2026プレナスなでしこリーグ1部は第20節。今節を含めて残り3試合となり、シーズンはいよいよ最終盤に入った。
夏の中断期間に多くの選手が入れ替わり、チームの再構築を進める7位・岡山湯郷Belleが、首位を走る静岡SSUボニータをホームに迎えた。
第9節の前回対戦は静岡が4-0で勝利。ただし、スコアほど一方的な内容ではなく、湯郷が高い位置までボールを運び、自分たちのパスワークを発揮する時間帯もあった。
そして迎えた再戦。
静岡は開始6分で先制し、首位らしい滑り出しを見せた。しかし、この日の湯郷はそこで崩れない。
球際で戦い、奪えば素早く前へ出る。そして、自分たちの持ち味であるパスワークに、静岡の高い最終ラインの背後を狙う攻撃を組み合わせた。
前回対戦とは異なる90分となった。
この記事の要点
- 静岡は開始6分に櫻田彩乃が先制。それでも湯郷は崩れず、松﨑こころのゴールで追いつき、首位から勝点1を奪った。
- 湯郷は岸波美采と国吉花吏埜を両サイドで走らせ、静岡の高い最終ラインの背後を徹底して狙い、持ち味のパスワークと縦への速さを両立させた。
- 静岡は勝点40で首位を維持したものの、2位・名古屋とは勝点2差。名古屋が1試合少ないため、優勝争いはさらに緊迫した。
試合情報
試合展開
開始6分、静岡が櫻田彩乃の一撃で先制
立ち上がりから湯郷の入りは悪くなかった。
右サイドの#24岸波美采のスピードを生かした突破とクロス、#23国吉花吏埜のドリブルによるカウンター。そこに高い位置での細かなパス交換を織り交ぜながら、静岡陣内へ進入していく。
静岡も簡単には前進させない。国吉がドリブルで仕掛ければ、#3彦坂桃花がタイミングを見て身体を入れ、攻撃を寸断する。
攻撃では#10横山久美が最前線に張り続けるのではなく、中盤まで下がってボールを引き出しながら、味方の前進を助けていた。
そして6分、静岡が先に試合を動かす。
自陣ペナルティエリア付近で#8三輪玲奈がボールを奪い、そのままスピードに乗って中盤まで運ぶ。静岡が押し上げ、その流れから得たスローインを起点に攻撃を組み立てた。
#10横山が相手を背負ってボールを収め、#7高島絢音から#17櫻田彩乃へ。
シュートコースが開いた瞬間、櫻田が距離のある位置から迷わず右足を振り抜く。GK戸梶有野里が触れたものの勢いを止め切れず、ボールはゴールラインを越えた。
三輪の守備から始まった押し上げ、横山のポストプレー、そしてスペースを見逃さなかった櫻田の判断。
静岡が守備から攻撃へつなげ、序盤のチャンスを得点に変えた。

湯郷は崩れず、静岡の背後を狙い続ける
早い時間帯に失点した湯郷だったが、ここから試合が静岡へ大きく傾くことはなかった。
一対一の球際で粘り、攻守の切り替えも速い。
特徴的だったのは、細かなパスをつなぐこと自体を目的とせず、前進するために使っていたことだった。
一人ひとりが長くボールを持たず、テンポよくパスを動かす。静岡の守備陣形が整う前に縦へボールを入れ、岸波や国吉を走らせる。
特に岸波は右サイドから繰り返し背後へ飛び出し、鋭いクロスを供給。高くコンパクトな陣形を保つ静岡に対して、その裏側を執拗に狙った。
シュートへ持ち込む最後の部分こそ静岡が封じていたが、湯郷はサイドの深い位置まで進入し、相手のゴール前へボールを送り込む場面を繰り返していた。

