台風の影響で延期となっていたニッパツ横浜FCシーガルズとの第15節を8月8日に消化したスフィーダ世田谷FC。その試合を0-3で落とし、第14節の岡山湯郷Belle戦から2連敗で第16節の本格再開を迎えた。
ホームに迎えたのは伊賀FCくノ一三重。
前回対戦の第5節では、世田谷が堀江美月のゴールで先制したものの、伊賀がPKで追いつき、後半アディショナルタイムに松田吏真が勝ち越し。世田谷は1-2で逆転負けを喫している。
中断期間に選手の移籍があった両チームにとって、順位表が気になる終盤戦を占う重要な一戦だった。
今回も前半は互いに譲らない展開となったが、後半開始直後に世田谷のエース・内田美鈴がバイシクルシュートで先制。
しかし伊賀はわずか3分後に唐沢芽依が同点ゴールを決めると、72分にはコーナーキックから島野美央が逆転弾。世田谷はその後シュートまで持ち込めず、伊賀が2-1で逆転勝利を収めた。
この記事の要点
- 内田美鈴がバイシクルシュートで今季12得点目を決めるも、世田谷は先制を生かせず
- 伊賀は唐沢芽依、島野美央がともにヘディングで得点し、1点差を逆転
- 後半のシュート数は世田谷1本、伊賀5本。終盤まで強度を維持した伊賀が試合を押し切った
試合情報
試合展開
両サイドを押し上げる世田谷、増田を起点に前進する伊賀
世田谷は右の#2根本彩夏が積極的に高い位置を取り、左でも#15篠原沙耶が前へ出ることで、両サイドから攻撃に厚みを加えた。
一方、最大の得点源であり前線の起点にもなる#13内田美鈴に対しては、伊賀の#26清悠香が厳しく対応。ロングボールが入っても簡単には前を向かせず、流れの中で内田に自由を与えないことを徹底していた。
伊賀は後方の#5常田菜那、#3秦美結らから左サイドの#14増田玲那へ縦パスを入れる場面が多い。
増田が前を向けば、#10平田ひなのや#7渡邊凜が一気に前方へ動き出し、さらに後方の選手も押し上げる。少ない手数ながら人数をかけて敵陣へ進入する形を作っていった。
両チームに決定機、それでも崩れない守備
30分過ぎ、世田谷が大きなチャンスを迎える。
相手のゴールキックを処理した#7渡邊那奈が左サイドをオーバーラップ。篠原、#16北川心子を経由して再び渡邊へつなぎ、クロスを供給する。
逆サイドから根本が猛然とスプリントしてゴール前へ入り、スライディング気味に右足を伸ばしたが、シュートは枠を外れた。
ゴールにはならなかったものの、片方のサイドで前進しながら逆サイドの選手がゴール前まで入り込む形は、この試合で世田谷が繰り返していた攻撃のひとつだった。

伊賀にもチャンスが生まれる。
GK#1大塚美緒から低い位置でボールを受けた選手に対し、増田が素早くプレスをかけてボールを奪取。最後は平田とGKの間を狙ってパスを送り込んだが、世田谷の渡邊那奈が間一髪でクリアした。
さらに増田が味方のクリアボールをワンタッチで平田へ送ると、左サイドをえぐってクロス。#8島野美央が頭で合わせたものの、ボールは枠の左へ外れた。
前半終盤は、両チームともGKへのバックパスや自陣でのパス回しに対してプレスを強める。
前半アディショナルタイムには、混戦からフリーでボールを受けた世田谷#8加藤沙彩のクロスがクロスバーを直撃。
互いに決定機を作ったが、守備陣も集中を切らさず、0-0で前半を折り返した。
内田美鈴のスーパーゴール、しかし3分後に唐沢芽依
後半開始直後、世田谷のエースが違いを見せる。
47分、中央からのフリーキックを#15篠原沙耶がゴール前へ蹴り込む。#10田口茉亜紗が頭で落としたボールに反応したのは#13内田美鈴。
身体を反転させながら右足を振り抜くバイシクルシュートをゴールへ突き刺した。
内田の今季12得点目となるスーパーゴール。拮抗した試合で、世田谷が先に均衡を破った。

