2026プレナスなでしこリーグ1部 第19節。
リーグ戦は残り4節。前節、8試合ぶりの勝利を挙げた11位・日体大SMG横浜が、4連勝中の6位・ニッパツ横浜FCシーガルズをホームに迎えた。
両チームは横浜を拠点とするクラブ同士。終盤戦に向けて、日体大は残留争いから抜け出すために、ニッパツは上位進出を目指して勝点3を狙う横浜ダービーとなった。
第8節の前回対戦は、日体大が先制したものの、ニッパツが3得点を奪って逆転勝利を収めている。
今回もニッパツが前半から持ち味を発揮した。
權野貴子と室井胡心の得点で2点を先行。ハイプレスと攻守の切り替えの速さで日体大を圧倒し、理想的な展開で前半を折り返した。
しかし、後半は一転。中盤の強度を高めた日体大が安積和季の個人技から1点を返すと、終盤にかけてニッパツを押し込んだ。
最後まで続いた攻防を制したのはニッパツ。日体大を2-1で下して横浜ダービーを制し、連勝を5に伸ばした。
この記事の要点
- ニッパツがハイプレスと前線の連動から2得点。得意の速攻で前半の主導権を握る。
- 日体大は後半に中盤の球際と攻撃を修正。安積和季の個人技で1点を返し、終盤は相手を押し込む。
- ニッパツが5連勝で勝点30に到達。戦い方を整理して持ち味を最大限に生かし、上位争いに存在感を増す。
試合情報
試合展開
ニッパツがハイプレスから主導権を握り、權野が先制
試合序盤、日体大は自陣からの組み立てにこだわらず、早めに前線へボールを送る場面が目立った。ニッパツが得意とする高い位置からのプレスを回避し、自陣でボールを奪われてショートカウンターを受ける危険を減らそうとする意図が見えた。
しかし、ニッパツのプレスは速かった。
日体大が横パスやバックパスを選択すると、ニッパツの選手が一気に距離を詰める。ボールを奪えば、そのままゴール前まで侵入した。
日体大はボールを奪い返しても、前線へのパスやクリアが中途半端になる場面が続いた。
そこを逃さなかったのがニッパツの中盤だった。
こぼれ球や競り合いの後に生まれるセカンドボールを次々と回収。ボールを奪ってから素早く前方へ運び、日体大に守備を立て直す時間を与えなかった。

そして前半7分、ニッパツが先制する。
#5吉田凪沙から縦パスを受けた#7浦島里紗が、右サイドで相手最終ラインの背後へ抜け出した#11岡百々花に浮き球のパスを送る。
岡がゴール前へグラウンダーのクロスを入れると、ボールは日体大の最終ラインとGKの間を通過。
そこへ走り込んだ#6權野貴子が、滑り込みながら左足でゴールに押し込んだ。
吉田の縦パス、浦島の展開、岡のスピードを生かした抜け出し、そして權野のフィニッシュ。
高い位置からのプレスとセカンドボールの回収によって試合の主導権を握ったニッパツが、今度は前線のスピードと連動を発揮。開始早々に先制点を奪った。
豊富な攻撃の選択肢、室井の追加点でリードを広げる
失点した日体大も、前線からのプレスを強めて反撃を試みた。
相手のパスミスを誘い、#8安積和季が中盤で粘り強くボールを保持。#9柴原希保がペナルティエリア内へ侵入するなど、攻撃の形を作り始めた。
しかし、そこから攻撃を継続することが難しかった。
セカンドボールの奪い合いでは、ニッパツの中盤と最終ラインが強度を発揮。日体大が攻撃を仕掛けようとしても、再びニッパツのボール保持へと変わる場面が続いた。

