中断期間明けの初戦。第15節終了時点で6位の岡山湯郷Belleが、4位のオルカ鴨川FCをホームに迎えた。
前回対戦は第5節。オルカが後半に先制しながら、湯郷が後半アディショナルタイムに追いつき、1-1の引き分けに終わっている。
中断期間中には、両チームとも選手編成に変化があった。
オルカは、最終ラインの中心を担っていた松尾菜月がINAC神戸レオネッサへ完全移籍。昨シーズンのチーム内得点王であるアルマ・デービスも大和シルフィードへ期限付き移籍した。
一方の湯郷はさらに動きが大きく、塩谷瑠南、中野琴音らWEリーグへ移った主力を含め、10人がチームを離れた。その一方で4人が加入し、中断期間を通して大幅なチーム再編を進めている。
そのため、この試合では特に湯郷が新しいメンバー構成の中で、これまでのビルドアップをどこまで再構築できているかに注目した。
結果は岡山湯郷Belle 1-5 オルカ鴨川FC。
堅い守備を軸に勝点を積み上げてきたオルカが、今季最多となる5得点を記録した。故障から戻った齊藤彩花が2得点。さらに中西茉里奈、越路萌永もゴールを挙げ、堅い守備から攻撃へつなげるオルカの強みが得点に結びついた。
対する湯郷は、ビルドアップ時の距離感と守備時の連係に苦しんだ。大幅にメンバーが入れ替わった影響も感じさせる内容となり、再開初戦で両チームの完成度の差がスコアに表れた一戦だった。この記事の要点
- オルカが前線からの連動した守備とセカンドボール回収で主導権を握り、今季最多の5得点
- 復帰戦となった齊藤彩花が2ゴール。中西茉里奈、越路萌永も得点し、複数の選手が攻撃に絡んだ
- 湯郷はビルドアップ時の距離感と守備の連係に課題を残し、シュート3本に抑え込まれた
試合情報
試合展開
湯郷の立ち上がりをしのぎ、齊藤彩花の復帰弾でオルカが先制
5月に一度現役引退を発表し、8月28日に湯郷への加入と現役復帰が発表された#51戸梶有野里がゴールを守った。
湯郷は立ち上がり、右サイドの#32田代つばめが積極的にドリブルを仕掛ける。ボールを失えば前線と中盤が素早く寄せ、オルカの前進を止めようとした。
ただし、前線がプレスへ出た一方で最終ラインの押し上げは十分ではなく、中盤との間にスペースが生まれる場面も目立った。
序盤の勢いをオルカにしのがれると、湯郷はGKを含めて後方からボールをつなぐ時間が増えていく。
しかしオルカは、パスの受け手に素早く身体を寄せながら前進方向のコースを消し、湯郷に簡単には前を向かせない。特にボランチとセンターバックの距離が広がった場面では、その間のスペースを効果的に使った。

15分、オルカが先制する。
#2吉田紫穂が、最前線に入った#7並木千夏を狙ってロングボールを送る。湯郷DFがクリアしたボールはバイタルエリアへこぼれ、そこに待っていた#9齊藤彩花が右足を一閃。強烈なミドルシュートがゴールネットを揺らした。
故障から戻った齊藤が、復帰戦でいきなり結果を残した。
中西茉里奈のロングシュート、齊藤彩花の2点目で一気に3点差
湯郷としては、前線と最終ラインの距離を早い段階で修正したいところだった。
しかし22分、再びオルカが長いボールからゴールへ迫る。
GK#1米澤萌香が最終ラインの背後へロングフィード。抜け出した#11河野有希とGK戸梶が競り合い、こぼれたボールを#29中西茉里奈がダイレクトで狙う。前へ出ていたGKの位置を見たロングシュートが決まり、オルカがリードを2点に広げた。

オルカの守備も機能していた。
湯郷のセンターバックがボールを持てば前線から圧力をかけ、ボランチが受けに下がれば背後から身体を寄せて前を向かせない。湯郷を自陣へ押し込み、ボールを奪えば空いたスペースへ素早く進んだ。
42分には、相手のスローインからボールを奪った#5浅野綾花が右サイドを前進。最終ラインの背後へ抜け出した齊藤へスルーパスを通す。
齊藤はGK戸梶をかわし、角度のない位置から右足でゴールへ流し込んだ。
復帰戦で2得点。オルカが3-0とした。
片山真鞠が1点を返すも、後半もオルカが主導権
前半のうちに1点を返したい湯郷は44分、高い位置からの守備が得点につながる。
#22片山真鞠がオルカの後方からのつなぎにプレッシャーをかけると、守備側にミスが発生。そのボールを片山が拾い、右足でシュートを決めた。
湯郷が1点を返し、1-3で前半を折り返す。