しかし、そのわずか3分後だった。
スローインからの流れで#30橋沼真帆が右サイドの#7渡邊凜へパス。渡邊がワンタッチで鋭いクロスを送ると、中央へ入った#24唐沢芽依が頭で合わせる。
世田谷の守備陣との競り合いを制した唐沢のヘディングがゴールネットを揺らし、伊賀がすぐさま1-1に追いついた。
1点ずつを奪い合ってから、試合の強度はさらに上がる。
伊賀は前半以上に右サイドの渡邊凜へボールを集め、そのスピードを生かして世田谷の背後を狙った。
対する世田谷も#9堀江美月を投入。前線に高さと決定力を加え、勝ち越し点を狙った。
島野美央がセットプレーから逆転、伊賀が終盤を制す
次の1点を奪ったのは伊賀だった。
72分、右コーナーキック。
#14増田玲那が左足でファーサイドへ精度の高いボールを送ると、#8島野美央が頭で飛び込み、ゴールへねじ込んだ。
伊賀が2-1と逆転する。

その後は両チームとも選手交代を使いながら運動量を維持。世田谷は同点、伊賀は追加点を狙った。
しかし試合終盤になるほど、ハイボールへの競り合いやセカンドボールの回収で伊賀が優位に立つ場面が増えていく。
苦しい時間帯でも最終ラインの選手が相手陣内まで押し上げ、世田谷に簡単には攻撃へ転じさせない。
世田谷はなかなかシュートまで持ち込むことができなかった。
伊賀も3点目こそ奪えなかったが、終盤まで運動量と強度を落とさず試合を締める。
スフィーダ世田谷FC 1-2 伊賀FCくノ一三重。
伊賀が敵地で逆転勝利を収めた。
総括
前半の拮抗した展開から一転し、後半は両チームが前への圧力を強める激しい試合となった。
勝敗を分けたのは、伊賀が同点に追いついた後も攻撃の強度と全体の運動量を落とさず、セカンドボールを回収して次の攻撃へつなげ続けたことだった。
世田谷には内田、堀江という前線の強力な得点源がいる。一方で伊賀は、中盤から最終ラインにかけての球際、走力、セカンドボールへの反応で徐々に優位を作った。
その差が数字に表れたのが後半のシュート数だ。
世田谷が1本だったのに対し、伊賀は5本。しかも世田谷の1本は47分の先制ゴールだったため、伊賀が追いついた50分以降、世田谷は公式記録上シュートを記録できなかった。
さらに伊賀の2得点はいずれもクロス、セットプレーからのヘディング。流れの中だけでなく、得点につながる形を複数持っていたことも逆転勝利につながった。
スフィーダ世田谷FC
両サイドの選手が積極的に前へ出て、さらに後方から守備の選手も攻撃へ関わることで生まれる厚みは魅力的だった。
特に、片方のサイドから攻撃を組み立て、逆サイドの選手がゴール前へ入る形は前半から何度も見られた。
そして47分の内田のゴール。
難しい体勢からバイシクルシュートを決め切った一撃は、今季の世田谷をけん引しているエースの決定力を象徴するものだった。

しかし、その1本が後半唯一のシュートだったことも、この試合の課題を表している。
伊賀が内田への対応を徹底し、さらに中盤の強度を上げてからは、前線へ良い状態でボールを届ける回数が減った。堀江を投入して前線に高さを加えたものの、そこからシュートまで攻撃を完結させることができなかった。
両サイドが高い位置を取る攻撃を続ける以上、ボールを失った直後の守備、背後のスペース管理、そしてセカンドボールを相手に渡さないことも重要になる。
内田を封じられた時に誰が次の得点経路になるのか。
走り合いで相手を上回れない時に、どのように敵陣へ前進するのか。
シーズン序盤から見えている課題が、伊賀という運動量と守備強度に優れた相手によって改めて浮かび上がった試合だった。
伊賀FCくノ一三重
世田谷の最大の得点源である内田をいかに自由にプレーさせないか。
その点で、伊賀の守備陣は高いパフォーマンスを見せた。
#26清悠香は内田に対して厳しく寄せ、ロングボールが入っても簡単には前を向かせない。セットプレーからスーパーゴールを許したものの、流れの中では内田のプレーエリアを限定した。
新キャプテンの#3秦美結も、対人守備と最終ラインの統率に加え、後方からの正確なキックで攻撃のスタート地点となった。
中盤では#14増田玲那の存在感が大きい。
パスとドリブルを使い分けながら世田谷の守備を動かし、守備でも相手のボールの出どころへ素早く寄せる。72分には自身の左足からコーナーキックを供給し、#8島野美央の逆転ゴールをアシストした。