一方、ニッパツは攻撃の選択肢が豊富だった。
#10室井胡心が中盤まで下がってボールを受け、#5吉田凪沙や#14田村かのんにボールを落とすと、すぐさま最前線へスプリント。
右サイドでは#11岡が背後への抜け出しを繰り返し、權野も前線で起点となった。
ボールを受ける選手、その周囲でサポートする選手、相手の背後へ抜け出す選手。それぞれの役割が明確で、日体大はニッパツの攻撃を捕まえきれなかった。
そして、前半のうちにニッパツが追加点を奪う。
日体大のスローインから始まったプレーで、#6權野が身体を入れてボールに触れると、#14田村、#11岡、#10室井へとワンタッチでパスがつながった。
ボールを受けた室井は、スピードに乗ってドリブルで前進。
GKの位置を確認すると、右足を振り抜いて鮮やかなミドルシュートをゴールに突き刺した。
日体大の攻撃を断ち切ったところから、少ないタッチで一気にフィニッシュまで持ち込んだ。
追加点を奪ったニッパツは、その後も攻守の切り替えの速さを維持。縦に速い攻撃で日体大の最終ラインの背後を狙い続けた。
ニッパツが2点をリードして前半を折り返した。
中盤の強度を高めた日体大、安積の個人技で1点差に迫る
後半は、日体大が立ち上がりから変化を見せた。
前半に比べて中盤の球際で厳しく寄せ、ボールを奪ってから前線へ進む意識も高まった。
相手のプレスを受けて後方に押し込まれる時間が減り、中盤でニッパツの選手と互角以上に競り合う場面が増えていった。
その積極性が得点につながる。
ニッパツの#15渋谷巴菜から#22加田菜への縦パスを、#23笠井寧々が素早く寄せてインターセプト。
その後の球際の競り合いでは、#26今野真帆が#5吉田凪沙に競り勝ち、前を向いてドリブルでボールを運んだ。
左サイドでボールを受けた#9柴原希保がカットインを狙うものの、ニッパツの#31俣野佑果がブロック。
しかし、こぼれ球を拾った#8安積和季が、細かいタッチのドリブルで相手選手2人をかわしてペナルティエリア内へ侵入した。
そのまま左足を振り抜くと、シュートはポストの内側を叩いてゴールネットを揺らし、日体大が1点差に迫った。

安積の個人技が光った得点だったが、その起点となったのは笠井の素早いプレスと今野の球際の強さだった。
前半はニッパツに上回られていた中盤の競り合いで勝ち、そこからゴールまでつなげた。
後半に入って日体大が見せた変化を象徴する得点だった。
日体大が押し返すも、ニッパツが逃げ切り5連勝
1点差となった後も、日体大は中盤での積極的な守備を継続し、試合は拮抗した展開となった。
日体大は不用意なバックパスをニッパツに狙われ、危険な場面を迎えることもあった。しかし、相手に身体を寄せ、シュートまで持ち込ませる前に攻撃を食い止める場面が増えた。
ボールを奪えば前線へ送り、中盤でセカンドボールを回収。
安積がドリブルで相手の守備を崩し、#11浅香美結、#10本田悠良、#7髙橋光莉らが前方のスペースを狙うことで、攻撃に厚みを生み出した。
前半とは異なり、日体大がニッパツのプレスを突破して攻撃に転じる場面も増えていった。

一方、ニッパツも攻撃の姿勢を失わなかった。
前線のスピードを生かして相手最終ラインの背後を狙い、ボールを失えば素早く守備へ切り替える。
しかし、前半ほどセカンドボールを回収できなくなり、日体大にボールを保持される時間が増加。徐々に守備に回る展開となった。
終盤には日体大が選手交代によって攻撃を活性化させ、ニッパツを押し込んだ。
それでも、ニッパツは中盤と最終ラインが粘り強く対応。日体大の攻撃を受け止め、最後まで同点ゴールを許さなかった。
前半の2得点を守り切ったニッパツが、横浜ダービーを制して5連勝を達成した。
総括
前半はニッパツが組織的な連動で主導権を握り、後半は日体大が中盤の競り合いと個人技を生かして押し返した。
同じ試合でありながら、前半と後半では両チームの力関係が大きく変化した一戦だった。
勝敗を分けたのは、前半のニッパツが見せた攻守の切り替えの速さと、前線の連動だった。
ボールを失えば即座に奪い返し、奪えば周囲の選手が次の攻撃に向けて走り出す。個々の選手の特徴が、チーム全体の動きとして結びついていた。
対する日体大は、安積を中心に相手の守備を打開できる技術を持っている。後半はその技術を生かし、ニッパツを押し込む時間も作った。
しかし、前半に生じた2点差を覆すことはできなかった。
ニッパツが自分たちの強みを組織的な連動によって引き出した前半と、日体大が守備の強度を高めることで個々の技術を生かした後半。
両チームの持ち味と課題が、それぞれ表れた90分だった。
日体大SMG横浜
後半の修正能力は評価したい。
前節のスフィーダ世田谷FC戦では、攻撃陣が3得点を奪って連敗を止めた。さらに第17節のヴィアマテラス宮崎戦でも、中盤の積極的な守備からチャンスを生み出していた。
今回も後半は中盤で球際の強さを発揮し、チーム全体が前進する時間を増やした。
安積の得点は見事だったが、それだけではない。
笠井や今野が積極的に相手へ寄せ、中盤でボールを奪えるようになったことが、攻撃全体の改善につながった。
終盤には選手交代によって前線の運動量を維持し、ニッパツを押し込んだ。
シーズン序盤に比べれば、縦への意識や中盤の積極性は明らかに高まっている。