しかし後半に入っても、試合の構図は大きく変わらなかった。
オルカは高い位置にコンパクトな陣形を保ち、前線から中盤、最終ラインまでが連動して湯郷の前進を制限する。
57分には、#11河野有希が右サイドからゴール前へボールを送り、混戦から再び中央へ折り返したボールが相手DFに当たってオウンゴール。4-1とした。
越路萌永が5点目、交代後も落ちなかったオルカの強度
62分には、オルカの前向きな守備から再び得点が生まれる。
#17越路萌永が中盤で相手の横パスを奪い#19太田凪砂へつなぐ。太田が相手を引きつけながら前進すると、左サイドを駆け上がった越路へリターン。
越路はそのままゴールへ運び、GKの動きを見ながら左足でシュート。オルカが5点目を奪った。
そしてオルカは63分、この日2得点の齊藤に代えてスピードがあり今シーズンここまでチーム最多の4ゴールを決めている#14蔵田あかりを投入。70分には#24江藤里桜奈、83分には#22北村ほのか、#15今西那歩らを送り出した。
リードを広げた後も前線の強度を落とさず、湯郷に自陣から簡単に前進させない。

湯郷はボールを保持しても低い位置でのプレーが多くなり、オルカの最終ラインを押し下げられない。前方への選択肢が限られたまま横パスやバックパスが増え、ボールをゴール前まで運ぶことができなかった。
シュート数は湯郷3本、オルカ10本。
最後まで運動量と守備強度を保ったオルカが5-1で勝利し、中断期間明けの重要な初戦で勝点3を獲得した。
総括
この試合で最も大きな差になったのは、単純な個人能力よりも、ボールを持った時と失った時の選手同士の距離感だった。
湯郷は今季序盤から続けてきた後方からのビルドアップを、この試合でも継続した。
しかし、センターバックからボランチへボールが入った後の出口が少なく、受け手が孤立する場面が多かった。さらにボールを失った際には中盤と最終ラインの間が空き、オルカにセカンドボールを拾われて前向きに攻撃される。
対するオルカは、守備時の選手間距離が比較的コンパクトだった。
前線がプレスへ出れば中盤も連動して押し上げ、奪った後には湯郷の空いたスペースへ素早くボールを運ぶ。この循環を90分間続けたことが、5得点という結果につながった。
大幅な選手入れ替えを経た湯郷と、主力の移籍はありながらも比較的既存戦力を維持して中断期間を過ごしたオルカ。再開初戦では、その完成度の差が明確に表れた。

岡山湯郷Belle
中断期間中に10人がチームを離れ、4人が加わった。これだけ選手構成が変われば、チームを再構築する難易度は当然高い。
実際、和多田充寿監督も試合後、一からチームを作り直す難しさに触れ、特に最終ラインの背後を取られた際の役割分担について理解が十分ではなかったと振り返っている。
それでも、高い位置までボールを運べた時に見せるパスワークは湯郷の魅力だった。
短いパスをテンポよくつなぎ、選手が連続してボールに関わることで一気に攻撃のスピードが上がる。
問題は、この試合ではそこまでボールを運ぶ回数自体が少なかったことだ。
センターバックからボランチやサイドへボールを入れても、その先の選択肢をオルカに消される。受け手が前を向けず、横パスやバックパスを選択したところへさらに圧力を受けた。
結果として、湯郷のシュートは3本にとどまった。

より大きな課題は守備だろう。
最初の2失点はいずれも長いボールの後のこぼれ球から生まれた。中盤と最終ラインの間をオルカに使われ、セカンドボールに対して前向きにプレーされている。
また、守備が1対1の対応になった場面も多く、最初の選手が突破されると次のカバーが間に合わない。
これは単純に「個で負けた」というより、誰が出て、誰がカバーするのかという守備の関係性がまだ整理しきれていないと見る方が、この試合を説明しやすい。
コンディション面でも、少なくともこの試合では全体の運動量が上がり切らなかった。
両サイドでハードワークしていた田代つばめと片山真鞠が退いた後は、途中出場の梶山朋恵が右サイドからドリブルで前進する場面を作ったものの、周囲のサポートが間に合わず孤立することも多かった。
大幅にメンバーが変わったチームだけに、一試合で完成度を取り戻すことは難しい。まずは攻守ともに選手間の距離と役割を整理し、湯郷本来のパスワークを相手ゴールに近い位置で発揮できる状況を増やしたい。
オルカ鴨川FC
相手がチーム再構築の途中にあることを考えれば、5-1というスコアだけで評価するべきではない。
それでも、中断期間にコンディションと戦い方の両方を整えてきたことが感じられる内容だった。
特に評価したいのは守備だ。
下部組織からトップチームへ昇格し、長く最終ラインを支えてきた松尾菜月がINAC神戸レオネッサへ移籍。今節は#2吉田紫穂と#3月東優季乃がセンターバックを組んだ。
湯郷の前からのプレスによって後方でミスが生まれ、1失点は喫した。それでも最終ラインを高く保ち、中盤と連動することで湯郷を自陣へ押し込み続けた。