一方、静岡はボールを長く保持する時間をなかなか作れない。それでも#10横山にボールが入れば状況は変わる。
複数の選手に囲まれても身体の強さと技術でボールを失わず、前を向けばそのままシュートまで持ち込む。湯郷にとって、最後まで最も警戒すべき存在だった。
前半終了間際には横山のFKを#4青葉結衣が頭で合わせたが、GK戸梶がキャッチ。
前半は静岡が1点をリードして折り返した。
湯郷の連動したパスワークから、松﨑こころが同点弾
後半に入ると、静岡はミドルレンジからも積極的にシュートを狙い、前半より攻撃の圧力を高める。
それでも湯郷の守備は粘り強く、パスワークは冴えた。
連続したワンタッチパスで静岡の寄せを外し、両サイドに幅を取る#23国吉花吏埜、#24岸波美采へ展開する。中盤でもボールを失った直後の寄せが速く、静岡のショートカウンターを簡単には許さなかった。
ボランチの#25香椎彩香は前半よりも高めの位置を取り、長短のパスを使い分けて前線にボールを供給。前半途中からピッチに入った#30松﨑こころも、前線で身体を張ってボールを収め、味方が押し上げる時間を作る。

その松﨑が、ついに静岡のゴールを破った。
静岡GK田谷春海のゴールキックを#27成田夢愛が前へ出て跳ね返すと、途中出場の#11西郡茉優がセカンドボールを収め、バイタルエリアへ走り込んだ#23国吉花吏埜へつなぐ。
国吉がボールを持つと、静岡の守備が引きつけられる。
そこで空いた松﨑へ国吉がパス。
松﨑は右足のワンタッチで低い弾道のシュートを放つ。GK田谷は反応して一度触れたものの止め切れず、ボールはそのままゴールへ転がった。
前半から繰り返してきた素早い前進と、前線の選手同士の連係。
湯郷が積み重ねてきた攻撃が、同点ゴールとして結実した。
静岡が再び前へ出るも、湯郷も引かない
残り10分あまり。
勝点3が欲しい静岡は、再び縦への圧力を強める。
バイタルエリアで#9中島咲友菜が相手と競り合いながら残したボールを、#10横山が相手を背負って収める。鋭いターンで守備を外し、そのまま右足を振り抜いた。
強烈なシュート。
しかし、ボールはクロスバーを直撃した。
終盤に入った静岡の攻撃は、首位チームらしい迫力があった。
それでも湯郷は自陣に引きこもらない。奪えば前へ運び、細かなパスで相手の寄せを外しながら再び背後を狙う。
雨の中、最後まで互いに勝点3を目指した一戦は、1-1のまま終了した。

総括
静岡が開始6分に先制しながら、湯郷が追いついて1-1。
この試合を特徴づけたのは、シュート数だけでは捉えにくい湯郷の前進だった。
前半の湯郷は公式記録上シュート0本。それでも、岸波美采の右サイドからの突破を中心に、静岡の最終ラインの背後へ何度もボールを届けていた。
つまり、ゴール前の最後の一手は静岡が守った一方、それ以前の「どちらが相手を後ろ向きにさせていたか」という部分では、湯郷が優位に立つ時間が長かった。
静岡は守備組織を崩さず最少失点に抑えたが、自分たちがボールを握って相手を動かす時間を十分には作れなかった。
前回対戦の0-4から約5カ月。
スコアだけでなく、試合の構造そのものが大きく変わった再戦だった。
岡山湯郷Belle
今シーズンの湯郷は、ショートパスを主体にボールを前進させ、高い位置まで運べたときに大きな強みを発揮してきた。
今回、印象的だったのは、そのスタイルを捨てて「静岡対策」に振り切ったわけではないことだ。
自分たちのパスワークを土台にしながら、そこへ「静岡の高い最終ラインの背後を狙う」という明確な狙いを加えていた。
岸波美采のスピード、国吉花吏埜のドリブル、香椎彩香の長短のパス。さらに松﨑こころが中央で身体を張ることで、静岡の最終ラインに前後左右の判断を迫った。
守備でも中盤と最終ラインの距離を大きく開けず、球際では強く寄せる。奪った後のサポートも速かった。