しかし、課題も残る。
第一に、相手の攻撃の起点に対する守備だ。
ニッパツの先制点では、吉田から縦パスが入り、浦島が前を向いて精度の高いパスを供給した。
中盤で相手の攻撃を制限できず、最終ラインの背後へボールを送られてしまった。
浦島のように精度の高いパスを供給できる選手に対して、どの位置で、誰がプレッシャーをかけるのか。パスの出し手を自由にさせない守備と、背後を狙う選手への対応。その両方をチーム全体で連動させる必要がある。
第二に、自陣でボールを保持する際の判断だ。
前半は、クリアするのか、パスをつないで前進するのかが曖昧になる場面が目立った。
横パスやバックパスをニッパツに狙われ、ボールを奪われてから守備へ切り替えるまでに時間がかかっていた。
特にニッパツのように前線のプレスと攻守の切り替えに優れた相手には、この判断の遅れが致命的になる。
相手のプレスを受けている場面では、安全にクリアする判断も必要だろう。
そして第三に、ボールを奪った直後の攻撃である。
ニッパツは中盤の選手が積極的に前方へ出るため、その背後にはスペースが生まれる。
日体大も前半にそのスペースを利用できそうな場面はあった。
しかし、味方の攻め上がりを待ったり、ボールを保持する時間が長くなったりすることで、ニッパツに守備ブロックを整える時間を与えてしまった。

後半は、相手に寄せられる前に縦へ運び、安積のドリブルを生かした攻撃を展開できていただけに、前半の戦い方が悔やまれる。
今季の残り試合では、後半に見せた積極性を試合開始から発揮できるか。
残留争いから抜け出すためにも、改善が求められる。
ニッパツ横浜FCシーガルズ
5連勝という結果以上に、現在のニッパツの戦い方には明確な強みがある。
高い位置からプレスを仕掛け、相手のパスを制限する。
ボールを奪えば素早く縦へ運び、前線の選手が相手最終ラインの背後を狙う。
試合を重ねるごとに、こうした一連の動きが洗練されている。
今回の先制点は、その象徴だった。
吉田が攻撃に参加して前方へパスを送り、浦島が正確なキックで展開。岡が持ち前のスピードで背後に抜け出し、權野がゴール前に走り込んだ。
それぞれの選手が自分の特徴を発揮し、ひとつの得点につなげている。

追加点を決めた室井も、ゴールだけにとどまらない働きを見せた。
中盤まで下がってボールを受ければ、周囲の選手へパスを落として再び前線へ走り出す。
守備では積極的にプレスバックを行い、中盤でのボール回収にも貢献した。
攻撃と守備の両面で、チームに欠かせない存在となっている。
また、浦島と加田という特徴の異なる選手を使い分けられることも、現在のニッパツの強みだ。
浦島は足元の技術とキックの精度に優れ、相手の動きを予測したパスで攻撃の起点となる。
一方の加田は、身体の強さと豊富な運動量、縦への推進力が持ち味だ。
後半に加田が加わることで、前線の攻撃には別の特徴が生まれる。
室井と岡のスピード、加田の推進力、そして權野の前線での起点となるプレー。
それぞれの特徴を組み合わせ、相手の守備に複数の課題を突きつけられる。

そして、今のニッパツの変化を考えるうえで興味深いのが、シーズン序盤との戦い方の違いだ。
シーズン前半は、低い位置から丁寧にパスをつなぎ、相手を動かしながら前線のスピードを生かそうとする場面が多く見られた。
しかし、実際には後方からの組み立てを相手に狙われたり、攻撃が停滞したりする試合も少なくなかった。
シーズンが進むにつれ、ニッパツは徐々に戦い方を整理してきたように見える。
現在は、無理に低い位置からつなぐことにこだわらず、前線の速さを生かした縦への攻撃がより明確になった。
そこに中盤の積極的な攻撃参加と、チーム全体の切り替えの速さが加わっている。
相手を動かしてから前線の速さを生かすのではなく、素早くボールを奪い、相手の守備が整う前に前線の速さを生かす。
攻撃の考え方が変化したことで、選手の特徴がより効果的に発揮されるようになった。