そして、その守備が攻撃へ直結した。
高い位置でボールを奪うだけではなく、長いボールを使った後のセカンドボールも回収。相手が前へ出たことで生まれたスペースを利用し、縦へ速く攻撃した。
5得点は今季のチーム最多。
中でも大きな材料となったのが齊藤彩花だ。
2026シーズンの目標に自ら「復帰戦ゴール」と掲げていた齊藤が、復帰戦で2得点。15分の強烈なミドルシュート、42分のGKをかわしてからの冷静なフィニッシュと、異なる形からゴールを奪った。
中西茉里奈、越路萌永の両サイドバックも得点。
前線だけに得点を依存せず、複数のポジションから選手が攻撃へ関わったことも、終盤戦へ向けた好材料だろう。

一方で、今後さらに上位との対戦を考えれば、最終ライン背後への対応は確認しておきたい。
吉田と月東は高さ、対人強度、キック精度を備える一方、相手に先に背後へ走られた際には対応が難しくなる場面もあった。
これは個々の走力だけで解決する問題ではない。
相手に自由な状態で背後へのボールを蹴らせないこと。最終ラインでタイミングを合わせること。そしてGK、サイドバック、ボランチを含めたカバーリングを徹底すること。
次節にはリーグ最多48得点の首位・静岡を迎える。今節以上に、その連係が試されることになる。
順位表
第16節終了時点で、岡山湯郷Belleは6位を維持したものの勝点23。4位ヴィアマテラス宮崎、5位伊賀FCくノ一三重がともに勝点29となり、5位との差は6ポイントに広がった。
一方、オルカ鴨川FCは勝点31として4位から3位へ浮上。
首位・静岡SSUボニータが勝点35、2位・朝日インテック・ラブリッジ名古屋が勝点32。首位との差を4ポイントまで縮め、残り6試合で優勝争いに加わる位置につけた。
| 順位 (前節) | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 | 過去5試合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 静岡SSUボニータ | 35 | 16 | 11 | 2 | 3 | 48 | 11 | +37 | |
| 2(2) | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 32 | 16 | 9 | 5 | 2 | 37 | 15 | +22 | |
| 3(4) | オルカ鴨川FC | 31 | 16 | 9 | 4 | 3 | 25 | 11 | +14 | |
| 4(3) | ヴィアマテラス宮崎 | 29 | 16 | 8 | 5 | 3 | 29 | 18 | +11 | |
| 5(5) | 伊賀FCくノ一三重 | 29 | 16 | 8 | 5 | 3 | 19 | 12 | +7 | |
| 6(6) | 岡山湯郷Belle | 23 | 16 | 7 | 2 | 7 | 23 | 28 | -5 | |
| 7(8) | ニッパツ横浜FCシーガルズ | 21 | 16 | 6 | 3 | 7 | 29 | 27 | +2 | |
| 8(10) | ASハリマアルビオン | 19 | 16 | 5 | 4 | 7 | 18 | 22 | -4 | |
| 9(7) | 愛媛FCレディース | 19 | 16 | 5 | 4 | 7 | 18 | 31 | -13 | |
| 10(9) | スフィーダ世田谷FC | 16 | 16 | 4 | 4 | 8 | 23 | 29 | -6 | |
| 11(11) | 日体大SMG横浜 | 10 | 16 | 3 | 1 | 12 | 14 | 47 | -33 | |
| 12(12) | VONDS市原FCレディース | 4 | 16 | 1 | 1 | 14 | 8 | 40 | -32 |
次節に向けて
岡山湯郷Belle
次節、岡山湯郷Belleは再びホームでASハリマアルビオンと対戦する。
前回対戦は第6節。岸波美采が2得点を挙げ、3-3で迎えた後半アディショナルタイムに寺尾星奈が決勝点。湯郷が4-3で打ち合いを制した。
ハリマは第16節、アウェーでヴィアマテラス宮崎に3-1で逆転勝利した。
宮崎が開始6分で退場者を出した影響はあったものの、前半だけで3得点。中断期間明け初戦を勝利し、8位へ順位を上げている。
湯郷にとっては、今節で表れた選手間の距離感や守備の連係を、一週間でどこまで整理できるかがポイントになる。
すべてを短期間で修正することは難しい。それでも、これ以上上位グループとの差を広げられないためにも、まずは自分たちのパスワークを発揮できる時間を増やし、勝点を積み上げたい。

オルカ鴨川FC
オルカ鴨川FCは、ホームで首位・静岡SSUボニータを迎える大一番に臨む。
前回対戦の第6節では、互角に渡り合う時間を作りながらも得点を奪えず、0-1で敗れた。
オルカとしては、今節のように前線から連動して相手へ自由にボールを持たせず、守備ブロックをコンパクトに保つことが重要になる。そのうえで、相手の高い最終ラインの背後を狙い、限られた決定機を確実に仕留めたい。
首位との勝点差は4。
2023年になでしこリーグ1部を制したオルカは、その後の2シーズンで苦しい時間を過ごしたが、今季は再び優勝争いへ戻ってきた。
一方の静岡は、クラブ初のなでしこリーグ1部優勝へ向けて首位を走る。
残り6試合。優勝争いの行方を左右する直接対決となる。

リソース
チーム紹介


第16節 振り返り

第16節 個人的ベストイレブン

フルマッチLIVE配信
第16節全試合ハイライト動画
公式記録