課題がなかったわけではない。
特に前半、自陣で静岡のプレスを受けた際に後方へ戻したボールを狙われ、危険な位置で奪われかける場面が複数あった。
しかし後半は、無理に後ろへ戻すよりもシンプルに前へ運ぶ判断が増えた。前半の試合内容を踏まえながら、リスクを抑えた点も評価したい。
最終ラインでは#27成田夢愛、#4今野瞳を中心に、横山久美や中島咲友菜へ最後まで身体を寄せた。
静岡にはシュートを許し、横山にはクロスバーを叩く決定的なシュートも放たれた。それでもロングボールへのチャレンジ、セカンドボールへの反応、最後まで身体をぶつけ続ける粘り強さによって、リーグ屈指の得点力を持つ静岡の攻撃を1得点に抑えた。
試合によって内容の振れ幅があった中断明けの湯郷だが、この試合では再構築が前進していることを感じさせた。
静岡SSUボニータ
開始6分に先制。決して試合への入りが悪かったわけではない。むしろ幸先のよい滑り出しだった。
今季の静岡はコンパクトな陣形と高い最終ラインによって、相手を敵陣へ押し込みながら試合を進めてきた。
ただし、高いラインを維持する以上、その背後にはスペースが生まれる。
オルカ鴨川FCやニッパツ横浜FCシーガルズとの対戦でも狙われた部分を、この日は湯郷が徹底して突いてきた。

岸波や国吉が常に背後へのランニングを見せることで、静岡としても不用意にラインを押し上げにくい。
結果として、前線から一気に相手のビルドアップへ噛みに行くより、ミドルブロックで構える時間が普段より多かったように映った。
それでも前半は湯郷をシュートまで持ち込ませず、サイドからクロスを入れられても彦坂桃花、青葉結衣らが中央を締めて対応した。
守備そのものが大きく崩れていたわけではない。
後半は前半より攻撃の意識を高め、遠い位置からでも積極的にシュートを狙った。
ただ、この日の湯郷は球際が強く、ボールを奪った後の味方のサポートも速い。静岡がボール保持側に回ろうとしても、湯郷のパスワークと切り替えを完全には捕まえ切れなかった。

失点も、守備ブロックを長時間押し込まれた末に崩されたものではない。
自陣からのゴールキックを跳ね返され、セカンドボールを前向きに回収されたところから、守備が整う前に国吉、松﨑へつながれた。田谷春海はシュートに反応して一度は触れたものの、ボールの勢いを殺し切れない。
相手に前向きでセカンドボールを回収され、少ない手数でフィニッシュまで持ち込まれた点は、次節に向けて修正したい部分となった。
順位表
第20節終了時点で、静岡SSUボニータは勝点40で首位を維持。
2位・朝日インテック・ラブリッジ名古屋は勝点38。しかも名古屋は静岡より1試合少ない19試合消化となっている。
岡山湯郷Belleは勝点28で7位を維持した。
過去5試合:勝利 引き分け 敗戦
| 順位 (前節) | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 | 過去5試合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 静岡SSUボニータ | 40 | 20 | 12 | 4 | 4 | 51 | 14 | +37 | |
| 2(2) | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 38 | 19 | 11 | 5 | 3 | 42 | 19 | +23 | |
| 3(4) | ヴィアマテラス宮崎 | 35 | 20 | 10 | 5 | 5 | 36 | 26 | +10 | |
| 4(5) | 伊賀FCくノ一三重 | 35 | 20 | 10 | 5 | 5 | 28 | 19 | +9 | |
| 5(3) | オルカ鴨川FC | 33 | 19 | 9 | 6 | 4 | 27 | 15 | 12 | |
| 6(6) | ニッパツ横浜FCシーガルズ | 31 | 20 | 9 | 4 | 7 | 34 | 28 | +6 | |
| 7(7) | 岡山湯郷Belle | 28 | 20 | 8 | 4 | 8 | 30 | 34 | -4 | |
| 8(8) | 愛媛FCレディース | 25 | 20 | 7 | 4 | 9 | 24 | 38 | -14 | |
| 9(9) | スフィーダ世田谷FC | 23 | 20 | 6 | 5 | 9 | 29 | 33 | -4 | |
| 10(10) | ASハリマアルビオン | 20 | 20 | 5 | 5 | 10 | 20 | 30 | -10 | |
| 11(11) | 日体大SMG横浜 | 13 | 20 | 4 | 1 | 15 | 20 | 56 | -36 | |
| 12(12) | VONDS市原FCレディース | 11 | 20 | 3 | 2 | 15 | 13 | 42 | -29 |
次節に向けて
岡山湯郷Belle
次節、7位・岡山湯郷Belleは11位・日体大SMG横浜とのアウェー戦に臨む。
第10節の前回対戦では、湯郷がボールを持ちながらも日体大の守備を崩し切れず、86分にGKのこぼれ球を山本葉桜に押し込まれて0-1で敗れた。
第20節終了時点で日体大は勝点13の11位。12位・VONDS市原FCレディースとは勝点2ポイント差となっている。残り2試合で10位・ハリマの勝点20を上回ることはできないため、11位を守るためにも勝点が必要な状況だ。
湯郷としては、この静岡戦で見せた球際の強さと縦へのスピードを継続したい。
そして何より、速く前へ出るだけでなく、選手同士がイメージを共有してパスをつなぐこと。
静岡を相手に通用した「パスワークと縦への速さの両立」を、次は勝点3へつなげられるかに注目したい。
静岡SSUボニータ
静岡は次節、2位・朝日インテック・ラブリッジ名古屋をホームに迎える。
シーズン最終盤に組まれた、優勝争いの直接対決。今季のなでしこリーグ1部を左右する一戦と言っても過言ではない。
第10節の前回対戦は0-3。静岡がボールを保持して名古屋を押し込む時間もあったが、名古屋は横山久美へのボール供給を制限し、前線の起点を作らせないよう粘り強く対応。セットプレーから前半に2得点を奪い、終盤にも追加点を挙げた。静岡にとっては今シーズン初黒星となった。
ただし、両チームを取り巻く状況は前回対戦時とは大きく変わっている。
名古屋は夏の中断明け、第15節のVONDS市原FCレディース戦でスコアレスドロー。その後もニッパツ横浜FCシーガルズ、スフィーダ世田谷FCに敗れるなど、前半戦のように安定して勝点を積み上げられない時期を経験した。
それでも第18節のASハリマアルビオン戦で勝利し、第20節も日体大SMG横浜を3-1で破っている。人とボールが滑らかに動き続ける本来の攻撃を常に発揮できているわけではないものの、優勝争いから脱落せず、勝点を積み上げてきた。
さらに名古屋は、静岡戦を迎える前の10月11日に未消化のオルカ鴨川FC戦を控えている。その結果によって、直接対決を迎える時点での順位や勝点差は変わる。