ただし、今回の後半は課題も残った。
日体大が中盤の強度を高めると、ニッパツがセカンドボールを回収できない場面が増え、徐々に押し込まれた。
4試合連続無失点だった守備も、安積の個人技によって崩された。
それでも、追加失点を許さずに逃げ切れたことは大きい。
シーズンを通して試行錯誤を重ね、自分たちの持ち味を最大限に発揮できる戦い方を構築しつつあるニッパツ。勝点はついに30に到達した。
上位争いが激しくなるシーズン終盤、5連勝の勢いはどこまで続くのか。
順位表
※9月27日時点。第19節のオルカ鴨川FC対朝日インテック・ラブリッジ名古屋は10月11日に延期。
ニッパツ横浜FCシーガルズは5連勝で勝点30に到達。6位のままだが、上位グループとの差をさらに詰めた。
一方、日体大SMG横浜は11位。最下位のVONDS市原FCレディースとの勝点差は3のままだ。
なでしこリーグ1部では、原則として12位が自動降格、11位が2部との入替戦に回る。
日体大にとって、最下位との勝点差を保つだけでは十分ではない。残り3試合で10位以上への浮上を目指したい。
過去5試合:勝利 引き分け 敗戦
| 順位 (前節) | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 | 過去5試合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 静岡SSUボニータ | 39 | 19 | 12 | 3 | 4 | 51 | 14 | +37 | |
| 2(2) | 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 | 35 | 18 | 10 | 5 | 3 | 39 | 18 | +21 | |
| 3(3) | オルカ鴨川FC | 32 | 18 | 9 | 5 | 4 | 26 | 14 | +12 | |
| 4(4) | ヴィアマテラス宮崎 | 32 | 19 | 9 | 5 | 5 | 33 | 26 | +7 | |
| 5(5) | 伊賀FCくノ一三重 | 32 | 19 | 9 | 5 | 5 | 25 | 18 | +7 | |
| 6(6) | ニッパツ横浜FCシーガルズ | 30 | 19 | 9 | 3 | 7 | 34 | 28 | +6 | |
| 7(7) | 岡山湯郷Belle | 27 | 19 | 8 | 3 | 8 | 29 | 33 | -4 | |
| 8(8) | 愛媛FCレディース | 25 | 19 | 7 | 4 | 8 | 24 | 35 | -11 | |
| 9(10) | スフィーダ世田谷FC | 22 | 19 | 6 | 4 | 9 | 28 | 32 | -4 | |
| 10(9) | ASハリマアルビオン | 20 | 19 | 5 | 5 | 9 | 19 | 27 | -8 | |
| 11(11) | 日体大SMG横浜 | 13 | 19 | 4 | 1 | 14 | 19 | 53 | -34 | |
| 12(12) | VONDS市原FCレディース | 10 | 19 | 3 | 1 | 15 | 12 | 41 | -29 |
次節に向けて
日体大SMG横浜
次節、日体大SMG横浜は朝日インテック・ラブリッジ名古屋とのアウェー戦に臨む。第9節の前回対戦では、名古屋の多彩な攻撃を止められず、0-8の大敗を喫した。
名古屋は中断明けから第17節まで勝利を挙げられなかったものの、前節はASハリマアルビオンを2-1で下し、3試合ぶりの勝利を収めた。
日体大も直近の試合では内容に改善が見られ、今回の後半にはニッパツを押し込む時間を作っている。
しかし、名古屋の高い攻撃力を考えれば、守備の判断が重要になる。
特に注意したいのが、自陣でのボール保持だ。
今回のニッパツ戦でも、バックパスや横パスを狙われ、危険な場面を迎えることが少なくなかった。
相手のプレスを受けた際には、安全にクリアする判断を徹底し、可能な限り中盤の高い位置でセカンドボールを回収したい。
そして、ボールを奪った直後の素早い攻撃も重要になる。
今回の後半に見せた中盤の強度と縦への積極性を、試合開始から発揮できるか。
残留争いから抜け出すために、前回対戦とは異なる戦いを見せたい。
ニッパツ横浜FCシーガルズ
ニッパツ横浜FCシーガルズは、VONDS市原FCレディースをホームに迎える。第9節の前回対戦では、室井胡心の2得点を含む4得点を奪い、4-0で快勝している。
しかし、当時と現在のVONDSでは状況が大きく異なる。
開幕から14連敗を喫していたVONDSは、中断明けから守備の安定感を高め、第18節まで3連勝を達成した。
第19節はスフィーダ世田谷FCに敗れたものの、櫻庭琴乃を中心とした鋭いカウンターは健在だ。
堅い守備から少ない人数で素早くゴール前へ運ぶ攻撃と、得点源となっているセットプレーは、ニッパツにとっても警戒すべきものになる。
ニッパツは今回の後半、日体大に中盤での競り合いを制され、押し込まれる時間が増えた。
VONDSとの対戦では、得意のハイプレスを維持しながら、ボールを奪い切れなかった際の守備対応も重要になるだろう。
ともに中断明けから戦い方を明確にし、結果につなげてきた両チーム。
ニッパツが6連勝を飾るのか、それともVONDSがニッパツの連勝を止めるのか。
それぞれの持ち味がぶつかる一戦となる。
リソース
チーム紹介


第19節 振り返り

第19節 個人的ベストイレブン

フルマッチLIVE配信
第19節全試合ハイライト動画
公式記録


