2-2の引き分けに終わっています。
第14節のオルカ鴨川FC戦でも、前半は室井胡心選手と岡百々花選手が背後を狙い続け、試合の主導権を握りました。それでも得点を奪えず、後半開始直後の46分と55分に連続失点。終盤に岡選手が1点を返しましたが、1-2で敗れました。
相手を押し込んでいる時間に得点できるか。リードした後も守備陣が粘り強く対応し、試合を最後まで管理できるか。
前線の得点力を90分間の結果へ結びつけることが、現在の10位から順位を押し上げるためのポイントです。
注目選手
ここからは、筆者が2026シーズンの試合を追う中で特に印象に残った選手を紹介します。
FW 室井 胡心(COCO MUROI)
爆発的なスピードとドリブルで、相手最終ラインの背後を突くFWです。
前方にスペースがあれば一気に加速し、相手DFより先にボールへ到達します。小柄ながら相手を背負ってボールを収める力もあり、前線で攻撃の起点になることもできます。
2026シーズンは、第14節終了時点で6得点を記録しました。
第3節のオルカ鴨川FC戦では、左サイドから岡百々花選手の同点ゴールをアシストすると、後半には自らも得点。相手の最終ラインへ継続的に圧力をかけ、3-1の勝利を支えました。
第9節のVONDS市原FCレディース戦では、38分に均衡を破る先制点を記録し、64分にも追加点。2得点で4-0の快勝をけん引しました。
室井選手が背後を狙い続けることで、相手の最終ラインは簡単に押し上げられません。得点だけでなく、相手守備陣の立ち位置を下げさせ、味方が前進するスペースを作ることも大きな役割です。
MF 岡 百々花(MOMOKA OKA)
鋭い抜け出しとゴール前での反応を武器に、得点を重ねるアタッカーです。
2024シーズンから加入し、2026シーズンは副キャプテンを務めています。
サイドから縦へ仕掛けるだけでなく、相手サイドバックの背後やセンターバックとの間へ走り込みます。守備では前線から相手へ寄せ、ボールを奪えばそのままゴールへ向かえる選手です。
第3節のオルカ鴨川FC戦では、相手左サイドの背後を繰り返し狙い、前半だけで2得点。室井胡心選手との連係で、オルカの最終ラインを押し下げました。
第13節のヴィアマテラス宮崎戦では、前線からのプレスによって生まれたこぼれ球を押し込み、先制点を記録。前半アディショナルタイムには、室井選手の折り返しを左足で仕留め、この日2点目を挙げました。
続く第14節のオルカ戦でも、終盤にゴールを記録。第14節終了時点でチーム最多の7得点を挙げています。
背後への動き、前線からの守備、こぼれ球への反応を得点へ結びつけられる岡選手は、ニッパツの攻撃を象徴する存在です。
MF 浦島 里紗(RISA URASHIMA)
前線と中盤の間でボールを引き出し、正確なパスと状況判断、そして高い技術力で攻撃に変化を加えるMFです。
2024シーズンにオルカ鴨川FCから加入し、2026シーズンは副キャプテンを務めています。2025年には、なでしこリーグ通算150試合出場を達成しました。
前線にスピードで背後を突く選手がいる中で、浦島選手は周囲の動きを見ながらボールを前へ届けます。縦へ急ぐだけでは崩せない場面で、攻撃の経由点になれる選手です。
第4節のスフィーダ世田谷FC戦では、室井選手へボールをつなぎ、ニッパツが奪った2得点の起点となりました。第7節の静岡SSUボニータ戦では、コーナーキックのこぼれ球を押し込み、首位チームから勝点を獲得するゴールを記録しています。
第12節の岡山湯郷Belle戦でも、相手DFの股を抜くパスで室井選手の得点を演出。厳しい展開の中でも、狭い場所を通す技術とアイデアを示しました。
前線の速さを生かしながら、状況に応じて攻撃のテンポを整える。浦島選手の経験と技術は、ニッパツが二つの前進方法を使い分けるうえで重要な役割を担っています。
MF 吉田 凪沙(NAGISA YOSHIDA)
球際の強さと豊富な経験で、中盤の攻守を支えるMFです。
自陣中央で相手と素早く距離を詰め、簡単に前を向かせません。セカンドボールの回収やパスコースの制限にも関わり、味方の前線が高い位置で攻撃に集中するための土台を作ります。
第3節のオルカ鴨川FC戦では、田村かのん選手とともに中央を締め、相手の前線へ厳しく対応。オルカが前線でボールを収める形を制限し、ニッパツが試合の主導権を握る要因となりました。
第5節の朝日インテック・ラブリッジ名古屋戦では、フリーキックの流れからこぼれ球へ反応し、先制ゴールを記録。名古屋に押し込まれる展開の中で、セットプレーの機会を得点へつなげました。
2024シーズンには、リーグ戦通算150試合出場を達成しました。守備の強度だけでなく、積み重ねてきた経験に基づく判断力も備えた選手です。
吉田選手を中心に中盤で相手の攻撃を止め、奪ったボールを前線へ届けられるかが、ニッパツの攻守のつながりを左右します。
前線の速さを、90分間の勝点へつなげられるか
2026シーズンのニッパツは、室井胡心選手と岡百々花選手を中心に、前線の得点力を取り戻しました。
14試合で23得点を挙げ、すでに2025シーズンの総得点を上回っています。上位チームを相手にしても、前線からのプレスと背後への速い攻撃によって、主導権を握る時間を作れるチームです。
後半戦で問われるのは、その攻撃力を安定して勝点へ変えられるかです。
縦に速い攻撃を第一の選択肢としながら、相手の守備位置に応じて後方からつなぐ形も使う。二つの前進方法を使い分け前線の選手へより良い状態でボールを届ける必要があります。
さらに、優勢な時間帯に得点を奪い、リードした後の試合を最後まで管理できれば、現在の10位から順位を押し上げる力はあります。
前線の速さを、強度の高い中盤と最終ラインがどこまで安定して支えられるか。中断明けのニッパツ横浜FCシーガルズに注目です。