それでも、この静岡対名古屋がシーズン最終盤における最大の山場のひとつであることは変わらない。
静岡にとって気になるのは、今節の湯郷戦で見えた部分だ。
湯郷は静岡の高い最終ラインの背後を繰り返し狙い、ボールを奪えば素早く前進。静岡はいつものように高い位置から相手を押し込み続ける展開には持ち込めず、ボールを保持する時間も十分には作れなかった。
名古屋は湯郷とは異なるスタイルだが、後方から相手を動かしながらボールを前進させ、相手のプレスを外せば一気にゴールへ迫る力を持つ。前回対戦でも静岡の攻撃を受け止めながら、セットプレーと少ないチャンスを得点につなげている。
一方で、名古屋にも隙はある。
中断明けは前線から強くプレスを受けた際に、ビルドアップでボールを失ってピンチを招く場面が見られる。静岡としては相手に自由にボールを動かさせるのではなく、高い位置から圧力をかけて名古屋の判断時間を奪えるかがひとつのポイントになる。

そして攻撃では、やはり#10横山久美をどのように生かすか。
前回対戦では横山への供給を制限され、静岡は最後まで名古屋の守備を崩し切れなかった。横山が厳しく警戒されることを前提に、#9中島咲友菜、#8三輪玲奈がどこでボールを受けるのか。上西可奈子、服部花音らサイドバックがどのタイミングで高い位置へ出て攻撃に厚みを加えるのか。
多くの試合を共通したメンバーで戦ってきた静岡には、積み重ねてきた連係と相互理解がある。一方の名古屋には、試合展開に応じて選手を入れ替えられる層の厚さがある。
前回0-3で敗れた相手に対し、静岡がその後積み上げてきたものをどこまで示せるか。
そして、前年王者・名古屋を退け、自らの手で優勝へ近づくことができるか。
優勝を争う両チームにとって、シーズンを左右する90分となる。
リソース
チーム紹介


第20節 振り返り
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