#10平田ひなのも前線で起点となり、足元への縦パスだけでなく最終ラインの背後へ動くことで世田谷の守備を揺さぶった。
そして後半は右サイドの#7渡邊凜が存在感を高めた。50分にはスピードを生かして右からクロスを送り、唐沢の同点ゴールにつなげている。
中断前から変わらず、チーム全体で90分を通して走り続け、球際の強度を維持できるのは伊賀の大きな武器だ。
首位との差はまだ6ポイント。
守備の安定感に加えて、今節のようにクロスやセットプレーから得点を積み重ねることができれば、残り6試合で上位争いへさらに圧力をかけることができる。
順位表
第16節を終え、スフィーダ世田谷FCは勝点16の10位。第15節終了時の9位からひとつ順位を下げた。
伊賀FCくノ一三重は勝点を29に伸ばし、5位を維持した。4位ヴィアマテラス宮崎とは勝点29で並んでいるものの、得失点差で宮崎が+11、伊賀が+7となっている。
首位・静岡SSUボニータとの勝点差は6。残り6試合で、伊賀がどこまで上位へ迫れるか注目したい。
| 順位 (前節) | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 | 過去5試合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 静岡SSUボニータ | 35 | 16 | 11 | 2 | 3 | 48 | 11 | +37 | |
| 2(2) | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 32 | 16 | 9 | 5 | 2 | 37 | 15 | +22 | |
| 3(4) | オルカ鴨川FC | 31 | 16 | 9 | 4 | 3 | 25 | 11 | +14 | |
| 4(3) | ヴィアマテラス宮崎 | 29 | 16 | 8 | 5 | 3 | 29 | 18 | +11 | |
| 5(5) | 伊賀FCくノ一三重 | 29 | 16 | 8 | 5 | 3 | 19 | 12 | +7 | |
| 6(6) | 岡山湯郷Belle | 23 | 16 | 7 | 2 | 7 | 23 | 28 | -5 | |
| 7(8) | ニッパツ横浜FCシーガルズ | 21 | 16 | 6 | 3 | 7 | 29 | 27 | +2 | |
| 8(10) | ASハリマアルビオン | 19 | 16 | 5 | 4 | 7 | 18 | 22 | -4 | |
| 9(7) | 愛媛FCレディース | 19 | 16 | 5 | 4 | 7 | 18 | 31 | -13 | |
| 10(9) | スフィーダ世田谷FC | 16 | 16 | 4 | 4 | 8 | 23 | 29 | -6 | |
| 11(11) | 日体大SMG横浜 | 10 | 16 | 3 | 1 | 12 | 14 | 47 | -33 | |
| 12(12) | VONDS市原FCレディース | 4 | 16 | 1 | 1 | 14 | 8 | 40 | -32 |
次節に向けて
次節、スフィーダ世田谷FCは現在2位の朝日インテック・ラブリッジ名古屋とのアウェー戦に臨む。
前回対戦では内田が2ゴールを決め、終盤まで2-2で競ったものの、後半アディショナルタイムに勝ち越し点を許して2-3で敗れた。
名古屋は第15節でVONDS市原FCレディースと0-0。第16節ではニッパツに0-3で敗れており、直近2試合は無得点となっている。
中断期間にはキャプテンだった橘麗衣がAC長野パルセイロ・レディースへ移籍。最終ラインも新たな組み合わせを構築している段階にある。
それでも選手層と個々の技術力はリーグ屈指。世田谷としては、前線からの守備をかわされた後に走り負けないことに加え、両サイドが高い位置を取った際のリスク管理を改めて整理したい。
一方、伊賀は再びアウェー戦。現在7位のニッパツ横浜FCシーガルズと対戦する。
前回対戦は伊賀が2-1で勝利した。
ニッパツは第16節で2位名古屋を3-0で破っている。
室井胡心、岡百々花を中心とした前線のスピードはリーグでも大きな脅威で、ボールを奪ってから一気にゴールへ向かう攻撃には警戒が必要になる。
伊賀としては、攻撃時に人数をかけた後のリスク管理と、室井らを自由に走らせない最終ラインの対応がポイントになる。
一方で、今節は渡邊、増田、唐沢、平田と複数の選手が攻撃に関与し、セットプレーからも得点を奪った。
堅い守備を土台に、こうした攻撃の選択肢をどこまで増やせるか。
首位と勝点6差で迎える残り6試合。今節の逆転勝利を、優勝戦線へ食い込むためのスタートにできるか注目したい。
リソース
チーム紹介


第16節 振り返り
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第16節 個人的ベストイレブン
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フルマッチLIVE配信
第16節全試合ハイライト動画
公式記録


